終末世界の壊れた神機使い   作:真鳥

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15 吹雪の声

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私の中にはふるい落とすことのできない無宗教的なものがある。

 

 私は何も否定しないが、すべてを疑う。

 

 

 

 

 

                   バイロン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 悠々とした巨軀を誇るプリティヴィ・マータと思しき巨大アラガミ。

 

 役に立たない帝王を始末した本当の統率者たる氷の女王が自身の縄張りを荒らす不届き者どもを凍える冷気を吐き、睨み据える。

 

「うわぁ…………すっごく大っきい…………あれ、でも似たよなヤツ倒したけど? 違うの?」

 

 突如出現した巨大なアラガミを感心したように見上げるベル。

 

「あれは…………プリティヴィ・マータか? だが、あんな異様な亜種は見たことが…………いや、以前にターミナルのデータベースで閲覧したことがある。間違いない。アイツは恐らく《バルファ・マータ》だ」

 

 データベースのアラガミ項目参照で見た記憶を憶い出し顔を顰めるヴェルナー。

 

 バルファ・マータ。

 

 プリティヴィ・マータの異常進化個体。

 

 外見こそ原種と変わらないが、攻撃力を筆頭に全ステータスが強化されており、特にオラクル弾の火力向上が著しく、離れれば雨あられの弾幕を展開し、今までは隙だったタイミングもそれらオラクル弾のせいで近付きにくくなっているなど、非常に手強くなっている。 そのため、同じだと舐めて掛かると散々な目に遭わされることは避けられないだろう。

 

 そのようにデータベースでは記載されていたはずだが、この個体は記述のバルファ・マータとは大きく異なるのは見た目通り明らかだった。

 

 何より通常種を遥かに超える巨軀。そして身体中に纏う鋭利な氷槍が針ネズミの剣山さながら聳え立つ。

 

 恐らくは灰域に順応適応した変異体と推測される。

 

 バルファ・マータの変異体と思われるアラガミは巨体を揺るがして高々と咆哮を響かせる。

 

 すると、どこからともなくディアウスピターとプリティヴィ・マータの群れが廃虚の影からヌウゥッと現れた。

 

 ヴェルナーとベルを取り囲むアラガミの大群。

 

「ありゃりゃ、またいぱい出てきちゃた。どする? ヴェルナー」

 

「…………ふむ。予定にない団体さんの来客は、御遠慮願いたいところなのだが…………致し方ない」

 

 無数のアラガミの大群に囲まれつつも二人はまるで戸惑うことも動じることもない様子で周りを伺い、

 

「すっぱり御退場願おうか。征くぞ、ベルッ」

 

「りょーかいッ、ヴェルナーッ」

 

 掛け声と同時に襲い来るアラガミたちに、二人のゴッドイーターは背中合わせに神機を構えて迎え討つ。

 

 鋭い鉤爪と牙を剥き出し、氷の槍を降り注ぎながら飛び掛かるマータの群れに怯むことなくバイティングエッジを両の手に構えるヴェルナー。

 

「ダンシングダガーッッッ」

 

 刀身にオラクルエネルギーを纏わせ舞うように双刃から斬撃の乱打を繰り出し、次々に飛び掛かるマータたちを斬り裂き伏す。

 

「セラフィックエッジッッッ」

 

 ステップ移動し右下から斬り上げ、迫るマータの懐へと掻い潜りつつ肉体を断ち切る。

 

 それでも補充されるように後から後から続々増加の一途を辿るマータ。

 

 ヴェルナーは空中で斬り上げたバイティングエッジの柄元を繋ぎ、薙刃形態にチェンジする。

 

「百花狂乱ッッッ」

 

 薙刃状の両刀身にオラクル細胞を活性化させ攻撃範囲を拡張し威力を強化した乱舞をマータの大群目掛け叩き込む。

 

 吸い込まれるようにマータたちが縦横無尽に回転する薙刃の乱流に飲み込まれ粉々に刻まれ散って逝く。

 

「ヴェルナー、強いっ! カコいいっ! よ〜し、オレも頑張るっ! 絶対負けないゾっ!!」

 

 人面狒々の邪悪な顔をしたアラガミ、ディアウスピターが何体も翼の刃を広げ無数に雷球を撃ち放ち青髪の少女を捕らえるべく猛々しく獰猛に襲撃する。

 

 雷電の豪雨を軽やかに身を翻し躱し、躍り掛かる強靭な牙、爪、翼刃を左腕の蛮柄紋様の籠手からタワーシールドを展開して紙一重にジャストガードし捌き、乱れ飛ぶ猛威の中で華麗なダンスマカブルを披露する美しき異形の姿の乙女ベル。

 

「ヘルズゲートッッッ」

 

 流れるように滑る動作のハイステップで猛攻を掻い潜り、すれ違いざま神機を構え飛び上がり、全力でピターに向ってヴァリアントサイズを振り下ろす。

 

「ソウルイーターッッッ」

 

 薙ぎ振るう右腕ガントレットのヴァリアントサイズが光刃の軌跡を描き神機と身体をシンクロさせ、ディアウスピターたちの巨軀に命中させ硬い外骨格を深々と撫で斬り裂く。

 

「ヘルオアヘブンッッッ」

 

 伸び上がる蒼黒の大鎌の刀身が輝き収束し、並ぶピターたちを幾重も連なる鉤裂きの鋸刃が貫き、一気に弾き掻き斬る。

 

 断末魔を響かせ、ピターたちは一体、また一体と数を減らして倒れる。

 

 あれだけの数のプリティヴィ・マータとディアウスピターの大群があれよあれよという間に二人のゴッドイーターに尽く斃されてしまう。

 

 先程の戦いから連戦にも関わらずヴェルナーとベルの勢いは衰えず、寧ろ戦えば戦うほど技のキレと威力が増していく。

 

 並の神機使いでは、ここまで闘えず耐え切れないだろう。灰域に適応した二人がAGEということを差し引いても異常だ。

 

 まるでアラガミ同士が争っているようにも見えるのは気のせいか? 

 

 瓦礫の丘上で終始戦いを眺めていたバルファ・マータが自軍の劣勢に痺れを切らし咆哮を木霊した。

 

 凄まじい冷気の奔流が渦巻き大地から巨大な氷柱が何本も突出し、戦っている最中のマータやピター諸共に貫き、凍らせてしまった。

 

「何て強力な冷気だ。あの攻撃範囲は厄介だな」

 

「ウヒィ〜っ! 寒い〜っ! ちゅめたいっ! 尻尾の先ちょ、ちょと凍たっ!!」

 

 アラガミの氷像が()()え立ち並ぶ真っ白な霜が舞う戦場の只中に盾を構えジャストガードで耐え凌いだヴェルナーとベル。

 

 そこへ、バルファ・マータが大跳躍し飛び掛かる。

 

 両者が瞬時に左右に飛び退き避ける。

 

 降って来た青白き巨体が凍てついたマータとピターの氷像群を粉微塵に破砕し、大地を抉りクレーターを齎らす。

 

 即座にバルファが自身の周囲に氷の大槍を形成し四方に発射し、空を切り凍える氷の槍がヴェルナーとベルの二人に目掛け飛来する。

 

 即座に迫り来る氷槍を神機で斬り裂き壊す二人だが、バルファは再び氷の大槍を展開してマシンガンを速射するように一斉掃射を始める。

 

「ぬうぅっ! これでは近づけないっ! これではスタミナを削られ、いずれやられてしまうっ!!」

 

 近づこうにも正確無比な射撃で牽制するバルファの氷槍の連射攻撃に手をこまねくヴェルナー。しかも誘導性に飛び、多段ヒットする氷塊は此方の行動を防ぐ。このままではキリがない。何とか打開しなければ。

 

「オレに任せてっ! ウおおおおぉっ! おォりゃあ〜〜〜〜ッッッ!!!」

 

 氷槍の掃射を弾き返し、ベルが走り特攻を仕掛ける。

 

 直ぐにバルファは自分に接近する敵に反応し撃ち込む氷槍の数とスピードを上げるが、そのすべてを躱し、破壊し、徐々にバルファに果敢に接近するベル。

 

「トリニティスピンッッッ」

 

 宙空に飛び上がり咬刃状態に変形させたヴァリアントサイズの連続回転斬りを繰り出す。

 

 縦に旋回させる大鎌の三点回転攻撃が射出される氷槍を破壊、圧倒し、バルファ・マータの眼前まで迫る。

 

 バルファ・マータが危険を察知し後方に素早く飛び退く。

 

「隙ありだっ!!」

 

 死角から薙刃を携えたヴェルナーがバルファ・マータの懐に入り、渾身の一撃の袈裟斬りの斬烈を放ち、肩口から胸元までバイティングエッジの薙刀が裂傷を刻んだ。

 

 さらにベルのトリニティスピンがクリーンヒット。ヴァリアントサイズの切っ先がバルファに深く骨格を削り、胸先に喰い込んだ。

 

 しかし、コアには届かず致命傷に至らない。あまりにもバルファの外皮が硬すぎたのだ。

 

 絶叫を上げるバルファ・マータ。己れを傷つけられ怒りに満ち満ちた怨嗟の唸りの雄叫び。

 

 その身体から極低温の大冷気が溢れ出し、あらゆるものを瞬く間に凍てつかせる。

 

「や、ヤバッッッ」

 

「まずいっ! 離れるんだっ、ベルっ!!」

 

 場一帯が、すべて白き死の氷に覆われた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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