―AKIBA'S TRIP―   作:ヤマタニ

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 今回でゲーム本編部分終了。


戻って来た日常

「またね、ユウト……絶対、絶対にみんなを納得させてこの街に帰ってくるからね」

「おう、頑張れよ」

 

 俺は今、瑠衣を見送るために駅に来ていた。さっきまでいたけど妖主はもう先に電車に乗り込んでるみたいだな。瀬那と舞那は妖主と少し話しただけで、後は瑠衣なんかの見送りはしたくないとの事で、帰った……姉妹仲は相変わらず悪いな。

 

「優……瑠衣の事を頼むぞ」

「フン、オマエに言われるまでもない……」

「というかお前はこのまま人間との共存路線でいいのか?」

「お袋も瑠衣もその考えってんなら、カゲヤシはそれに従うだけだろ?」

 

 ……これはツンデレなのか、そういう自分の考え方なのか……両方かな。

 

「そうか、まあ一段落着いたらまた会おうな。お前との決着はいずれつけなきゃいけないんだし」

「そうだな……じゃ、あばよ!」

 

 そう言って優は先に行く。

 

「兄さん、変わったね……」

「そうか?俺はもともとそんな奴だと思ってたんだが……」

「まあ、いっか。私もそろそろ行くね」

「ああ」

 

 最後に瑠衣と別れた……よし、俺もまずは。

 

 

「おっ、ユウトお前、無事だったんだな!」

 

 俺は自警団アジトへ来ていた……新しいアジトの方はNIROが潰れたおかげで無用の長物になったしな。

 早速、皆から暖かく迎えられた……やっぱいいいな、ここは。

 

「結局、昨日の駅前での抗争は、ほとんどニュースにならなかったんだよ。でも、今朝の爆破の一件で、もう秋葉原をひっくりかえしたような大騒ぎさ」

「う、うん。でも、ユウトが無事でよかったよ」

 

 確かにヤタベさんの言う通り、あの爆発はヤバかったな……NIROめ、最後にとんでもない事をしでかしやがった。そして安心しろゴンちゃん、俺がやられるわけないだろ?

 

「お茶も出さずに申し訳ございませんが、カゲヤシ達ととNIROの戦いはどうなったのでしょうか?」

 

 俺はサラさん達に、ちょっと隠す部分はあれど、話せる部分は話した。

 

「瀬嶋さんって、そんな事を……僕、どうもあの人を好きになれなかったんだ」

「でも、死んじまったとなるとなぁ……」

 

 やっぱり人間とカゲヤシとでは価値観が違うらしい……俺は瀬嶋をぶっ殺せて気分がいいのに、やっぱ普通の人間、知ってる人の死はやはり堪えるものがあるらしい……カゲヤシになったことを後悔はしてないが、価値観を共有できないのは……悲しいかな。

 

「御堂さんも、無事だといいんですが……」

 

 御堂さんの件はかなりぼかした伝え方をした。戦いに参加させないためとはいえ、吸血して引きこもりにしたからな……だが、あの戦いが終わった後、御堂さんの姿がなかった。あの白服エージェントに回収されたか?それとも……。

 ともかく御堂さんに関しては殺してはいないことと、戦いが終わった後は行方知らずになった事だけを伝えた。

 

「起きてしまった事は仕方ないよ。それよりも人間とカゲヤシが、共存の道を歩み始めたって事実を喜ぼうじゃないか」

「考え方の違う方達を、ちゃんと説得して納得させるなんて、ユウトさんに瑠衣さん、素晴らしいです」

 

 まあダブプリの二人まで加勢してくれたからな……俺がけしかけたようなものだけど。

 

「それで、瑠衣ちゃんは?」

「ん、ああ妖主になるための試練って事で、秋葉原を離れたよ」

「なんだ、ユウト。それで引き下がったのか?俺ならそこが例え二次元だろうが、追いかけていくさ。な、ゴンちゃん!」

「ノ、ノブ君の場合は普段から二次元の世界に行きたいって言ってるけど……ね」

「まあ、俺にはこの街でやらないといけないこともあるしな……実は、就職が決まったんだ」

 

 俺がそう言うと、皆が驚く。そりゃそうだよな。大学行くのは諦めて、就職するってんだから。

 

「そ、そうなのかい?」

「え、ど……どんな仕事なの?」

「よくぞ聞いてくれたゴンちゃん!多分ゴンちゃんは驚くだろうけど聞いてくれ……!」

「ぼ、僕が驚くような……?」

 

 そうだ、ゴンちゃんはダブプリのファン。これは驚かれるに違いない。

 

「俺、ダブプリのマネージャー兼ボディーガードになったから」

「なっ、ななななななん、何だって!?」

「ゴンちゃん、落ち着くんだ!で、どういう事だユウト?」

 

 俺はダブプリがこの街に残ってアイドル活動を続ける事、NIROの残党から二人を守るためにこの街に残る事にしたことを話した。

 

「というわけだゴンちゃん……ダブプリは俺が責任を持って守ってやろう!」

「う、羨ましいけど……確かにユウトならダブプリを任せられるね、うん」

「ユウト君も遂に仕事を……何だか、嬉しいよ」

「父親みたいですよ、ヤタベさん」

 

 というわけで俺の少し変わった日常が戻ったのだった。

 

 

 数日後、ダブプリのライブを終えた瀬那、舞那と一緒にカゲヤシのアジトへ戻って来た。

 

「よーし!今日のライブも絶好調~!」

「ちょっと待って舞那。最後の曲、キー外したよね?」

 

 いつも明るい舞那と、冷静でプロ意識の高い瀬那……今やこの二人と一緒にいるのが当たり前の日課になっていた。

 

「うぐっ……で、でも……みんな盛り上がってたし」

「…………」

「ご、ごめん……」

「後で練習ガッチリ。いい?」

「は~い」

 

 そんなやり取りをみて思わず笑みが漏れる……こうしてみると、やっぱ普通の女の子なんだなって。

 

「それに引き換え、ユウトは私達のライブのセッティングからスケジュール管理まで……本当に助かるよ」

「うんそれそれ!ユウトがいればメジャーデビューも夢じゃないね!」

「そうか?まあ褒められるのは大好きだからどんどん褒めてくれて構わんがな!フハハハハハ!」

 

 そう言ってみんなで笑いあう……自警団も居心地がいいが、こんな時間も悪くない。

 

「ユウト、ありがとう。ママも助けてくれて、そして、私達の味方になってくれて」

「どうした改まって」

「考えてみたら、ちゃんとお礼を返してなかったから……だから、ね」

 

 そう言って瀬那は少し俯き、考えるような仕草をしてから、もう一度俺の方を向く。

 

「明日は確かオフ、か……ユウト、用事は?」

「空いてるぞ」

「じゃあ明日、遊びに行こう。二人だけで」

 

 おー、デートの誘い……って二人だけ?

 

「えーえーえーえー!?な、何で二人っきりで!?アタシは!?」

「舞那は練習しているように。さっきするって言ったよね?」

 

 案の定舞那が文句を言うが、瀬那も引かない。

 

「え……えー!?練習は今日の夜にちゃんとやるから大丈夫だよ!……アタシも行くッ!」

「…………」

「絶対行くのっ!!」

 

 本当にお前六十歳かよという野暮すぎる突っ込みが出そうになるのを我慢する。ただ、この駄々をコネる行為で、瀬那も観念したようだった。

 

「……しょうがない。ユウト、舞那もいい?」

「ああ、問題ないぞ」

「やったっ!……えへへ」

 

 まあ一人だけ仲間外れも可哀そうだし、俺は俺で両手に花で役得だしな!

 というわけで、二人と明日のデートの約束をした。

 

 

 ―瀬那視点―

 

「あ、あれはユウトかな」

「え、ちょっと、早いって!アイツいつも遅れるのにぃ」

 

 次の日、私と舞那は待ち合わせ場所でユウトを待っていた。ちなみに秋葉原ではなく、別の街だ。

 私達は秋葉原内での知名度はかなり高いけど、他の街でならまだそうじゃない……だから、変な噂も立たないし。

 まあ、噂が立ったんなら立ったで……良いんだけどね。

 

「大丈夫、もう十分かわいいよ。気にするといつまでたっても……」

「だから十分じゃダメなんだって!一番じゃなきゃぁ~!」

 

 ユウトが来て、慌てて、身だしなみのチェックをする舞那。ホント、この子は……。

 

「……ちゃんと出る前にしてきたら良かったのに……寝坊するから」

「もー、それアイツに言ったら怒るからね!」

「わかってる」

「そもそも姉さんが起こしてくれないから……」

 

 舞那がそう言ったところでユウトが到着する。

 

「……舞那、来たよ」

「お、待たせたな!」

「え、えぅぁっと……!……あっユウト、おはよう。きょっ、今日は、よろしくなっ……」

「なんでぎこちなくなっているんだ?」

「さあね、さてそれじゃ……」

 

 私とユウトはそんな舞那の姿をみて笑いあう。そして……。

 

「「さあ、行こう!」」

 

 こうして私達とユウトの……デ、デートが始まった。

 

 

 ―ユウト視点―

 

「ねぇユウト、そういやアタシ達の私服の感想聞いてないなー!」

「そうね、ユウト……どう?」

 

 そう言って二人は改めて俺に正面を向けて、服を見やすいようにしてくれる。

 ここで女の子の服装を褒めるのはデキる男の証……ちゃんと褒めてやろう!

 

「うん、二人ともすごく似合ってるよ。可愛いと思う」

「うんうん、そっかー……じゃあ、アタシと姉さん、どっちの方が良い?」

「な…なにぃ!?」

 

 ヤバイ……ヤバいぞコレは……どっちを選んでも、選ばなくても、俺には地獄しか待っていないような質問は……!

 

「舞那、ユウトが困ってるでしょ」

 

 お、瀬那ナイス!このまま話を逸らして……。

 

「姉さん、自分が選ばれないって思うのがそんなに怖いの?」

「…………」

 

 って今の発言で瀬那俯いちまったぞ!?

 

「ね……姉さん?ごめん、冗談だよ!だからそんな怒らないで……ね!?」

「……大丈夫舞那。別に怒ってない」

 

 ……怒ってないけど、何か……悲しそうっていうか……なんというか。

 ただそれでもその後はまた楽しい雰囲気が戻り、デートが再開される。

 

 

「ふ~、歩き疲れた、歩き疲れた!ねね、そこの公園で休もうよ!」

「確かにな……休もうか」

「そうね」

 

 いったん街を見て回った俺達は、静かな雰囲気の公園に来ていた。

 

「お、確かに休めそ……舞那どした?」

「あ、いや……ちょっとお…おと…」

「トイレか?」

「ちょっと!?そういうこと言わないの!!」

「いいじゃないか。無理しないで行ってこい。俺と瀬那は待っててやるから」

「……うん」

 

 そう言って舞那はトイレへと向かって行く。

 

「さて、瀬那は大丈夫なのか?」

「私は……大丈夫」

 

 ……やっぱ少し様子がおかしいな。

 

「……何か、悩み事か?」

「……君には、関係……あるから話しにくいんだよ……」

「……何も聞かない方が良いか?」

「…………」

 

 瀬那は俯いたまま、黙ってしまうが、数秒の沈黙の後、再び口を開く。

 

「ユウトは……舞那の事、どう……思ってるの?」

「舞那?まあ可愛い奴だなとは思うけど……」

「…………」

「瀬那も、もちろん」

「わ、私まだ何も言ってない!」

 

 いや、どう考えてもそっちが本命だろう。自分の事をどう思ってるか聞きたいんだろうが、恥ずかしくて聞けないのか?

 

「…………」

「なあ瀬那、俺はどっかのラノベ主人公みたいに鈍感野郎じゃないからさ……お前の気持ちは分かってるつもりだよ」

「……じゃあ、舞那や……瑠衣の気持ちだって、知ってるはず、だよね?」

「………まあな」

 

 そりゃあな、皆あんなに俺に懐いちゃって、まあイケメンの俺がモテるのは当然の事なんだがな!

 

「ユウトは誰がいいとか……ないの?」

「ん?じゃあみんな好き!……って、そんな答えを求めてないな」

「うん……ねぇユウト。私は舞那の事を大切な妹として見てる……」

「ああ、知ってる。お前、長女だけあって面倒見良いからな」

 

 リーダーシップもあって、次期妖主は瑠衣なのに、能力や気質的には瀬那の方がリーダーに向いているよな。

 

「だから、もし舞那とユウトがそういう関係になっても祝福するつもりだった……けど」

「けど?」

「さっき、舞那から自分が選ばれなかったら怖いって聞かれて……それでもし舞那を選んで私が一人になったら……その……」

 

 なるほど、それで少し落ち込んでたのか。

 

「ごめんユウト!私、変だよね……こんなこと考えて……しかもこうやって舞那がいない時にこんな話をして……まるで舞那を出し抜いてユウトに近づこうとしてて……私、最低……だよね?」

 

 …………何、この……何?この、可愛い生き物は!?

 

「ユウ……!?ユウト!?」

 

 俺は我慢できずに瀬那を抱きしめる。

 

「あーこんな可愛い事言ってよぅ……可愛いじゃねえかチクショウ!」

「で、でも私なんて……それに舞那や瑠衣の方がきっと…」

「あの二人は俺がついてなくても幸せになれるよ」

 

 瑠衣は人間との共存に向けて希望ある一歩を踏み出してるし、舞那は……あんなに明るい子だ。

 

「だけど瀬那は違うだろ……」

「え……?」

「瀬那は誰かが幸せにしなくちゃいけない……なら俺が幸せにしないと……あー、間違えた。俺は、瀬那……お前を幸せにしたい」

「……ユウト!」

 

 ついに瀬那は涙を流し、俺を抱きしめ返してくれる。

 ……しかし、今の俺の告白はすっごく決まったと思うぜ!「お前を幸せにしたい!」……うわっ、俺の口説き文句、カッコ良すぎ……?いやー、自分が恐ろしいぜ!

 

「ユウト……ユウト……私、私……!」

「おいおい、いつまで泣いてるんだ?」

「う、うん、ごめん……よし、もう大丈夫」

 

 そうして俺の腕の中で瀬那は顔を上げ俺を見つめる。

 

「これからよろしく、ね……ユウト!」

 

 泣いていたせいで少し目が赤くなってたけど、それでも俺の彼女の笑顔は最高に可愛かった。




 次回から後日談編その1始まります。
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