―AKIBA'S TRIP―   作:ヤマタニ

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作戦前夜

「ぽつりに情報は?」

「流したよ……でもこれ、騙してるみたいでなんか……」

「何言ってるんだゴンちゃん、別にライブをするのは本当なんだ。騙してはいないさ。それにゴンちゃんも見たいだろう?ダブプリのライブ」

「ま、まあね」

「おいおい、この劇場版ITウィッチ まりあの方も忘れるなよ?」

「大丈夫だってノブ君、こっちはスクリーンにプロジェクターで…」

 

 俺達は作戦を開始するに当たっていろいろと準備をしていた。まずはあいつら……一般市民に事情を伝えるため、人をここに集める必要がある……その為にアニメ映画とアイドルのライブでオタクを釣る事にした。

 

「こっちの機材はこう置くんだ。もう少し中央に寄せろ」

「あいよ……って、お前手慣れてんな」

「まあ、ここにいた頃はライブハウスのオーナーしてたからな」

 

 そうそう、妖主が一足先に優を送ってくれた。連絡きた時はびっくりしたが、とりあえず準備を手伝わせている。

 しかも手際が良い。これならいろいろと余裕もできる。

 

「しかし素直に言う事聞くじゃないか?優」

「別に、瑠衣が攫われたのはオレがいない時だったからな……さすがに責任は感じてんだよ」

「…………シスコン」

「あぁっ!?ふざけた事言ってんじゃねえぞ!!」

「別にいいじゃないか……俺もシスコンだぞ」

「聞いてねえんだよそんな事は!」

 

 あー、なんか優とも久しぶりに話せて満足してるなー俺。

 

 と、そんなこんなで準備を完了した俺達。後は集まってくれるかだが……。

 

「き、来ましたよ!」

 

 お、外を見張ってた鈴が帰ってきた。ふむ、来たか。

 

 

「すごいね……よくこんなに集まったもんだ」

「まあダブプリのライブはぽつりだけじゃなく一応公式に宣伝しといたから、熱心なファンはまず集まりますよヤタベさん」

 

 集まった顔ぶれを見る……うん、やっぱ雰囲気違うから困惑しているか。

 まあ、ちゃんと映画もライブもやるから安心したまえ。

 

「さて、集まってくれた諸君たちに話がある」

「な、なんだ?ダブプリのライブは!?」

「ITウィッチ まりあの劇場版は!?」

「よくわかんない組み合わせによくわからん場所……騙されたのか!?」

「けどダブプリがいるぞ!」

 

 おー、おー、ざわついてるねぇ……まあまずは事情を説明するか。

 

「まあ落ち着いてくれ。俺はぽつりでも活動している幸せクローバーこと四葉ユウトだ」

「あ、知ってる。いつもいきなり来てウザイ自慢話をする人か」

「しかもウザさもあのアホのサカイ程じゃないから地味なんだよなぁ」

 

 やかましいわ!……いや、ここで俺が切れては作戦が台無しになる。

 

「とりあえずちゃんと映画もライブもやるから安心してくれ……だが、その代わりに君たちに頼みたいことがある!」

 

 そして俺は事情を話し始める。カゲヤシの事、NIROの事、三ヶ月前の戦いの事を。

 

「信じられない話かもしれんが……事実だ」

「確かに到底信じられないような話ではあるよな」

「だが、これが本当なら三ヶ月前の爆発騒ぎも説明できる」

「それに秋葉原に流れる噂や都市伝説に合致するのも多い……」

「それにここは秋葉原……何が起こっても不思議じゃない」

「むしろそうであってほしい……」

 

 オイ誰だ今そうであってほしいとか言った奴、物騒だぞ。

 

「今、秋葉原は未曾有の危機と言っていい。新生NIROとかいう連中が一般人を巻き込んでまで暴走している……このまま奴らを放置したらきっと秋葉原は変わってしまう……当然悪い方にだ!」

「んな事言ってもな……」

「どうすれば……」

「そこで君たちに頼みたい!恐らくこの秋葉原内に奴らの拠点がある……それを探し出してほしい!」

 

 俺の言葉にざわつきがさらに大きくなる……だが困惑の声の中に、肯定的な意見もあった。

 

「奴らは白スーツを着ている……そいつらが多く出入りするような建物……おそらくそこが奴らの拠点だ!だが、俺達は奴らに監視され、下手に動けない……どうか力を貸してほしい!」

「私達からも頼む」

「そうそう、アタシ達のファンなら、いう事聞きなさいよね!」

 

 ダブプリも加勢してくれる。彼女らが人間じゃない事は彼らに衝撃を与えたものの、割とすぐ順応した……さすがは熱心なファン、といったところか。

 

「よし、これを見てくれ」

 

 俺はPCを操作してプロジェクターからスクリーンにある画像を見せる。

 

「この子は文月瑠衣。ダブプリの妹でカゲヤシの次期妖主だ。彼女が新生NIROに攫われ、囚われの身になっている……はっきり言うぞ、駅前で変な演説してた怪しい奴と、可愛い女の子……どっちを信じる?」

「そりゃあもちろん可愛い女の子だぜ」

「だな」

 

 お前ら即答かよノリ良いな!

 

「だったらやる事は決まっているだろ?奴らの拠点探し出して、瑠衣を助け出すんだ!今こそ俺達の力を合わせる時だ!」

「「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおーーーーーーーー!!!」」」」」

「何か不純な動機じゃない?」

 

 男共は釣れたな……まあみんな協力する気はあるみたいだ……よかった。

 

「けどよ、もしNIROにバレたらみんなに危険が及ぶんじゃね?」

「安心しろノブ君、一応カゲヤシが何人か紛れて護衛につかせる……が、確かに戦力はもうちょっと欲しいかもな……」

 

 ふむ、それにカゲヤシは護衛というよりもこいつらの監視だ。もし裏切るようなら覚悟してもらわんと……だが、そのカゲヤシを守ってくれる戦力が欲しいな……。

 そんな俺の願いが通じたかどうかはわからない……だが、いきなりこの秘密基地内に声が響いた。

 

「戦力ならあるわ」

「だ、誰だ!?」

「まさかこの声……」

 

 俺はこの声に物凄く聞き覚えがあった……そう、この声は間違いなく……!

 

「師匠!」

 

 俺は扉の方へ顔を向ける。そこにはスタイルの整った女性と変態的な格好と能面を付けた下僕がいた。間違いない、直接顔を会わせた事は無いが彼女のまとう雰囲気が、何より一緒に連れている下僕が……彼女が師匠だという事の何よりの証だった。

 

「はぁい、ユウト。久しぶりね……」

「お久しぶりです師匠……よくここがわかりましたね?」

「ええ、私のチェリーレーダーが強く反応しちゃって、何かあると思って、ね」

 

 最強戦力じゃないか!

 

「もうNIROは無くなったんだし、あの新生NIROとかいう連中に美味しいチェリーがたくさん集まる狩場は好きにさせないわぁ……私も協力してあ、げ、る」

「はい、ありがとうございます!」

「ユ…ユウト……」

「どうした瀬那、舞那も微妙そうな顔をして」

「ユウトってああいうのが趣味なの?」

「いや全然?」

「あ、そうなんだ……よかった」

 

 俺が師匠には素直そうだったからあの下僕と同類に思われたか?…………失礼過ぎない?そもそも俺はどっちかというとサド……いや、やめておこう。

 

「では師匠とそこの変態下僕はみんなの護衛に……行動は明日の早朝からで……じゃあお待ちかねの……お楽しみタイムだ!」

 

 そうして映画鑑賞からのダブプリのライブが行われる事になるんだが……。

 

「……なんで俺いつもこんな……」

 

 俺は優と一緒に外で見張りをしていた。

 

「いつもってなんだよ?」

「いや、初めてダブプリの生ライブの時だって途中で抜けざるをえなかったし、今回も俺は直接見れない……俺だってライブ見たいのに!」

「知らねえよ……そういやユウト、あの人間共を集めた本当の理由はなんだ?」

「本当の理由?何の事だ?」

「とぼけても無駄だ。確かにオレ達は迂闊に動けねえ、だがそれでもいくらでもやりようはあるはずだ……なのに人間共をわざわざ集める理由だ……事情を説明するだけならわかるが協力まで……何を考えてやがる」

 

 …………鋭いかな?まあ、もちろんあの作戦のためなのは間違いないが、他にも理由はある。

 

「まあもし戦闘になった時はあいつらも巻き込んでおけばカゲヤシの被害が減るだろ」

「フン、人間共はどうなっても構わないってかぁ?」

「何を当たり前の事を……」

「オマエ、それを瑠衣に絶対言うなよ」

「そりゃあ言えないさ……ただ、もう俺自身本気で人間とカゲヤシの共存を考えてるわけではなく、あくまでカゲヤシの為に共存を考えてるっていうのは話しちまったけど」

 

 結局のところ俺はカゲヤシなのだ。人間がどうなろうと知ったこっちゃない……そんな状態になっている。もちろん家族や自警団という例外はあるが。

 

「ま、後は明日、お互い頑張ろうぜ」

「……フン」

 

 実際、拠点を見つけたら俺と優が突入する手筈だ。瀬那と舞那には外で末端達の指揮をお願いしてある。

 まあ優の修行の成果とやらを見るのも楽しみにしておこう。

 

 ―瀬那視点―

 

「……ユウト!?…………ここは……そうか」

 

 確か今日は明日の作戦の為に私達と自警団のみんなはこの秘密基地に泊まる事になっていた。

 

「……夢、か」

 

 嫌な夢を見た……明日の戦いでユウトが死んでしまう夢だ。ユウトは強いし大丈夫だと思いたい……それに私を置いて死ぬなんて……。

 

「……あれ、そういえばユウトがいない」

 

 周りではみんなが寝ていたが、ユウトだけいなかった……外にいるのかな?

 

 外に出ると寒さでつい縮こまる……もう十二月だっけ。いくら関東でも真冬の夜は寒かった。

 

「……あ、いた」

 

 あそこまで跳躍したのか、秘密基地のある建物の屋根の上に毛布に包まっていたユウトを見つける。

 

「ん……瀬那か?どうしたこんな夜遅くに」

「君もでしょ?」

 

 私も屋根へ上り、彼の元へ行く……どうやらイヤホンで音楽を聴いているようだった。

 

「何を聴いているの?」

「ダブプリの曲……ほら、さっきのライブ俺外で見張りやってたから歌聴けなかったし」

 

 自分たちの曲を聴いてると言われて少し恥ずかしく思ってしまう……ユウトだからかな。

 

「明日早いんだからそろそろ寝ないと」

「とは言ってもな……何か寝付けないというか、明日の作戦への興奮が抑えきれないのか……ずっと起きてたい気分ではある」

「明日の作戦……」

 

 そこでさっきの夢の内容を頭に思い出してしまう……あ、やっぱユウトは気付くか。

 

「瀬那、どうした?そんな不安そうな顔をして」

「ユウトに隠し事はできないね……」

 

 私はさっき見た夢の内容を話す……けどユウトの反応はやっぱり、らしいというかいつも通りというか。

 

「はは、俺は死なないよ。最強だからな!」

「うん、そうだね……けど……」

「ほら、お前が俺にくれたお守り、肌身離さず付けてるあれもあるし?絶対大丈夫さ」

「もちろん私の考えすぎかもしれない……」

 

 いろいろな方法で私を元気づけようとしてくれるユウト……やっぱり優しいな……。

 

「あ、ならこうしよう!この戦いが終わったら俺の為にライブをしてくれ。そうすれば俺も何が何でも生きようとするはずだぜ?」

「うん、それは良いかんが……いや待って、この戦いが終わったら何々するって有名な死亡フラグじゃない!?」

「……あ」

「…………やっぱ不安に」

「いやいや待った!死亡フラグは指摘されると生存フラグになるっていうから!大丈夫だから!」

 

 そういえば生存フラグって他にもあったような……そうだ。

 

「そういえば死亡フラグって乱立すると生存フラグになるらしいね」

「それだ!だったらもっと死亡フラグを建てよう!よし!この戦いが終わったら俺、結婚するんだ……!」

「…………誰と?」

「もちろん瀬那だよ」

 

 そう正面切ってはっきり言われるとさすがに恥ずかしい…………え、というか本当に!?

 

「冗談……とは違うか。もう少し先にはなるかもだけどちゃんと将来の事考えてんだぜ?」

「う…うん……そっか……」

 

 さすがにすぐではなかった……けど安心した……こういう話はもう少し落ち着いた時にしたい。

 

「あとは……戦いの前にステーキを残して、パインサラダを終わった後に食べるようにして……」

「どんどん死亡フラグ思いつくね……」

「あ、あと女といちゃつくのも死亡フラグだったな!」

「え……ちょっ、ユウト!?」

 

 そう言ってユウトはいきなり私の隣にやって来て、自分の使っていた毛布を私にも掛けた。

 

「お、やっぱ二人でいると暖かいな!」

「こういうのホントズルい……」

「まあまあ、瀬那だってこうしたいだろ?」

 

 それは……そうだけど…………こういう行動を恥ずかしげもなく実行できるのはユウトの良いところであり悪いところだ。

 

「ここまでフラグ乱立すればさすがに大丈夫だろう」

「ホントかなぁ……」

「瀬那だってさっきまでの不安な表情は無くなってるぜ?」

「まあよくよく考えればユウトだしね……大丈夫に決まってるね」

「おうよ!」

 

 私達はこのまま眠るまで一緒の毛布に包まりながら星空を見上げるのだった。

 

 




 ゲーム本編が9月、この後日談が12月の設定です。
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