「はあっ!」
「おっと、中々鋭い蹴りだ……だが、プレッシャーをあまり感じないな」
「くっ……」
「もしかして御堂さんアンタ……カゲヤシ化してないな?」
カゲヤシ化に強い抵抗を持っていた御堂さんのことだ。謎のこだわりがあるんだろう……そういうのは嫌いじゃない……だがな、たかが人間が、カゲヤシに真正面からの戦いで勝てると思うなよ!
「まだですっ!タアッ!」
「勿体ないな、これだけの力を持ちながら、下らないプライドにこだわって……ただの人間が俺に勝てるとでも?」
俺は御堂さんの蹴りを軽く躱してそのまま反撃を叩き込む。
「ぐぅうっ!?……まだ!それにあなたこそ!なぜこれだけの力を持っていながら、人間の敵になる事を……化け物になる事を望んだんですか!?」
「人間の敵?化け物?何言ってるんだ御堂さん」
そろそろだな。このままやっても俺が負ける事はないが時間はあまり掛けてやれん……ちょいと卑怯だが、強引に隙を作らせてもらうぞ。
「カゲヤシは人間との共存を決めた」
「何っ!?いや、そんな噓に騙されません!」
「フン、信じたくなければそれでいいさ。だが、人間とカゲヤシの共存を邪魔をするNIROは……平和の敵なんだよ!」
「……!?」
よし、動揺して動きが止まったな!まあそりゃそうだよなぁ?今まで平和のために戦ってきたっていうのに、自分がその平和の敵になったんだから……動揺するのも仕方ない。
「とりあえずこれで終わりだ!」
「……しまっ、がっ!?」
俺は動揺して隙を晒した御堂さんに近づき、気を込めた重い拳をその腹へと突き刺す。
「同じ師匠の元で修行した者として、最後はこれで決めよう」
「!」
さらに俺は最後に脱衣技を使い、御堂さんの服を脱がす……カゲヤシ化してない御堂さんに意味はないが、どちらにしろもう戦闘に復帰するのは無理だろう。
「ううっ……ぐっ……」
「さて」
「ユウト様」
「お、お前らは……」
御堂さんとの戦闘を終えたところで、末端達がやってきた。……ふむ、そうだな。
「あちらのエージェント、息がまだあるようですがトドメを刺しますか?」
「いや、殺す必要はない……だが、吸血していいぞ。そうすりゃ、もう戦闘なんてできなくなる」
「了解」
俺は末端に御堂さんを吸血するよう命じた……俺が吸えばいいって?ババアの血なんてまずそうやん。
「「ユウト!」」
「瀬那、舞那!来たか!」
「早くアジトに!」
「じゃないとママが!」
「わかってる、急ぐぞ!」
後から来た双子とも合流し、俺達はアジトへ戻る。
「おい、大丈夫かって……一足遅かったか……」
俺達が着いた時、妖主は倒れ伏し、近くに瀬嶋が立っている状態だった。妖主は……息はあるな、死んでない。いや、そもそも確保が目的だから殺しはしないか……だが、追い詰められているのは事実。
「君達か……フン、これだけの手勢で妖主の護衛とは何を考えてるかと思ったが……私をかごに引き込んだ、そのつもりか?」
それを自覚してあの余裕、妖主のあの状態見るに……コイツ、強いな。
「ママから離れろ!」
「おい舞那!迂闊に…」
俺の制止も聞かずに瀬嶋に向かう舞那だが、案の定瀬嶋に一蹴されてしまった。
「うわっ!」
「なんて力なの!?カゲヤシの血の力と言っても普通じゃない……!」
「フッフッフ、私は特別だよ……」
そうして瀬嶋は自分の強さの理由を自慢げに話す……カゲヤシを生体実験に使い、より力を引き出していることを……これは挑発だ。元人間の俺ですら怒りを覚えるその所業に、瀬那は堪えきれず、瀬嶋へ向かって行くが、舞那と同じで軽く一蹴されたしまった。
「お前……許さない!」
「フン、貴様の赦しは必要ない!」
「ぐぁっ!」
「瀬那!」
「フン、時間稼ぎにもならんな。妖主を捕らえて、早々に出て行くさ」
―瀬那視点―
……迂闊だった。舞那があんなにも簡単にやられた時点で、私でも勝てるわけはないのに、コイツの挑発に乗ってしまった……!
「四葉君、君にもう一度だけ、チャンスをやろう……この娘どもを殺し、私達の方へつけ。君は妖主の血を得ている……失うには惜しい人材だ」
そしてあの男はユウトに問う……けど、彼なら……!
「何言ってるんだ?そもそも信用できないな!俺がやる事はただ一つ。お前をぶっ殺し、カゲヤシの未来を守る事だ!」
ああ、やっぱりユウトは……そう言ってくれる……。
「ほう、なら君の友人がどうなってもいいという事かね?」
だが今度は彼の友人を盾に脅してくる……どこまでも卑怯な奴……!
そしてユウトの反応は意外なものだった。
「友人?誰だそいつは知らねえな!」
「……そうか、カゲヤシ化の影響で中身まで化け物に成り下がったか。どうやら説得は無駄だったようだ」
「お前こそなんだ?化け物になってないってんなら、人間気取りか?なら、お前は俺に勝てねぇな」
「……なんだと?」
多分ユウトはさっきの意趣返しであの男を挑発するつもりだ。
「カゲヤシになりきれない、人間であることにしがみ付く中途半端野郎が、カゲヤシとなった俺に……敵うとでも?」
……それじゃあそいつに負けたママもバカにされてない!?い、いや……言葉のアヤねきっと……だよね?
「そこまで言うのなら……私の力を見せてやろう。妖主ほどに万能ではないが、戦闘における能力はそれ以上だ……己の愚かさをあの世で悔いるがいい!」
「かかって来いよ、中途半端野郎!」
そうしてユウトと瀬嶋の戦いが始まる。
最初に動いたのはユウト、私達と戦った時みたいに、瀬嶋へと跳んでいく。
「ムッ!?」
「おらよ!」
そのまま殴りかかるが躱される……けどユウトはそのまま床に拳を叩きつけた……その瞬間衝撃波が発生し、瀬嶋の体を仰け反らせる。
「ほう……私は秋葉で指揮を執っていたからこの街に流れる噂には詳しくてね……」
「あ?」
「気を扱い、とんでもない身体能力を有する者がいる……だったか?まさか君がその噂の奴だとは……本当にもったいない」
「何がだよ!」
もう一回、ユウトは瀬嶋へ向かって行くが、瀬嶋は後ろへ飛び退き、距離をとられる。
「妖主の血を得て、気を扱う特殊能力を持っている……君のような素晴らしい人材を失ってしまうのは、非常にもったいない」
「何……もう勝った気でいるんだよ!」
「私の今までが全力だと思ったのかね?」
「何!?」
瀬嶋がそう嘆いた瞬間、先程よりも速いスピードでユウトへ向かって行く。
「コイツ……!」
「ハハハ!今更後悔しても遅いのだよ!」
「ぐぁ……くそっ!」
パワーもとんでもないもので、完璧にガードしてみせたはずのユウトの体が仰け反る。
「「ユウト!?」」
思わず、私と舞那はユウトに呼びかける。ユウトはこっちに気付いて一瞬視線を向けたが、瀬嶋は私達を眼中にないのか、気にする素振りすら見せない……。これは、ある意味チャンスでは……!
「……舞那」
「何、姉さん……」
「あの男が次にユウトに向かうタイミングで……」
「仕掛ける……わかったわ」
私達が眼中にないのなら……何とでもなる!
―ユウト視点―
くぅ~、結構キツイぜ!いきなり本気を出し始めたと思ったらあの強さ……白服エージェントよりも数段強いじゃねえか!
だが、ここで退いたら男じゃない……って言いたいけど実際、難しいよな。
「そろそろ終わりにしよう!」
そう言って瀬嶋が俺に突っ込んでくる……その時!
「「はああああっ!!」」
そのさらに背後……瀬嶋の四角から双子が飛び出てきて、攻撃を仕掛けた。
「何!?貴様ら……ぐおっ!?」
当然警戒も何もできない想定外の攻撃……さすがの瀬嶋もダメージを受ける……わかったぜ瀬那たちの考えが!
四角からの攻撃を受けたものの、まだ致命傷までには遠い……だがこの隙を逃すこの四葉ユウト様ではない!
「ぐ……貴様らぁ!」
しかも今度は双子の方に意識がいっている……瀬嶋が双子に危害を加える前に俺は瀬嶋の元へと跳躍した。
「お前の相手は……この俺だぁああ!!」
「ぐっ……四葉!貴様!」
もう遅い!俺は両手を構え、掌の先に気を込める……この技は隙が大きいが、今なら放てる!
「食らいやがれ!!」
「がはっ!!」
そのまま両手を相手に向ける……某バトル漫画の有名な技と動きが同じ……名づけるならそう、かめはめ……いや、それとも石破……いや、名前はいらないか!
とにかく俺の必殺技が瀬嶋へ決まり、その体を浮かす……おっと逃がさねえ!
「まだまだ!」
そのまま俺は瀬嶋の服へと手を掛け、一気に脱がす。
「そいでラストォ!」
そして最後に、あの時の爆発で割れたんだろうか、光の射す、割れた窓の方へ瀬嶋を思いっきり蹴り飛ばした。
「!?」
「終わりだ瀬嶋!」
「グアァァァー!!そんな、私の力が……うあぁぁ、体が焼け…る…こ、ここまでだと、いうのか」
「とっとと消え失せな!」
「キタ、ダ……の全てを、私の物に……あと、少しというところで……ぐぅああああああああああ……!」
最後にそう言い残し、遂に瀬嶋は消滅した。
「なんで、アイツ、最後にアタシたちの名前を……?」
「…………」
「瀬島……」
どうした舞那?瀬那も黙り込んで……お、どうやら妖主は立てるほどまでに回復したようだ。
「ユウト、良くやったわ」
まあ、とりあえず戦いは終わったようだな……。
「ママ、残りのエージェント達はこの建物から逃げていった……追撃する?」
「いいえ、深追いする必要はないわ。瀬嶋がいなくなった今、組織はしばらく壊滅状態でしょうから……それに、ちょっと懐かしい人を思い出したわ。もしかしたら、全ての大本を押さえられるかも」
「ママ?」
……全ての大本……最期に瀬嶋が言ったキタダと関連があるのか?
「いえ、なんでもないわ。秋葉原にいる各所の同胞たちにも伝えなさい……戦いは終わったとね」
まずこの戦いは終わり……か。
「それにしてもユウト、妖主の血を得たとはいえ、あなたの力、驚いたわ。何か瑠衣の血との相性があったのかしらね?それとも、その技かしら?」
技とは俺の気を扱う能力を言っているのか脱衣技を言っているのか……。
「……師匠の技かな」
「その脱衣の技を持つ女とは一体何者かしら?」
「そいつ、やっつけておいた方がいいんじゃない?」
「……やめといたほうがいいと思うぞ」
「え、なんで?」
まあ師匠の強さは多分、とんでもなさそうだ……実際に見たわけじゃないが、下僕共にあんなに慕われ、御堂さんがあんない畏まってたの見るに……相当強いんだろうな。
「さて、瑠衣のことだけど、しばらく私達が預かるわ」
と、妖主は話題を変えて、瑠衣の処遇について話す。
「昨日も言ったように、瑠衣は妖主を引き継ぐ存在。私達の種の者、全てを率いてなきゃならないの。あの子にはまだその自覚がないわ」
「そうか……妖主になるための試練でも受けさせるのか?」
「まあ、そんなところよ……あっさり引くのね」
「瑠衣なら心配する必要ないだろう……大丈夫だろ?」
「別にあなたと瑠衣を離れ離れにさせる気はないわ」
……ん、どういうことだ?
「ユウト、もしあなたがよかったら、私達と一緒に瑠衣の試練を助けてあげてくれない?」
「……ママ」
「何、瀬那?」
どうやら俺も一緒に行ってもいいらしい事を聞くが、今度は瀬那が妖主に話しかける。
「私達はこの街に残る。それでもいい?」
「ちょっと姉さん、何言ってるの!?ママと離れたくないよ!」
「舞那、あなたはいいの?ダブプリをこのままで終えても」
「それは……」
瀬那はアイドル活動がホントに好きなんだな……舞那もあの反応……ダブプリは続けたいと見える。
「この街に残れば、残党が来るかもしれないわよ……瑠衣の補佐の為にほとんどのカゲヤシは秋葉原から撤退させるつもりだけれど……」
「それは……」
……そうだな、あの白服のエージェント共のこともある……結局最後まで姿を見せなかったが、この戦いで瀬嶋がやられるのを見越して、戦力があまり減ってないうちに手を引いたのかもしれん。
よし、なら俺がする選択は一つだな。
「なら、俺の出番だな」
「「……え?」」
「ユウト……」
「……アタシ達と一緒に残ってくれるの?」
俺は黙って頷く……そうだよ、俺はダブプリのファンなんだし、これからも二人を守っていきたいさ!
「な、なら……いいかな?うん、それなら……」
「ユウト……ありがとう。君がいてくれると、助かる。ママ、いいでしょ?」
「……血のせいかしらね?そういう、頑ななところとか、よく似ているわ……けど少し惜しいわね、瑠衣にはユウト、あなたが必要かと思ったんだけど……」
お母様は俺と瑠衣をくっつけたいようだな……でも本当に瑠衣は大丈夫だろう……だって。
俺は後ろを振り向く、そこにはアジトに戻って来た優の姿があった。
「よう、こっちも終わったか」
「瑠衣には妹想いのお兄ちゃんがいるしな」
「は?何の話だ……?」
「……フッ、そうだったわね。優、状況は?」
「ん、ああ……とりあえずオレに向かってきたヤツは全員倒した。数は多くて手こずったが統制も失われているしな。エージェント共を掃討するのも時間の問題だろう」
おお、あのエージェント軍団を一人でやったのか!さすがは優だな!
「それじゃあ、瀬那と舞那、ユウトと少数の末端のみ残して、我々はこの街を去るわ……いずれ瑠衣が他の眷族も納得させて、人間との共存が叶ったなら、私も大手を振ってこの街へ来られるしね」
「「ママ!」」
そうしてこの秋葉原で起きた、カゲヤシとNIROの戦いは、一応の決着がついたのだった。
次回
、ゲーム本編部分の最終回。