終末世界の壊れた神機使い   作:真鳥

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26 大義の傀儡

 

 

 

 

 

 

 

 

 快楽を己の肥料となる欲望の大樹よ、

 

 お前の樹皮が次第に厚く、固くなりいくにつれて、

 

 お前の梢は太陽をより間近に見んと欲す! 

 

 

 

 

 

 

 

「悪の華」より シャルル・ボードレール

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 黒い波動は、徐々にダムドオーディンの巨軀を覆い、ジワリジワリ包み込む。

 

 同時に身体のあちこちから夥しい黒褐色の触肢のようなものが伸び生える。

 

 それらは植物の枝にも酷似していた。

 

 まるでダムドオーディンを苗床に成長する大樹、大樹ならば、北欧神話に語られる世界樹ユグドラシルが連想されるか。

 

 だが、あまりにも禍々しい。これは世界樹などではなく、破壊の象徴たる異姿だ。

 

 意思を持ったかのように縦横に幾重にも絡み合い、網目に伸びて、呼び寄せるアラガミの群れを端から呑み込み喰らって己が養分とし、更にその幹胴と触枝を成長させ、増やし生やし伸ばす。

 

 

「な、なんだこれはっ!? 私のダムドオーディンにこんな機能は搭載されていないぞっ!! どうなっているのだっ!?」

 

 犬飼がモニターに映る変容したダムドオーディンに慄く。

 

「ダ、ダムドオーディンの偏食因子が規定数値よりも大幅に上昇していますっ! 110、150、に、200……こ、これは、まさか……暴走ッ!?」

 

 スタッフたちが羅列されるデータを解析し、その異常極まりない数値のありように驚愕する。

 

 騒つく研究室。その間にもダムドオーディンは手当たり次第に呼び寄せたアラガミの群れを気味悪い触枝で取り込んで、ますます姿形が異形に変わっていく。

 

 そのモニターの一画に別の映像が映し出された。

 

『……犬飼くん。これは一体全体どういうことかね?』

 

 軍服のサーコートの人物。今や崩壊したフェンリルに取って代わった生化学大企業エキドナ総帥ギデオン・ヴォルフ。

 

「ギ、ギデオン氏っ!? ち、違うのですっ! これは想定外の出来事ですっ! 直ぐにっ、直ぐに、修正を……ッッッ」

 

 突如の研究出資者の登場に焦る犬飼。

 

『……これまで、君の研究には我々エキドナは莫大な出資をしていた……我々の壮大なる理念と共に……君には随分と期待をしていのだが……実に残念だ』

 

 ギデオンの鋭い刺すような冷たい視線がモニター越しの犬飼を貫く。

 

「まっ、待ってくださいぃっ! ギデオン氏っ!い、今一度っ! 今一度、私に機会をッッッ」

 

 懇願する犬飼。しかし無慈悲にモニターの映像は消え、断たれてしまう。

 

 犬飼は口を開けたまま、がっくり膝を着き、ただただ呆然とするも、ダムドオーディンの異形化は進行していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ******

 

 

 

 

 

 

 

 

 無数の触手を幾本も伸ばして、ヤツは見境なくアラガミを食い続ける。

 

 そのせいか、ヤツの身体は何倍にも醜く巨大に膨れ上がっていた。

 

 チッ……ッ! なんだってんだ一体……っ! ただでさえ、うすらでかい図体のくせに。

 

 その触手がオレにまで襲い掛かり、オレはそれを薙ぎ払っていく。

 

 オレすら諸共をも喰らおうと迫り来る触手の波を端から切り飛ばすが、斬る側から再生してしまいまるでキリがない。

 

 雷撃を放ち纏めて消し飛ばすが、あっという間に元通りに触手は再生され、再び襲ってくる始末。

 

 クソったれ……このままじゃあ、埒が開かない。ならば、狙うならヤツのコアをやるしかない。

 

 オレは咆哮し、最大限の雷のエネルギーを身に纏い、ヤツに向かって飛翔する。

 

 加速。加速。更に加速。

 

 ヤツの胸倉目掛けて、猛スピードで突っ込んでいく。

 

 蒼雷の稲妻が触手の群れを焼き払いながら、一直線に疾り抜け────

 

 

 激突。

 

 

 ダムドオーディンの外殻装甲を突き破り、魔竜の体躯が深々と胸部に食い込む。

 

 思った通りだ。

 

 さっきのオレの雷砲の痕がある。まだ完全に内部は傷が修復されていない。

 

 オレはありったけの雷を放つ。

 

 肉が爆ぜて焼け焦げ、内部がより剥き出しになる。それを何度も繰り返してやると、丸い明滅する物体が身体の奥側から露出する。

 

 ……あったぜっ! ヤツのコアだっ! 

 

 コイツをっ!ぶっ壊せばっ!終わりだっ!

 

 オレが勝利を確信した瞬間、

 

 破壊した外殻と爆ぜた肉裂が、巨大な捕食口に変形した。

 

 

 あ……ヤベ……

 

 

 ────そして、そのまま勢いよく顎は閉じられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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