これは、その藍華が書き留めた膨大な日誌や報告書の中で、「恥ずかしい日誌、禁止!」と、自ら封印した日記風日誌の、とある一日の記録を紐解くものである。
朝のルーティン失敗、プレミアムプリン強奪&お説教とツイてない中、ウンディーネのお仕事を三大妖精ソックリのミドルスクール生に体験させた藍華。
その時の振舞いを悔いていた藍華は、アリスから「ARIAカンパニーお泊まり会、with暁」が開催される事を聞く。
この後、一体どんな華麗なる一日が待ち受けているのであろうか?
「なっ、何でポニ男がARIAカンパニーに泊まるの?」
私の疑問に、後輩ちゃんはやや興奮気味に答える
「そこは私も謎なので、先に灯里先輩に尋ねてみたのですが、はっきりとは分からず仕舞いなんです! これって、怪しくないですか?」
「そう……」
ああ……よりにもよって、ついさっき、私のパンツを見た上にそれをイジッた挙げ句、何者かの襲撃を受け、私が全力で介抱したポニ男の名前が出て来るなんて……。
何故、私のこの凍てついた心を癒してくれるアリシアさんじゃなかったのかしら?
もしも、これがアリシアさんとのお泊まり会だったら……
『ううっ……アリシアさぁ~ん』
『あらあら、どうしたの? 藍華ちゃん』
『今日、あのポニ男に恥ずかしい所を見られて、それをイジられたんですぅ~』
『まあまあ、それは大変だったわね』
『でも、ミドルスクールのコ達がいたんで、何とか我慢して、介抱までしたんですよ?』
『あらあら、そうなの。藍華ちゃん、とっても偉かったのね』
『でも、その時に少し、ほんの少ぉーし失敗して、みんなにドン引きされちゃって、落ち込んでるんです。だから、今日はアリシアさんに癒して貰おうと思って~』
『うふふ、そうだったのね。じゃあ藍華ちゃん、こちらへいらっしゃい』
ぽふっ
『ああっ。アリシアさんって、とってもあったかいですね……。うーん、癒される、これは癒されちゃいますよ~』
『あらあら、それじゃあ特別に、とっても気持ち良くなる、アレをしてあげましょうか?』
『アレ? ……って?』
『うふふ、これよ』
『……ふええっ!? あの、アリシアさん?』
『あらあら、目を瞑って、大人しくしていないとだめよ、うふふ』
『いや、でもっ ふわっ♡ あっ、そこはっ、あっ♡』
『うふふ、気持ちいい?』
『えっ? ええ、でも、ひうっ♡
『あらあら、藍華ちゃんは、こういうコト、普段はひとりでしてるのね?』
『それは……んんっ♡ はい……。あの、アリシアさんは……あっ♡ いつも灯里と、こんなコト、をっ…ふうっ♡ 二人でしてたんですか?』
『うふふ、それは、ヒ・ミ・ツ』
『ええっ? そんなあ』
『それにしても、藍華ちゃんのココ、とっても綺麗ね』
『えっ? それはその…あんっ♡ 実は最近、何だか癖になっちゃってて、すっ…んんっ♡ 少し、ひっ…頻度が増えていて……』
『まあまあ、そうだったの。でも、ひとりであまりし過ぎると、中を傷つけちゃうかもしれないから、程ほどにした方がいいわね』
『はい……あんっ♡ そんな、奥のほうはっ……んっ♡』
『うん、そろそろ良さそうね、じゃあ最後に……ふぅーっ』
『ひゃんっ♡ ア、アリシアさん、ソコに息を吹きかけられたらぁっ♡』
『うふふ、くすぐったかった? 私、反応が面白くて、ついやってしまうの。じゃあ次は……反対側の耳をやりましょうか?』
という、『アリシアさんによる耳掻きリフレ(癒しの生ボイス&息吹きかけ裏オプ付きバージョン)in ARIAカンパニー』の脳内妄想を展開していた所で、後輩ちゃんの「藍華先輩!」という声が遠くから聞こえてきた。
「藍華先輩!」
「……はふぇ? アリシアひゃん?」
「アリシアさん? あの、藍華先輩、どうしたんですか? 急に」
と、言われて、ようやく我に帰る。
「えっ? ああっ、あの……そう! 何だか、耳障りな話だなって。そうよ! あのアリシアさん好きを拗らせて、迷惑ばかりかけてるポニ男と一緒に、何で灯里と私達二人が一緒に一晩過ごさなくちゃいけないのよ!」
「ですよね。でっかいあり得ませんよね。では、私と藍華先輩は欠席という事で……」
「いや、行くわよっ!」
「ええっ?」
後輩ちゃんが、訳わからんという感じの驚きの声を上げる。
「だって、私達が行かなかったら、灯里とポニ男が二人で過ごす事になるじゃないの!」
「た、確かにそうですが、あの暁さんと灯里先輩に限って、何か間違いが起きるとは、とても……」
「そんなの分からないでしょう? そりゃあさ、もう灯里とポニ男は、一緒にツイスターゲームとかやっちゃってる仲かもしれないけどさ、それとこれとは話が別よ!」
「ツイスターゲーム!? ……って、はっ? えっ?」
「そうよ! ツイスターゲーム! 今朝一緒にやっていた可能性があるのよ!」
「は、はあ……。そう……なんでしょうか?」
事態が飲み込めていないらしいが、所詮オコチャマに理解させるのが無理という事か。
「だーかーら! 後輩ちゃんはオコチャマだから分からないかもしれないけどさあ、とにかく灯里は貞操の危機にあるワケよ!」
「えっ……ええーっ!? その、ツイスターゲームというゲームでですか!?」
「決まってるじゃないのよう! 大体、もし狼状態になったポニ男が暴走して、灯里に乱暴しちゃうとか、とにかく灯里の身に何かあったらどうするワケ?」
「そ、それは……」
「だから、お泊まり会には行かないけど、ARIAカンパニーには行くわよ! 灯里の安全が確認できるまで、外で見張らなきゃ、気が済まないわ!」
「えっ? この冬に……ですか?」
今度はあからさまな拒否反応が出た。
やれやれ、これだからオコチャマは困る。
「あーら、嫌なら別に後輩ちゃんは来なくていいわよ。ま、今や業界大注目の
「むむむ。私はでっかい大丈夫です!
「へえへえ、そんなこともあったかしらねー。ご忠告どーも。でも、本当に、忙しいなら、無理しなくていいわよ?」
「いえ、灯里先輩の為ですから! しかし、当の灯里先輩にはどの様に言えばいいのでしょうか? まさか、ウソはつくわけには……」
「あら、『明日は仕事の都合で、朝早く起きなきゃいけないから』って言えばいいでしょう? 別に、朝早く起きればウソにはならないわ」
「なるほど、さすがは藍華先輩! 悪……いえ、こういう時の知恵はお見事ですね!」
「何だか言葉通りに受け取れないような……まあいいわ。今日の夜、ARIAカンパニーに行きましょ!」
「はいっ」
「それからさ、今回のミッションは、灯里をポニ男から守る事だけど、場合によっては、私達も襲われるかもしれないわ。だから、制服や私服じゃなくて、ある程度護衛・防衛が出来る服装・装備で行きましょ!」
「分かりました! 何でもいいですか?」
「まあ、甲冑に槍とか、そういう現実離れしてる物じゃなければ何でもいいわ」
「はい! あっ! この後またお客様なので、それではまた夜に」
「うん、よろしくね!」
と言って電話を切ってから、はたと気付く。
しまった! 昼間の後輩ちゃんソックリさんの事聞くの忘れた! こっちも言うの忘れた!
まあ、また夜に会うのだから、その時に確認すればいいか。
そう思い直した私は、早速どんな服装で行くかについての検討を始めた。
確か、Amanonのシルフ超特お急ぎ便なら、2時間もあればつくはずだ。
でも、この後本店との打合せもあるし、誰かに注文して貰えばいいわね。
やっぱりこういう時は、特殊部隊風の格好で、拳銃やマシンガン、バズーカ砲にロケットランチャー……は無理だから、やっぱり扱い易いナイフかしら?
いや、でも、さすがにARIAカンパニーで、万が一にも血の雨を降らせるような事態は避けなくちゃいけないわよねぇ。
武闘家みたいな格好でヌンチャクとかカイザーナックル?
いや、ダメだわ、肉弾戦もいいけど、ちょっと華麗さに欠けちゃうわねぇ。
うーん……ポニ男、ポニ男、ポニ男……ポニー、馬、馬! そうよ、馬よ!
騎手みたいな格好なら、プロテクターとかもつけられそうだし、ロングブーツに、武器は、競走馬の調教用ムチなら、ある程度威嚇も出来そうね。
後は、防寒用のタイツも買っておいたほうが良いかしら?
と、考えがまとまりかけていた所へ、ドアをノックする音が聞こえる。
「失礼しまーす!」
「はいはーい! どうぞー!」
私が答えると、
「え~、またそんなにあるの~?」
私がウンザリしたように言うと、その子は苦笑いを浮かべた。
「ふふ、そうですね、本当に」
「そうだ、ちょっとさ、頼まれ事してくれない?」
「はい、何でしょうか?」
私はさっき頼もうとしたものをメモすると、それを華麗な手さばきで、ピッと渡した。
「これを、Amanonのシルフ超特お急ぎ便頼んでおいて欲しいんだけど……」
「はい。えっと……えっ? コレ、ですか?」
意外な反応が帰って来る。何か間違えたのだろうか?
「そうよ、どうかした?」
「いや……何に使われるのかなって……」
ブーツにタイツにムチという組み合わせだと……そうか、サーカスに出てくるような、猛獣使いと勘違いしているのだろうか?
確かに、いきなり馬の調教を想像する人なんていないか。
しかし、そうだとしたら、ちょっとセクシー系のお姉さんを想像をしているという事になるが、まあ大きく外れてはいないし、それでもいいか。
何だか否定した上で、いちいち説明するのも面倒だと思った私は、話を合わせようとした。
「あの、えーと、そう! 今日の夜、急に仮装パーティーのお誘いを受けたのよ。でも、普段そんなの行かないもんだから、なかなかいいのが思い浮かばなくて」
「そうなんですか。しかしムチもですか?」
「ああ、それ。なんかさー、参加者の中に、馬ってゆーか、馬鹿ってゆーか、野獣みたいな男がいるのよー。だから、少しでもおかしなコトをしようものなら、そのムチを使って、調教っつーか、お仕置き? しようと思って」
「そ、そうなんですね……」
「そうそう、『このローゼンクイーンが、AQUAに代わって、お仕置きよ!』みたいなノリよ。だからお願い。本当は色々見たいんだけど、この後会議もあるからさ。もし、一式セットみたいな奴が売ってたら、それでもいいわよ」
「分かりました。では早速注文しておきます」
この時、私は
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それから2時間後、決裁事務やら会議を終わらせた私の元に、さっき注文を頼んだ
「藍華さん、荷物が届きました」
「ありがとう! 助かったわ~」
そう話しかけると、何となくその子はソワソワしているような気がする。
「あの……中を確認して戴けますか? 私、こういうのは買った事がなくって、他の子達とも相談しながら選んだんですけど……」
「まあそうよね。馬とかライオンとか、動物の調教に使う服装やら道具やらなんて、普通は買わないものねえ」
「えっ!? 動物の調教?」
意外だ、というか、かなり驚いた、という反応が帰ってきた。
「どしたの?」
「あっ!? ええっと、いや、その……」
何だか反応がおかしい。
嫌な予感がしたので、段ボールを開ける。
「……えっ!?」
箱の中からは、真っ赤なエナメルのピンヒールのブーツ、網タイツ、ボンテージスーツ、手錠、ムチ等々がセットになっている、『これで貴女も女王様! パーティー用コスチューム15点セット』というラベルが張られた袋が出てきた。
その時、私も、その見習い(ペア)の子も、顔を真っ赤にして、お互いに目を合わせないようにする。
「ね、ねえ……コレは?」
「ごっ、ごめんなさーい! ちょっとした勘違いをしてしまったみたいで……」
勘違いはあったかもしれないが、頼んだ物は、想像したものとは違うものの、確かに入っている訳であり、怒る訳にも行かない。
でもさっき、他の子達とも相談してって……言ってたわよね……。
ええっと……明日から、どうしようかしら?
「あ……うん、そうね……勘違いなら仕方がないわね、あはっ、あはは……」
目から頬にかけて、大量の〈汗〉が流れ落ちるのを感じながら、私はこの後どんな格好で後輩ちゃんに会おうかを考え始めた。