これは、そのアリスがにおいて「これは、でっかい不思議すぎる出来事なので、詳細はあまり語らないようにしましょう」と、自ら封印した事件簿の、不思議な一日の様子を垣間見るものである。
「オレンジプリンセス?」
「はい! 何でしょう?」
私が寮のおばちゃんの声がする方を向くと、おばちゃんはニッコリと笑顔になりました。
「よろしい、貴女もようやく自分の通り名に慣れたようね」
「はい、この前はでっかい失礼しました」
私が
もっとも、アテナ先輩に至っては、
「それはさておき、今日の午後の、相乗りでご予約のお客様の件なのですけれど……」
「確か、二名ずつ、四人のお客様ですね? それがどうかしたのでしょうか?」
私が聞き返すと、おばちゃんは不安げな表情を浮かべながら、こう答えたのです。
「それが今朝になって、お客様が一名、追加のご予約が入ったそうなのですよ」
「ああ、そうなのですね。分かりました」
何もびっくりするような事はなく、むしろよくある事なのに、一体何があったというのでしょうか?
「それが……。予約されたお客様のお名前が、貴女と同じ『アリス・キャロル』さんという方だそうなのですよ」
「えっ?」
それは、私の想像の遥か斜め上を行くようなお話でした。
「その反応を見ると、貴女は何も御存知ないようですね。もしかしたら、貴女がご親族やお知り合いを招待されたのかと思ったのですが……」
「いえ、そういう事はないのですが……」
「そうですか。それならば、偶然なのかもしれませんし、予約した方のイタズラかもしれませんねえ」
おばちゃんはそう言いましたが、ふらっと来られるようなお客様ならまだしも、ご予約のお客様なら、ご案内するウンディーネのご指名ができるので、偶然という事は考えられません。
「予約の受付がでっかい間違えた、というようなことはあるのでしょうか? 有栖川ロールさんとか、エーライス・カロリーさんとか……」
「いいえ、そういった事は考えづらいわね。でも、もし何か心配があるのなら、他の人のご案内に振替てもらう事も出来るわよ?」
「そうですか。うーん……でっかい怪しい気もしますが、どんなお客様なのか気になりますし、私はそのままでもいいと思うのですが」
「そうですか。では、ご予約はそのままにしておくわね?」
「はい。ありがとうございます」
そう言いながらおばちゃんが去った後、何だか背後から突き刺さるかのようなでっかい視線を感じます。
「(うーん、何だか不思議な事件の予感がするねー、アトラちゃん)」
「(しっ! 杏、声が大きいわよ!)」
ひそひそ話が聞こえた方を向いたものの、恐らくそこにいたはずの人影は、もうありませんでした。
不思議な事件……。
その時、妙にその言葉が耳に残ったのですが、まさか、本当にあのようなでっかい不思議な出来事が起きようとは、思いもよらなかったのです。
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そんなこんなで、午前中のご案内は、つつがなく終わったのですが、気候が思いの他暖かく、でっかい汗ばむほどでした。
午後のお客様のご案内まで少し時間が空いていたので、インナーを着替えようと思い、私は一旦部屋へと戻る事にしました。
寮に戻ると、メールボックスに、伝言メモが入っている事に気付きます。
「……灯里先輩?」
それは、灯里先輩からの電話を知らせるものでした。
通常は仕事をしている時間帯なので、昼間に先輩方から電話がかかって来ることはありません。
もしかしたら、何かでっかい緊急事態が起きているのかもしれない。
そう思った私は、早速ARIAカンパニーに電話をしてみる事にしました。
「はい、ARIAカンパニーです」
「あっ、灯里先輩ですか?」
「あーっ、アリスちゃん。元気?」
相変わらずの優しい声。
聞き慣れているこの声に、何だかでっかいほんわかとした気分になります。
「はい、今日は冬なのに、でっかい暖かいですね。先ほどお電話を戴いたようなのですが、灯里先輩は、今日はお仕事ではないのでしょうか?」
「うん。実は今日、アリスちゃんの通っていたミドルスクールの後輩さん達が『未来のお仕事体験会』っていうのをするんだって」
「それは確か、最近始まったイベントのようですね」
「そうみたいだねえ。それでね、なんと、ウンディーネのお仕事を教えるのは、藍華ちゃんなんだよ~」
「ええっ!? そうなのですか? でっかい知りませんでした。しかし、それは灯里先輩のお休みと、何か関係があるのでしょうか?」
「うん。もし藍華ちゃんが体調不良とかで、急遽お休みになったら、私が補欠でやる事になってたんだ」
「はあ」
「でね。もし、藍華ちゃんがそのままやる事になったら、たまにはARIAカンパニーの大掃除でもしようかな、と思って、今日は他のお仕事を入れなかったの」
「なる程、だから今日は一日お休みなのですね?」
「うん、朝はちょっぴり慌ただしかったけど。今は何だか、とってものんびりした気分なんだよね~。ふぁ~あ、眠くなっちゃうな~」
「だ、ダメです! 寝ないでください!」
「あはは、冗談だよ~」
慌てる私を、少しからかうように笑う灯里先輩。
「そ、そうですか。ところで、ミドルスクールの生徒と言うのは誰が参加するのでしょうか?」
「ええっと……ちょっと待ってね。ああ、そうだ、えっと、アイシア・フェリーラさん、アルテナ・ロフレンスさん、
「ええっ!?」
聞いたことのある名前が出てきたので、私は思わず大きな声をあげてしまいました。
「ほへ? アリスちゃん、知ってるの?」
「はい、しかし、まさかその三人とは……」
「どうしたの?」
「あ、ああ、いえ。あまり話をしたことはないのですが、三人とも同じゴンドラ部で、特にその三人はでっかい印象に残ってまして……」
そう、何故ならば、その、それぞれの名前にも表れているように、かの三大妖精に見た目がソックリなのです。
おまけに、本物とは異なり、同じ年齢かついろんな面で目立っているばかりか、アテナ先輩にソックリのアルテナさんが、非常にしっかり者なので、非常に関心を持っていたのでした。
「そうなんだ。じゃあ、こういうのはむしろ、アリスちゃんだった方が良かったかもねえ」
「しかし、私の所には、その様なお話はありませんでした。やはり、知り合いだとお互いに、でっかいやりづらさがあるからなのでしょうか?」
「そうだねえ。アリスちゃんはお仕事忙しいからじゃない? 今回のお話は、ゴンドラ協会……といっても、担当はアリシアさんだから、色々考えての事だと思うな」
「なるほど……あっ!」
「はひっ?」
「す、すみません灯里先輩。ここまでお話しておいて何なのですが、今日のご用件は何だったのでしょうか?」
「あっ! あはは、わたしもすっかり忘れてました」
ついつい、本来の主旨を外れて話し込んでしまいました。
もっとも、アテナ先輩に至っては、電話をかけ間違えた事自体にしばらく気付かなかったばかりか、その間違い電話をかけた中華料理屋のおばちゃんと話し込んでしまい、何故だか出前の注文までしてしまったという、通称『間違い電話でごめんなチャイナで五目麺の出前もしチャイナ事件』と呼ばれるドジっ子伝説があったようなのですが……。
「あの……藍華ちゃんにもメールしたんだけど、アリスちゃん、今日の夜って、空いてる?」
「夜と言いますと?」
「うん、今日、ARIAカンパニーでお泊まり会をやろうかなと思っているんだけど……」
「お泊まり会!?」
「うん、お泊まり会」
「さっ、参加者は誰なのでしょうか?」
「ええっと……やっぱり、そこは気になるよね……」
「ええ、でっかい当然です。もちろん今日明日のスケジュール次第ですが、アリシアさんやグランマが参加されたりですとか、メンバーにより準備も変わりますから……」
そこまで言うと、灯里先輩は、覚悟を決めたかのように、意外な人物の名前を挙げたのです。
「その、実は……暁さんなんだよね」
「……えっ?」
「だから、暁さん」
「……」
「あれ? アリスちゃん」
「ええーーっ!?」
「はひっ!?」
またまた私が大きな声を上げたので、灯里先輩を驚かせてしまいました。
「どっ、どっ、どっ、どうしてそうなったのでしょうか?」
「それはその、話せば長くなると言うか……」
いつになく、とても歯切れの悪い灯里先輩。
「でっかい長くても良いです! 経緯から何から全部教えてくださいませんか?」
「えーっ?」
「……と、言いたいところですが、あいにく私もこの後お客様をご案内しなければなりません。後で、藍華先輩とも相談してお返事したいと思うのですが、それで良いでしょうか?」
「あっ、うん。急なお話だし、特に今日いつまでって言うお話じゃないから、藍華ちゃんとも相談して決めてね」
「はい、分かりました。それではまた後で」
これはでっかい緊急事態です。
あの灯里先輩が、暁さんと一晩を共にしようとされているとは……。
いやしかし、何か妙ですね。
もしお二人が恋人関係なら、わざわざ私や藍華先輩を呼ぶような事があるのでしょうか?
それとも、お月見の時、藍華先輩がアルさんをお招きした時のような、何かでっかい思惑があるのでしょうか?
早速藍華先輩にお電話したいところですが、今頃大量の決裁書類と格闘中かもしれません。
そんな事を考えていると、午後一番のお客様のご案内の時間がでっかいそこまで近づいているではありませんか。
ご案内が終わったら、少し時間が空きますので、その時に一度連絡を入れてみる事にしましょう。
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そしていよいよ、ご案内の時がやって来ました。
一体、アリス・キャロルさんとはどんなお客様なのでしょうか?
何だか胸が高鳴ります。
「お客様のご案内でーす!」
五人のお客様がやって来たのですが、アリス・キャロルさんは一番後ろに並んでいて、しかも背が低いらしく、私からはまだ足しか見えません。
「お客様、お手をどうぞ」
私は努めて冷静に、最初の男女二人組をゴンドラにお乗せします。
「では次のお客様、お手をどうぞ」
続いて、女性二人組をお乗せしました。
「それでは最後の……」
と、その最後のお客様をご案内しようと振り向いた私は、一瞬言葉を失ってしまいました。
そうです、そこには、まさに私と瓜二つ、いや瓜六つぐらいに良く似たお客様が立っていたのです。