―AKIBA'S TRIP―   作:ヤマタニ

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修行の成果

「よし、作戦開始!」

 

 次の日、早速集まった人間共と瀬那、舞那、今いる末端達には秋葉原各地にて情報収集を行ってもらう事にした。

 俺と優、自警団の皆はアジト内で連絡待ちだ。

 

「待っているのは性に合わねえ」

「まあ我慢しろって優……お、早速ぽつりに更新だ」

 

 駅前の建設工事中のビル……どうやらここで白スーツエージェント共の出入りが頻繁に目撃されている……ビンゴってヤツかな?

 

「お、行ってみる価値はあるな……よし、行くぞ優」

「オレに命令すんじゃねえ……まあ行くけどよ」

 

 今のところ作戦は順調に進んでいる……不安があるとすれば瀬那が昨日見た夢……俺が死ぬっていうのだが……まあ俺には瀬那から貰ったお守りがあるから……あれ?

 

「あ、ユウトどうした?」

「いや、なんでもない……行くぞ」

 

 なんでもあるな、うん……お守り、家に忘れてきたみたい……昨日瀬那に肌身離さず付けてるぜ!なんて言っておきながらこれだよ!マジで不安になってきやがった。

 

 まあ、今更どうしようもないので早速駅前へ優と共に向かう……が、その行く手を阻むかのように一人のエージェントが俺達に襲い掛かって来た。

 

「あぁ、一人か?」

「……なるほど、あの戦いの後姿が見当たらないと思ったら……やはり新生NIROに拾われてたか……御堂さん」

 

 俺達の目の前に現れたのは他のエージェントと同じく白スーツを着た、御堂聡子さんだった。

 

「阿倍野優……そして、四葉ユウトさん……あなた達はここで終わってもらいます」

「フン、随分と強気だなぁ!NIROの姉ちゃんよぉ!たった一人で何ができるってんだぁ?」

「いや待て優……ってこっち狙いかよ!」

 

 俺は油断してそうな優を窘めようと思った瞬間、御堂さんは一瞬にして俺との距離を詰め、鋭い蹴りを放ってきた。何とかそれを躱したが、今の動き、蹴りの速さと力強さ……!

 

「フン……御堂さん……アンタまさかカゲヤシ化したな?ついにここまで堕ちたか」

「瀬嶋さんの仇を討つためです……その為にも四葉さん、あなたには死んでもらいます!」

 

 ……これは少々マズいな。元々末端のカゲヤシ相手に真人間のまま無双できるような御堂さんだ……それがカゲヤシ化、しかも新生NIROが使っているより強力なカゲヤシ化を施されている。恐らく身体能力は俺や優を上回っている……まともにやりあえば多分勝てない。

 

「これは結構厄介なことになってきたな」

「ビビッてんのかぁ?」

「冷静に状況を分析しただけだ……俺達でどうにかなるような相手じゃないぞ」

「さあ……覚悟はいいですか?」

 

 よくないな……しかしこの状況どうすれば……お?

 俺達がどうすればいいかと思っていると、俺達の前に人影が飛び込んできた……その相手は今非常に頼りになる人物だった。

 

「あら、お久しぶりねぇ、聡子」

「師匠!?……まさかあなたまで化け物の味方をする気ですか!?」

 

 そう、師匠が来てくれたのだ。

 

「今この秋葉原を壊そうとしているのはあの怪しい集団よ?だったら私はこの街を守るために戦うわ……二人とも、ここは私に任せて行きなさい」

「ありがとうございます師匠!行くぞ優!」

「わかってるよ!」

 

 俺達はこの場を師匠に任せて駅前へ向かう。師匠なら大丈夫だろう……なんせ師匠なんだから!

 

 

「よし、駅前に……早速派手にやってんな!」

 

 俺達が駅前に着くと、既に戦いが始まっていた。やはりあそこが拠点なのか、エージェント共が必死になって防衛している。

 

「瀬那、舞那、待たせたな!」

「ユウト!」

「状況は?」

「あまり良く無いかも。やっぱり個の戦闘力が向こうの方が上だから」

 

 ……なるほどな、俺も様子を見てみるが、確かに状況は芳しくない。

 

「末端には生き残る事を優先させてるから迂闊に攻め込めないのもあるし……」

「そうだな……これ以上同胞を失うわけにはいかないな」

 

 師匠がいれば何とかなっただろうけど、御堂さんの相手をしてもらっている手前、呼び戻せないだろうし。

 

「なら俺も加勢して…ととっ!」

 

 俺が皆が戦っている場所へ向かおうとした時、いきなり上からライダーキックをしてきた人影がいた。

 

「おや、躱されてしまいましたか」

「……そうだよな、お前もいたな……確か、篠崎定命だっけ?」

「定命殿ですよ?あ、定命ちゃんでもいいですよ。そういうあなたは……なんとか様でしたね」

「人の名前くらい覚えろや!」

 

 そう、あの戦いの時もいた俺と同じ能力を使う女、篠崎定命だ。相変わらず不思議なテンションの奴だ。

 

「何だアイツは」

「気をつけろ優、あいつは俺と同じ能力を使うぞ」

「へぇ、ならオレの修行の成果を見せるに丁度いいじゃねぇか!」

 

 ん?どういう事だ……って優もう行っちゃったし。

 

「あなたは資料で見た事ありますね。阿倍野優でしたか?」

「へッ!良く知ってるじゃねえか……よっ!」

 

 そう言って、優はあいつの近くまで行き……いきなり地面を思い切り踏みつけた。最初俺には何をしているか理解できなかった……が、次の瞬間起こった現象で気付く……気付いてしまう。

 

「……!これは……」

「ハン、逃がすかよ!」

 

 ……優が地面を踏みつけた瞬間、俺は衝撃波が発生するのを確かに見た。そして定命は後ろに飛び退くが、優が今度は地面を蹴って、跳躍をする。

 

「優……お前、なんでお前も気が使えるんだよ!?」

 

 間違いなく優は俺や定命と同じで気を衝撃波として使う能力に目覚めていた。

 

「オラァ!」

「厄介ですが……まだまだですね」

 

 優はそのまま定命に武器として使っているギターを振るうが、同じく衝撃波を使った定命の跳躍により、躱される。

 

「チッ、すばしっこい奴だぜ!」

「待てよ優!なんでお前そんな芸当ができんだよ!」

「あぁ?修行したっつってんだろ!」

「えー、修行でどうにかなるもんだっけソレ……」

 

 俺それ特定の血筋にしか使えないと思ってたんだけど……修行すればどうこうなるようなもんじゃないんだけど……。ま、いいか。

 

「まあだったら優は向こうで苦戦してる同胞たちを助けてやってくれ!こっちは俺がやる。そっちの方が効率が良い」

「ケッ、しゃあねえな……その獲物は譲ってやるよ!」

 

 お、意外に物分かりが良い……まあ助かる。いくら優が能力を使えるって言ってもまだまだ覚えたてだ。俺や彼女ほどじゃないと思う……こいつは俺が受け持った方が良いだろう。

 

「いやぁ、中々凄いですね彼」

「まあ優だしな……それよりも」

「ええ、私達も戦いましょうか……」

「行くz……」

 

 俺が地面を蹴ろうとしたその時、突如俺の携帯が鳴る。

 

「……すまん、ちょっと良い?」

「ええ、構いませんよ」

 

 ええい、余裕の表れだなあれは!だが仕方ないか、向こうの方がまだ余裕があるのは本当だし……それよりも電話だ……お?マイカ……?

 

「……もしもし」

『あ、もしもしお兄ちゃん?アタシ今秋葉原着いたところだけどお兄ちゃんどこいるの?』

「え、なんでマイカが秋葉原に?」

『お兄ちゃん忘れ物したでしょ!瀬那さんから貰った大事なお守り。わざわざ届けに来てあげたんだからお小遣い頂戴ね』

 

 ……お守り、俺の部屋に置きっぱなしだったがなんでマイカが知っているんだ?え、俺の部屋に勝手に入ったの?いや、部屋に入るのはむしろ歓迎だけど……。

 

『お兄ちゃん?聞こえてるー?』

「ああ、俺なら駅出てすぐ側にいるよ」

『んー、あ、いた』

 

 と、ここで駅口からマイカが出てきて、俺と目が合った。

 

「すぐ見つかってよかったよ。はいこれお兄ちゃんの……何?」

 

 世の中には卑劣な事を考える輩という者は必ず存在するようで、複数のエージェントが駅口から出てきたマイカを取り囲むようにして現れた。

 

「え、ちょっ……何、なんなの?」

「へぇ……お前あいつの妹か……」

「丁度いいや……」

 

 これは完全に俺の妹を人質にとろうとしている様子だった。

 

「おい待てお前ら、考え直せ」

「フン、その焦りよう、余程妹が大事に見える……」

「そうじゃない!死にたいのか!?」

「そんな脅し無意味だぜ!お前こそ状況わかってんのか!?」

 

 うーわ、どうしよう。まあこいつらが死のうがどうでもいいんだけど……もう遅いかな。

 

「とりあえずお前はこっちに来い!」

「は?触らないでよ変態」

 

 肩を掴もうとしたエージェントを、マイカは罵倒しながら胸の辺りを軽く小突く……そう、小突いたようにしか見えなかった。だが次の瞬間、小突かれたエージェントは物理法則を無視したような勢いで真上へ吹っ飛んでいった。

 ……結構上まで飛んだのだろう。たっぷり時間を掛けてそのエージェントが落下してきた。

 

「はー、やっぱ秋葉原は変態の巣窟ね」

「は……?え……?」

「マイカ、こいつら変態だからぶっ飛ばしてもヨシ!」

「え、当たり前じゃん」

「ひぃっ!」

 

 マイカはそのまま取り囲んでいたエージェント共を一人残らずぶっ飛ばしていく。

 

「ふ~、あ、はいお兄ちゃんコレ。こんな大事な物忘れないでよね」

「ああ、すまん、これ駄賃ね」

「え、多くない?まあ貰えるんなら良いんだけど……」

「マイカ、ちょっと手伝ってくれないか?」

 

 俺は事情を説明し、このままマイカにも手伝ってもらう事にした。

 

「……あなたの妹はとんでもないですね」

「で、どうする?まだやるか?」

 

 俺は近くで一緒に妹の暴れっぷりを見ていた定命に問いかける。

 

「まさか、私が勝てるわけないでしょう。降参です」

「罠……じゃないかさすがに」

「ええ、それにあんな素晴らしい力を持っているなら私が仕えるに相応しい方です」

「……え?」

 

 定命はマイカへと近づき、話しかける。

 

「あなたのその力素晴らしいです。とりあえずあなたに仕える事にしたのでよろしくお願いします」

「え……誰?」

「恐らく遠い親戚だと思います。篠崎定命といいます」

「う、うん……よろしく?」

 

 ちょっと待て……え、これって……!

 

「お前NIROを裏切るのか!?」

 

 俺の言葉に他のエージェントまで乗っかて来た。

 

「篠崎さん!?周防さんを裏切るのですか!」

「本当は裏切る予定は無かったんですがね……でもこれは運命なのですよ」

「くっ……ならば仕方ない。これを使うしかない!」

 

 そう言って一人のエージェントが懐から何か端末のようなものを取り出し、彼女へ向けて何かボタンを押したようだ。

 

「…………あれ?」

 

 しかし何も効果が無いようだった……え、こいつ今何しようとしたん?

 

「言ってませんでしたっけ?私カゲヤシ化してないのでそういうの効かないんですよ」

「なっ……そんなはず……あ」

 

 そしてその端末を今度は定命に奪われ逆に操作される……すると不思議な事が起こった。

 

「うぐっ……」

 

 端末を向けられたエージェントがまるで電源を切られたかのように動かなくなる。意識はあるようだが体が重たそうなのか、立ち上がる事すらできなくなっているようだった。

 

「……何をしたんだ?」

「実は新生NIROが使っているカゲヤシ化は特別でして、より強力なカゲヤシ化を施すために作られた人工血液を体内に取り込み、さらに特殊な電磁波を浴びせる事でカゲヤシ化する仕組みになっているんですよ」

「なんでそんな面倒な仕様になってんだ……」

「裏切り対策ですね。周防さんは人間不信なところがありましたので、反逆された際にカゲヤシ化した力を無効化できるようにしたのですよ」

 

 なるほどね……瀬嶋よりかは警戒心強いな。瀬嶋なんて意外にも俺が表だって裏切るまで信用しちゃってたみたいなのに……。

 

「ちなみにあの建設中のビルの中に電磁波発生装置を隠しているので、それを壊せば新生NIROの戦力は大きく削れますよ」

「マジかよ……そりゃエージェントが必死こいて防衛するわけだ」

「ですがそれだけでここは拠点じゃないですね」

「ん……そうなのか」

「というわけでこれが拠点の場所を書いたメモです」

「……随分用意がいいな」

 

 こいつ本当は最初から裏切る気だったんじゃないのか?

 

「ここに攫った要人もいるはずですよ」

「……ふむ、じゃあ、優!」

「あぁ?そっちのお話は終わったのかよ」

「拠点の場所がわかった。俺達はそっちに向かうぞ」

 

 というわけで俺と優は拠点へ行き、瑠衣を助け出す。そしてほかの皆は電磁波発生装置をぶっ壊してもらう事にした。

 

「マイカ、もしコイツが裏切りそうなら全力で阻止しろ……追加でお金あげるから」

「ん、わかった」

「失礼な、私はこの方について行くと決めたのです。裏切りませんよ」

 

 まあここまで情報を与えておいて裏切る事は無いと思うが……念のためだ。

 

「まあ後はお前らはあのエージェントを突破して装置を壊すだけ……だが、戦力がちょっと足りないか?」

「戦力なら私がいるじゃない」

 

 と、ここで師匠が出てきた。

 

「師匠……御堂さんは?」

「あなたたちが駅前へ向かうのを確認したら逃げたわ。ま、拠点の方の防衛に行ったかもしれないわね」

「そうですか……なら師匠、ここを頼みます。詳しくはそこのロリから聞いてください」

「ロリとは失礼な。あなたより年上ですよ?」

「……え?中学生くらいじゃないの?」

 

 だってマイカと背丈も体型もほとんど同じじゃん?

 

「大学生で、二十歳です」

「マジで合法ロリかよ!」

 

 というか大学生って、NIROと二足の草鞋かよ。

 

「というか早く行った方がよろしいのでは?」

「そうだったな……じゃあ早速行くか優!」

「言われなくてもわーってるよ!」

 

 俺達はメモに書かれている新生NIROの拠点へと向かう。きっと最後の戦いだ……気を引き締めるか。

 

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