―AKIBA'S TRIP―   作:ヤマタニ

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最後の戦い

「貴様ぁああ!!死ねええ!!」

 

 スピードは凄いんだが……ただ真っすぐにしか突っ込んでこないとは、やはりザコか。

 俺は敢えてその攻撃を躱すのではなく受け止める。

 

「スピードもパワーも確かに中々……さすがは妖主の血か。まああの時戦った瀬嶋の方が凄かったがな。お前らの使ったカゲヤシ化、瀬嶋の研究をパクって再現したようだが、届かなかったようだ……所詮お前は瀬嶋以下だよ」

「ぐうっ……!?貴様……!」

「というわけでさっさと倒させてもらうぜ……優!」

「言われなくてもわかってんだよ!」

 

 俺が周防の攻撃を止めている間に後ろに回った優が攻撃を仕掛ける。もちろん成功するようにコイツの腕を俺はガッチリと掴んだままだ。

 

「ぐはぁっ!!」

「よしこっちも行くぞ!」

 

 そして後ろからの攻撃に仰け反った周防に俺は真正面から気を込めた蹴りを放った。

 

「がはっ……ば、バカな……!?」

「言っただろう?お前は弱いって。俺ら一人ずつだって勝てないのに二人に勝てるかよ……弱すぎてつまんないな、もう終わらせようぜ優」

「ああ、こんなヤツにかける時間なんてないだろ」

 

 俺と優はうずくまる周防に向かって歩き出す。

 

「そもそもお前らの切り札であるカゲヤシ化は装置の破壊で無効化されている。もう勝ち目はないんだよ……さて、同胞をかわいがってくれた報い……受けてもらうぞ」

「勝てない?報いを受ける……?どちらもお断りだぁ!」

 

 倒れ伏してた周防はポケットからスイッチのようなものが付いた謎の端末を取り出し、そのスイッチを押した。

 

『警告、警告、機密保持等のため、基地を爆破します』

 

 次いで聞こえてきた警報にマジかと思ってしまう。

 

「フハハ!勝てないのなら秋葉原ごと消滅してもらうだけだ!」

「そんなに範囲広いのかよ!?」

 

 マズイな、拠点周辺だけじゃなくて秋葉原全体を巻き込む爆発かよ……おそらく前のNIROの段階で既に仕込まれていただろうな。元々秋葉原でカゲヤシの活動が活発的だったのだから、最終手段で街ごとカゲヤシを殲滅できるようにしてたかもしれん……だが今はそんな事よりこの爆発だ。

 

「後十数分でこの街は終わりだぁあー!ハハハハハハハッ!」

「止める手段は……」

「あるわけない……貴様らはこのまま道…」

 

 俺は周防の顔面を踏みつけ、そのまま潰した。コイツに止められないなら生かしておく意味はない。

 …………仕方ないか。

 

「優、瑠衣を連れて瀬那たちと合流してくれ」

「あ?オマエはどうすんだ」

「俺の能力を使ってなんとか爆発を抑えてみる」

「ユウトそれって……」

「安心しろ瑠衣、俺は死なねえよ……瑠衣を頼む、優」

「……わかった」

「兄さん!?ユウト……ユウト!」

 

 優は無理やりにでも瑠衣を連れていく……それでいい。

 さて、集中しろ、俺。爆発が起きたらそこに衝撃波を内向きに発生させ爆発を抑える……俺ならできるはずだ。何せ、俺はイケメンの天才だからな!

 

 

 ―瀬那視点―

 

「粗方終わったかな」

 

 私は周りを見る。白スーツを着たエージェントはカゲヤシ化が切れたからか、動けなくなり、地面に倒れている。

 

「あら、もう終わっているのかしら。どうやら遅かったようね」

 

 そこにカゲヤシを引き連れたママがやってきた……確かに遅いけどNIROと全面衝突にならなくてよかった……。

 

「あれ、瀬那さんその人は?」

「私のママだよ。マイカちゃん」

「あら、その子は?」

「ユウトの妹よ。この戦いで凄い活躍したんだから!」

「ちょっ……ちょっと舞那さんやめてくださいよー」

 

 ママの問いに舞那がマイカちゃんの頭を撫でながら答えた。そういえばこの二人は結構仲がいい……妹同士で何か親近感のようなものがあるのだろうか。

 ちなみにマイカちゃんにはいろいろと事情を説明してある。カゲヤシの事とかNIROの事とか……最初は信じてくれなかったけど、時間をかけて信用してもらった。

 しかしマイカちゃんがここまで強いとは思わなかった……ユウトから聞いていたとはいえ、簡単に信じられる話じゃないし……それとユウトが言っていた師匠という人物もだ。彼女の強さも次元が違った……この戦いで本当に味方でよかった。

 

「ご報告します。四葉ユウトの命により御堂聡子を師匠に献上しに参りました」

「あらまぁ……」

 

 師匠の方を見ると何やら取り込み中のようだった。

 

「し、師匠……」

「聡子、その何かを期待する眼差しはなんなのかしら?」

「わ、私そんな眼差しを向けては……」

「いいわ、これからゆっくりと可愛がってあげる」

「ひぇっ……」

 

 あの人の事はあまりわからないけど……知りたくもないかな。

 

「そういえばユウトは?」

「ユウトなら優と一緒に……」

 

 その時だった。爆発音が辺り一帯に鳴り響いた。

 

「な、何?なんなの!?」

 

 さすがにこの爆発音は大きすぎてみんなにも動揺が広がる……しかも爆発音のした方角は……ユウト達の向かった方……何が起きているの……?

 

「よう、そっちは終わったみたいだな」

 

 そんな私達の動揺は知らないとばかりに当たり前のように優が瑠衣を連れて来た。

 

「優、無事瑠衣を助け出せたみたいね」

「お袋も来てたのか。まあな」

 

 作戦は成功……?でもおかしい……ユウトがいない……?

 

「優、ユウトはどこ行ったのよ?それにさっきの爆発は?」

 

 舞那が聞くと、瑠衣に明らかな表情変化が見て取れた。

 

「そうだな。一応説明しておくか」

 

 そして優から説明を聞く私達だったが、その内容に動揺してしまう。

 

「ウソ……ウソよね?だってそれじゃ……ユ、ユウトは……」

 

 舞那は余程ショックだったのか目に見えて取り乱してしまった。そして私も……。

 

「優!なんでユウトを……彼を止めなかった!なんでわざわざ死なせたの!?」

 

 私は優に掴みかかってしまう。そんな事しても無意味だとわかっているのに。

 だが優が返してきたのは意外な言葉だった。

 

「おいおい、いつユウトが死んだって言ったよ?」

「……え?」

「あいつが死ぬわけ無いだろ。オレと決着をつけるって約束も果たしてねえのに、アイツがこんなところでくたばるわけないだろう?……それともなんだ?アネキはアイツを信じてねえのか?」

 

 ……優はユウトが生きているって信じ切っている……なのに私は死んだと決めつけてしまった。

 

「姉さん、私もユウトが生きてるって信じたい……」

「瑠衣……」

 

 そう、ね……みんなが信じてるなら私も……私達も信じないと!

 

「舞那、大丈夫……ユウトは、生きてる」

「姉さん……うん、そうよね」

「じゃあ早速ユウトの元へ向かおう……死んでなくてもケガはしてる可能性はあるんだし」

「うん!」

 

 私達はユウトが居るであろう拠点へ向かって走り出した。

 

 

 ―ユウト視点―

 

 …………暗い、闇の中にいるようだった。何も見えないし何も聞こえない……だが意識だけはある、そんな不思議な感覚。俺、死んだのか?

 俺が最後に覚えてる光景が爆発がここらへん一帯を巻き込む光景……そう、街に被害は出ていないはずなんだ……みんなは守れたってわけだな。ならばよし!という事にしておこう……死んでもみんなを守るヒーロー、うむ、俺はやはり最高にカッコいいな!もう後悔はない。あとはこの闇の中に意識を沈ませて……あれ?

 俺は本当に死んでいるのか?それにしては意識がある。さっき流れに任せて意識を手放そうとしたけどそうしたら本当に死ぬのでは?つまりまだ生きている……!

 だったらもう少し粘ってやろう。意識を保つためには……考えを絶やさない事だ……つまりは妄想でもしてよう。

 やはり頭にまず思い浮かべるのは瀬那の事……この戦いが終わったら結婚するとか言ってるからな。生還しないと……そういえばまだ瀬那に膝枕してもらった事ないな……。

 おや、そんな妄想をしたところ、俺の後頭部に何か当たったような感覚が……しかも瀬那の声が聞こえる……気がする。

 

「ユ…ト……ウト!」

 

 俺はその声に導かれるまま意識を覚醒させていき、遂に目を開く。

 

「ユウト!」

 

 俺の目の前には今にも泣きそうな顔をした瀬那が俺を膝枕するようにして座っていた。

 

「よかった……ユウト、私だよ……わかる?見える?」

 

 俺が目を覚ましたことに安堵こそしてるがまだ不安が残ってそうだな……ならば。

 

「ああ、わかってるよ…………舞那」

「…………え?」

 

 あ、からかうつもりが逆に心配させたかもこの反応。

 

「いや、冗談だって冗談!ほら、冗談を言えるくらい余裕があるって!」

「冗談にもほどがある……!」

「……ごめん、そういや舞那は?」

「あの子には気を使わせちゃった」

 

 どうやら俺と瀬那を二人きりにさせたらしい……まあ、感謝だな。あとでお礼(意味深)をしてあげよう。

 

「まあなんにせよ、これで一件落着ってヤツかな?」

「うん……ユウト、立てる?」

「ああ、ちょっと待て……って、体が重くて動かない!?」

 

 麻痺してるとか感覚がないとかそういうわけではない……文字通り体が重くて動かすのに苦労する。

 

「……もしかして」

「ユウト、何してるの……え!?」

 

 俺は何とか動く手で、片側の袖をまくり、腕を露出させ太陽に当てる……何でだ?

 

「何か、人間になってるみたい……無茶した反動か?」

「だ、大丈夫なの?」

「まあ命に係わる事じゃない……でも早くカゲヤシに戻らないといけない。今夜にでも瀬那の血貰っていいか?」

「……うん、そうだね」

「姉さん、ユウト起きたー?って起きてるじゃん!」

 

 おっと、舞那が遂に待ちきれなくて来たのかな。

 

「舞那にも心配かけたな。けどもう大丈夫だ」

「そっか、うん、よかったわ!……で、なんで動かないの?」

「あー……舞那にも言っておくか」

 

 舞那にも説明し、結局今夜は二人から血を貰う事になったのだった。




次回、最終話。
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