終末世界の壊れた神機使い   作:真鳥

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5 ヒトの温もり

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 人間よ、汝、微笑みと涙との間の振り子よ。

 

 翼もなく全ての上に、全ての中に、翔りゆくその思念は名もつけがたく、永劫なるもの。

 

 

 

 

 

 

 

 

バイロン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ギラリと大鎌の刃が凶々しく閃く。

 

 翼刃を拡げたまま驚愕の表情のディアウスピターは、頭と胴体を丁寧に三枚おろしにスライスされ絶命した。

 

 右腕を払い、伸ばした神機らしき大鎌を収納した蒼黒竜の大型アラガミは、倒したばかりの新鮮な獲物に齧り付き味わう。

 

 他のアラガミが、そのお溢れを貰おうと周りをウロウロしているので、肉片を放り投げてやれば、喜び勇んで群がる。

 

 うむ。今日も肉が食べれる。美味い。

 

 アラガミが強ければ強いほど、噛めば噛むほど濃厚な味わいが深くなる。

 

 今度はどの辺のアラガミを狩ろうか。小型、中型はすぐ逃げるので追いかけるのが多少面倒だが、逆に大型は果敢に戦いを挑んでくるので、ビシバシ狩る。それが最近の日課だ。

 

 オレはいつものようにアラガミを探してウロウロしていたら、なんと人間を見つけた。

 

 両腕に腕輪があり、神機を所持している。

 

 ゴッドイーター、AGEだ。

 

 久しぶりに同業者を見た。こんな灰域の奥で珍しい。

 

 だけど様子がおかしい。傷だらけだ。

 

 今にも死んでしまいそうなくらいにズタボロで蹲り、弱々しい。

 

 なるほど。腹が空いているんだろうな。だから力が出ないのか。

 

 よし、同じ神機使いのよしみだ。オレが食べ物を持ってきてやろう。

 

 座り込むAGEの男が目の前に立ち、観察するオレに気付いて驚いた顔で見てくる。

 

 まあ驚くのも無理もない。まさかこんな灰域で人間が、それもゴッドイーター、AGEと鉢合わせるとは思っても見なかっただろう。オレも驚いているくらいだからな。

 

 オレは踵を返し、その場から離れる。

 

 ちょっと待っていてくれ。すぐに新鮮な肉を持ってきてやる。

 

 そしてオレは味が割りかし良いだろうアラガミを数体見つけ出しサクサクと鼻歌混じりでハンティングすると、AGEの男に持っていってやった。

 

 また驚いた顔をする男。

 

 ん? なんだ、食べないのか? せっかく美味いやつ選んで狩ってきたんだが。

 

 ああ、そうか。傷が痛くて食べれないのか。分かる。怪我してるときってツライよな。

 

 仕方ないやつだ。オレが食べさせてやろう。

 

 目の前のぐったりした人間に近寄る。

 

 ん? ちょっと待って。オレの身体かなりデカくね? あれ? この神機使いの男が小さいんじゃないのか? 比較してみるとだいぶサイズが異なる。

 

 ああ、たくさん喰ったからなぁ。凄くデブったのかもしれない。あと肌の色も青黒くて、不健康そうだし。せっかくカッコ可愛い女アバターを作ったのに。これじゃあドン引きされる。

 

 あぁ〜、だから驚いていたのか? オレが見るに耐えない巨漢女だと。

 

 …………それはちょっと自分でもヤダなぁ。何とかしないと。

 

 元のスリムなナイスバディな美人に戻りたいなぁ。ダイエットするしかないかな。でも食べるのは我慢出来そうにないなあ。アラガミ美味しいから。どうしようか。

 

 んん? なんか、身体が小さくなっていく。

 

 よく分からないが、どんどん縮んでAGEの男と同じぐらいのサイズになった。

 

 腕も脚も細くて、しっかりした艶々な感じになった。キャラメイクした時みたいな褐色肌に。多少青黒い瘡蓋(カサブタ)みたいなのが身体のあちこちに有るけれども問題無いくらいに華奢になってるっぽい。

 

 おっ、小麦色のバスターバイン様がプルンプルンと自己主張なさっておられる。うむ、実に素晴らしいオッパイ、いや塩梅だ。やっぱりオレが時間を掛けて作った一押しのアバターだ。嬉しくて尻尾も犬みたいにブンブン振ってしまうのも仕方ない。

 

 おっと、AGEの男が腹を減らして待っている。今にも死にそうなくらい顔が真っ青だ。そんなに空腹だったのか。

 

 だが、男は身体が動かないらしくアラガミ肉に手を付けれない。

 

 しょうがないな。オレは屈み、男を胸元に抱き寄せてやる。正直言って男は嫌いだが、コイツは悪い気配がしない。

 

 虚ろな表情な男。ふむ、これじゃまともに食べることも噛むことも出来ない。

 

 オレは自分の指先を切って溢れる血を動かない口中に垂らして流し込む。

 

 昔、何か漫画で観た。戦場で水も無く、喉を潤す手段を。馬の小便すら無い時に自分の身体を切って仲間に己の血を分け与える、というシーン。

 

 オレは小便出ないよ? 何か全然排泄しなくなったし。仮に出てもやらないよ? もちろんオッパイもやらない。出ないし。

 

 代わりにオレの血で喉を潤って貰おう。

 

 ふふ、何か赤ん坊の世話をしているみたいだ。

 

 指先を口に突っ込んでやるとちゅーちゅー吸ってくる髭面のオッサンは実にシュールだな。ちょっと可愛らしく思えてくるのが不思議だ。もしやこれが母性本能? 

 

 やがて神機使いのオッサンは緩やかに目を閉じて、オレのオッパイ枕でスヤスヤと心地よさげな寝息を立て始めた。

 

 まったく…………こんな美女に介抱されるとは。うらやまけしからん幸せ者なオッサンめ。ん〜、なんかこの額に十字傷のあるオッサン何処かで観たような気がするんだけどなぁ。ん〜、思い出せない。まあ、いいか。

 

 さて、オッサンは寝てるし暇になった。とりあえず用意したアラガミ肉片をモシャモシャ摘みながらオッサンの髭を引っ張ったり撫でたり遊んでみる。

 

 そんなオレたちの周りにアラガミどもが集まり出した。

 

 小型、中型、大型、選り取り見取りだ。

 

 そっと、オッサンを起こさないように横に寝かせてオレは立ち上がる。

 

 とりあえず暇潰しと食糧備蓄にコイツらをハントするとしようか。

 

 右腕をかかげ、収納してあるオレの相棒の神機、煉真竜征鎌をいつものように右腕から取り出し、アラガミどもに向けて構える

 

 さて、少しだけ抑えめに闘うか。

 

 寝ているオッサンを巻き込まないよう、アラガミに喰われないように護らないとならないし。

 

 あと身体がスマートになったから改めて戦い方を確かめてみよう。

 

 丁度良い練習相手がいることだし。

 

 神機使いの戦い方ってヤツを教えてやるよ、アラガミども。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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