藍「うん! 特に私は生クリームの載ったプリンを食べると、スッゴク幸せを感じるわ」
ア「甘味の代表である砂糖には、体のエネルギー源になるだけではなく、脳内の神経物質に働きかけることでリラックスさせる効果があります。感情を調節する前頭葉では、セロトニンが精神を安定させる役割を……」
藍「あーもうだから! そーゆー難しい話は禁止よ、禁止。ところで灯里は、甘いものは何が好き?」
灯「え〜、沢山あるから、ひとつには選べないなあ」
藍「でも、あえてひとつだけあげるとしたら?」
灯「ええっと……そうだ! アイス、シャーベット、ゼリー、ブラウニー、クッキー、プレッツェル、ウエハース、プリン、チーズケーキ、そしてたっぷりのフルーツと生クリームの上にチョコレートソースをかけたスペシャルパフェ!」
藍「ぬなっ!?」
ア「食べると、幸せより胃もたれを感じそうですね……」
晃「えっ? あの……失礼ですが、どこかでお会いしましたか?」
灯「……はへっ?」
?「あっ……あらぁ? お客様、どうされましたか?」
灯「えっ!? あ、あい……」
晃「あ、いや、こちらの店員さんが、いきなり私の名前を言われたので……」
藍「まぁ! ご気分を害されたんですね? それはどうも申し訳ありませーん! (ほら! あんたも早く謝んなさいよ!)」
灯「はひっ!? ええっと……も、申し訳ございませんでした」
晃「いや、別に謝ることでは……。それより、どうして私の名前を…」
藍「おやっ!? あちらのお二人はお連れ様? では、お客様も含めて三名様ですね!? ささ、こちらのお席へどうぞ!」
晃「あ、ええっと……」
フ「あらあら、どうしたの? 晃ちゃん」
晃「あ……いや、何でもない」
グ「ふふふ、何だかヘンな晃ちゃん」
晃「いや、お前に言われる筋合いはないけどな、アテナ」
グ「え〜っ?」
藍「あらまあ、ウンディーネさん達は、仲がよろしいんですね! では、こちらがメニューですので、お決まりになりましたらお呼びくださ〜い」
晃「えっと、どうも」
藍「(ホラ行くわよっ!)」
灯「はへー……」
ズルズルズル……
晃「何なんだ? ありゃ……」
___________________
藍「(んもう! なーにやっちゃってんのよアンタは! お仕事中の居眠り&ボケボケ禁止! って言ってるでしょ!)」
灯「(お仕事中? えっと……その前に、わたし達、どうしてここのカフェの制服を?)」
藍「(だから! お仕事中だからに決まってるでしょ!)」
灯「(はへー……そうだったっけ?)」
藍「(んもう! せっかく憧れてたカフェの店長になれたのに、サブのあんたがそんなんじゃ、私の評価まで下がっちゃうじゃないのよ!)」
灯「(ご、ごめん。そんなつもりじゃ……)」
藍「(んもう、これから気をつけてよね。ところでさ、あそこにいるのって、あの、ARIAカンパニーのアリシア・フローレンスよね?)」
灯「(うん、ちょっぴり『さん』をつけて欲しい所だけど…)」
藍「(やっぱりそうなのね? うわあ……ウワサには聞いてたけど、やっぱりエレガントってゆーか、全てが美しいって感じよね〜)」
灯「(う、うん。それはそうだけど……)」
藍「(それから、隣にいるのって、オレンジぷらねっとのアテナ・グローリーよね?)」
灯「(うん)」
藍「(歌が上手いらしいけど、本当かしら?)」
灯「(そ、それはもちろん)」
藍「(えっ? あんた近くで聞いた事あるの?)」
灯「(それは、まあ……)」
藍「(あるのね? うわあ……いいな〜。それから、あんたに話かけてた、あの姫屋の制服の人……)」
灯「(それは、さすがにわかるでしょう?)」
藍「(……あれ誰?)」
灯「えっ!? ムグッ」
藍「(シーッ! もう、何で大声出すのよ!)」
灯「(む、むむん……)」
藍「(まあとにかく、ああやって、ライバル会社の三人がつるんでるってゆーのは、なあんか、怪しいわね……)」
灯「(怪しい? だって、わたし達……は違うのか)」
藍「(よーし、わかったわ! あのテーブルはあんたに任せるから、何を話してるのか探って来て!)」
灯「……ええっ!? ムグッ」
藍「(シーッ! だからもう! 大声出さないでよ!)」
灯「(む、むむん……)」
藍「(しっかりしてよ、もう。もしかしたら、業界を揺るがす、大スキャンダルに発展するかもしれないんだから! 責任重大よ!)」
灯「(こ、こんなオープンカフェで、そんなこと話すかな?)」
藍「(な~に言っちゃってんのよあんたは。こういう所だからいいのよ。 木を隠すには森の中、秘密隠すにゃカフェの中ってやつよ!)」
灯「(そ、そうだっけ……)」
藍「(とにかく行って来て! ……あ、あとコレ)」
灯「(これ、伝票にしては何だかちょっぴり…)」
藍「(アリシア・フローレンスのサイン、貰って来て)」
灯「えーっムグッ」
___________________
晃「なあアテナ、いつになったら決まるんだ?」
グ「あ、あの、もう少し……」
フ「まあまあ晃ちゃん。まだ来たばかりなんだし、種類も沢山あるんだから、ゆっくり選ばせてあげましょうよ」
晃「ったく、そうやっていつもお前が甘やかすから、いつまでもスパッと決められなくなるんだよ。大体、今日ここに来たのはなあ、アテナが今度来る後輩との…」
グ「ねえねえアリシアちゃん。これなんだけど……」
フ「あらあら、とっても美味しそうで、素敵ね」
晃「……」
グ「あれ? 晃ちゃん?」
フ「唇が小刻みに震えてるけど、大丈夫?」
晃「……いや、大丈夫だ。決まったか?」
グ「あの、ごめんなさい。もう少し……」
晃「そ、そうか……。まあ、今日はこのために集まったようなもんだしな。ゆっくり選ぶといいさ」
フ「それにしても、ここのお店は、本当に沢山の種類のホットチョコレートがあるのね」
グ「うん。私、昔からこういう甘いものが大好きで、ついつい、いろんなお店に入ってしまうの。ここも、見つけた時にすぐ来たかったんだけど、寮から少し離れているから、なかなか機会がなくて……」
晃「ふうん。ま、可愛い後輩の緊張を解く為に、散歩がてらここに連れて来ようなんて、アテナらしい考えだけどな」
フ「そうね。そういえば、晃ちゃんも、今度新人さんが付くんでしょう?」
グ「えっ? そうなの?」
晃「まあな。ただ、私の場合は、相手がちょっと特殊でね。先輩後輩と言うよりは、教育係みたいなものを期待されてるんだよな、これが」
フ「あらあら、それは大変そうね」
晃「フフフッ、自分なりに、愛情タップリに、ビシビシやるつもりさ」
グ「何だか、すごいことになりそう……」
フ「いじめちゃダメよ?」
晃「何でだよ?」
グフ「えっ……」
晃「……あっ? いや、『何でだよ?』と言うのは、『何でそんな事を思うんですか?』という意味であってだな、せいぜいオールを木刀に……いや、スパルタ教育をしようとか、そういう訳じゃないぞ?」
グフ「……」
晃「だ、だからそんなドン引きした顔するのをやめろ、私の話をキチンと…」
灯「あのう……」
晃「すわっ!」
灯「はひっ!?」
晃「あっ!? い、いや、すまない……。注文がまだだったよな?」
灯「はわ……はわわ……」
グ「(今のは、相当恐かったわよね?)」
フ「(うん。あの店員さん、トラウマにならないと良いのだけど……)」
晃「だから! そのドン引き顔でのヒソヒソ話をやめろ!」
灯「は、はひ……そ、その……ご、ご注文は……」
晃「あ、ああ、えーっと、私はこれを。二人は?」
フ「私は、これをお願いします」
グ「私は……ええっと……うーんと、これ? ああいや、こっちの方がいいかしら……」
晃「代わりに私が頼みましょうか? アテナさん」
グ「ふええ? でも……」
フ「ねえアテナちゃん。もし決まらないなら、店員さんのお勧めを聞いてみたらどうかしら?」
灯「ほへっ?」
晃「うん、それがいいな。お店の人なら、一番売れてるメニューとか、この店ならではっていうメニューも知ってるだろうし」
グ「それもそうね。あの、店員さん。何かお勧めの物とか、ありますか?」
灯「あ、あの……す、すみません。わたし、まだこのお仕事を、ついさっき始めたばかりで……」
晃「始めたばかりかどうかはしらないが、お店のお勧めぐらいは分かるんじゃないですか!?」
灯「あの、ええっと……」
グ「(やっぱり今日の晃ちゃん、コワ〜イ)」
フ「(私達と会う前に、何か嫌な事でもあったのかしら?)」
晃「すわっ! だから違うって言ってるだろう? 私達だって、観光案内、操舵、それに
グ「(さすがに、私達のお仕事とは、ちょっと違うと思うんだけど……)」
フ「(可哀そうに、今にも涙がこぼれ落ちそう)」
晃「ぐぬぬ……」
灯「ええっと、あの……そ、そうだ、お客様」
グ「はい」
灯「まだまだわたしには、お勧めを選べるだけの実力はありません。でも、目をつぶって、メニューのどこかを指してみてください。きっと、それがお客様にとっての、一番素敵なご注文になると思います」
フ「あらあら、それは面白いわね」
晃「ああ、まさにアテナにピッタリの選び方だな」
グ「そうよね。悩んでも仕方がないし」
灯「はひ。それでは、私がメニューを持ちますので、どうぞ」
グ「分かったわ。うーん……えいっ」
灯晃フ「………」
グ「あら? 何だか少し柔らかいような感触が……」
晃「あのなあ、アテナ」
グ「なあに?」
晃「そこは、私の胸だ」
グ「えっ? じゃあ、こっち?」
灯晃フ「………」
グ「あら? 今度はもっと柔らかくて、暖かい……」
フ「あらあら、アテナちゃん」
グ「なあに?」
晃「ほほは、わはひのほほは」
グ「えっ? あの、ごめんなさい」
フ「アテナちゃん、一度深呼吸をして、ゆっくり、指してみたらどう?」
グ「そ、そうよね。(すぅーはー)……うん、もう一度……それっ」
灯晃フ「………」
グ「あれ? 今度もダメ?」
晃「いや、ダメでは無いが……。というか、もう目を開けていいんだぞ、アテナ」
フ「これは……上と下、どちらになるのかしら?」
晃「これはまた、キレイにど真ん中だよなあ」
グ「どうしよう。どっちも美味しそうだけど、両方は飲めないし……」
灯「ではお客様、両方を組み合わせる、というのは如何ですか?」
グ「えっ?」
フ「まあまあ、いいんですか?」
灯「はひ。お客様だけの、特別メニューということで、わたしから店長さんに頼んでみます」
晃「おお! それなら、その後輩と来た時に話のネタにもなるし、良かったじゃないか」
フ「うふふ、晃ちゃんの言う通りね。ありがとう、素敵な提案だったわ。」
グ「うん! ありがとう、素敵な店員さん」
灯「はひ、何だか、こそばゆいです」
リーンゴーン、リーンゴーン……
灯「ふ〜ふふ〜ん♪ うふふっ」
藍「あによ、そんなニヤけちゃって」
灯「え〜、だってぇ」
藍「そんな事より、早いとこコレ、持って行ってよ」
灯「ほへ? 私まだオーダーを……あれ? この飲み物は……」
藍「なーに言っちゃってんのよこのコは……。この前、アンタがあの人の為に作れって言い出した、メニューにないホットチョコレートでしょう?」
灯「えっ? もう作ったの? それに、何で2つ?」
藍「はあ? 二人しかいないんだから、当たり前じゃないのよ」
灯「……ほへ?」
藍「まーったくこの子は……。ほうら、自分の目で、しっかり見なさいよっ!」
グイッ
灯「……えっ?」
藍「アンタには、あれが三人に見えるワケ?」
灯「アテナさんと……アリスちゃん?」
続く