この辺りはかなりオリジナル色が強い。
穏健派との邂逅から一夜明け、今日も日課の秋葉原散策をしていると、急にメールでの呼び出しが掛かった。
「御堂さんか……阿倍野優を発見……ね」
俺はこれを好機と捉えた。瑠衣たちを裏切る気など無いが……やはり俺のバックに付いてくれるのは、カゲヤシ全体じゃないと……NIROはぶっ潰せねえ。
俺はメールに指定された場所へと向かった。
「確かこの辺り……女性の悲鳴!?」
俺が現場近くに着いた時、女性の叫び声が聞こえた。よく見ると、遠くに御堂さんと優が対峙してる様子が見える……しばらく様子を見るか。
「阿倍野優!今度は逃がさないわ!」
「ふっ、誰かと思えば……逃げる気なんて無いね。お前の血は結構うまそうだしなぁ」
「キサマぁ!バケモノどもにやる血はないわ!」
一触即発って感じかね?さて、どうなるか……。
「相変わらずNIROの犬は仕事熱心だなぁ。オレ達にかじり付くとエサでも貰えんのかぁ?それとも……人間らしく、金か?」
「お金ではありません。ですが似たようなものかもしれませんね。あるものを手に入れるためです……平和よ。人間が化け物の影に怯えて暮らさなくてもいい、そんな当たり前の平和な世界。それを手に入れるために、私達はお前達を倒さなければならない!」
フン、随分とご立派な意見だな……どこまでも身勝手な考え方だ……下らない。
「ははっ、立派な意見だなぁ……自分達の平和とやらを守るためなら何をしてもいいってトコか……だったら、オレ達の方も同じだな。散々仲間を狩りやがってからに……それこそオレ達の平和のためにお前らをブっ殺さなきゃいけねぇってもんだぁ」
おっと、優と意見が一緒だ。
「人間の世界に化け物が、我が物顔でいることがそもそもおかしいんです」
やっぱ御堂さん、お前危険だ……こんな奴がいるから平和は訪れないんだろうな。
「人間の……世界ねぇ。ただ数が多いってだけで所有権が決まるなら虫の方が多いぜ?」
「それは……優れた能力を有する種が……」
これ以上のレスバじゃ御堂さん勝てねえし、実際に戦い始めるまえに動くか。
「だとしたら世界はカゲヤシのモンだろうが。オレ達の持つ、人間でさえ憧れる優れた生態は……お?」
「四葉さん!」
「あぁん?またお前かっ!」
「四葉さん、準備はいいですか?」
いや、よくねえな。というかこの状態で優が戦うはずがない。
「ちっ……少しこちらの分が悪い感じか……悪いが逃げさせてもらうぜ。ハハハ!命拾いしたなNIROの姉ちゃんよ!」
「待てっ!くっ、四葉さん、まだ遠くへ行ってないはずです。探しましょう!」
「ん、了解」
俺は御堂さんと阿倍野優を追跡することになる……よし、ここが狙い時ってやつだな。
「御堂さん、あっちに阿倍野優らしき人影が!」
「本当ですか!?」
「ですが見間違いかもしれません。俺はもう少しこの辺りを探すのであちらをお願いできます?」
「わかりました!」
御堂さんは俺の言った方向へ去っていく……人払いは済んだな。
「おい、出て来いよ。いるんだろ?阿倍野優」
……しばらくすると阿倍野優が出てきてくれた。もちろん警戒は解いてくれない……ま、仕方ないか。
「お前……どういうつもりだ?お仲間をワザワザ遠ざけて」
「いや何、お前と話がしたかったんだ……あいつがいると邪魔だからな」
「はぁ?テメェと話すことなんざねえよ!」
「俺にはあるんだよ……まあ聞いてくれよ、優」
俺は優を真っすぐに見つめる……なあいいだろう?少し話を聞くくらい。
「……チッ、何だよ」
「俺はさ、NIROをいつかぶっ潰そうと思ってるんだよ」
「……はぁっ!?」
優が驚く……そりゃそうだよな。いきなり敵の構成員が、所属している組織をぶっ潰したいなんて言い出したらな。だが俺は本気だ。
「俺はさ、優……お前に襲われて、瑠衣に血をもらってカゲヤシ化した後、NIROに拉致られて、無理やり協力させられてんだよ。そんな俺があの組織に忠誠なんて……誓うと思うか?」
「……思わねえな。だがその話が事実かどうかもわかんねえ」
「今すぐ信じてもらう気はないさ……だが、俺はNIROをぶっ潰すためにお前達と協力したいと思っている……」
「何……?」
そうだ、俺はNIROをぶっ潰すため、カゲヤシの仲間になる……!
「まあ今日はその俺の考えを話しておきたくてな」
「……そうかよ」
「そうそう、俺はお前に感謝してるんだぜ?」
「ああ?」
「俺がカゲヤシという素晴らしい種に進化できたきっかけをくれたのはお前なんだからな……ありがとう」
「はあ!?おまっ、何言って……!」
「ハハハッ、今までで一番驚いてるぞ優」
ホント、お前には感謝してる、マジで。だからあの時見逃したんだし……。
「というわけだから、俺はこれで……ああ、あの女には俺が誤魔化しておくよ……またな!」
「………ケッ」
俺は優と別れ、この場を後にした。
ああやった……やったぞ!これでカゲヤシ側との接点も本格的に出来てきた!
「さて、御堂さんに誤魔化しのれんら……お?」
と思ったら御堂さんからまた緊急事態的なメールが……。
「師匠が暇を持て余してるから自分の代わりに相手してあげてって……まあ御堂さんは他に仕事もあるか」
俺は御堂さんにさっきの事を適当に誤魔化しつつ、師匠の相手を引き受ける事にした。
というわけで屋上に来たけど……。
「代理を送るとは聞いていたけど……ユウトかぁ。今の気分はあの子を徹底的にイジめてあげたい気分なんだけど……」
お、俺じゃ不満かな?
「ったく……仕方ないわね。もういいわ……でも、折角来たんだし、お使いにでも行ってもらおうかしら。ちょうどいくつか消耗品が切れかかっているのよ。それを買ってきて」
本当にお使いだな……てかパシリ。
「で、切れかかってる消耗品って?」
師匠から聞くと、必要なのはローションと荒縄と電マだそうだ……完全にアレに使うヤツですねわかります。なんか他にも色々と注文があったが、この秋葉原で全部揃うだろう。
というわけでさっさと買って戻ってきた。パシリに使われるのは癪だが……ただ使われるつもりはない。
「……いいわ、よく手に入れてきたわね。もう帰ってもいいわよ?」
「いやぁ、折角買ってきたんだから、褒美の一つや二つくらい良いんじゃないですか?」
「あら……生意気ね、でもいいわ。暇だったし……お使いのご褒美に、アイドル系衣装の脱がし方を教えてあげる」
「アイドル……」
「秋葉原では今、ダブプリとかいうアイドルが人気らしいじゃない。一度だけ見かけたことがあるけど、人気があるのも頷けたわ。確かにあの子たちはとても美味しそうだったし、隠し持った溢れる果実に私の心も揺れ動いたものよ」
ダブプリ……俺も好きなんだよなぁ……なんでだろうなぁ……現実のアイドルには全く興味ないのに。
「少し話が脱線したわね……話を戻すけど、ああいう衣装は作りがしっかりしていて、場合によっては着ている人を締め上げるように、ガッチリと装着されている場合が多いわ。そう簡単にはうまく脱がせられはしないの……今までの技から一歩進んだテクが必要になる」
「ふむ」
「さぁ、下僕を相手にテクを自分のものにしていきなさい」
……あれ、この展開って………。
「……ほらやっぱり」
俺の目の前には、女子高生の制服を脱がす修行をした時と同じように、アイドル衣装を着たおっさんがいた。
「なによ、その「またかよ」っていう目は。こんなにも上等な子を用意してあげたって言うのに……まあいいわ、さ、始めましょう」
女子高生の時と同じように、一気にカタをつけるしかないな!
「一気に脱がしたるわいオラァ!」
とりあえず服だけを意識すれば脱がしたいという気持ちを保つことができる……というわけで一気に脱がしてみせた。
「いやー!みないでー!!」
「あ、いいですそーゆーの、お疲れさまでした」
俺はさっさと行けと手で払う動作をする。
「グッド……テクを自分のものにしたわね。後は実戦で磨きなさい」
「ご報告いたします……そこでこちらを覗っていた御堂聡子を捕らえました」
と、その時師匠の下僕がまさかの報告をしにやってきた。
「あらまぁ……よく来たわね」
あらまぁ、哀れ御堂さん。
「……あぁ、四葉さんが心配でちょっとだけ様子を見に来ただけなのに……」
「本当に、そうなのかしら……?」
「ほ、本当です!」
「ユウトが持ってきたグッズもあることだし……こっちへ来なさい。嘘か本当か、体に直接訊いてみるとしましょう」
お、そうしようそうしよう。
「わ、私には仕事が……」
「来なさい、早く」
「…………」
「さぁ……」
「……はい」
ようやく観念した御堂さんは師匠の元へ向かう。
「ユウト、もう帰っていいわよ。これから私は聡子をイジ」
「く、訓練です!」
「フフッ、そうね、訓練よね。これから私は彼女の訓練で忙しくなるから、もういいわよ」
「ウッス!訓練頑張ってくださいッス」
「……あっ!そんな、いきなり……!!ああッ!イタッ!」
「激しい訓練(意味深)だなー」
俺は御堂さんを助ける義理もないのでさっさとその場を後にした。
次回、メインヒロイン登場。