終末世界の壊れた神機使い   作:真鳥

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2 私に力を

 

 

 

 

 

 

 知恵は悲しみである。 

 

 

 最も多く知る者は、最も深く嘆かねばならない。

 

 

 知恵の樹は生命の樹ではない。

 

 

 

 

 

バイロン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれから灰域を彷徨い、寄ってくるアラガミを倒したり、やり過ごしたりしていた。

 

 ここがどの辺りか分からない。

 

 食糧も水も心許ない。

 

 灰域踏破船でも通ればいいのだが、一向に見かけない。人の気配など微塵もない。

 

 懸念なのは偏食因子の投与が出来ていないこと。神機のメンテナンスもおざなりだ。自分だけでは限界がある。

 

 いつまでもこのままではマズイのは解っている。

 

 早くなんとかしなければ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 神機の調子が悪い。

 

 大型の灰域種アラガミと戦ったせいだ。ついていない。

 

 灰域種はなんとか追っ払ったが、オレも手痛い傷を負った。神機の変形機構が上手く動かない。ちくしょう。分身するのは反則だろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アラガミの餌場に湧き水溜まりがあったのは僥倖だった。

 

 喉の乾きは癒えたが、腹が減って仕方ない。今はあまり動きたくない。ここを拠点に活動しよう。

 

 この間、戦った灰域種が彷徨いているのを見かけた。

 

 多分オレを探している気がする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 最後の携帯食糧が無くなった。

 

 食べる物がもうない。

 

 喰灰の影響か、あらゆる物質が変異している。

 

 なんでもいい。何か食べられるモノを探さないと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 腹が減って仕方がない。

 

 空腹で目眩がする。おかしくなりそうだ。

 

 アラガミはその辺の土塊や瓦礫を食っている。試しにオレも真似してみたが、食べられたもんじゃない。

 

 ダメだ。腹が減り過ぎた…………肉が喰いたい…………

 

 …………アラガミって喰えるのだろうか? 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その辺のオウガテイルを倒して喰ってみた。

 

 結論、マズイ。

 

 味の無い粘土細工を食べてるみたいだ。

 

 だが、腹は多少なり膨れた。

 

 この際、味は二の次だ。食べられることが判れば狩るだけだ。

 

 次は猪っぽいアックスレイダーを狩ろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 いろいろなアラガミを狩って喰ってみたが、当たり外れが個々で大きいことが解った。

 

 アックスレイダーは見た目通り肉っぽい質感だ。ザイゴードは鳥かと思ったが微妙だった。コクーンメイデンは完全に金属物質だった。マインスパイダーは爆発するので食べるどころではなかった。

 

 中型はシユウやネヴァンが一番鶏肉らしかった。大型はヴァジュラがまあまあだった。

 

 アラガミの外殻をフライパン代わりに料理の真似事をした。調味料が欲しかったが、仕方ない。

 

 あと、ちょっと前に歌のようなフレーズを延々と発生させている変わったハバキリを見かけた。関わらないほうがいい、ハバキリは嫌いだ。

 

 この時オレは気付いてなかった。

 

 偏食因子の投与期限は、とうに過ぎていたこと、オレを付け狙う灰域種が虎視眈々と罠を張り巡らせていたことを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 クソッ! クソッ! クソッ! やられたっ!! 例の灰域種だっ!! 

 

 オレの拠点で待ち伏せされていたっ! 捕食されたっ! 右腕を喰われたっ! 肘ごと丸ごと持っていかれたっ! 痛いッ! 痛いッ!! 痛い痛い痛い痛いィィィッッッ!!! 神機も破壊されたっ! オレのヴァリアントサイズが、バラバラにッッッ!!! 

 

 なんとか反撃して逃げ延びたが、ヤツは今もオレを探している。見つからないように隠れているが、気が気じゃない。

 

 止血したが血が止まらない。大量に失血したからか、意識が朦朧とする。コアが剥き出されたボロボロになった、形をなさない神機を抱き、傷付いた身体を丸めて戦々恐々縮こまる。

 

 …………今度こそゲームオーバーか。

 

 思えばロクな人生じゃなかった。大好きなゲームの世界だったが、現実に生きるにはあまりにも厳し過ぎた。女の躰に生まれ、散々看守どもの男に媚びて生き残り、最後はアラガミにやられて終わりか。

 

 だったら最初から人間じゃなく、アラガミだったら良かった。何者にも誰にも負けない強いアラガミだったらこんな目に遭わずに済んだかもしれない。

 

 …………眠い。意識が遠退く。

 

 

 ああ、次に転生するならアラガミだ。

 

 

 ずっと苦楽を共にした相棒の神機、煉真竜の残骸を残った隻腕で握り締める。

 

 やがて、オレの意識は暗い闇の底に沈んでいった。

 

 深く、深く、ずっと深い場所へと──────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 濃密な喰灰が澱む灰域の奥底、そこに紫色の巨大な結晶体が針山のように幾つも形成され埋め尽くされていた。

 

 透き通る鋭針の塊りの中央部に膝を抱えて蹲る巨軀の竜を思わせる不気味な影が映る。

 

 まるで揺り籠、母の胎内で眠る赤子のように、ソレは緩やかに脈動を繰り返していた。

 

 

 いずれ目醒める時を待ち侘びて………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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