藍華ちゃんと一緒に、わたしも資格を取ろうとがんばろーって思っていたら、わたしはもう持っているんだって。
わたし、一体いつ資格を取ったんだろう?
「わたし、もうこの資格を持っていたんですか?」
「そうよ。だから、灯里ちゃんは何も心配しなくていいのよ」
「でもでも、アリシアさん。さっき灯里に聞いたら、こんな参考書は見たことないって、言ってましたよ?」
「はひ。ぜんぜん見たことないです」
「確かに、こういう参考書は見たことないかもしれないけれど、中の問題は解けるんじゃないかしら?」
「ほへっ?」
「そんなぁ。いくらアリシアさんでも、さっきみたいな冗談はもう通じませんよ?」
「うふふ、どうかしら」
「なっ……なんか、自信ありげですね。じゃあ後輩ちゃん、ちょっと問題出してみてくれる?」
「はい。それではいきます。『主に、貨物運搬業務や、ウンディーネの練習用に使用される、通称黒ゴンドラ。このゴンドラに、こぎ手を除き、乗船することの出来る最大人数は?』はい、まずは藍華先輩」
「ええっと、確か、6人だったはずよ?」
「では灯里先輩」
「えっと、観光用に、お客さまがみんな座って、長い時間乗るタイプのゴンドラさんは6人で、トラゲットみたいに、お客さまが立ち乗りで、短い時間しか乗らないタイプのゴンドラさんは14人だったような……」
「すごい! 灯里先輩、でっかい正解です!」
「ぬなっ!」
「わーひ!」
「では別の問題。『業務上の運航記録として、運航日誌に必ず記載しなければしならない事は?』はい、藍華先輩」
「うーん……。いつも出してるけど、さすがにどれがどれかはわからないわ」
「では灯里先輩」
「ええっと、確か、お仕事で、その日ゴンドラさんに乗る前に点検をした結果と、最初にゴンドラさんに乗った時間と、ゴンドラさんにお客さんを乗せたり、降ろしたりした場所と時間と、その日最後にお仕事でゴンドラさんからおりた時間、じゃなかったかなあ?」
「何と! またまたでっかい正解です!」
「わーひ!」
「嘘でしょ!? 灯里ぃ、完璧じゃにゃいのよー!」
「はへー? なんでだろー?」
「うふふっ、ほらね?」
「しかし、参考書を読んだことがない灯里先輩が、どうしてこんなにも答えられるのでしょうか?」
「それはね、ARIAカンパニーには、グランマや先輩達が作った、素敵なノートがあるからなのよ」
「……あっ! あの、ARIAカンパニーのシールが貼ってある、青いノートですね?」
「そう。思い出した?」
「はひ! あれ、すっごく分かりやすくて、見ていてとっても楽しかったです!」
「そんなノートがあったとは……。ARIAカンパニーの圧倒的素敵パワー、恐るべし」
「そうよ! 素敵すぎるわよ、もう! 灯里ぃ、ずるっこ禁止!」
「えーーっ。ずるっこじゃないよー」
「しかし、例えそのようなノートがあったとしても、灯里先輩、でっかい秀才です。以前から、そんなに凄かったのでしょうか?」
「ほら。灯里ちゃんは、
「ええ、そうですけど」
「そのせいで、灯里ちゃんは、アクアに来る前に、ウンディーネとして働く為の試験を受けなきゃいけなかったの」
「ああ、私達が
「私はアテナ先輩に教えていただいて、何とか合格しました」
「私も後から聞いたんだけど、実は灯里ちゃん、その試験を、トップの成績で合格していたんですって」
「ほへっ?」
「にゃにゃにゃ、にゃんですとっ!?」
「私も驚いたわ。そもそも、マンホームの女の子が合格すること自体が珍しいのに、トップ合格なんですものね。その時は、不正行為があったんじゃないかって、疑われたほどだそうよ」
「ええっ? わたし、ずるっこなんてしてないですぅ」
「もちろん、そんなことはなかったんだけど、グランマにその話をしたら、『じゃあ、今のうちから、色んな資格に挑戦させてみたらどうかしら』って」
「グランマが?」
「グランマは『例え試験に落ちても、勉強したこと、努力したことは、きっといい経験になるから』ってね」
「はへー、そうだったんですか」
「だから、結構難しい試験にも挑戦してもらったんだけど……。灯里ちゃん、面白いくらいに、次から次へと、色んな試験に合格しちゃうんですもの」
「え? ってことは灯里、他にも資格持ってるの!?」
「うーん? そうみたい」
「この資格以外にも、整備士、海技士、それに旅行業務取扱管理者とか、水先案内業界に関係するお仕事の資格は、一通り合格しているのよ」
「灯里先輩、でっかい合格しすぎです」
「じゃあアリシアさん。灯里は、自分で企画したツアーに自分で募集したお客さんを自分で整備したゴンドラに乗せて自分で運行管理しながら自分でゴンドラこいで自分で観光案内ができちゃうってことですか?」
「藍華先輩、でっかい興奮しすぎです」
「そういう事になるわね。でも……」
「でも?」
「この前、晃ちゃんからも、藍華ちゃんと同じような事を聞かれたけど、できるっていうのと、実際にやるのとは全然違うの。だから、まだしばらくは、いま目の前にあるお仕事を、しっかりやった方がいいわね」
「はひ! わたし、ウンディーネとしてのお仕事、もっと頑張ります!」
「ちょ、ちょっと待ってくださいアリシアさん。あのっ、灯里がこの資格持ってるのって、晃さんも知ってるんですか?」
「ええ。先週だったかしら? 晃ちゃんから、この資格の事を色々と聞かれたのよ。その時、灯里ちゃんの話にもなって……」
「はは……知ってるんですねぇ……それで」
「晃さんは、あの灯里先輩が合格しているなら、支店長となった藍華先輩もでっかい合格させなければ、と……」
「あらあら。私、もしかして、晃ちゃんに余計なことをお話しちゃったかしら?」
「いいえ、そんなことはないんですけど……」
「ねえねえ、アリスちゃん。『あの』わたしって、なーに?」
「それは……その、『でっかい素敵パワー全開の』という意味です」
「そうなんだー。えへへ……」
「あの、藍華先輩? 下を向いて、どうかしたんですか?」
「藍華ちゃん?」
「……あのぅ、灯里さん。いや、灯里先生っ!」
「はひっ!」
「おねがいだがらー、わだじにおじえでぇー。素敵なノードも見ぜでー」
「あ、藍華ちゃん……そんなに泣かなくても」
「灯里様ぁーっ!! どうか、どぉーかっ! おねがいじまずぅーっ!」
「はひーっ! わ、わかったから、藍華ちゃんってば落ちついて……」
「……えっ? じゃあ、教えてくれるの? 素敵なノート見せてくれるのっ?」
「う、うん。私に、できることなら……」
「いやったぁ! きっと灯里なら、そう言ってくれると思ったわ! これで私も、合格間違いなしね! ♪たらたんたらたんたらたぁーん!」
「あ、藍華ちゃん……」
「藍華先輩、室内はでっかいウネウネ踊り禁止です」
「あらあら」
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「はい! ……と、言うことで、本日の第一回、「
「はひっ! お疲れさまでしたー」
「うーん、何だか、とっても充実した会議だったわ!」
「藍華先輩の一人舞台、という感じでしたが……」
「アリシアさんとも、久々にお話できたし!」
「わたしもですー、アリシアさん」
「私も、三人とお話ができて、楽しかったわ」
「あ、いけない! もうこんな時間なのぉ?」
「本当だー。わたしも、この後予約が入ってるから行かなきゃですー」
「お二人とも、帰られるのですか?」
「ええ。ちょっと本店に用があるのよ。後輩ちゃんは、この後お仕事?」
「いえ、今日はその……」
「ないのね? じゃあアリシアさん、私と灯里は失礼します。そうだ、今日のお茶代は私が持ちますんで、もしお時間があるなら、後輩ちゃんとふたりで、ゆっくりしてってくださいね!」
「えっ!? あの、藍華先輩?」
「あらあら、そんなの悪いわ……」
「いいんです! ARIAカンパニーの素敵なノートを見せて貰えるんですものー。これぐらい、どうってことありませんよ! 後輩ちゃんも、ゆっくりしてってね!」
「そう。じゃあ、お言葉に甘えちゃおうかしら」
「あ、アリシアさん。私、たった今思い出したのですが、私もこの後よて」
「ねえ、アリスちゃん?」
「うわいっ!」
「せっかくだから、少し、お話したいことがあるんだけれど、いいかしら?」
「えっ!? えっと……その……はい、どうぞ」
「いーなー、アリスちゃん。わたしもアリシアさんと、たくさんお話したいのにー」
「あーん私もー。うらやましいったらないわー。でも、わかってるでしょうね、後輩ちゃん。アリシアさんに変な事言うの、禁止だからね」
「あ、あの……はい」
「ではアリシアさん、私はこれで失礼します。 ほら行くわよ灯里。アリア社長が心配してるかもしれないわよ!」
「はひー! アリア社長ー、今行きますからねー!」
「さようなら。気をつけてね」
「はひっ。アリシアさん、アリスちゃん、また会いましょうねー!」
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「……行っちゃいましたね」
「うふふっ」
「ひっ! あ、あの……」
「それじゃあ、はじめましょうか?」
「は……ははは……はい」
会議のあと、アリシアさんと、アリスちゃんがどんなお話をしたのか、アリスちゃんは教えてくれませんでした。
さて、資格の勉強ですが、しばらくの間、藍華ちゃんに、なんとアリスちゃんも加わって、夜間の合同勉強会をすることになりました。
まるで
ちゃんと教えられるかなあ?
灯里さんすごーい! 私は勉強ってちょっと苦手だけど、灯里さんに教わったら、得意になるかもなぁ……。
それから、アリスさんは、もしかしたら、大好きなホラー映画とかの話をしたんじゃないかな?
そうだとしたら、きっと、コワーい話だから、灯里さんは、聞かない方がいいかもしれないね。