ARIA The CONVERSATION   作:辰巳しおん

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第1章 一人前(プリマ)合同会議編
その ウンディーネの資格は……(1)


アイちゃん。

 

わたしが一人前(プリマ)になってから、早いもので、もう三ヶ月が経ちました。

 

今日、わたしはカフェフロリアンに来ています。

 

藍華ちゃんの発案で、これから、月の始めの月曜日は、私と、アリスちゃんと三人で、「半人前(シングル)合同練習」ならぬ、「一人前(プリマ)合同会議」を開くのだそうです。

 

みんなに会えるのは久しぶり。楽しみだなぁ。

 

 

「……あっ。藍華ちゃん、アリスちゃん!」

 

「こりゃ灯里! おーそーいー!」

 

「灯里先輩、でっかい遅刻魔です」

 

「はひー! ごめーん!」

 

「んもー。てっきり忘れてるのかと思ったわよ」

 

「灯里先輩ならあり得ますね」

 

「えー? そんなことないよー。ちゃんと予定表にも書いておいたし、それに……」

 

「それに何よ?」

 

「アリスちゃんから、何回か『いいですか、灯里先輩。もし三人が揃わなかったら、大鐘楼(カンパニーレ)が倒壊してしまうそうですよ』っていう電話があったし」

 

「ぬなっ!? 後輩ちゃん?」

 

「何ですか? こうして三人が揃ったことで、大鐘楼(カンパニーレ)の倒壊は避けられたのです。灯里先輩、でっかいミッションコンプリートです!」

 

「良かったー。昨日はドキドキして、眠れなかったよー」

 

「あっそ……。でも灯里、何かあったの?」

 

「うん。集合時間より前には着いたんだけど、ちょうど表に店長さんがいてね、『いつもお客さまを紹介してくださって、ありがとうございます』って、お礼をしてたんだ。そうしたら、他にも郵便屋のおじさんとか、色んな人に会っちゃって……」

 

「いつもの灯里先輩の、でっかいお友達の輪ですね」

 

「そっか。灯里の所は、そういう営業活動も大事だもんね。じゃあ、今回は大目に見てあげるわ」

 

「うん、ありがとう、藍華ちゃん」

 

「さあ、気を取り直して、第一回、一人前(プリマ)合同会議を始めるわよ!」

 

「「おーっ!」」

 

「ふたりとも、室内で大声出すの、禁止!」

 

「えー…」

 

「今のは、藍華先輩が振ったのでは?」

 

「セイシュクにー」

 

「むむむ……」

 

「ところで藍華ちゃん。会議って、何を話し合うの?」

 

「まあ、議題なんて何でもいいのよ。こうして集まるのが目的なんだから」

 

「はい、それはでっかい重要です」

 

「はへー、そうなんだー」

 

「でも、今日は議題があるのよこれが!」

 

ドン!

 

「船舶運行管理……」

 

「せきにんしゃ?」

 

「そうよ。これはその資格を取るための参考書ね」

 

「確か、水先案内業界でも、会社の偉い人しか持っていない資格では?」

 

「そうね。うちらの業界だと、自社のゴンドラの整備状況や、運行状況の管理。それから、事故やトラブルが起きた時の対応なんかをするのに必要な資格よ」

 

「ほへー……」

 

「この本を持っていると言うことは、藍華先輩もこの資格を取られるんですか?」

 

「そうなのよー。だって支店長なんだもーん」

 

「すごいねー、藍華ちゃん」

 

「ま、合格したらね……。でも、本当の事を言うとね、先週、晃さんから『すわっ! 藍華! 支店長たるもの、このぐらいの資格を持っとらんでどーする!?』って、言われちゃったのよねー」

 

「でしたら当然、落ちることは許されませんね」

 

「そう、さすが後輩ちゃんは話が早いわね。だから、ふたりにも、ちょーっと協力してもらいたいなーって、思ったわけ」

 

「ほへー……」

 

「わかりました。では早速、私が問題を読みますから、先輩方は答えを言ってください」

 

「えーー? 私も答えるの?」

 

「でっかい当然です。というか、灯里先輩は、ARIAカンパニーの偉い人でもある訳じゃないですか。既にこの資格をお持ちじゃないんですか?」

 

「えっ? わたし? あの……えっと……」

 

「言われて見れば確かにそうね。会社ごとに、最低一人は持ってないといけない資格だし。まさか、あのモチモチポンポンが持ってる訳ないわよね?」

 

「はわわ、はわわわ……」

 

「ねえ、灯里。あんた本当に資格持ってないの!?」

 

「えっと……。アリシアさんとの引き継ぎの時には、特に試験とかは受けてないし、こんなに分厚くて難しそうな参考書、見たことないし……」

 

「にゃぬ? こ、これはマズイ予感が……」

 

「もし、灯里先輩がこの資格を持っていないとなると、最悪、ARIAカンパニーは営業停止になってしまうのでは?」

 

「はひーっ! ど、どどど、どーしよー、藍華ちゃん!」

 

「ほらほら灯里、落ち着いて。いくらなんでも、あのアリシアさんが、そういう所をすっぽかすなんて、あり得ないでしょ?」

 

「そっかぁ。そうだよねぇ」

 

「いや、そうとは限りませんよ。アリシアさんだって、でっかい一人の人間です。ついうっかり、忘れていたのかも」

 

「ふええ……」

 

「ちょっと後輩ちゃん!? 灯里を不安にさせるセリフ、禁止!」

 

「しかし、『獅子は我が子を千尋の谷に落とす』って言うじゃないですか。もしかしたら、これはARIAカンパニー伝統の、でっかい試練なのかもしれませんよ?」

 

「そんなぁ、アリシアさんが……はひっ!」

 

「ん? ……ぬなっ!……っと、え-っと、あの、後輩ちゃん? 」

 

「何ですか?」

 

「あ、あの……アリシアさんが、そんな事する訳……ないじゃない……。き、禁止よ、禁止。ね、灯里?」

 

「はわわわわ、はひっ」

 

「いいえ。あのいつも優しいアリシアさんは仮の姿。最後の最後で、でっかい本性を現して、灯里先輩を、恐怖のどん底に落とし入れようと……」

 

「(いやだから、後輩ちゃん!)」

 

「さすがにそれは冗談ですが……。先輩方、どうしたんですか? さっきから、でっかい様子が変ですよ?」

 

「「(う! し! ろ!)」」

 

 

「何ですか? まさか、こんな所に、偶然アリシアさんがい……」

 

 

ゴーン、ゴーン、ゴーン、ゴーン、ゴーン…………

 

 

「あっあっ……ああっ……ああああっ……」

 

「「「アリシアさん!」」」

 

「うふふ、こんにちは」

 

「どっ、どうして、アリシアさんがこちらにいらっしゃるのですか?」

 

「あらあら、お邪魔だったかしら?」

 

「いっ!? いえいえっ! そんなことは滅相もございませんよ! ね? ね! 灯里!」

 

「は、はひっ!」

 

「あっちのお部屋で、ゴンドラ協会の打ち合わせをしていたの。終わって出てきたら、楽しそうな三人の声が聞こえて来たから、つい来ちゃった」

 

「そうだったんですかぁ。すっごい偶然ですね!」

 

「わーひ! お久しぶりです!」

 

「すみません。私、ちょっとお手……」

 

「ところで、アリスちゃん?」

 

「はいっ!」

 

「何か、私のことを、お話してた?」

 

「えっ? あの、その、ええっと、ですね……」

 

「んっ?」

 

「ですから、その……」

 

「あーっんもう、後輩ちゃん! こういう時にやることは一つよ。今回は私がやったげるから、よーく見てなさいよ」

 

「藍華先輩?」

 

「えー、この度は、うちの後輩ちゃんが、ご気分を害するような事を言ってしまい、大っ変、申し訳っ、ありませんでしたっ! 後輩ちゃんの先輩として、深く、深ーく、お詫び致しますっ!」

 

「わ、わたしも、アリスちゃんの先輩として、すみませんでしたーっ!」

 

「あらあら、うふふっ」

 

続く

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