―AKIBA'S TRIP―   作:ヤマタニ

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自警団と瑠衣との邂逅。


自警団の覚悟

「やあ」

「あ、ユウト」

「お帰りなさいませ」

 

 俺はアジトへ着くなり、まずは辺りを見回す。

 

「どうしたんだい?」

「エージェントか?アイツらなら、今いねえよ」

「そうか……なら大丈夫か?」

 

 NIROの連中は前回の捕縛作戦の失敗の時から、連絡も来ていない。まあ、妖主が来るってんで忙しいのもあるだろう。……アジト内に盗聴器や監視カメラが無いかも確認済みだし……瑠衣が来ても大丈夫かな。

 

「ユウトさん、どうか、いたしましたか?」

「何か悩んでいそうだな。安心しろ、相談ならいつでも乗ってやるって。仲間だろ」

 

 さすノブ。やはり持つべきものは素晴らしい仲間!

 

「で、どのエロゲで詰まってんだ?」

 

 さすノブ。こういう時まで平常運転。最早尊敬してしまうね。けど俺がノブ君に贈る言葉はこれだ。

 

「そんな人生で大丈夫か」

「大丈夫だ、問題ない」

 

 だいじょばない、問題だよ。まあいい、事情を説明して…。

 

「ユウト、もう入ってきてもいい?」

「……まだ早かったね、うん」

 

 事情を説明しようとしたところで瑠衣が入ってきてしまった。

 

「ユウトさん、これはどういうおつもりですか!こんな時に、こんな場所に彼女を連れてくるなんて……!」

「いや、こんな場所って……」

 

 まあサラさん怒るよな。そしてヤタベさんに飛び火してるぞ。

 

「まあ今から事情は話す。みんな聞いてくれ」

 

 

 

 これまでのいきさつを俺は自警団に話す。そしてそのままサラさん、ヤタベさん、ゴンちゃんも、各々の事情を喋る事となった……ノブ君ハブられてね?

 

「こんな事が起こっていたとはね……しかもサラさんまで」

「事が事でしたので、内密に行うしか……皆様を巻き込む事にも気が引けてしまい……」

「いいんだサラさん。私もマスターの事、君達に喋るとマズイと思って黙っていたしね」

「ボ、ボクなんて、ユウトの邪魔までしちゃってるしね」

 

 ゴンちゃんのは邪魔だったかな?むしろ助かったんだが。

 

「どうせここまでみんな関わってたなら、始めから相談しちゃえば良かったね」

「そうだね……」

 

 まあ確かに、カゲヤシとの関わり意外に多いな自警団……。

 

「えっと、何だっけ瑠衣ちゃん、穏便……?」

「あ、ヤタベさん。穏健派……です」

「あ、そうかそうか。その穏健派が目指すように、秋葉原で平穏に暮らしたいというのなら、例えそれがカゲヤシでも、サラさんが言うように、我々からすれば大して違いはないしね」

 

 ヤタベさんの言葉に瑠衣も嬉しそうだ。

 

「……納得いかねぇな」

「ノブさん」

 

 だがノブ君は何か引っかかってるようで、険しい表情になっていた。

 

「確かに、我々秋葉原自警団はNIROに協力している。しかし彼らの隷下組織というわけじゃない」

「そうだよノブ君、ボク達は秋葉原自警団なんだから…」

「そうじゃねえ!そういうことじゃ……ねえんだよ!俺は……カゲヤシを……」

 

 そのノブ君の表情を見て、瑠衣の顔は曇ってしまう。

 

「……そう、ですよね……私は人間ならぬ化け物。不躾な接触は皆さんに対して、失礼極まりないどころか、あの連中……エージェント組織にバレれば、皆さんに危険が及ぶかもしれません……ごめん、ユウト。やっぱりわがままだったね。私、出ていくよ」

「だから、そうじゃねえって言ってるだろ!」

 

 またしてもノブ君が叫ぶ……俺、ノブ君の言いたいこと分かったかもしれない。

 

「……?」

「えっと……ノブ君、どういうこと?」

 

 他の人達はまだ気づいてないようだけど……恐らくノブ君、お前は……。

 

「だから!!何で、俺だけ、カゲヤシと関係性が皆無なんだよ!?」

 

 さすがノブ君!俺が予想していた通りすんげえ下らない事を言ったな!

 

「……へ?」

「だってそうだろ!?ユウトはしょうがないとしても、穏健派とやらと内通してたサラさん!行きつけの店のマスターが眷族のカゲヤシで、その人と元々、交流がある上、そこの瑠衣ちゃんとも顔見知りだったヤタベさん!ゴンちゃんに至ってはずっと応援してた地元アイドルが秋葉原の元締めで、しかも命を助けてる?だったら!俺にも何かあっていいだろうが!!」

 

 それぞれの自警団メンバーとカゲヤシの関係性を綺麗に纏めてくれてありがとうノブ君。そしてやっぱそのこと気にしてたかノブ君。

 

「いったいどこで俺はフラグを立て損ねたんだ……買ったエロゲはバグを除けばイベントCG回収率100%のこの俺が……秋葉原で発売イベントがあれば必ず馳せ参じる、この俺が……はっ!」

 

 ここでノブ君は何かに気付く。こういう時のノブ君はとりあえず変な事を言うのはわかってる。

 

「まさか、アレか?大人の事情って奴か?容量がいっぱいとかで、俺に関連するエピソードが削られたとか?それともあまりにもヤバイ内容で発売できそうにないから、仕方なく丸ごと削除したか?くそぉう!どれもこれもありそうな気がしてきやがる!」

 

 君のような勘のいいオタクは嫌いだよ……じゃなくて、メタいからそれ以上はやめとけ。

 

「……ねぇ、ユウト……私、バカなのかな。ちょっと彼の話よくわからないんだけど……」

「バカなのはノブ君だよ。ちなみに彼の話がわかる俺もバカだよ」

「おお、ユウトわかってくれるか!」

「もちろんだともノブ君!」

「「はっはっは!」」

 

 二人して笑いあう。

 

「え…え……?」

「安心しろ瑠衣。ノブ君は今の状況に反対ってわけじゃないさ」

「ああ、もちろん。例の計画に反対してるし人を襲ったりしない、さらに、秋葉原が好きだっていうんなら、カゲヤシだろうが三次元だろうが、受け入れるべきだろ。当たり前だろ」

「そうそう、俺達はエージェントの下請けじゃない。秋葉原自警団だ」

 

 というわけでノブ君はわかってたが、やっぱいい奴だった!

 

 

「えっと、ノブ……君だっけ?」

「おう」

「ありがとう、ノブ君」

「お……おう」

 

 ………まさかノブ君が三次元に!?……いや、まさかな。

 

「ちょっと、質問したいことがあるんだが……いいかな?」

 

 お、ノブ君どうした?何か確かめたいことがあるのか?

 

「どうぞ」

「カゲヤシってのは老化しないんだっけ?」

「いいえ、しないわけでなく、人間と比較するととてもゆっくりなだけ。私の母さんは戦前から生きてるけど、まだ見た目は人間でいうところのさ3~40歳ぐらいだし」

 

 となると俺もかなり長生きできるな!やはりカゲヤシの生態は素晴らしい。

 

「そ、それじゃ……ゴンちゃんがファンのアイドル……君のお姉さんたちは今、何歳なわけ?」

「!?」

 

 おっとぉ!?ゴンちゃんがすげぇ驚いてる顔してるぞ。

 

「えっと、確か……」

「ちょっと待ったぁ!!」

「ゴ、ゴンちゃん……?」

「アイドルには関係ない!関係ないんだよ!!」

「それなら別に実年齢がバレてもよくね?」

「な、何言ってるんだユウトは!君もダブプリが好きなら…」

 

 おっと、余計に怒らせてしまったかな。

 

「姉さんは戦後の……」

「せ、戦後!?い、いいいい今も戦後だよね!1945年以降ならずっと戦後だ!」

 

 そして当たり前のようにバラそうとする瑠衣。結構鬼畜だよね。

 その後サラさんから人間の女性に対する年齢の話題は失礼だという事を教えてもらい、俺とノブ君は女性陣から睨まれるのだった。

 戦後生まれ……ダブプリは六十歳ぐらいかな。それであの容姿なら別に年齢がどうこうとか関係ないな。俺は確かにロリコンの気はある。だが合法ロリでもいい派だ。実年齢は基本気にしない。

 

「さて、それじゃ……そろそろ難しい話をしようか」

 

 と、ヤタベさんが突然切り出した。難しい話?

 

「難解な話というわけじゃないんだけどさ」

 

 そう言ってヤタベさんは話し始める。その内容はこうだ。自警団メンバーは穏健派と関りがある。俺やサラさんは与していると言っていい。エージェント組織には内緒でな。というか俺なんてその組織をぶっ潰そうとまでしている。だが、秋葉原自警団はNIROと協力態勢にある。その場合の俺達秋葉原自警団の身の置き所をはっきりさせようって話だ。

 

「うーんと、ちょっとよく……」

「つまり、今エージェント組織から瑠衣さんを倒すために手を貸せと言われたら我々はどうするのか、ということです」

 

 ……難しいな。俺はNIROに従う気はもうないが、自警団の皆を危険にさらしたくはない。あの組織はカゲヤシ達と協力してでも潰すが、皆に危険が及ぶ前に済ませたい。

 

「もし今エージェント組織に、俺達自警団が穏健派とはいえ、カゲヤシ達に協力していると明らかになったら……マズイよな」

「そうだねノブ君……」

「公的組織を動かせるみたいだし、年金とか切られたりするのかな……そうなると困るなぁ」

 

 ……それで済めばいいけど、アイツらの事だ。殺し屋でも差し向けて暗殺されそう……バックに国がいるんだったらいくらでももみ消せるしな。

 

 だがこの難しい問題にもヤタベさんは既に考えがあるようだった。

 

「マスターがカゲヤシだってわかってからずっと考えてたんだ。気持ちとしては彼を助けたい。しかし、その時点で自警団は既に、NIROと協力態勢にあった。この場合どうするべきか。ずっと考えててね。それで、一つ、いい方法を思いついたんだ」

「………?」

「それは何です?」

 

 いい方法があるとはさすがヤタベさん!……と言いたいところだったが、次のヤタベさんのその提案に、俺は凍り付く。

 

「秋葉原自警団を解散する」

「………え?」

 

 ヤタベさんがいうには、この自警団は何となくの集まりでできた曖昧な組織だから自然消滅しても誰も気にしない……とのことだ。

 まあわかる。今のままで穏健派を助けようとすれば、こちらはクソエージェント共に身元やこの場所を知られているから、その気になれば我々を囮に瑠衣を見つけようとしてもおかしくない……だが、自警団が解散してハイ縁は切れましたとはならんだろう……自然消滅したように見せかけると言ってもな……。

 

「あ、あの……皆さんは自警団を続けてください」

 

 もちろん瑠衣はそれに猛反対する。瑠衣が言うには血族でもない誰かとの繋がり、それはとても素晴らしいとの事だ。それが自分達が原因で壊れるのは耐えられないらしい。

 

「そういえば、君がユウト君を助けた理由にも、それがあったね……彼が、友達のために危険を冒してまで来たから……だっけ」

「はい。カゲヤシは絶対的に血に従う、でも人間はそうじゃない。ユウトのそれはまさに人間らしさのあらわれで……それに、私は憧れたんです」

「……ユウト君、どうしたんだい?何だか不思議そうな顔をしてるけど……」

「いや、何でもないですよ」

 

 ……友達?誰だ、それ……?まさかカゲヤシ化してることで人間への関心が薄くなっているのか?……でも自警団や家族は相変わらず大切だし……。

 

「だから、そんな関係が、私達のせいで壊れるのは……嫌だから……だから……!」

「ふむ、さてはて。それじゃこれを受けて、ノブ君、ゴンちゃん、どうかな?」

「うん、解散しよう」

「だね」

「え?」

 

 今はそんな事はいいか。どうやら自警団は解散する方向で話はまとまった。まあNIROの動きは気になるが、この秘密基地を放棄するだけでも時間稼ぎにはなる。だったらその間に組織をぶっ潰せば、自警団の皆は守れるな。

 

「サラさん、ユウト君もいいね」

「はい」

「ああ」

「ま、待ってください!それは……」

「瑠衣さん、ご安心ください。結局、人間の繋がりは場所や自警団というグループに依存はいたしません。例え、くくりがなくとも、人の繋がりは途切れたりしないのです」

 

 ……あ、そうか。この場所や自警団というグループがあるから俺は皆を大切に思えるのか……。人間はそこに依存しない……けどカゲヤシの俺は……か。解散する事を飲んじゃったけど、もしかしたら俺、皆の事、忘れるかもしれない。

 ……ただ、これで自警団の皆を守れるなら俺が皆の事を忘れても、いいか。

 

「……」

 

 ……?ヤタベさん、さっきからニヤニヤしてね?

 

「ヤタベさん、先程からニヤニヤしていますが、何か、隠してますね?」

「うっ、わかるかい?」

「メイドですから」

「しょうがないなぁ。それじゃ、言っちゃおうかな……実は、すでに第二秘密基地候補の目星をつけてある」

「「お、おぉ~~~!」」

 

 お、おお?どゆこと?

 

「伊達に不動産管理も兼業してないよ。いい場所があるんだ」

 

 ……ああなるほど!

 

「あ、あの自警団は解散するんじゃ……?」

「自警団はね」

 

 つまりはこうだ。自警団は自然消滅、そして別の場所を拠点に別の組織を立ちあげる。まあただの引っ越しだ。NIROの連中が俺達を簡単にあきらめるとは思えないが、奴らの知らない場所をアジトにできるなら皆の安全も保たれる。

 そして俺も、皆の事を忘れずに済む……ホントに良かった。

 

「つまりは、単なる引っ越しだね。それからどうするかは、引っ越してから考えよう」

 

 そうして、自警団についての問題も一応解決して、後は雑談タイムとなる。瑠衣も皆と仲良くなれて幸せそうだ。

 

「ねぇ、ユウト」

「ん、どうした?」

「私、今とっても嬉しいんだ」

「ああ、良かったな。皆に受け入れられて」

「うん!」

 

 さて、これから引っ越しの準備の手伝いでも……ん?

 

「おや、瑠衣さん、ユウトさん、メールですか?」

 

 俺と瑠衣にメールがほぼ同時に来る……内容は……これは、そろそろ事が大きく動き出しそうだな。

 内容は……妖主がこの秋葉原にもうじき到着するというものだった。




独自解釈としてカゲヤシ化すると、人間への関心が薄くなることにします。
主人公が自警団メンバーを忘れられずにいるのは、ほぼ毎日会っているのと、自警団というグループ、及び秘密基地という場所があるから。
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