ARIA The CONVERSATION   作:辰巳しおん

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「先輩方、『歴史上の偉大な人物も、最初はみな僕らと同じ学生だったんだ。彼らにできたなら、僕らにもできる』という言葉があります。私達も、日々切磋琢磨すれば、いずれは三大妖精の皆さんと、肩を並べられるような日が来るのでしょうか?」

「わたし、アリシアさんみたいに素敵なオール捌き、できる自信ないなあ……」

「灯里っ! そういう時はジタバタするしかないわ! 漕いで、漕いで、漕ぎまくるのよ!」

「はひっ! オールの特訓、頑張ります!」

「それと、いつも笑顔を忘れずにね!」

「はひっ! あらあら、うふふ。あらあら、うふふ」

「いや、笑顔は振りまくらなくていいから……」



その オールに宿りし魔法は……(2)

「「魔法がかってた!?」」

 

「はひ。そうなんです」

 

「「やっぱり……」」

 

「はへっ?」

 

「あ、いえ。では、アリシアさんは、魔法少女だったという事ですか!?」

 

「いや、ちょっと待った。アリシアさんみたいな大人の女性を、魔法少女ってゆーのは、なーんか違和感があるわね」

 

「では、魔女ですか?」

 

「いやいや、『白き妖精(スノーホワイト)』なんだから、魔女って言っちゃったら、なーんか黒ってゆーか、ダークなイメージになっちゃわない?」

 

「では、魔法使いはどうでしょう?」

 

「そう! それが一番しっくり来るわ! ……と思ったけど、それも何だか、アリシアさん特有の、フツーの大人の女性にはない、可憐さが欠けているような気がするわねぇ……うーん……」

 

「あのう、藍華ちゃん?」

 

「あによ?」

 

「なんだか、ちょっぴり話が脱線しているような気がするんだけど……」

 

「あっ……」

 

「……」

 

「……」

 

「そ、そうだったわ。私としたことが、こんな後輩ちゃんのおふざけに、いつまでも付き合ってちゃダメよね。そろそろ本題に戻りましょ?」

 

「はっ!? さりげなく、話が脱線したのをでっかい(ひと)のせいにしていませんか!?」

 

「はいそこ! 濡れ衣発言、禁止!」

 

「うむむむ……」

 

「ま、まあまあ、ふたりとも……」

 

「でも、確かにアリシアさんは『魔法』って言ったのよね? どう言う意味なのか、詳しく聞いたの?」

 

「うん、それが……」

 

______________________

 

「魔法……ですか?」

 

「そう。あの1番のオールはね、グランマから受け継がれた、素敵な想いが沢山詰まったオールだったの」

 

「素敵な……想い」

 

「グランマの想いと、私の想い。そして、アリア社長や灯里ちゃん。それに、これまでご案内した沢山のお客様。そういった、色々な人達の、色々な想いが、時間をかけて、幾重にも重なって……。いつしか、あのオールに魔法が宿るようになったのね」

 

「あのオールに、そんな魔法が宿ってたんですか?」

 

「そうなの。あの時、アリア社長をああやって助ける事ができたのは、私が、そのオールに宿っていた魔法を、使ったからに他ならないわ」

 

「はへー……」

 

「ところで、灯里ちゃんは、つくもがみって、知ってる?」

 

「あっ、はい。あの、長く使われた道具に宿ると言われる、神さまの事ですよね?」

 

「さすがは灯里ちゃんね。あのオールは、そこまで長く使われた物ではないけれど、そのつくもがみが宿っていた、と言った方が、灯里ちゃんには分かり易いかしら?」

 

「そう言われてみると、半人前(シングル)の時に、黒いゴンドラさんとお別れした時にも、つくもがみさんがいらっしゃっような……あっ、でもっ、わたしの夢の中で、ですけど……」

 

「あらあら、そうだったの。あのゴンドラも、沢山の素敵な想いが詰まっていたものだし、案外、夢ではないかもしれないわよ」

 

「はい。でも、そうだとすれば、私のオールでは、アリシアさんのように魔法が使えるようになるまで、まだまだ時間がかかりそうですね」

 

「でも、いつかは、灯里ちゃんのオールにも魔法が宿って、それを灯里ちゃんが使えるようになる日が、きっと来るはずよ。だから、今使っているオールを大切にして、これからも沢山のお客様に、素敵なご案内をしてあげてね」

 

「はいっ。わたし、もっともっと、頑張ります!」

 

「うん! その意気よ、灯里ちゃん」

 

「でも、お客様には、何と説明したらいいでしょうか?」

 

「そうね。そのお客様には、私から説明をしておくわ。後で、連絡先を教えてくれる?」

 

「はい。分かりました。それでは帰ってすぐに、メールでご連絡先を……あの、アリシアさん?」

 

「うーん……それにしてもこの絵、本当に素敵ね」

 

「えーっ? そうですか?」

 

「ええ、とっても分かりやすいし、特徴を見事に表していると思うわ」

 

「そ、そこまで言われると、なんだか、こそばゆい感じが……」

 

「アリア社長が描いたんでしょう? 私の知らない間に、絵がとっても上手になったのね」

 

「……はえっ?」

 

「やっぱりこれも、アリア社長の想いが、魔法になったせいなのかしら?」

 

「あ……あはは、そうですね。アリア社長は、きっと魔法使いさんですよねー……はひ」

 

「……ん?」

 

__________________

 

「……と、言うことで、今の私には、まだまだ難しいと、アリシアさんに言われてしまいまして……」

 

「……」

 

「……」

 

「はへっ? ふたりとも、何でまた後ろを向いてるの?」

 

「うっ、ぐっ……ごめん、灯里」

 

「藍華ちゃん?」

 

「私、もう合同会議できない……」

 

「えーっ!?」

 

「……ご、ごめん」

 

「ふっ……わ、私もです。灯里先輩、くっ……本当に、申し訳ありません」

 

「何で謝るの? この日の為にみんなで……」

 

ガタッ!

 

「えっ?」

 

「もうだめ! 私ちょっと2番行ってくる!」

 

「私も! 3番入ります!」

 

「2番? 3番? あっ! ふたりとも、どこに行くのーっ!?」

 

「ごめん! すぐ戻って来るから! ちょっと待ってて!」

 

「同じく、少々お待ちを!」

 

「……はへー……」

 

____________________

 

 

「あのー、ええっと、ごめんね灯里。変な事を口走った挙げ句、急にいなくなっちゃって」

 

「私もでっかい失礼しました」

 

「ふたりとも、お手洗いだったんだ。2番とか、3番とか言うから、全然分からなくて、ちょっぴり心配しちゃったよ」

 

「うん、もう大丈夫。深呼吸して、息を整えて来たから」

 

「同じくです」

 

「ほへ?」

 

「あっ、いいの。気にしないで。さあ、スッキリしたところで、合同会議を再開しましょ?」

 

「そうですね」

 

「でもさあ灯里。お客様に見せないことになったんなら、もうその時点で、『諦めよう』って結論が出てたって事なの?」

 

「それは、その……」

 

「ははーん。もしかして、アリシアさんにはそう言われたものの、灯里自身はチャレンジしてみたいとか? それとも、アリシアさんの使ってた、魔法のオールを使えば、自分にも出来るんじゃないかなー、って思ったとか?」

 

「藍華先輩、アリシアさんが使っていたオールは、確かゴンドラ協会に保管されているのでは?」

 

「あら、それなら別に、ちょーっと拝借しちゃえばいいじゃないの」

 

「その言い方、何だかでっかい犯罪の匂いがしますね」

 

「あら!? ちょっとダメよ、後輩ちゃん。『盗もう』だなんて考えちゃあ。私はまだ、目隠しされた少女A、カッコ後輩ちゃんカッコとじ、の写真が載ったニュースなんて、見たくないんだからね?」

 

「はっ!? さりげなく、(ひと)を、窃盗事件の首謀者に仕立て上げようとしていませんか!?」

 

「はいそこ! 黒幕発言、禁止!」

 

「うむむむ……」

 

「あ、あのっ!」

 

「……うん?」

 

「あの、わたし……。もし、今回のことを諦めちゃったら、何か他の事があっても、また、諦めちゃう気がして……」

 

「灯里……」

 

「だから、今はまだ、アリシアさんみたいに魔法が使えなくても、どうしたら出来るのか、それさえ分かれば、あとは毎日特訓して、いつかきっと……って」

 

「灯里先輩……」

 

「だから、ふたりにはごめんなさいだけど、もし、何かわかった事があれば、教えてもらいたくて……」

 

「ふーん、そ。そういう事なら、次は私から報告するわね。私は、晃さんに、この件について聞いてみたんだけど……」

 

____________________

 

「……えー、それでは、本件に関しましては、プランBの方で進めさせて戴くという事で、ご異議のある方はいらっしゃいますでしょうか?」

 

「「「異議なし!」」」

 

「はい。特に異議のある方もいらっしゃらないようですので、これで決定と致します。後程、詳細な資料を送付致しますので、本日の会議資料と併せてご参照ください。それでは以上をもちまして、本日の営業会議を終了致します。ありがとうございました」

 

ガヤガヤガヤガヤ……

 

……バタン

 

「……よーし! 終わった!」

 

「お疲れ様でした、晃さん!」

 

「おう、お疲れ」

 

「いやー、今日の会議も、素敵なプレゼンでしたね!」

 

「お世辞か? 私を誉めても、何も出ないぞ?」

 

「いえいえっ、そんなことは、ないんですけど……」

 

「そうやって、お前がモジモジしている時は、ろくな事が無いんだが? 言いたい事があるならハッキリ言えと、いつも言っているだろ?」

 

「はっ、はいっ、実は……」

 

 

 

「何っ!? 水上に浮いているアリア社長を、オールで垂直に跳ね上げる方法を教えろだと?」

 

「い、いえっ、あのっ、『教えろ』だなんて、そんな滅相もないです! ただ、晃さんだったら、やり方ぐらいはご存知かなーって、思ったって言うか……」

 

「すわっ!」

 

「ひゃいっ!?」

 

「いいか? 私はな、オール捌き、観光案内、カンツォーネと、大概の事なら、他の奴らに負けない自信はあるし、まだまだお前に教えてやりたい事も、山程ある。だがな、ことARIAカンパニーの奴らがやった事については、何も教えられない。それは何故だか分かるか?」

 

「いいえ! 全っ然、わかりませんっ!」

 

「あらっ? 今日はやけに正直だな……。とにかく、あいつらはな、私らと違って、魔法が使えるんだよ」

 

「は? 魔法ですか?」

 

「そうだ」

 

「ええ~。晃さんが、そんな非現実的な事を言うなんて~」

 

「だったらお前、灯里ちゃんから話を聞いた時、自分に出来ると思ったか?」

 

「やだなあ、もう。出来ると思ったら、こうして晃さんなんかに聞きませんよー」

 

「晃さん『なんか』だと?」

 

「あっ、あれっ? そっ、そういう意味じゃなくてですね……」

 

「まあいい。藍華、我が姫屋に伝わる、〈三つの心得〉を覚えているか?」

 

「はい。『約束は、しっかり果たすこと』、『時間は、きっちり守ること』、それから……」

 

「『出来ない事は、出来ないとはっきり言うこと』、だろ?」

 

「……はい」

 

「お前は、それを知ってて、何故灯里ちゃんに教えてやらないんだ! お客様の前で、何も出来ずにいる灯里ちゃんを見て、笑い者にでもするつもりか?」

 

「いっ、いえっ、そういう訳じゃないんです。私はただ、灯里の願いを叶えたいと思って……」

 

「そうか……。じゃあな、ひとつだけ教えてやろう。お前ら新人一人前(プリマ)が、私ら先輩一人前(プリマ)と同じレースに出たとする。スタートしたばかりのお前らと、とっくにスタートしている私らとの差は大きく開いているが、お前らは何とか追いつきたい。さて、お前なら、どうする?」

 

「えっ? それは……どうしたらいいんでしょうか?」

 

「そういう時はな、追いつきたいと強く念じて、死に物狂いで、ひたすら走り続けるんだよ。私らだって、永久に走り続ける事はないから、いつかはお前らが、私らに追いつき、そして追い抜く時が来る。その時には、魔法なんか使わずとも、それを超える能力(ちから)がついているはずだ」

 

「魔法を、超える能力(ちから)……」

 

「ま、お前と違って、灯里ちゃんは素直だからな。今頃アリシアに、『あらあら、あれは魔法だから、灯里ちゃんには出来ないわよ、うふふ』とでも言われて、もう諦めているかもしれないが」

 

「は、はあ……。それにしても、全然似てな……」

 

「藍華っ!」

 

「ひゃいっ!」

 

「いいか? 今回の件で、灯里ちゃんがどうしようが知らんが、藍華、お前は……お前だけは、全身全霊をかけて走って来い! そして、 この私を追い抜いて見せろ!」

 

「晃さん……」

 

「どうした? 返事がないぞ?」

 

「……はいっ!」

 

「よし! その意気だ! それじゃあ藍華。早速だが、明日までに次回の会議資料の作成、全身全霊をかけてよろしく頼むな!」

 

「……はいっ?」

 

__________________

 

「とまあ、そう言う事でございまして……」

 

「晃さんも、アリシアさんが魔法を使ったって、言ってたんだ……」

 

「しかも、灯里先輩とアリシアさんとの事までほぼお見通しで、藍華先輩に至っては、さりげなく資料作りまで指示してしまうとは……」

 

「はいはい。とりあえず、私からの報告は終わりだから、次は後輩ちゃんね」

 

「はい。それでは……と、言いたい所ですが、その前に、先輩方に確認したいことがあります。まずは、灯里先輩」

 

「なあに?」

 

「灯里先輩は、この〈アリシアさんスペシャル〉を会得する為なら、例え辛くても、本気で練習して、成功するまで何度でも挑戦する。そういう覚悟はお持ちですか?」

 

「……うん。ううん、はいっ!」

 

「分かりました。次に、藍華先輩……は特にないですね」

 

「ちょっと! この流れで、さりげなくそういう事言う!?」

 

「藍華先輩、でっかい突っ込み発言、禁止です」

 

「ぬなっ! ったくぅ……何なのよ、それ」

 

「では、改めて、藍華先輩」

 

「あによ?」

 

「藍華先輩は、もし灯里先輩と私が、『私達も死に物狂いで走る』と言ったら、一緒に走って戴けますか?」

 

「はあ? あったり前じゃないのよ。私だけ苦しい思いをするなんて、絶対イヤよ。どーせ走るなら、あんた達も道連れだ・わ・よっ」

 

「ふふ、分かりました。実は最初、私も到底無理だと思っていたんです。しかし、アテナ先輩のお話と、今日の先輩方のお話が、この難問に打ち勝つ、ある可能性をもたらせてくれました」

 

「アリスちゃん……」

 

「それでは、報告させていただきます。そして、私達で暴いて見せましょう。その、アリシアさんが使われたという、でっかい魔法の正体を!」

 

続く

 

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