「次の道は……って、アブねぇ!」
俺達が拠点へ向かってる途中、一人のエージェントの妨害に会う……まあそうだよな。
「やっぱ来たな御堂さん!」
「あなた達をこれ以上行かせない……今度こそ覚悟してもらいます」
「……あの時の借りを返すかな。優、ここは俺に任せてお前は先に拠点へ行け」
「……ま、オマエなら大丈夫だろうな」
そう言って優を拠点の方へ先に行かせる。
「逃がしま…」
「おおっと、アンタの相手はこの俺だ!」
俺は御堂さん御足止めをする……正直言ってこの御堂さんには勝てない。だが、負けなければいい……どうせすぐ終わる。
「瀬嶋のようなクズを未だに慕ってるのか。哀れだな!」
「あなたのような裏切り者が言う事ですか!」
「アイツはどうせNIROすら切り捨てるつもりだったろうさ!」
「もうあなたの言葉には騙されませんよ!」
フン、さすがに同じ手は効かないか。まあ本当の事だけどこいつは自分の信じたい事しか信じないからな。最初から俺の言葉に耳を向けなければ何言っても無駄か。
「新生NIROもだ。どうせ瀬嶋の仇をとらせてやるとか言われて他の残党共と一緒に参加したんだろ?本当は捨て駒に過ぎないのになぁ!」
「何を言っても無駄ですよ!私はあなたを倒します!」
俺はとりあえず御堂さんの攻撃を回避する事に集中している。戦う必要が無いからな……さて、そろそろかな。
「四葉さん!覚悟…!?」
「来た!」
「ぐっ……一体何が……?」
どうやら駅前の方は上手く行ったみたいだ。これで新生NIROも終わりだ。
「御堂さん、もしかしてと思うが……自分に施されたカゲヤシ化が、とある施設をダメにされると無効化される事を知らなかったか?」
「は……?何を……?」
「フフ、そうか。やはり元瀬嶋の部下である残党組は知らされてなかったか。いいか御堂さん、アンタは新生NIROに捨て駒として利用されているに過ぎないんだよ!どうだ?ポリシーを曲げてまでカゲヤシ化をしたのに俺に勝てず、組織からも最初から当てにされてない事を思い知った気分は」
「あ……わ、私は……私は……」
「御堂さん、そんなアンタの心を癒してくれる相手に俺は心当たりがあるぞ……」
俺は手を叩き、誰かを呼ぶかのようなジェスチャーをする。するとどこからともなく下僕がやってきた。
「呼びましたか?」
「御堂さんは戦闘不能だ。拘束してこの戦いが終わった後、師匠の元へお連れしろ」
「ちょっ……ま、待ってください……私は……」
「御堂さん、師匠にもう一度鍛えてもらうといい……じゃあ後頼む」
「かしこまりました」
俺は後の事を下僕に託し、拠点へと向かう。
「ここは……なるほど、そうか」
拠点に着き、辺りを見回し思い出す。ここは俺が脅迫されて無理やりNIROに協力させられた時に連れてこられた場所だ。出入りの時は目隠しされて場所を特定されないようにされてたが……なるほど、NIROの時の拠点を不用心にもそのまま使っているらしい。意外に新生NIROには余裕がないかもな。
「さて優は……っと、いた」
俺は優を見つけるが、とある部屋の入口を睨みつけるばかりで動かないでいた。エージェント共も部屋の中から優を睨み返しているな。
「どうした優」
「来たか……いや、どうやらこの拠点内だけはあのカゲヤシ化が有効みたいだぞ」
「非常用の予備みたいなもんか……しかもここは屋内、なるほど」
確かに俺や優はもちろん、あのエージェント共にとっても、脱がされても問題ない状況だな。
「脱衣は無効、だが……!」
俺は部屋へ跳躍し、一人のエージェントに狙いを定める。
「脱衣が聞かないなら直接ぶっ殺せばいいだけだ!」
「!?」
俺は奴の心臓めがけて気を込めた一撃を放った。お、俺も実は初めてだったけど上手くいったな。
「ユウト、何したんだ?」
「ああ、心臓に直接衝撃波をぶつけた。多分、潰れたか破裂したかで死んだんじゃないかな。初めてだけど上手くいったから優もできるんじゃない?」
「そうか、なら遠慮なく……」
そして優も見よう見まねで俺の技を再現し、エージェントを仕留める。
「クソ、あの二人を止めろ!」
「ひぃ……!」
俺達の戦いぶりにさすがのエージェント共も戦慄したのか、パニックになる者も現れる。まあもう終わりだろう。
俺達はエージェント共を蹴散らしながら虱潰しに部屋を調べていき、遂に瑠衣の囚われている部屋の前まで来る。
「ちょっと分厚いか……だが!」
俺は扉を思いっきり蹴り破り、優と共に中へと入って行く。
「くっ、もうここまで……おい動くなぁ!」
だが中には新生NIROのトップ、周防英雄が瑠衣を人質にとるような形で立っていた。
「ユウト!兄さん!」
「おい、こいつの命が惜しかったら降伏しろ!」
「コイツバカか?」
「優の言う通りだな。追い詰められているのはそっちだろ!」
優は近くにあった機材を周防に向かって蹴り飛ばす。
「ひっ……!?」
「隙ありだな」
そうしてそれにびびった周防は瑠衣を手放し、俺は一気に跳躍し、距離を詰める。
「しまっ……」
「瑠衣は返させてもらう」
俺は瑠衣を抱きかかえ、そのまま優の方へ跳躍した。
「……大丈夫か瑠衣」
「う、うん……ありがとう二人とも……」
「さぁて、これで形勢逆転ってヤツかぁ?」
「そうだな。命乞いするなら聞いてやるぞ?」
ま、命乞いしたら楽に殺してやるよ……お前は許されない事をしたんだ……お前のせいで死ななくていい同胞が犠牲になった……その報いは受けてもらうぞ。
「ええい……まだだ!」
そう言って周防は近くにあった……あれは注射器……?それを自分の腕に刺した。
「いけない……あれには私の血が!」
「なんだと?」
「フン、厄介だなぁ……」
だとしたら今こいつは妖主の血を体に取り込んだのか……。
「うっ……ぐぐっ……フッ、フハハハハハ!凄い、凄い力だ!」
確かに雰囲気が変わった気がした……一応ここじゃ戦いにくいか。
「瑠衣、優、一旦外には出るぞ」
「うん」
「ああ、そうした方がいいみたいだ」
俺達は全力で外へと向かう。奴も追いかけてくるが、俺達の衝撃波を応用した跳躍のスピードにはさすがに敵わないようで、無事外までは出られた。
「全く、逃げ足だけは一流かな?」
だが奴は余裕の態度で外に出てくる。……やはりか。
「やっぱアイツだけは違うよな」
「ユウトどういう事?」
俺は抱きかかえてた瑠衣を下ろし、新生NIROやそのエージェントの仕組みについて一通り教える。
「電磁波発生装置は壊したし、予備のは建物内だけ有効範囲だ……だが普通に出てきたということは……」
「ヤツは電磁波を必要としない……そうだな?ユウト」
「そうだ優」
そもそも電磁波は本来必要ない……わざわざ用意したのは周防以外、いつでもカゲヤシ化を無効化させるためだ。コイツ自身はカゲヤシ化を無効化されるわけにはいかんだろうし、自分には特別なものを使っているのだろう。
「今の私は無敵さ……どうするね?君達だけで勝てると思うのかね?」
だが、こいつは可愛そうな勘違いをしているな。どうやら外に出たのはカゲヤシ化を無効かさせるためだと思っているようだ。
「何言ってるんだザコが」
「……なんだと?」
「お前のような小物が妖主の力を得たところで、俺に勝てるわけ無いだろ……優にだって勝てないさ。なんせ、俺と同じ強さだ」
「敵を煽り過ぎじゃねえか?」
「でも今までの動きで分かっただろ?」
「まあな、アイツあんま強くはないな」
元々が弱すぎるんだな。今のこいつははっきり言ってさっきの御堂さんより弱い。
さて、俺はこいつに怒りを感じてるんでもっと煽ってやろう……答え合わせもしたいしな。
「周防、お前瀬嶋の事嫌いだろ?」
「何を言うかと思えば何を当たり前のことを……!」
「やっぱりな、クズ同士同族嫌悪してたわけだ……いや違うか。お前と瀬嶋には決定歴な違いがあったな」
「何……?」
「瀬嶋は何か重要な事をする際には自分が出向いてたな。自らの危険を顧みず。最後の戦いの時も俺とは正面からのぶつかり合いで戦っていた……だがお前はどうだ?自ら危険な場所へは行こうとせず、拠点に引きこもり高みの見物。しかも部下からの反逆を恐れてカゲヤシ化に下らない細工をする始末……」
俺のその指摘にどんどん表情を歪めていく周防……煽り耐性もないな。
「瀬嶋は死んだ方がいいクズではあるが小物ではなかった……だがお前は……小物だ」
「若造がぁー!!」
ついに切れた周防が地面を蹴り、物凄いスピードで突っ込んでくる……さぁ、最後の戦いの始まりだ!