ARIA The CONVERSATION   作:辰巳しおん

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灯里さん
私もそのガイドブック、地球(マンホーム)の本屋さんで見たんだけど、本当に楽しそうな本だね! ただ、私のお小遣いではちょっと買えそうにないので、今度遊びに行ったら、是非見せてくださいね!

アイちゃん
メールありがとう。
実は、藍華ちゃんにはちょっぴり秘密なんですが、あのあとアリスちゃんから買ったのがあるんだ。
一冊アイちゃんにプレゼントするので、ちょっぴりだけど、素敵なネオ・ヴェネチアを旅行した気分を味わってもらえたら嬉しいな。
楽しみに待っててね!


その 遺された言葉が導く先は……(3)

愛「あーあ……」

 

あ「なーに? どうしたの? ため息なんかついちゃって」

 

ド「いつものアイさんらしくないような……」

 

あ「アーニャの言う通りよ。愛野アイから『明るく、楽しく、元気良く』を引いたら、なんにも無くなるどころか、マイナスになっちゃうじゃない」

 

愛「ふえっ?」

 

ド「あずさちゃん、流石にそれは言い過ぎじゃ……」

 

あ「元気が取り柄のあんたがそんなんじゃ、こっちもテンション下がるでしょう? とにかく訳を話しなさいよ」

 

愛「うん、ごめんね。実はこれの事で……」

 

あ「……ん? ガイドブック?」

 

ド「……ああっ!」

 

愛「ふえっ!? どうしたの?」

 

ド「アイさん、ちょっとそれ貸して!」

 

愛「え? いいけど……」

 

パラパラッ

 

ド「……こっ、これはっ!」

 

あ「ああ。あんたの会社で作ったガイドブックでしょ? 本屋さんとかで沢山売ってるやつじゃない?」

 

ド「これは『ウンディーネと行く ぐるっとまるっとネオ・ヴェネチア観光 プレミアムスペシャルパーフェクトガイド』の初回限定版なのよ」

 

愛「へぇ、そうなんだ。で、なんかすごいの?」

 

ド「この初回限定版には、オリジナルスリーブケース、キャラクターイラスト入りペンライト、折りたたみオペラグラス、別冊漫画『グロちゃんとキャロちゃんの休日』など、豪華特典がついてるのよ」

 

愛「あっ、今は持ってないけど、確かにそれはある」

 

あ「ふうん。ところで、このグロちゃんとキャロちゃんって、何?」

 

愛「えっ? この二人の名前じゃないの?」

 

あ「うーん、何だか、こんな変な名前じゃなかったような気がするんだけど……」

 

ド「そう、これを見るとわかるかな」

 

あ「ああ、アーニャもガイドブック持ってたのか」

 

ド「ほら、現在売られているガイドブックのキャラクターの名前は、ベネちゃんとチアちゃんなの」

 

あ「そうそう、それそれ」

 

愛「そうだったんだ。私、この本が発売された時、私はまだ地球(マンホーム)にいたから気付かなかったよ」

 

ド「それで、何がすごいかと言うと、実はこのガイドブック、現在ではプレミアがついて、定価の10倍程の値段で取引されてるの」

 

あ「にゃにゃっ!?」

 

愛「そんなにすごい物だったんだ」

 

ド「しかも、この初回限定版は、ネオ・ヴェネチア、しかもオレンジぷらねっとのゴンドラ販売でしか買えなかったはずなのに、どうして地球(マンホーム)にいたアイさんがそれを?」

 

愛「うん、灯里さんからプレゼントでもらったんだよ。アリスさんから買ったって言ってたけど……」

 

あ「ふうん……って事は、灯里さんは、自分のも持ってるんだ」

 

愛「ええっと……そうだ、確か、アリスさんに薦められて、予備用とか、プレゼント用とかで、全部で7冊買ったって言ってた」

 

あ「にゃっ!? 7冊? そんなに?」

 

ド「1人に7冊売ってしまうアリス先輩も凄いけど、それを買ってしまう灯里さんも凄い……」

 

愛「うん。あ、でも、何でかはよく分からないんだけど、『藍華ちゃん(さん)にはナイショだよ』って言われているから、あまり知られたくはないみたい」

 

あ「あはは……。何だか支店長が、『無駄使い、禁止!』とか言って、灯里さんに説教してる場面が目に浮かぶわ」

 

ド「それで、そんなプレミアグッズをお持ちのアイさんに、一体何の問題が?」

 

愛「そうだ、それなんだけど、ネオ・ヴェネチアの観光名所の事で、ちょっと分からない事があって、二人も協力して欲しいんだ」

 

あ「なあんだ、それならそうと早く言ってくれりゃあいいのに……」

 

ド「微力ではありますが、私もお手伝いするとしますか」

 

愛「えっ、いいの? 二人ともありがとう!」

 

あ「フッフッフッ。まあ、この優秀な私に、分からない事は無いたぁ思うけどね。どんと来いってやつよ」

 

愛「うん! じゃあ、早速なんだけど、この前、灯里さんから『このメモに書いてあるの、何だか分かる?』って言われて……」

 

あ「うん?」

 

ド「これは、ハチ、マル、ロク、って読むの?」

 

愛「そう。灯里さんが言うには、『8○6』っていうのは、ネオ・ヴェネチアのある場所を指しているらしいんだけど……」

 

ド「ある場所?」

 

あ「さすがにそれだけだと難し過ぎるわね。何かヒントは無いの?」

 

愛「うん、このガイドにも載っている、有名な場所なんだって」

 

ド「なるほど、それでガイドブックを持っているという訳ね?」

 

あ「有名なんだったら、そのガイドブックを、片っ端から読んで行けばわかるじゃない?」

 

愛「うん、でも、もう5回位は読見返しているんだけど、そんな場所はどこにも無くて……」

 

ド「ネオ・ヴェネチアのどこか、という事なら、ある程度候補を絞って、実際に見て回るという方法もあるんじゃない?」

 

あ「それアリ! アーニャの言う通りだよ!」

 

愛「うん。私もそう思って、このガイドブックに載っている先は昨日全部回ってみたんだけど……」

 

あ「えっ? あんたそれ、一日で全部回ったの!?」

 

ド「これ、大体一週間ぐらいで回る量なのに……」

 

愛「えっ? あ、あの……ええっと、もちろん、ムラーノ島とか、そういう遠い所には行ってないよ?」

 

ド「何だか、アイさんの目、とっても泳いでいるような……」

 

愛「そ、そんなことない。そんなことないよう!」

 

あ「それにしたって、圧倒的素敵パワー全開過ぎじゃない?」

 

愛「そうかなあ? 毎朝ジョギングしてるから、そんなに大変って感じじゃない……とは思うんだけど……」

 

あ「あはは……、こりゃダメだわ」

 

ド「(最早、『素敵パワー』と言うより、『パワー!!』と雄叫びを上げてそう……)」

 

あ「(これが圧倒的脳筋ってやつね……)」

 

愛「えっ? 何?」

 

あ「あー、いいからいいから、気にしないでこっちの事は」

 

愛「えーっ、ますます気になるよう」

 

ド「そんなことより、ガイドブックに書かれた名所を巡って、これはと思う場所はなかったの?」

 

あ「(アーニャナイス!)そうよ、流石にネオ・ヴェネチア中を回って、それっぽい場所が全然ないって事はないんじゃない?」

 

愛「それが全然ないんだよー」

 

ド「灯里さんが、ガイドブックに載っていると仰っているのであれば、やっぱり見落としがあるとしか考えられないのよね」

 

あ「そうよ、何かさー、あんたの汗とかで、ページがくっついちゃったとか、読み過ぎで読めなくなっちゃったとか、そういうオチじゃないの?」

 

愛「まさか、そんな事あるわけ……」

 

ド「いいえ、あずさちゃんの言う通りかも……」

 

愛「ええっ?」

 

あ「やっぱり! この不思議な事件の真犯人は、愛野アイ! あんただったのね!?」

 

愛「うええっ!? そんなぁ〜。でもどうしてそう思うの?」

 

ド「はい、ふたりとも、こちらをご覧あれ」

 

あ「うーん……どれどれ?」

 

愛「……あっ!」

 

ド「気づいた?」

 

愛「ここ、右と左のページがズレてる!」

 

あ「ホントだわ!」

 

ド「そう、落丁という奴です」

 

あ「何かと思えばそんな事か……って、何で5回も読んだあんたが気付かんのだ!」

 

ド「これは、シベリア送りです」

 

愛「ええっ!?」

 

あ「だからどこなのよ、シベリアって」

 

ド「とにかく、アイさんと私の持っているガイドブックの掲載場所は変わらないから……あっ、ここだ」

 

あ「えっと……サンタ・マリア・デッラ・サルーテ教会?」

 

ド「ほら、説明を読んでみてください」

 

愛「うん、ええっと……。サルーテ岬に立つ教会。地球(マンホーム)で17世紀に流行したペストの沈静化を祈願して建てられ、健康(サルーテ)と名付けられた。八角形の本堂の周りを、6つの礼拝堂が取り巻くような形になって……ああっ!?」

 

あ「きたっ! それよ!」

 

ド「八角形の本堂周りに6つの礼拝堂って意味だったのね」

 

あ「にゃははっ! まあ私達にかかれば、ざっとこんなもんね!」

 

ド「まさに朝飯前とはこのことかと」

 

愛「そうだよね。あー、なんかホッとしたら、お腹が空いて来ちゃったよ」

 

あ「そうね。じゃあパフェでも頼みましょうか? あんたのオゴリで」

 

愛「ええっ!?」

 

あ「悩みを解決してあげたんだから、その感謝の意を示すのは当然ではないのかね?」

 

愛「そ、そんなあ〜」

 

ド「私はパフェはいいわ」

 

愛「えっ?」

 

あ「あら、あんたダイエットでもしてんの?」

 

ド「そういう訳ではないんだけど、その代わりにお願いがありまして……」

 

愛「お願い?」




愛「と、いう事で、『8○6』の秘密は、無事分かりましたよ! 灯里さん」

灯「そう。でも、落丁だったなんて分からなかったよ。何だかごめんね」

愛「ううん、いいんです。むしろ、その方がプレミアがつくんじゃないかって、アーニャちゃんに言われました」

灯「あはは……そうか。でも、それなら別のガイドブックをあげ……」

愛「大丈夫です!」

灯「えっ?」

愛「実は、アーニャちゃんが、今度発売になる最新版を、従業員価格で売ってくれるんですよ〜」

灯「……ほへっ?」

愛「それがとっても安かったので、今回、灯里さんの分も頼んじゃいました!」

灯「えーっ?」

愛「あれ? どうしたんですか? 灯里さん」

灯「あっ……ううん、わたしの分も頼んでくれたんだね、ありがとう」

愛「いいえ〜、いつもご指導戴いているので、その感謝も込めてのプレゼントです!」

灯「う、うん……。(どうしよう、アリスちゃんからも買う約束してるのに……)」

愛「うん? 何か言いましたか?」

灯「ううん、何でもないよ」

愛「そうですか……あっ! そうだ! 今度そのガイドブックが来たら、一緒に全部まわってみませんか?」

灯「ぜ、全部?」

愛「はい! 朝から一日かけて、ジョギングしがてら回るんです。体力作りにもなりますし、灯里さんも知らない、ネオ・ヴェネチアの隠れた素敵な場所が見つかると思いますよ」

灯「あの〜、それは……その……素敵だね」

愛「じゃあ決まりですね!? ああー、楽しみだなぁ!」

灯「はは……はは……はひ」
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