ARIA The CONVERSATION   作:辰巳しおん

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三社合同一人前(プリマ)会議が終わり、先輩方が帰った今、私、アリス・キャロルは、ただいま絶賛でっかいピンチに遭遇しています。
こうなれば、頼みの綱はただ一人。そうです、皆さんで呼びましょう、あの女性(ひと)を。
それでは、せーのっ『アテナせんぱーい!』
『なあに? アリスちゃん』
……えっ?



その ウンディーネの資格は……(EX1)

今からちょうど一週間前のこと。

私が、ゴンドラ協会の理事会を終えて出てくると、仁王立ちで待っている、ひとりのウンディーネさんがいた。

 

「あらあら、晃ちゃん?」

 

「よう、アリシア」

 

「どうしたの? ここ、ゴンドラ協会よ?」

 

「この私が、そんな事を知らないとでも思ったのか?」

 

「そういう意味じゃないわ。どうしてここに晃ちゃんがいるのかな、と思って」

 

「理由はただひとつだ、言わなくても分かるだろ?」

 

「ああ、今度の一人前(プリマ)認定式の件ね?」

 

「違う!」

 

「じゃあ、姫屋で何かトラブル?」

 

「それも違うっ!」

 

「あっ、私ったらごめんなさい。お手洗いなら、あそこの階段の横にあるわよ」

 

「すわっ! 誰がこんな所にトイレを借りに来るか!」

 

「ひどいわ晃ちゃん。ゴンドラ協会を『こんな所』だなんて……。しかもここ、理事長室の前よ?」

 

「……お前、わざとだろ」

 

「わざと? ええっと……どう言う意味?」

 

「くっ……。そうだな、確かに、ちょっと言い過ぎたかもしれない。すまなかった」

 

「いえいえ」

 

「いいかアリシア。私は、お前に会いに来たんだ」

 

「あらあら、それなら、最初からそう言ってくれればいいのに……」

 

「ぐっ……ぬっ……」

 

「晃ちゃん、震えているけど大丈夫? どこか具合が悪いの?」

 

「いや、ちょっと無性に壁を殴りたくなっただけだ。ウンディーネたるもの、体調管理を怠るようでは話にならないからな。それよりも、お前はどうなんだ? 大体お前は若さにまかせて働き過ぎなんだよ。過労で倒れたらどうするんだ? 元とはいえ、かのグランマの設立したARIAカンパニーの社員たるもの、会社の理念は心にきざんでおくべきで…」

 

「ねえ、晃ちゃん」

 

「何だ?」

 

「とても言いにくいんだけど……。そのお話、長くなる? 私、この後また会議があるのだけど……」

 

ドンッ!

 

「…………失礼」

 

「あらあら」

 

「時間がないなら端的に話す。アリシア、お前、船舶運航管理責任者の資格は持っているか?」

 

「うん、持ってるわよ。どうして?」

 

「いや、藍華が支店長になっただろ? 姫屋の幹部会で、今のうちにそういう資格を取らせようって話になったらしい」

 

「まあ、藍華ちゃん。期待されているのね」

 

「ただ同時に、『果たして10代の若い奴が取れるような資格なのか?』という話になったそうだ」

 

「そうだったの」

 

「お前がARIAカンパニーを経営していた頃、掲げてあった営業許可証を見たが、支配人はお前になっているのに、運航管理責任者は、グランマだっただろ?」

 

「すごいわ晃ちゃん。よく気付いたわね」

 

「あんな目立つ所にある許可証に、グランマの名前があるんだ。知ってたら、客でも気が付くだろう?」

 

「そうかもしれないわね」

 

「ま、あのひよっ子一人前(プリマ)三人組なら、お前が『アリア社長が運航管理責任者なのよー』とか言っても、信じるかもしれないがな」

 

「ふふふ。面白いけど、どうかしらね?」

 

「ま、そんな話はいい。で、どうなんだ? 試験は難しかったか?」

 

「確かにそうね。でも、ウンディーネのお仕事に関する問題も結構多いのよ。灯里ちゃんも合格してるし、藍華ちゃんなら多分、大丈夫じゃないかしら」

 

「お前……今、何て言った?」

 

「難しいけれど、ウンディーネのお仕事に関する問題も結構多い」

 

「そこじゃない、その後だ」

 

「藍華ちゃんなら多分、大丈夫じゃないかしら」

 

「そ・の・あ・い・だ・だっ!」

 

「灯里ちゃんも合格してる」

 

「そこだ、そこ! 灯里ちゃんも、この資格を持っているのか?」

 

「ええ、そうよ」

 

「いつ取ったんだ?」

 

「ええっと……そうそう、確か半人前(シングル)になりたての頃ね」

 

「そんな前に? 一体なぜ?」

 

「なぜって……。それは、グランマのアドバイスなの」

 

「グランマが?」

 

「『灯里ちゃんは、とってもお勉強が得意みたいだから、たくさんの資格に挑戦させてみてはどうかしら』って。だから、ウンディーネのお仕事に関係しそうな、いろいろな資格に挑戦してもらったの」

 

「色々? まさか、他の資格も持っているのか?」

 

「うん。この資格以外にも、整備士、海技士、旅行業務取扱管理者とか、水先案内業界に関係するお仕事の資格は、一通り合格しているのよ」

 

「……」

 

「どうしたの? お口がパクパク、お魚さんみたいよ?」

 

「じゃ、じゃあなんだ? 灯里ちゃんは、自分で企画したツアーに自分で募集したお客さんを自分で整備したゴンドラに乗せて自分で運行管理しながら自分でゴンドラこいで自分で観光案内ができちゃう、とでも言うのか?」

 

「そうね。でも、できるのとやるのは違うから、一通り資格を取った後は、灯里ちゃんが一番なりたい、ウンディーネとしてのお勉強やお仕事に専念してもらったの」

 

「……なんで……」

 

「どうかしたの? 晃ちゃん」

 

「なんで、お前んところは、そんなにどえらい優秀な社員ばっかりなんだっ!?」

 

「あらあら、姫屋だって、素敵な社員さん、沢山いるじゃない?」

 

「素敵の次元が違うんだよ。ARIAカンパニーで、一人前(プリマ)になれなかった奴なんて、いないだろ?」

 

「それは、私もよくわからないけど……」

 

「まあいい。アリシアも、灯里ちゃんも、若いうちにこの資格を取っている、っていうのはわかったよ。ありがとう」

 

「いえいえ、どういたしまして」

 

「時間を取らせて悪かったな、アリシア」

 

「ううん。私も、久しぶりに晃ちゃんと直にお話ができたんだもの。嬉しかったわ」

 

「じゃあな」

 

「うんっ。またね」

 

「そうだ、私がここに来たことは、藍華や、灯里ちゃんには内緒にしておけよ」

 

「あらあら、どうして?」

 

「この晃様が、お前と話がしたくて、ゴンドラ協会に乗り込んできた。なーんて、ちょっと恥ずかしい話だからだっ!」

 

「うふふ。わかりましたっ」

 

「……ところでアリシア」

 

「なあに? 晃ちゃん」

 

「その……。そこの階段の横で、良かったんだよな?」

 

「あらあら。じゃあ、私も一緒に行こうっと」

 

「お、おい、よせっ! 腕を組むな! 恥ずかしい。ここは、ミドルスクールじゃないんだぞ?」

 

「うふふ、たまにはいいじゃない? そういえば晃ちゃん、あの頃は………」

 

「おい、やめろアリシア! 恥ずかしいエピソード禁止だ、禁止!」

 

「あらあら、うふふ」

 

続く

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