アジトへ戻った俺達は早速妖主へ連絡をとる。
駅前で起こった事を伝えるためだ……だがあの事はネットで配信されており、妖主も既に掴んでいた。
『新生NIRO……奴らから連絡が来たわ……瑠衣は預かっている、返してほしくばカゲヤシの主力たちを秋葉原に集結させろってね……』
それだけでなく妖主に既に連絡を入れており、瑠衣がやはり奴らの手に渡っている事も明らかになった。
それと組織のトップ、駅前で演説してた奴の正体は妖主が知っていた。どうやら引きこもり化計画で全国を転々としていた際、妖主を追跡していたエージェント共の指揮を執っていた男らしい……名を、
「たぶん今のあの新生NIROには自信がある……実際あの白スーツのエージェント共は以上に高い身体能力を持っているからな……秋葉原にカゲヤシを集めて一網打尽にする算段だろう」
『ええ、でも私達が秋葉原へ来ないなら……』
「瑠衣に何されるかわかったもんじゃない……」
『奴らは三日の猶予を与えたわ……それまでに来ないのなら瑠衣の命は無いと』
クズ共が……ホントにNIROってのはロクでもない組織だな。宣戦布告のつもりかよ。だが正面切って戦うにはこちらの分が悪すぎる……。
「せめて瑠衣のいる場所さえわかれば助け出せるんだけどな……」
『今秋葉原では一般人に判別機なるものが配布されているのでしょう?』
「ああ、だから下手に街を出歩く事すらできない……多分アキバ内に奴らの拠点があるはず……」
じゃなけりゃ秋葉原を決戦の地にはしない……別の街に拠点があるのだとエージェント共にも不利だからな。今のNIROはエージェント単体の戦闘力は厄介だが恐らく独自の組織。国はバックに付いていないし、公的機関と協力なんてできやしない。規模としては前のNIRO程じゃない。
だがなぜ秋葉原に拘る?カゲヤシがここで引きこもり化計画をしていたのは複雑な街の作りと多種多様な人種が集まる事でできる潜伏のしやすさだ……エージェント共はそれを追っかけただけ……なのか?瀬嶋は次期妖主が秋葉原にいると踏んでいたから留まっていた。では今のNIROは……?
「ユウト、確かにわからない事だらけだけど今はするべき事がある」
「……そうだな。作戦を練ろう」
『我々もそちらへ向かうわ……罠だとはわかっていても瑠衣を……』
「ああ、気を付けてくれ」
そうして妖主との会話を終え、今しなきゃいけないことを考える……が、正直言ってかなりまずい状況だ。
「ユウト、姉さん、秋葉原のカゲヤシに被害が出始めた!」
「くっ、やはりか」
秋葉原の一般市民にカゲヤシ判別機が渡った以上、少なくともこの街においてアイツ等は絶対的な監視の目を持ったことになる。
「奴らの拠点や瑠衣の囚われてる場所を探すにしても……」
「自警団のみんなは?彼らならカゲヤシじゃないから……」
「いや、自警団は元々NIROに協力させられていた……奴らが知らないという事は無い。自警団の皆に危険が及ぶ……くそ、どうすれば……」
……そういえばNIROはこのカゲヤシのアジトも知っている……ヤバいな。
「ユウト?」
「もしかしたらここは危険かもしれん……どこか、身を潜める場所を……あ、そうか!」
「どうしたのよ?」
「NIROが把握していない場所がある……自警団の第二秘密基地だ」
俺は携帯で早速ヤタベさんに連絡をとることにする。
『もしもし、ユウト君かい?今大丈夫なのかい?』
さすがはヤタベさん、声色に俺を心配してる感じがする時点で駅前の件は知っているらしい。だったら本題から入って良いな。
「はい、それでですねヤタベさん、今自警団の第二秘密基地は使えますか?」
『……なるほど、鍵は私が管理してるから我々も向かおう。場所はジャンク通りの…』
俺はヤタベさんから新秘密基地の場所を聞き出す。
「わかりました。では後程」
『エージェント達に気を付けるんだよ』
「はい」
そうして通話を終える……よし、今ここで三人だけで唸ってても何も出ない……自警団を危険に巻き込ませない範囲なら協力してもらおう。
「ここか……」
なんとかエージェント共の監視から抜け出し、俺達は秋葉原自警団の第二秘密基地の場所まで来た。
「お、鍵が掛かってる……」
「悪いが合言葉……じゃなくて、質問に答えてもらう」
扉からノブ君の声が聞こえてきた。
「ちょっ……これどういう事よ!?ユウトは聞いてる?」
「聞いてないが……ここは答えるしかないようだな」
ノブ君の質問ね……なら問題ないだろう。
「ITウィッチ まりあの主人公であるまりあの声優は?」
「新谷光子、二十三歳の新人声優ながら高い演技力と1/fゆらぎを持つ天性の癒し系ボイスを持ち、その高いポテンシャルにより国内のみならず海外にさえ多くのファンを抱える秋葉原声優学校卒の、次世代の声優業界を担うメシア!!」
「……で、あるが、その出身地は?」
「青森県であり、これに関連して声優になると言って家出同然で上京し、貧乏生活を送りつつ夢を追った。彼女の人生が市谷まりあの境遇に重なるとして、声優のオーディション時に有効に働いたとされている!!」
「……パーフェクトだ、我が同志!」
そう言って扉は開く。
「さすがはユウト!お前ならばこの程度の質問なんて朝飯前だったな!」
「もちろんだともノブ君!」
「「なっはっはっはっは!」」
俺とノブ君は二人して笑いあう……やはり自警団は良い。
「お帰りなさいませ、ご主人様、お嬢様」
「ようこそ、秋葉原自警団の第二秘密基地へ」
「ユウトも、ダ、ダブプリの二人も無事でよかったよ」
皆から迎えられ、秘密基地へ足を踏み入れる……かなり広いな。
「君達も無事だったようだな」
「えっと、お久しぶりです。ユウトさんに瀬那さん、舞那さん」
「マスターと鈴か、確かに久しい感じがするな」
この二人もカゲヤシだから自警団が保護しつつ、ここに招待したんだな。さすがはヤタベさんだ。
そして集まった俺達は現状とこれからについて話し合う事になる。
「瑠衣ちゃんがさらわれた……?」
「そうだ鈴、今瑠衣はあの新生NIROとかいう連中の手の中……しかも瑠衣を餌にカゲヤシを秋葉原に集めようとしている」
「つまりはNIROとカゲヤシの決戦が再びここで起きようとしている……怜が混乱を最小限にしようとはするはずだが……」
「ああ、三ヶ月前は結局ほとんどニュースにならなかったのもあって大きな混乱はなかった……だが今のNIROはバックに何もないから全部が表沙汰になる」
そうなってしまえば秋葉原は世間から徹底的に叩かれる街になってしまう。
「しかもその新生NIROって一般人を自分達から巻き込んでいるんだろ?わざわざ判別機を配ってたみたいだし……マズくね?」
「そ、そうだね……もしこれ以上みんなに危害が及ぶことになったら……」
「困りますね……メイド業界に大きな亀裂が入るかもしれません」
「自警団としては見過ごせないけど……これはねぇ……」
やはり難しい問題だ……何もしないのはもちろん、何かしようとしても大事になるのを避けられない。向こうが巻き込んでいるんだ……もう後戻りは……ん?
「そうか!」
「どうしたんだいユウト君?」
「こっちも巻き込んじまえばいいのさ!」
「巻き込むって……この街の人達をか?もっと大きな騒ぎに……いや、そうか!」
「さすがだノブ君!俺の意図に気付いてくれたか!」
「ああ、この街で起こる事件……いや、『祭り』はこうでなくちゃな!」
そう、向こうも巻き込んでんだ……こっちだって皆を巻き込んじまって、もっと大きな……『祭り』にしてしまえばいい。世間からの風評は知った事か。この『祭り』に参加した奴が満足するなら秋葉原も安泰さ!
「えっと、どういう事か説明してもらえる?」
「ああ、もちろんだ瀬那。じゃあ具体的な作戦を説明するぞ……まず奴ら……新生NIROの一番厄介な手が秋葉原の一般市民を使った監視網だ。こいつらに事情を全部話し、NIROを裏切ってもらう」
「全部話すの……?信じてもらえないんじゃ……」
「何、もうNIROがいろいろ喋っているんだ。信じるのは無内容じゃなくて、俺達かエージェント共の言う事か……そのどっちかさ」
もしこれが上手くいったら奴らは監視網を失う……それにだ。
「そうして一般人たちにNIROの拠点を探させる……カゲヤシや自警団は動けないからな。もちろん、俺達も隠れて行動はするが、メインはこの街にいる人達だ」
さて、クソのNIRO……この秋葉原で、俺達がお前たちに引導を渡してやる!
ノリは共存ルートっぽいかも。