終末世界の壊れた神機使い   作:真鳥

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6 揺れる魂

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

    (おも)いを断てよ。

 

    わが心。

 

    獣のねむり眠れかし。

 

 

 

 

 

シャルル・ボオドレエル

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 大型アラガミ、ヴァジュラが雷球を繰り出した。

 

 対するオレも口を開き、サンダーブレスを吐いた。

 

 正面からブレスと雷球が衝突し、それにオレのブレスが打ち勝ち、ヴァジュラは紫電の渦に飲み込み焼かれ消滅する。

 

 オレは口角をニヤリと上げた。

 

 どうやら威力が上がっているらしい。意識してドラゴンブレスを放ったのだが……以前よりはるかに威力が上がった。しかも、まだまだ威力が上げられそうだ。

 

 オレはまだ強くなれるらしい。ありがたい。これは終末世界を生きるために必要な強さだ。

 

 コンゴウがこちらに襲いかかってくる。

 

 その巨大な身体を使った飛びかかる体当たり、ローリングアタックに向かって、全力で爪を横薙ぎにした。

 

 轟風が周囲に逆巻き、コンゴウが細切れになり、バラバラになる。

 

 オレはその様子を満足気に眺めた。オレの怪力の前では、アラガミの巨体も特に脅威にはならない。

 

 グボログボロが水弾を撃って攻撃してくる。

 

 すかさずステップを踏み、水弾を躱し素早く懐に入り込む。右腕と同化したヴァリアントサイズを鰐面に突き刺し、そのまま滑るように頭から腹中、股座まで一気に斬り裂いた。

 

 文字通り真っ二つ。

 

 クアドリガのミサイル乱射に怯むことなく突撃、拳を構えて前面装甲に乱打を打ち込むオレ。

 

 一発、二発、三発、四発、五発。クアドリガの身体を滅多打ちにすれば、重金属の身体ごとひしゃげ、ボコボコになっていく。

 

 拳を握り込み、思い切り体内に突き刺し、内部から雷を解き放つ。

 

 クアドリガの身体が紫電の光を帯び、粉微塵に爆散した

 

 不意に視界の隙間から鋭い蠍の尾針が迫る。

 

 オレも尻尾で弾き返す。鉛色の長い尾針を振りかぶってボルグカムランが攻撃してくる。

 

 ボルグカムランは盾や足の爪を振るったり、尾針を薙いだりしてくるが、どれも尻尾で迎撃していく。

 

 そのまま尾針を尻尾で掴み上げ、ボルグカムランの巨体を勢いよくブンブン振り回す。尻尾のジャイアントスイングだ。

 

 他の小型、中型アラガミどもを巻き込み、纏めてボーリングのピンのように薙ぎ倒し吹き飛ばす。

 

 逆鱗を解放。雷の翼にて空中に飛翔、雷の槍を何本も作り出しボルグカムランと他のアラガミどもに投擲、諸共に串刺しにして次々と葬る。

 

 オレは残るアラガミどもを駆逐していく。

 

 はははっ! 楽しいっ! 愉しいっ! タノシイッ! ゲームをしていたあの頃より面白いっ! 無双だ! オレつえーしてるっ! あれ? ゲームってなんだっけ? あの頃っていつだっけ? オレは以前、何をしていたっけ? いつからここに居たのだろうか? 

 

 そもそもオレは誰だったのか? 

 

 まぁ、そんなこといいや。だってこんなにタノシイのだから。

 

 戦うのがタノシイ。壊すのがタノシイ。喰らうのがタノシイ。

 

 タノシイッ! タノシイッ! タノシイッ! タノシイッ! タノシイッ! タノシイッ! タノシイッ! タノシイッ! タノシイッ! タノシイッ! タノシイッ……! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ******

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………う……私、は…………生きて、いる、の、か…………?」

 

 ヴェルナーが目蓋を開く。

 

 紫結晶のベッドらしき台の上に寝ていたらしい。周りには囲むように紫水晶のサークルがあった。

 

 起き上がり、身体に触れる。瀕死だった肉体。だが、今はなんともない。むしろ心地良いほどに清々しく感じる。服は穴だらけだが、銃傷は綺麗さっぱり無い。

 

 そうだ。確か蒼黒のアラガミに出逢った。そのアラガミ、ハンニバルに酷似した何かが人の形になって…………自分に己の血を分け与えた。

 

 ヴェルナーは手を動かして確かめる。

 

「…………力を感じる。今までに無い程に強い確かな力を…………」

 

 それに灰域であるはずなのに、特有の息苦しさ、気怠さ、身体全体に掛かる重さ、負荷が感じられない。

 

 身体の傷が癒えたこと、灰域に苦もなく対応出来る力。

 

 これもすべてあのアラガミの力なのか…………? 

 

 その時、灰域に響く轟音と振動。

 

「何だ…………っ!?」

 

 それは雷鳴に似た激しい轟き。

 

「向こうから聴こえてくるが……」

 

 ヴェルナーは雷鳴が木霊する方角に顔を向ける。

 

 あのアラガミがいない。ベッドの台座の周りに他の狩られたアラガミだろう肉片が積まれている。ここにはいないようだ。

 

 再び雷鳴。落雷のように唸りと衝撃がビリビリビリッと灰域と身体に震わし伝わってくる。

 

 ヴェルナーは台座から立ち上がり、紫水晶のサークル場から出て、豪雷が鳴り響く場所に歩いて行く。結晶で作られた人工的な通路を抜けて進むと、直ぐ間近にその原因と思しきものを発見した。

 

 

「あのアラガミが…………アラガミ、なのか…………? あの少女が…………」

 

 

 アラガミの群れと闘う見目麗しい女性。

 

 歳は二十歳前後だろう、まだ少女と言っていい。

 

 ただ、あまりに異質、異形の姿をしている。

 

 紫銀の長い美しい髪。額に二本の気を呑まれるような暗赤色の角を携え、結晶化したオラクル細胞の鱗を軽装甲のように纏った褐色の裸身に近しい豊穣の女神さながらの美貌。

 

 魅力的な形の尻、腰元から長い尻尾を生やし、背中の逆鱗から、プラズマの雷翼を発生させ飛翔し、雷撃の嵐を振り撒き地上のアラガミたちを悉く貫く。

 

 荒ぶる竜神、そう思わざる得ない神々しさと、禍々しさ。

 

「笑っているのか…………?」

 

 アラガミを1匹、また1匹と討ち滅ぼすたびに楽し気に笑う少女。

 

 実に愉しげに。

 

 狂気を秘めて。

 

 少女の高揚が最高潮に達したのか、身を震わすと異変が起きる。

 

 小さな華奢な身体が突如巨大化し、蒼黒の結晶を纏う巨軀の人竜へと様変わりしたのだ。

 

 激哮を谺す蒼黒竜に成り変わった少女。

 

 紫電の雷光を巨体に滾らせ、アラガミを捕らえ、その強靭な歯牙の顎門で喰らい付き、貪る。

 

 本能の赴くまま、飢えた獣さながらに。

 

 その時、人竜の猛攻から逃げ出したアラガミがヴェルナーの元に向かってきた。

 

「!?」

 

 しまったっ! 神機を持って来ていないことに今更気付いたヴェルナー。

 

 狂乱したアラガミが行手に立つヴェルナーに飛びかかる─────

 

 瞬間、アラガミの身体が巨大な鉤爪の手で掴まれた。

 

 ヌウゥンッと突き出された竜の顎、開かれた上下の牙が勢いよく閉じられ、眼前で貪り喰らわれるアラガミ。

 

 燐と燃え盛る紫炎の眼光と視線が交錯するヴェルナー。

 

 ヴェルナーは茫然としながらも、見続けるしかなかった。

 

 その暗く輝く闇に燈る瞳に、身も心も吸い寄せられるように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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