その ウンディーネの資格は……(1)
アイちゃん。
わたしが
今日、わたしはカフェフロリアンに来ています。
藍華ちゃんの発案で、これから、月の始めの月曜日は、私と、アリスちゃんと三人で、「
みんなに会えるのは久しぶり。楽しみだなぁ。
「……あっ。藍華ちゃん、アリスちゃん!」
「こりゃ灯里! おーそーいー!」
「灯里先輩、でっかい遅刻魔です」
「はひー! ごめーん!」
「んもー。てっきり忘れてるのかと思ったわよ」
「灯里先輩ならあり得ますね」
「えー? そんなことないよー。ちゃんと予定表にも書いておいたし、それに……」
「それに何よ?」
「アリスちゃんから、何回か『いいですか、灯里先輩。もし三人が揃わなかったら、
「ぬなっ!? 後輩ちゃん?」
「何ですか? こうして三人が揃ったことで、
「良かったー。昨日はドキドキして、眠れなかったよー」
「あっそ……。でも灯里、何かあったの?」
「うん。集合時間より前には着いたんだけど、ちょうど表に店長さんがいてね、『いつもお客さまを紹介してくださって、ありがとうございます』って、お礼をしてたんだ。そうしたら、他にも郵便屋のおじさんとか、色んな人に会っちゃって……」
「いつもの灯里先輩の、でっかいお友達の輪ですね」
「そっか。灯里の所は、そういう営業活動も大事だもんね。じゃあ、今回は大目に見てあげるわ」
「うん、ありがとう、藍華ちゃん」
「さあ、気を取り直して、第一回、
「「おーっ!」」
「ふたりとも、室内で大声出すの、禁止!」
「えー…」
「今のは、藍華先輩が振ったのでは?」
「セイシュクにー」
「むむむ……」
「ところで藍華ちゃん。会議って、何を話し合うの?」
「まあ、議題なんて何でもいいのよ。こうして集まるのが目的なんだから」
「はい、それはでっかい重要です」
「はへー、そうなんだー」
「でも、今日は議題があるのよこれが!」
ドン!
「船舶運行管理……」
「せきにんしゃ?」
「そうよ。これはその資格を取るための参考書ね」
「確か、水先案内業界でも、会社の偉い人しか持っていない資格では?」
「そうね。うちらの業界だと、自社のゴンドラの整備状況や、運行状況の管理。それから、事故やトラブルが起きた時の対応なんかをするのに必要な資格よ」
「ほへー……」
「この本を持っていると言うことは、藍華先輩もこの資格を取られるんですか?」
「そうなのよー。だって支店長なんだもーん」
「すごいねー、藍華ちゃん」
「ま、合格したらね……。でも、本当の事を言うとね、先週、晃さんから『すわっ! 藍華! 支店長たるもの、このぐらいの資格を持っとらんでどーする!?』って、言われちゃったのよねー」
「でしたら当然、落ちることは許されませんね」
「そう、さすが後輩ちゃんは話が早いわね。だから、ふたりにも、ちょーっと協力してもらいたいなーって、思ったわけ」
「ほへー……」
「わかりました。では早速、私が問題を読みますから、先輩方は答えを言ってください」
「えーー? 私も答えるの?」
「でっかい当然です。というか、灯里先輩は、ARIAカンパニーの偉い人でもある訳じゃないですか。既にこの資格をお持ちじゃないんですか?」
「えっ? わたし? あの……えっと……」
「言われて見れば確かにそうね。会社ごとに、最低一人は持ってないといけない資格だし。まさか、あのモチモチポンポンが持ってる訳ないわよね?」
「はわわ、はわわわ……」
「ねえ、灯里。あんた本当に資格持ってないの!?」
「えっと……。アリシアさんとの引き継ぎの時には、特に試験とかは受けてないし、こんなに分厚くて難しそうな参考書、見たことないし……」
「にゃぬ? こ、これはマズイ予感が……」
「もし、灯里先輩がこの資格を持っていないとなると、最悪、ARIAカンパニーは営業停止になってしまうのでは?」
「はひーっ! ど、どどど、どーしよー、藍華ちゃん!」
「ほらほら灯里、落ち着いて。いくらなんでも、あのアリシアさんが、そういう所をすっぽかすなんて、あり得ないでしょ?」
「そっかぁ。そうだよねぇ」
「いや、そうとは限りませんよ。アリシアさんだって、でっかい一人の人間です。ついうっかり、忘れていたのかも」
「ふええ……」
「ちょっと後輩ちゃん!? 灯里を不安にさせるセリフ、禁止!」
「しかし、『獅子は我が子を千尋の谷に落とす』って言うじゃないですか。もしかしたら、これはARIAカンパニー伝統の、でっかい試練なのかもしれませんよ?」
「そんなぁ、アリシアさんが……はひっ!」
「ん? ……ぬなっ!……っと、え-っと、あの、後輩ちゃん? 」
「何ですか?」
「あ、あの……アリシアさんが、そんな事する訳……ないじゃない……。き、禁止よ、禁止。ね、灯里?」
「はわわわわ、はひっ」
「いいえ。あのいつも優しいアリシアさんは仮の姿。最後の最後で、でっかい本性を現して、灯里先輩を、恐怖のどん底に落とし入れようと……」
「(いやだから、後輩ちゃん!)」
「さすがにそれは冗談ですが……。先輩方、どうしたんですか? さっきから、でっかい様子が変ですよ?」
「「(う! し! ろ!)」」
「何ですか? まさか、こんな所に、偶然アリシアさんがい……」
ゴーン、ゴーン、ゴーン、ゴーン、ゴーン…………
「あっあっ……ああっ……ああああっ……」
「「「アリシアさん!」」」
「うふふ、こんにちは」
「どっ、どうして、アリシアさんがこちらにいらっしゃるのですか?」
「あらあら、お邪魔だったかしら?」
「いっ!? いえいえっ! そんなことは滅相もございませんよ! ね? ね! 灯里!」
「は、はひっ!」
「あっちのお部屋で、ゴンドラ協会の打ち合わせをしていたの。終わって出てきたら、楽しそうな三人の声が聞こえて来たから、つい来ちゃった」
「そうだったんですかぁ。すっごい偶然ですね!」
「わーひ! お久しぶりです!」
「すみません。私、ちょっとお手……」
「ところで、アリスちゃん?」
「はいっ!」
「何か、私のことを、お話してた?」
「えっ? あの、その、ええっと、ですね……」
「んっ?」
「ですから、その……」
「あーっんもう、後輩ちゃん! こういう時にやることは一つよ。今回は私がやったげるから、よーく見てなさいよ」
「藍華先輩?」
「えー、この度は、うちの後輩ちゃんが、ご気分を害するような事を言ってしまい、大っ変、申し訳っ、ありませんでしたっ! 後輩ちゃんの先輩として、深く、深ーく、お詫び致しますっ!」
「わ、わたしも、アリスちゃんの先輩として、すみませんでしたーっ!」
「あらあら、うふふっ」
続く