追放の罪人の杖 發明の學者の燈火
陰謀家絞首の刑徒の 告白の聽聞の蹭
おゝ、惡魔
わが打續く惨狀を憐みたまへ
魔王連禱
シャルル・ボオドレエル
強烈な眩き閃光の帳が徐々に蕩けて昇る。
白墨の支配世界から冷たい白霜の地表に均しめ、現実にゆっくり貶める。
一面雪の大地に立つのは左腕を巨大な銃身に形造った褐色の異形の美少女のみ。
「はんっ、ちょいとリザーブしたオラクルの量が多かったみたいだな。力が入り過ぎて跡形も無くどっかに消し飛んじまったぜ。よっこらせッ」
禍々しい形の照射銃、レイガンの砲塔部位から蒸気圧の煙りが幾つも噴射し排出される。
そうして左腕が形状を音を鳴らし変えて、愛らしく華奢な少女の元の腕に戻った。
「あ〜あ〜っ、最初はなんやかんや楽しかったんだけどなぁ………中途半端だから不完全燃焼で全然ヤリ足りない気分だぜ」
手を握ったり開いたりグーパー動かし腕先と背筋を伸ばし不満げにする少女。
「…………ベル…………今のキミは、どちら何だ? …………それがキミの本当の姿だというのか?」
あれほどの戦闘を行い巨大アラガミを容易く屠った異能の少女に本来ならばその無事を称賛し讃えるべきなのに、止め処もない畏怖を憶えてしまうヴェルナー。
そんな瓦礫に蹲るヴェルナーをチラッと見たベル? がニヤァと好色な下卑た笑みを浮かべる。
「んん〜? あぁ、そういや、おっさんが居たんだっけ? アイツが気紛れで助けたAGE、ゴッドイーターの…………そうだ、イイこと思いついたッ♡」
その場からジャンプしヴェルナーの眼前にストンと着地すると、瓦礫に身を預けるヴェルナーに対して長いクネらせる尻尾で身体を払い押し倒す。
「うぉっ!?な、何を…………ッ」
仰向けて倒れるヴェルナーが突如の少女の行為に慌て半身を起こそうとすると、
「えいっ♡」
少女がヴェルナーの身体に飛び乗り押さえ付け、跨がって伸し掛かってきた。
「うっ!?」
「ふふん♡オレ様の欲求不満の解消に、ちょっちばかり付き合って貰うぜ? おっさん♡オスのおっさん、メスのオレ、やることと言ったらこれっしょ♡まったく全然興奮が治まらなくてよ♡我慢出来そうにねえんだわ♡」
顔を紅く高揚させた少女がニヤニヤしながら、いやらしく赤い舌をベロォリと伸ばし垂らす。まるで発情期中のメスの動物のような淫靡さが溢れ出ている。
「な……」
その意図を理解したヴェルナーの顔が青褪める。先の戦いのダメージがまだ上手く抜け切らず動かない身体を無理に動かそうとし、少女の身体を払い除けようとする。
しかし少女の太い尻尾が上半身にシュルルルと蛇行し、暴れないようにグルリと巻き付いてしっかり固定してしまう。
「ダ〜メだって♡おっさんはもうオレの獲物なんだよ♡オレのモノ♡だぁ、かぁ、らぁ♡大人しく喰われてくれよ♡あ、もちろん性的な意味で♡ひひひッ♡」
覆い被さる少女の肉体に纏う結晶の鱗が引っ込み消え、胸も秘部も包み隠さず裸身を晒してしまう。
「ぐぅううぅッ! 私はッ、キミとそんな真似をするつもりなどッ」
ヴェルナーは声を荒げ身を捩り抵抗するが、少女の巻き付く尻尾の締める圧力に逆らえない。
「ハハッ♡解ってるさ、おっさんもずっと我慢してるんだろ? いつもこんな美少女が裸みたいな格好で無防備に毎日側にいるんだもんな♡オスなら反応して当然だよなぁ♡ほらほら♡」
少女がニヤつき両手で掴み寄せ上げた豊満な双丘をヴェルナーの身体に押し付けてムニュンムニュンと軟らかさと弾力の感触を直に与えてくる。
さらに下半身に跨った腰を密着し、入念に下腹部に押し付けてくる始末。
甘い悩ましい吐息を漏らし顔を間近に突き合わせ、首元に舌を這わせ、ジワリ滲む汗を舐め取る。ゆっくりヌメる舌先が首から胸元に這い寄り下に下に降りる。
「くッ! よせ……ッ!」
艶やかな裸体の美少女の生々しい応酬、だが今のヴェルナーには嫌悪感にしか感じられない。
「なんだよ、イマイチ乗ってこないなぁ。満更じゃ無いくせに。アンタがアイツに頼めば悦んで腰振って交尾してくれるぞ? まあ、いいさ♡オレ様が最高に気持ち良くしてやるからよ♡アンタはそのままじっとしてろ♡」
跨がる少女の細い指先が下腹を丹念に弄り、やがてズボンのベルトに触れ外される。
「ベルッ! キミは本当にこんなことがしたいのかっ!? キミの意思はそれでいいのかっ!? 目を覚ませッッッ」
必死に身を捻って暴れて抵抗し言葉を投げかけるヴェルナー。
「はぁ? 何言ってんだ、おっさん。それにこんなにでっかくおっさんのMy神機を戦闘態勢にしやがって♡お盛んな御立派様をたっぷりとメンテナンスしてやる♡こうやってオスはメスにぃ〜、逆にメスはオスにぃ〜。それが自然の摂理だろ〜?」
「偽物のキミではないッ! 私は彼女にッ、本当のベルに話をしているッ! 私の声が聞こえているかッ! ベルッッッ」
「…………ふん。いくら呼んでも無駄だっての。アイツはぐっすりとお寝んねタイムしてるからな。それにオレも正真正銘本物のベルだぜ? …………傷付くなぁ、んな態度取られたら…………はぁ……優しく気持ち良くイカしてやろうと思ってたのによぉ…………」
それまで上機嫌な感じだった少女の雰囲気が邪悪なものに変わる。
「…………よぉし、死ぬほど徹底的に、ミイラになって干からびるまでおっさんの種を超〜〜〜〜搾り出してやるぜぇ…………♡そうしたらニンゲン共も、アラガミ共も腹いっぱい捕食して食い尽くしてやる。ハハハッッッ」
ギラつく剣呑な瞳を意地悪く細め、笑う少女が動けないヴェルナーに大きく開脚し腰を落し跨がる。
「やめろッ!! ベルッッッ!!!」
「アハハハッッッ、ニンゲンなんて所詮はこんなもんよッ。変わらない、オスだろうがメスだろうが、なんてことない。ヤルことなんて変わらない。どいつもこいつも自分勝手なヤツらばかり…………これならアラガミの方がよっぽど自然体に生きて…………生きて…………アラ、ガミ? ニン、ゲン? オレ、オレ、は…………ッ」
跨がり笑っていた少女が突然に頭を押さえて苦しみ出した。
「ガ…………ッ、グ…………ッ! ニンゲン…………アラガミ、チガウ…………ッ!」
「ベル…………? ベルッ! 起きろッ! 目を覚ますんだッ! 起きるんだッ!!」
「クソ…………ッ、もう目覚めやが…………ッ、チクショ…………また、檻の、中、に…………ッ、う、ガガガガ…………アアアぁぁぁッッッ─────」
ヴェルナーの呼び掛けに頭を振り乱すベル。
ピタリと動きが止まり、糸が切れた人形のようにヴェルナーの身体の上に倒れ込んだ。
拘束されていた尻尾も力無く外れて解放された。
「う…………ヴェルナー……」
「気が付いたか、ベル」
少女の額にかいた汗を優しく拭ってやる。
「…………オレ、怖い夢、みた…………」
少女が震える手でヴェルナーに縋る。
「…………オレ、オレじゃなくなる…………みんな、食べちゃう夢…………何もかも…………ヴェルナーも、食べちゃう、凄く嫌な…………怖い夢…………」
「大丈夫だ…………私はここにいる。ここにいるよ」
小さく震える少女を抱きしめる。
「ここにいる。キミの側に。大丈夫」
ヴェルナーは少女を抱き留めながら謎だらけの少女の闇に触れて考えた。
いずれまた、この少女の中の、もうひとりの少女が現れることは遠くないだろう。
何かしら対応策を講じなければならない。
しかしどうすればいいのか、まだ判らない。
霜が冷たい風に乗って舞う。
本来なら決して交わることが無かった二人の道筋。
胸の中の震える少女と、支える男。
雲間から僅かに差し込む陽の暖かさ、それだけが唯一の救いのように二人を淡く照らし包み込んだ。