終末世界の壊れた神機使い   作:真鳥

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12 降り立つ神罰

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「可愛い坊や、私と一緒においで。

 

 楽しく遊ぼう。

 

 キレイな花も咲いて、

 

 黄金の衣装もたくさんある」

 

 お父さん、お父さん!

 

 魔王のささやきが聞こえないの?

 

 落ち着くんだ坊や

 

 枯葉が風で揺れているだけだよ

 

 

 

 

 

 

 

 

シューベルト 戯曲「魔王」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 唸り猛る金色の巨軀を持つヴァジュラ。

 

 突如として現れた小さなアラガミは己に用意された卓上の馳走ヶ原の餌を無作法に無遠慮に意地汚く摘み食いをする。

 

 しかも、とりわけ極上の美味なる人間の幼体を貪っているではないか。

 

 赦せん。何という愚行。

 

 せっかくの晩餐が台無しだ。

 

 立腹。

 

 巨体をのそりと起こし、フツフツと煮え立つ怒りに任せて周囲の邪魔な人間どもを羽虫を払うように薙ぎ払う。

 

 万死に値する。

 

 吠える。凄まじい怒轟。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ******

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 オレには解る。ヤツは怒り心頭、怒髪天ってやつだ。

 

 まあ、当然か。いきなりテーブルの上の料理を横から見ず知らずの野郎に掻っ攫われたら頭にも来るだろう。オレだったらブチ切れるね。

 

 だが、ダァメ、ダメだ。もうこのテーブルのディナーはオレ様が頂いちまったからなぁ。テメェにはオレ様が食い残した残飯がお似合いよ。

 

 「やる気満々、腹も満々。腹ごなしの運動に丁度いいぜ。相手になってやるよ。テメェは食後のデザートにしてやる」

 

 おどけた口調で言いながら鋭い牙を歪ませ嗤い、血濡れたズタボロの外套をバサァと投げ捨てる。

 

 互いに睨み合い、臨戦態勢。

 

 先に仕掛けたのは金色のヴァジュラ。

 

  拡げたマントを帯電させ、空気がプラズマを帯び、巨大な雷球を発生させ、撃ち放つ。強烈な電熱のエネルギーに信者の人間たちが巻き込まれて蒸発する。

 

 対し、オレは口を開けてエネルギーを瞬時に充填。蒼黒の雷球を作り出し、ゴールドヴァジュラの大雷球に向けてぶっ放す。

 

 二つの雷球が衝突。閃光を散らし、迸るスパークの渦流。ヴァジュラの大雷球を突き抜け、オレの蒼黒雷球が貫くも、ヤツがその巨体に似つかわしくない動作で素早く跳躍し回避。

 

 オレの雷球はホールのドームを抉り取り、穴を空けて外野へと消え去る。ヤツはそのまま此方に向かって空中から複数の雷球を連続して繰り出す。

 

 右腕のヴァリアントサイズを展開。オレは襲来する雷球を次々と斬り裂き、器用に後ろに宙返りしながらバックジャンプし飛び退く様にブレード波を射出。のし掛かるように落下攻撃して来たヴァジュラに着弾。着地時に爆発するようにプラズマを纏い、咆哮をする金色のヴァジュラにすかさず斬りかかる。同時にヴァジュラも此方にタックルしてくる。

 

 飛び掛かるヴァジュラに斜めに構えた鎌刃を振り下ろす。火花と雷光が弾け、ヤツの額の角冠に阻まれる。おお? なんだ、コイツ。めちゃんこ硬いぞ。ヴァジュラは首を薙ぐように振った後、前方にタックルしてくる。オレは元の位置よりも後ろに飛び退き躱す。

 

 前方に向けて前足の鉤爪で追撃のフック攻撃するヴァジュラ。出が速い。紙一重で籠手で受け流す。

 

活性化した雷を纏うヴァジュラ、前方中範囲に連続爆雷を放ってくる。

 

 引きつけてステップで回避しつつ無数に飛来する落雷の間を抜ける。鎌刃でヤツの外皮が薄い首を狙った一撃を喰らわす。

 

 だが、なんと金色のヴァジュラはオレの鎌刃を噛み付いて防いだ。首を180度グルンと捻り上げオレを空中に真上に放り投げやがった。

 

 マントを帯電させながら吼えた後、自分の周囲を爆破、超跳躍。

 

 その場からこちらに向かって飛び掛り、体当たりをかましてくる。すかさず、壁に着地と同時に衝撃波を発生させ、再び飛び掛かる。衝撃で吹っ飛んだオレを空中で追うようにまた空中三角蹴り、飛び掛って体当たりし、着地地点に衝撃波を発生させ、再び別の場所から飛びかかる。

 

 電光石火。まるでピンボールのようにオレをバシバシ弾き飛ばしながら超高速の連続攻撃。

 

 はっ、ただデカいだけのヴァジュラかと思ったらめちゃくちゃ強えじゃねえか。

 

 籠手でガードし、尻尾で薙ぎ払い、反転し鎌刃で打ち返す。

 

 金色のヴァジュラが残像を描きながら、突攻を繰り返す。お互いに打ち合い、攻撃を繰り返す。

 

 ははははっ! 楽しいっ! やっぱアラガミはこうじゃなきゃあなっ! 吠えて、猛って、嬲って、壊して、喰らう。いいぜぇ、オレも身体が暖まって来たところだ。思う存分、本気で楽しませてもらうぜ。

 

 オレの身体が軋む。華奢な肢体が膨張する。ヒトの形からナニカ別のモノへと変わっていく。

 

 圧倒的なパワーに満ち溢れ、凄まじい荒々しいエネルギーが暴走するように全身を再覚醒させ駆け巡る。

 

 細腕は長く滑らかながら鋭角な鉤爪を備えて、脚は丸太のように太く強靭に、胸板は張ちきれんばかりに厚く鎧のように。鼻先が尖り伸び上がり、顎が突出し、口角が裂け広がり露わになる並ぶ乱杭歯。

 

 身体中の鱗は結晶の刃を纏うように覆い、背中には翼のように蒼い燃えるような雷の翼が拡がる。

 

 それは竜。

 

 生きとし生きるものの頂点。伝説上の幻想生物。

 

 巨大な体躯に紫煙の吐息を吐き、禍々しい大角を備える。

 

 爛々と輝く紫紅の瞳に暗い炎を滾らせる。

 

 蒼黒の魔竜。

 

 突如の敵の変わりように驚く金色のヴァジュラ。オレは左腕を大きく振りかぶり、思い切り籠手をヤツの横っ面に叩き付ける。

 

 吹き飛ぶ金色のヴァジュラ。それを追いかけ滑空し、両脚を揃えてドロップキック。

 

 ヤツの背中のマントごと外殻が減り込み、骨がひしゃげた音がする。

 

 んん〜〜〜〜、ナイスッ!イイねえっ。手応えアリだねぇ。

 

 そのまま壁に金色のヴァジュラは激突。

 

 ヤツは瓦礫の中からヨロヨロと這い出し、吠える。激おこプンプンだ。

 

 潰れたマントを拡げ帯電させ、雷球を幾つも作り出しオレに向けて放つ。

 

 残念ながら、それはもう見飽きた。本物の雷撃ってやつを教えてやるぜ。

 

 オレは逆鱗にエネルギーを集約、解き放つ。

 

 ヴァジュラを雷球ごと包み込む蒼黒の大雷。ヤツは絶叫を上げる。何が起きたか、解らずに。

 

 もう一回、大雷を召喚。うねり暴れ狂う蒼黒の龍蛇がヴァジュラを喰らい、飲み込む。

 

 周りにいる人間どもが歓喜の声を上げながら、巻き込まれて消し炭となって死んでいく。

 

 なんだコイツら。逃げもしないのか。オレたちの戦いを観戦して喜んでやがる。とばっちり食らってバンバン死んでるのに気にもしない。

 

 まあ、いい。こういうのも悪くはない。オラ、人間ども。お前らが大好きなアラガミ様のカッコいい御姿を目ん玉おっ広げて特と拝みやがれ。

 

 半死半生状態の立っているのもやっとな金色のヴァジュラにタックルを噛ます。

 

 人間諸共吹っ飛ぶヤツに拳を握り込み、殴り付ける。連打。連打。連打。サンドバッグだぜッ!オラオラオラッ!鳴けッ!喚けッ!叫べッ!オレにもっと悲鳴を聴かせろッ!!

 

 顔面が潰れ、肉がひしゃげ、骨が砕ける音が心地良く響く。

 

 猛烈に訪れる空腹感。そんな獲物の姿を見て耐え難い飢餓が襲う。

 

 喰いたい。喰いたい。喰いたい。

 

 気が狂いそうなまでに捕食への欲求がやってくる。

 

 クイタイ。クイタイ。クイタイ。

 

 オレは右腕の巨大なヴァリアントサイズを振り上げ、金色のヴァジュラの胸倉目掛けて、突き立てる。

 

 凄まじい絶叫が谺する。

 

 抉る。貫く。穿くる。弄る。掻き回す。

 

 寄越せッ!ヨコセッ!オレに喰ワせロッ!オ前の心臓ヲっ!

 

 そして引き摺り出すアラガミの心臓たる"(コア)"。

 

 オレは高々とそれを優勝トロフィーを得たスポーツ選手の如く掲げる。

 

 そしてそれを大口を開けて頬張り、貪る。

 

 満たされる飢餓感。満ちる多幸感。満ち満ちるアラガミの力の奔流。

 

 これでオレはアラガミとして、より完璧に近づいていく。

 

 ん?アラガミ?あれ?オレは人間のはず?ゴッドイーター、AGE、神機使い…………んん?待てよ?そもそもオレは誰だ?オレの名前は………そういえば、誰かに名前を貰ったような気が………

 

 ………誰だっけ?確か、眉間に十字傷がある髭のおっさん………そうそう、今オレのことを驚愕の表情で見ている人間だ。

 

 名前は………ゔぇ、ゔぇ……ヴェル、ナー………ああ、そう、だ………オレ、の………名前………貰った、名前………

 

  意識が………遠く………なる………

 

 オレの意識はそこで途絶えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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