本編の続きみたいなもの
瑠衣との再会
「……ノブ君も随分人を扱き使うようになったな」
俺はそう嘆きながら秋葉原を歩く。
今日は瀬那や舞那が用事あるそうなので、自警団のアジトにでも行こうかと思って連絡したら、ノブ君からエロゲ買ってきてとのお願いだ。金は立て替えくれるからとはいえ……。
「メイド喫茶ワルプルギスでーす!メイド喫茶ワルプルギスです!よろしくお願いしまーす!」
遠くでメイドがビラ配りをしているのが見える。これを見ると、もう完全に秋葉原がいつもの日常に戻ったのだと再確認する……まあ当然か。
「あれから三ヶ月経ってるもんな……」
そんなことを思いながら歩いていると、先程のメイドの近くまで来たらしい。そのメイドからチラシを渡され、反射的に受け取る。
「ご主人様、ありがとうございます!」
そういやこの声、瑠衣に似てるな……なんて思いながら、顔を見上げ、メイドの顔を見る。
「…………あぇ?」
「……あの、何でしょう?私の顔に何かついてますか?」
そこにいたのは間違い無く瑠衣で、なんというか、期待に満ちた視線をこちらに向けていた。
ふーむ、どう声を掛けるべきか……よし!
「君、可愛いね」
「……あ、ありがとうございます!」
瑠衣は凄く嬉しそうな表情をしている……さて、どう来る?
「実は……そう言われるのを待ってたんだ。……えへへ。あの、似合ってる、かな……?このメイド服」
「ああ、めちゃくちゃ可愛い」
「ありがとう、ユウト。実はコレ、サラさんに頼んで、キミが好きそうなのにしたんだよ」
となると今日ここに瑠衣が来ることサラさんは知ってたな?
俺が何か考えてるポーズをとっていたためか、瑠衣が不安そうに訊いてくる。
「あれ?ひょっとして、わかってない……?わかる……よね?」
あ、そういえばまだ瑠衣だって気付いてないと思われてるんだった……ここまでくるともうちょっとからかいたくなってくるのは俺の悪いところだろう。
「あー……うん、知ってる……えーっと、師匠だ!!」
「違うから!!」
「ごめんごめん、冗談だって……久しぶりだな、瑠衣」
俺がそう言うと、瑠衣は安堵したのか、穏やかな笑顔を作り、俺に微笑みかけてきた。
「……えへへ、久しぶりだね、ユウト。ちょっと恥ずかしかったけど、ユウトをビックリさせようと思って、待ってたんだ」
そう言って瑠衣は経緯を簡単に説明してくれる。
どうやら全部は終わってないようだが、一応今は一段落って事らしい。
「それで真っ先にこの街に来たんだ。……ユウト、会いたかったよ」
「ああ、お帰り、瑠衣」
「ただいま、ユウト。あっ……ただいま帰りました、ご主人様……なぁんちゃって。あははは」
茶目っ気を見せる瑠衣の姿は可愛らしいものだった。
「ねえ、ユウト」
「ん、どうした?」
「また遊んで、笑って、生きていける……キミと一緒に、この秋葉原で……それが、すっごく嬉しいんだ。昨日なんてこの街に行けるって考えただけで全然眠れなかった」
遠足を前にした子供みたいだな……。
「だから、その……なんて言ったらいいかわからないけど、とりあえず……また、よろしくね!」
「ああ、よろしく」
そうして瑠衣はさっきまでの仕事が、ほとんど俺と会うためだけのものだったのか、すぐ切り上げる。
「この街ってまた変わったみたいだから案内してよ、ユウト」
「そうか、わかったぜ。自警団の皆も会いたがっているだろうからな」
「うん、じゃあ着替えてくるね」
瑠衣はさっさとメイド服から着替えて、いつもの服装で来る。
「さすがに街中をメイド服姿で歩き回るのは……ね」
「まあサラさんじゃあるまいし」
あの人はマジであれが自然体だよな……ともあれ、久し振りに瑠衣と会ったのだし、自警団の皆と会わせるいい機会だ。
だが少し歩いたところで急に瑠衣が立ち止まった。
「あ……あの、ユウト!」
「……なんだい?瑠衣」
俺も立ち止まって振り返り、瑠衣の方を見る。
「そ……その、ユウトに伝えなきゃいけない事……ううん、伝えたいことがあるの……!」
そう言った瑠衣の顔は赤く染まり、まるで今にでも湯気が出そうなくらいになっていた。
……え、まさかそういう事か?そういう事なのか!?
「私、ユウトと、キミと離れてから……ううん、その前から思っていたことかもしれない。だってこの三ヶ月の間、ユウトと会えなくてすっごい寂しかった」
「……ああ」
「それで思ったんだ……ユウト、私は……私は!キミの事、好きなんだって、大好きなんだって!……えっと、だから……その……」
あー、来てしまったか。瑠衣も俺の事好きなのは知っていた……だが今は……。
「えっと、その…………ユウト?どうしたの、そんな難しい顔をして」
「え、いや別にそういうわけでは……」
「も、もしかして……迷惑、だった?」
「いやいや、そんな事ないよ。可愛い女の子からの好意を喜ばない男なんてほとんどいないよ」
「か…可愛い?えへへ。そっか……」
お、この表情可愛い……じゃなくて!俺にはもう……いや、訊いた方が早いな。
「瑠衣、自警団アジトに寄る前に行きたい場所ができた。付いてきてくれ」
「え……ユウト!?」
俺は瑠衣の手を取り、その場所へと向かう。
その場所とは……瀬那たちの住む家だ。どうやらこのマンションはカゲヤシ達が住んでいて、その一室に彼女たちも住んでいる。
「え……ここって姉さんたちの……」
さすがに瑠衣も知っているようで、俺がここに連れて来たことに対して戸惑っているようだった。
「まあ一応瑠衣が来たことを伝えておいた方がいいだろう」
「え?いや、その必要は……」
俺は瑠衣が言うよりも早く、インターホンを鳴らす。暫くして、瀬那が出てきた。
「ユウト、どうしたの?」
「瀬那、瑠衣が帰った来たんだ」
「うん知ってる」
「……あれ?」
「だから必要ないって言ったのに……」
隣にいた瑠衣がそう嘆く……もしかして……!
「もしかしてサプライズってヤツなのか!?」
「そうね、ママが昨日連絡寄越してきて、ユウトには秘密にするよう言われてたし」
「ごめんね?ユウトを驚かせたくて……」
「まあ、それはいい……それよりも瀬那に訊かなきゃならん事がある」
そう言って俺は瑠衣の顔を一瞥してから瀬那の方を向く。
「……瑠衣に告白されたんだけどどうすればい?」
「なんで姉さんに報告を!?」
瑠衣は驚いたようだが、瀬那は暫くして、堪え切れなくなったのか、笑い出した。
「フフ、やっぱりね」
「やっぱりって……もう完全に俺の行動見透かされてんな」
「ユウトだからね」
気持ちが繋がってるみたいで嬉しいが、今はその事じゃない。
「で、どうすりゃ……」
俺が訊くよりも早く、瀬那は瑠衣に言う。
「瑠衣、今日はあなたがユウトの相手をしてあげなさい」
「え……?」
「ユウトも、甲斐性あるんだから、瑠衣の事も考えてあげなさい」
まあ甲斐性はもちろんあるが……。
「何か意外だな。舞那の時はともかく瑠衣もそんな感じでいいのか?」
「ユウトはカッコいいでしょ?なら仕方ないんじゃない?好きになっても」
「お、まあ確かにカッコいいから仕方ないのか!そうだったな!」
俺がモテるのは当たり前だったか!当たり前すぎて忘れてたわ。瀬那もどうせ瑠衣の気持ち知ってたから、折り合い付けたんだろう。
「じゃ、楽しんできなさい」
「おう」
そう言って俺は瑠衣と一緒に改めて街へと繰り出す。
「えっと……ユウト、どういう事なの?」
瑠衣はいろいろ鈍感だからな。さっきの会話で気付かなかったか……まあ、教えた方がいいか。
「瑠衣、俺は瀬那と舞那、二人と付き合ってんだ」
「付き合ってる……?え!?付き合ってる!?」
「うん」
「しかも二人!?」
「ああ」
そう言って何か考え込む瑠衣……。
「じゃ、じゃあさっき姉さんが言ったのって……」
「俺が瑠衣とも付き合っていいという事さ!」
「……コレ、いいのかな?」
「俺がモテるから仕方ないのさ」
俺は瑠衣の頭に手を置き、そっと撫でる。
「瀬那は俺が皆を幸せにできる男だって信じてくれてるし、瑠衣だって俺と付き合いたいんだろ?ならいじゃないか」
「……まあ、いいの、かな?」
「そうそう、じゃ、皆の所行こうぜ」
「うん」
俺は瑠衣と手を繋いだまま自警団アジトへと向かう。
「というわけで俺様、帰還!」
「お、来たな。瑠衣ちゃんも久し振り!」
「やっぱりエロゲ買わせたのはそのためだったか」
まず瑠衣がサラさんに俺が好きそうなメイド服を着せ、そして俺と瑠衣が鉢合わせするように、俺にお使いに行ってもらうと……自警団も知ってたな。
「どこまで俺を驚かすために用意周到なんだ」
「えへへ、ごめんごめん。ユウトに会うなら折角だからって……母さんが」
「妖主が首謀者かよ!?」
何してんだあの人!あれか?俺と瑠衣の劇的な再会を演出することで、仲を深めようって魂胆か?まあ、瑠衣も告白を果たしたし、関係が前進した事は確かだが……。
「まあいいや、はいノブ君エロゲ」
「お、サンキュ……しかしもうあれだな。ユウトはリアル彼女いるからエロゲの世話になる必要ないんだな」
「お、まあな!確かに俺はもうあの二人としっ……」
「そんな事僕の前で言わないでよぉ!?」
「あ、ゴンちゃん……まあそのなんだ……悪いな!」
「あーあばばばばばばばばっばばっばば!」
またしてもゴンちゃんが壊れてしまう……仕方ないんや、俺がイケメンすぎるのが悪い……恨んでくれて構わない。
あの二人とだが……まあ付き合ってから大分経ってるし、ヤることはヤってる。まあ詳細を話したらいろいろと引っかかるから言わないでおこう。
「しかしもうあれから三ヶ月か……もうすっかり平和になったな」
ノブ君の言う通り、もう毎日が穏やかな日々が続いている。最初の一ヶ月は警戒を怠らなかったが今は完全に緩んでしまっている。まあ仕方ない、この平和なんだから。
だから忘れてしまっていた……いや、頭の片隅にはあった。だがNIROが滅びてから動きがなかったせいで、一緒に活動不能になっていたと思い込んでしまっていたのだ。
……あの白スーツのエージェント達の存在を。
カゲヤシ瑠衣ルートのエンディングを弄った感じにしてます。