ARIA The CONVERSATION   作:辰巳しおん

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アイちゃん
今日はいつもの三人でお休みを合わせて、ハイキングに行って来ました。
(藍華ちゃん曰く、『一人前(プリマ)同士ではピクニック禁止!』だそうです)
久しぶりの三人一緒のお休みという事もあり、何だか、三人ともテンションがちょっぴり高めです。
その帰り、とあるカフェに寄ったのですが……。
  


その 甘さに秘められた想いは……(1)

リーンゴーン、リーンゴーン……

 

灯「うーん、今日はとっても楽しかったねえ」

 

ア「はい。いいリフレッシュになりましたね! まあ、例外の方もいらっしゃるようですが……」

 

藍「……」

 

灯「あの、大丈夫? 藍華ちゃん」

 

藍「ふ、ふたりとも、あんなに歩き回ってよく平気ね。あたしゃもうヘトヘトだわ」

 

ア「何を言うのかと思えば……。『今日はゴンドラには乗らず、歩いて行きましょう』と言い出したのは藍華先輩ではないですか?」

 

灯「そうだよ〜。それに藍華ちゃん、『ウンディーネたるもの、どんな時でも鍛錬を怠るべからず』って、飛んだり跳ねたりするから………」

 

ア「その上、カラ井戸の中に飛び込んだり、怪しげに光る星形のクッキーを食べたり……」

 

藍「きっ、今日はしてないでしょ! そんなこと」

 

灯「た、たまにしてるような言い方だね……」

 

藍「い・つ・も、してません!」

 

ア「しかし、かつて地球(マンホーム)のイタリアでは、究極の鍛錬をした配管工の兄弟が、そのようにして何度もさらわれる姫を救出したと言う都市伝説も……」

 

灯「えーっ!? そんな伝説が……あったっけ?」

 

藍「ないから! あってたまるかっ!」

 

ア「ふふっ。冗談ですから、気にしないでください」

 

藍「まあとにかく、普段は使わない筋肉を使ったって感じよね~」

 

ア「こういう時は、やはり甘い物を飲んで過ごすのがいちばんかと」

 

藍「そうね、何か頼みましょ?」

 

灯「甘いものと言えば、このお店にはアテナさんのお気に入りの飲み物があったよねぇ……」

 

ア「はい、アレですね?」

 

藍「えーなになに? そんなのがあるならそれ頼みましょうよ!」

 

ア「はい。そう思って、席に案内された時に、頼んでおきました」

 

灯「やった!」

 

藍「なかなか気が利くじゃないの」

 

ア「はい。とある先輩から『ウンディーネたるもの、どんな時でも先回りして行動するのよ! それが出来ない奴は○○だわ!』と、それはもう、うるさく言われてましたので」

 

藍「一応の確認だけど、あの、それを言ったのって、私じゃないわよね?」

 

ア「ふふっ。すみません、誰だったのかはもう忘れてしまいました」

 

藍「……と言いつつ、何よその目は」

 

灯「ほへ? それ、何だか私も聞いた事があるような……」

 

藍「ぬなっ」

 

ア「多分気のせいだと思いますよ、灯里先輩。グランマやアリシアさんが、そんな事を言うわけ無いじゃないですか」

 

灯「うーん? でもそうか、そうだよね〜」

 

藍「ああっ、とっ、ところでさ、その、アテナさんのお気に入りの飲み物って、何なのかしら?」

 

ア「はい、このお店はホットチョコレートの種類が豊富なのですが、アテナ先輩用のスペシャルメニューと言うべきものがありまして……」

 

藍「へー、そうなんだ」

 

灯「そうそう。アリスちゃん、あの時は大変だったよねぇ」

 

藍「大変? 何が?」

 

ア「アカリセンパイ?」

 

灯「あっ……」

 

藍「後輩ちゃんどうしたの? そんな怖い顔しちゃって」

 

ア「何でもありません。ねえ、アカリセンパイ?」

 

灯「そうだね、な、何でもないかな。あはは……」

 

藍「何よ、気になるわねえ」

 

ア「ああ、そんな話をしていたらなんとやら。頼んでいたものが来ましたよ」

 

店「お待たせ致しました」

 

コトッ

 

藍「おお〜、これは美味しそうね」

 

灯「うん、アテナさん、沢山のホットチョコの中から、見ただけでこのホットチョコレートを当てられるんだよ〜」

 

藍「いやあの……、見たらまあ当てられるでしょうね、普通は」

 

灯「そう、それが普通じゃなくて……」

 

ア「アカリセンパイ?」

 

灯「はひっ?」

 

藍「また怖い顔して、後輩ちゃん、アテナさんと何かあった訳?」

 

ア「別に何もありませんよ、さ、早く飲みましょう」

 

藍「そうね、まあそれはおいおい聞くとして、戴きま〜す!」

 

灯「う〜ん。この、ほんわかして、うっとりしちゃうような甘い香り。まるで、幸せになる魔法をかけられたみたいだねえ……」

 

藍「恥ずかしいセリフ、禁止!」

 

灯「えーっ?」

 

ア「先輩方……」

 

藍「まあそれはさておき……うん、本当に味も香りも素晴らしいわね」

 

灯「ほっとするよね〜」

 

藍「それにしても、どうしてアテナさんはこのホットチョコレートがお気に入りなの?」

 

ア「ああ、気になりますか?」

 

藍灯「うん」

 

ア「実はですね……」

 

藍灯「うんうん」

 

ア「その件については……」

 

藍灯「うんうんうん」

 

ア「分からないんです」

 

ガタガタッ!

 

ア「あれ? どうかされましたか?」

 

藍「わ、わかんないってあーた。いつも一緒の部屋に寝泊まりしてたんだから、それぐらい聞いてるんじゃないの?」

 

ア「同じ部屋とはいえ、お仕事や寝食の時間も違いますし、例えお部屋にいるタイミングが合ったとしても、あえて聞くような内容でもないので……」

 

灯「確かに、アテナさんも、アリスちゃんも、忙しそうだものねぇ」

 

藍「でも、これがアテナさんのお気に入りって事は知ってるんでしょう? 最初にアテナさんと一緒に来た時には聞いてないの?」

 

ア「はっ!? そういえば!」

 

藍「思い出した!?」

 

ア「はい。 実はですね……」

 

藍灯「うん」

 

ア「その時に……」

 

藍灯「うんうん」

 

ア「アテナ先輩から……」

 

藍灯「うんうんうん」

 

ア「聞いてませんでした……」

 

ガタタッ!

 

ア「と、言うよりは……あれ? 先輩方?」

 

藍「んもう! いちいちズッコケる私達の身にもなってよね、まったく……」

 

灯「あはは……。でも、聞いてないって?」

 

ア「はい、聞いていないと言うよりは、ここに連れてきて戴いたのが、まだ入寮したての時でして、アテナ先輩とどんなお話をしたのか、よく覚えていないのです」

 

藍「ああ、そういうコトか。確かに、出会ってすぐなら、そういう事もあるわよね」

 

ア「藍華先輩もですか?」

 

藍「ああ、うーん……。そうねえ、私は元々姫屋の人だから、後輩ちゃんとはちょっと違うかもしれないわ」

 

灯「どんな風に違うの?」

 

藍「なーんて言うのかしらねえ、まあ、物心ついた時から、姫屋の制服を着てる人は沢山いたし、『慣れ』みたいな?」

 

ア「では、晃さんと初めてご指導を受けられた時にも、ですか?」

 

「えっ? あの、ええっと……晃さんはね、緊張って言うより、何だかちょっと怖い、みたいな?」

 

ア「怖い? 指導の時に、オールを木刀の様に持っていたとかですか?」

 

藍「えっ? それどうして……」

 

ア「えっ? まさか本当に……」

 

藍「……あっ? いや、『どうして』って言うのは、『どうしてそんな事を考えたのかな?』っていう意味であって、別にオールを木刀の様に……いや、スパルタ教育を受けたとか、そういう訳じゃないわよ? あの、それより灯里は?」

 

灯「うーん、わたしは初めてアリシアさんに会った時は、緊張とかしなかったなあ……」

 

藍「あっ、思い出した! あんた、AQUAに来た日、移動中に寝ちゃって、起きたらARIAカンパニーだったそうじゃない」

 

灯「はひっ!? ど、どうしてそれを……」

 

ア「本当なんですか?」

 

藍「そりゃあもう。当時は『ARIAカンパニーに色んな意味で凄い新人が入った』って、姫屋どころか、業界中で噂になってたわよ」

 

灯ア「ええーっ?」

 

藍「あははっ、冗談よ、冗談。晃さんから聞いただけだから」

 

灯「そ、そうなんだ。良かった~……あれ? それ、良かったのかな?」

 

ア「ま、灯里先輩らしいエピソードではありますね」

 

藍「そうそう。あんたが恥ずかしいのは、今に始まったことじゃないんだし、今更そんな事気にしちゃダメよ」

 

灯「そ、そうかな……あはは……はひ」

 

____________________

 

 

藍「う〜ん! 美味しかった! 満足満足」

 

ア「う〜ん……」

 

藍「あら、どうしたの?」

 

ア「やはり、このメニューの件ですが、今度アテナ先輩に聞いておきましょうか?」

 

藍「いいわよ。まあさ、きっとアテナさんの事だから、なんか突拍子もない理由なんじゃない?」

 

ア「私もそんな気はしますが……」

 

藍「逆に、『なあんだ』とか言っちゃいそうな理由でガッカリするより、分からない方がミステリアスな感じがあっていいじゃない」

 

ア「それもそうですね」

 

藍「ねえ、灯里もそう思……あら?」

 

ア「灯里先輩?」

 

灯「…………」

 

藍「ありゃま、寝ちゃったのね」

 

ア「まさに、『船を漕ぐ』というのはこのことを言いましょう。何だかんだで、灯里先輩も相当はしゃいでいらっしゃいましたしね」

 

藍「疲れもあったんじゃないの? 一人でやってるんだから、色々プレッシャーもあるんでしょ?」

 

ア「ですね」

 

灯「うーん……」

 

ア「何か、夢でも見ているのでしょうか?」

 

藍「そうねえ……」

 

ア「やはり、ブロックから生えた怪しげなキノコやら花を採取する夢を……」

 

藍「見るかっ!」

 




リーンゴーン、リーンゴーン……

灯「うーん……。あれ? わたし、寝ちゃって……」

?「あのう、すみません」

灯「はひっ!?」

?「うわっ、な、何だ?」

灯「あ、す、すみません」

?「ここ、座ってもいいですか?」

灯「えっ? ……あれっ!? ……えっ? 晃さん!?」

続く
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