師匠から脱衣の技を教えてもらった次の日、遂に実戦をしてもらうから自警団アジトに来いとのメールが来た。命令だけならメールでもよかったらしいのだが『あるもの』も渡されるらしい。
「というわけで来ますた」
「待ってたぜユウト」
「では四葉さんにこれを」
自警団の皆に迎えられた後、御堂さんからある機械を渡される……端子のついた小型の機械のようだが……。
「それをスマートフォンに取り付ける事でカメラの機能にカゲヤシ判別機が追加されます」
カゲヤシ判別機とな……そんなものまであるのかNIROには。
「では失礼して」
俺はまず秋葉原自警団の皆と御堂さんを撮ってみる。
「ふむ……次に」
次に俺自身を撮ってみる……お、写らない。
「はい、これが判別機の機能です。対象が写らなければカゲヤシ確定です」
なるほどね……NIROの技術力は高いな。ますます警戒が必要になった。
「ではこれより任務をお伝えします。現在、裏通りにカゲヤシがうろついています。判別機を用い、奴らを一掃してください。自警団が我々に協力するのを知ったとは思えませんが、念のため先に手を打っておきます。つまり、今回の任務は自警団を守る事とあなたのテスト、一石二鳥で事が済みます」
まあ、もしものこともあるか……エージェントはどうなろうと知ったこっちゃないが、自警団の皆は守りたいし。
「了解……じゃ、行ってきます」
「おう、気をつけろよ」
「ユウト君、頑張ってね」
「お気をつけて、いってらっしゃいませ」
自警団の皆に見送られ…ゴンちゃん?
「そ…外にカゲヤシがっ……どどどどうしよう」
あ、めっちゃ動揺して挙動不審……ゴンちゃんの不安を取り除くためにも、この任務やりますか。
……結果から言ってしまおう。無茶苦茶簡単だった。カゲヤシはもっと強いものだと思っていたが、俺の敵では無かったようだ。もしかして俺を襲った奴が特別強かったとかか?
「無事にカゲヤシを討伐できたようですね。実は四葉さんの姿を遠くから監視してしましたが、お見事です。驚きました……何か格闘技でもやっていらっしゃるのでしょうか?」
「まあ、そんなところですね」
気を扱うなんて情報NIROなんぞに話す必要ないだろ。テキトーに誤魔化しておこ。
「そうですか……ではこちらも安心して命令を言い渡すことができます。今、私たちが狙っているのは阿倍野優です。あなたの友人を襲い、そしてあなた自身をも傷を負わされた……そのカゲヤシです。奴を探し出し、倒します。奴は多くの我々の仲間を倒した相手です。……強敵です。」
あいつか……今の俺の実力を測るには丁度良いかな?
「正直言って瀬嶋さんの判断とはいえ、いきなりあなたにこれを当てるのはかなり酷だと思うのですが……先ほどの戦いぶりを見ている限り大丈夫だと私は思いました。やはり瀬嶋さんの目に狂いはありません」
瀬嶋さん大好きだなこの女。
「まずは奴の配下のカゲヤシを討伐します。一様にバンドマンの恰好をしていますのでよろしくお願いします」
「ふむ、私たち秋葉原自警団も協力させてもらうよ。街を見回って、それらしい人たちを見かけたらユウト君に連絡するね」
「ありがとうございますヤタベさん」
これなら秋葉原全域をカバーできるといっても過言ではない!まああんまり無理させたくもないけど。
「私たちエージェントの方でも阿倍野優やその側近たちの動向を探ってみます」
「そうですね。そっちの方はお任せします」
これから俺たちは数日掛けて、阿倍野優の捜索及び、その側近たちの討伐を行っていく。そして遂に、阿倍野優がUD+にいる事を突き止める事が出来た……が、自分が標的になっている事を察し隠れられたようだ。意外と慎重なんだなあいつ。
「確か……四葉と言ったか?」
「ああ」
俺は今現場にいる他のエージェントに話を聞きに行ったところだ。黒スーツにサングラス……怪しい奴らだな。
「阿倍野優は?」
「ダメだ、見つからん。もしかしたら我々エージェントがここで待機しているから、奴は現れないんだろうか」
「あり得る……」
「ふむ、そういえば奴の側近は皆バンドマンの恰好をしていたはずだが……四葉、お前変装は得意か?」
「ん……なるほど。やってみる価値はあるか」
俺は早速優の側近を倒した際に手に入れてたそいつらの服に着替える。あいつの側近に変装し、誘き出すのだ。
「おお、見違えたぞ。馬子にも衣装、オタクにもカジュアル服だな」
着替えてきて早々そんなことを言われるが失礼な、俺はどんな服だって着こなすぞ。何せカッコいいからな俺!カッコいいからな!大事なことだから何度でも言うぞ!俺はカッコいい!……と、そんな事は今は置いといて、この服……半袖で腕に直射日光浴びて結構辛い……だから早く釣られてくれ阿倍野優!
……他のエージェントは一旦離れてもらい、待つこと数分、阿倍野優が現れた。
「チッ……人間共め、オレが狙いかよ。しつこく監視をつけやがって……最近は少し派手に動き過ぎたか。アネキ共めオレにばかり命令しやがるからなぁ……瑠衣が動かねぇからだ!……あ~、イラつくな」
機嫌悪そうだな……まあいいや。そろそろ出てくか。
「おう、お前か。そっちはどんな感じだ。味方はやられたんだろ?」
マジか、全然気づいてねぇ。とりあえず頷いておこう。
「聞いている。まったくクソな話だ。やり損ねたガキにここまでやられるとはな……あの時にやっぱりトドメをさしておくべきだったんだクソッ!」
まあトドメ刺した気になって勝手にとんずらしたのはお前だけどな。実際瑠衣……か?名前は。あの少女が助けてくれなきゃ俺は死んでたし仕方ないさ……あれ?心の中でとはいえなんでこいつに気休め言ってんだ俺は。
「瑠衣の血を得た人間……か。よりにもよって敵に回るとは皮肉なもんだ……」
まあそろそろ良いだろう。
「それは俺のことかね?」
「あ?お前何言って……何!?貴様、まさか!クソッ、やられた!」
そう言うや否や優はギターを武器に構え、こちらへと猛スピードで迫ってくる。
「お、やっぱり側近とは違うな……やっぱつええ奴だろお前?」
「死ねヤァ!!」
俺は片足を軸に回転、優の攻撃を躱し、その無防備な背中を捉える。
「背中が……お?」
だが俺がその背中に攻撃を加えてやろうとした瞬間、あいつはこちらへ向き直し、ガードの姿勢をとる。凄いな……今までの奴らならこれで終わりだったのに。
「だがまだ甘い!」
俺は気を衝撃波という現象で使うことができる。拳に気を集中……今だ!
「グアア!?」
優は俺の拳をガードしたがそれに込められた衝撃波をモロに食らい、吹き飛ぶ。
「チイッ!何だ今のは!?」
「俺って流石!」
上手く技が決まってご満悦の俺に対して優は悔しそうだ。だが俺も攻撃に反応されるとは思ってなかったからお前も頑張ってると思うよ。
「うおりゃあ!」
「うーん、身体能力的には強いんだけど動きがな」
阿倍野優は俺に追い込まれている状況に焦りを感じたのか、さっきよりも速く突っ込んでくる……がだ。相手が冷静な判断ができなくなっているとはいえただ真っすぐ突っ込んでくるとは。
「……隙あり!」
「ガハッ……」
俺はあいつが突っ込んでくるのに合わせて、気を一気に放出する大技を出す……見事阿倍野優は俺の出した衝撃波をモロに食らい後ずさる。
「ぐっ……さすがにアイツの血を得ただけはあるじゃねぇか……確かに、オレの部下じゃ歯が立たねぇ……だがもう油断はしねぇ……さあ、ラウンド2だ!」
「もう十分だ、ケリをつけるぞ!」
しかしこの戦いは第3者の声によって止められた。この声は確か……瀬嶋だったか?見ると優の背後から瀬嶋と御堂さんが来るのが見える。
「クソッ、コイツは捨て駒か!」
優の言う通りだろうな。俺はこいつを誘き出すための餌みたいなもんだろう……やはりNIROはダメだな。
「なぁ、以前はいろいろあったが、今やお前はオレたちと同族。捨て駒同然の扱いを受けてよぉ、お前それでいいのか?」
いいわけないだろ。いつかNIROには報いを受けてもらう。
「……頼む、後生だ。今回だけ見逃してくれ」
……どうするか、いや俺の考えはもう決まってるようなものだ。実は意外にも俺はコイツに敵意を持っていない。むしろ、俺はコイツに襲われたからこそカゲヤシという素晴らしい種に進化したとさえ思っている。
「……仕方ないな」
「……そうこなくっちゃ。ヘヘッ、バーカッ!」
そう言って優は俺に突撃をかましてくるがそれをガードしつつ、聞こえるかどうかは分からないが小声で。
「こいつは貸しだからな」
そう言っておいた。
「……貴様、正気か?化け物に情けなど……」
「そんな事より俺は囮だったのか?」
分かりきっているが一応聞いておく。
「そうだ。技を身に着けたところでお前は所詮、素人だ。こちらが想定していた以上には戦えていたが、やはりダメだ。ならばこういう使い方をするのが最も適切だ……違うか?」
そう言って瀬嶋はこの場を後にする……誤魔化さず正直に言ったのは誉めてやろう。
「騙すようなことをしてごめんなさい。ですが……」
それから御堂さんの長い言い訳を聞いていく……ホントにお前は瀬嶋のこと好きだな。庇いまくりじゃないか。
「と、ともかくお疲れさまでした。次の連絡があるまで体を休めてください」
そう言って御堂さんも帰っていった……ふむ、とりあえず俺も今日は帰るか。
基本モブカゲヤシ戦はカットの方向で。
この小説の阿倍野優は原作よりも大幅にパワーアップしております。