ARIA The CONVERSATION   作:辰巳しおん

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ア「先輩方。エンゼルクリーム、というドーナツをご存知ですか?」
灯「知ってる〜。昔、地球(マンホーム)のとあるドーナツ屋さんで売っていたってやつだよね? クリームがたっぷり入って美味しいらしいよー」
藍「へえー。でも何でエンゼルなの?」
灯「ほへ? 何でだろう?」
ア「はい、まず何故エンゼルクリームという名前にしたかと言うと、そのクリームを作っている会社のトレードマークがエンゼルだと言うことに由来していて、では何故トレードマークをエンゼルにしたかと言うと、当時その会社で作っていたのが、そのふわふわした食感から別名エンゼルフード(天使の食べ物)と呼ばれるマシュマロであることに由来しているんです。ちなみに何故マシュマロと言う名前なのかと言うと、元々マーシュ・マロウという植物の根から取れる、粘り気のある汁に卵白と砂糖……」
藍「だあーーっ! もうウンチク禁止ーッ!」


その 甘さに秘められた想いは……(3)

灯「どう……なってるんだろう?」

 

藍「別に、どーにもなってないでしょう? だから早く持って行って! 冷めたら美味しさが半減するでしょ?」

 

灯「う、うん……。あ、それとごめんなさい。アリシアさんのサイン、貰いそびれちゃった」

 

藍「ああ、それまだ気にしてんの? 別に、『サインは無理だけど写真なら』って、一緒に写真撮って貰ったんだし、別にいいわよ」

 

灯「……はへっ?」

 

藍「あんただって、とっても喜んでたじゃないのよう。ホラ、アレ」

 

灯「ほ、本当だ……。でも、ちょっぴり斜めのような……」

 

藍「忘れたの? あの人がゼツミョーなタイミングで、神がかり的なズッコケ方したからよ。まあ、撮り直す時間も無かったし、仕方ないわね」

 

灯「ほへー……」

 

藍「とにかく! 無駄口禁止! 早く持って行ってよ!」

 

灯「う、うん……」

 

____________________

 

灯「(ええっと、今の私は、アテナさんには、前に会った事があって、アリスちゃんとは初対面……ということで、いいのかな?)」

 

グ「…………」

 

ア「…………」

 

灯「(はわわ……二人とも、ま、まるでカチンコチンの氷のような……あれ? あそこにいるのは……)」

 

晃「…………」

 

フ「…………」

 

灯「(あ、晃さんとアリシアさんから、全く性質の違うすごい圧が……。でも、大丈夫。わたしは、大丈夫。…………よし、水無灯里、行きます!)」

 

グ「…………」

 

ア「…………」

 

灯「おまたせ致しました。ご注文の、スペシャルホットチョコレートです」

 

グ「あ、ありがとうございます」

 

灯「いいえ、お客様のお気に入りですもの。あったか〜いうちに、どうぞご賞味くださいませ」

 

グ「すみません、いつもメニューに無い物を作って貰ってしまって」

 

ア「えっ? これ、メニューに無いんですか?」

 

グ「えっ? う、うん。これはね……」

 

ア「何でそんな特別扱いなんですか?」

 

グ「あの、それはその……」

 

ア「特別扱いなんて……そういうの、私は嫌…」

 

灯「大丈夫!」

 

グア「えっ?」

 

灯「きっと、大丈夫です」

 

グ「店員さん……」

 

灯「いつでも、どこでも、何度でも、アレンジしたいと思った時は、真っ白なクリームです」

 

ア「あ、あの、何を言って……」

 

灯「そちらのお客様は、当店にいらしたのは初めてですか?」

 

ア「は、はい……」

 

灯「実は、このスペシャルホットチョコレートには、単に特別だというだけじゃない、こちらのお客様を始めとする、あったか〜い、素敵な想いが、たくさん詰まっているんですよ」

 

ア「は、はあ……」

 

灯「ですから、こちらのお客様から、このスペシャルホットチョコレートをご注文を戴いた時は、店長自らが、いつも以上に腕にヨリをかけて、作っているんです」

 

ア「いや、あの……」

 

灯「さあ、当店のスペシャルホットチョコレート。冷めてしまうと、わたしが藍……じゃなかった、店長さんに怒られてしまいますので、どうぞ、あったか〜いうちに、お召し上がりくださいませ」

 

グ「そ、そうよね。アリスちゃん、せっかくだから、まずは戴きましょうよ」

 

ア「あ、はい……わかりました」

 

グ「…………」

 

ア「…………」

 

灯「如何ですか?」

 

グ「うん、この前飲んだ時も感じたけれど、ちょうど良い甘さで、とってもほっとする味ですね」

 

ア「……こ、これはっ」

 

グ「どう? アリスちゃん」

 

ア「なんというホットチョコレートなのでしょう。最初に一口飲むと、クリームで蓋をされたことに事によって適度な温度に維持された、ホットチョコレートの甘味が、口の中一杯にでっかい押し寄せて来ます」

 

灯「は、はへー……」

 

ア「更に、その蓋をしている、甘さ控えめなクリームと合わさる事によって、それだけを飲み続けると、でっかい甘ったるさを感じてしまうホットチョコレートと見事に調和して、最後まででっかい美味しく戴ける味に変化して……」

 

グ「あの、アリスちゃん?」

 

ア「はっ!? ……すっ、すみません」

 

グ「どう? 美味しい?」

 

ア「えっ? あの、えっと……はい! とっても」

 

グ「そう。良かった」

 

灯「ありがとうございます」

 

ア「私、甘いものに目が無くて……すみませんでした」

 

グ「ううん、むしろ、良かったわ」

 

ア「な、何故……ですか?」

 

グ「私、まだまだお仕事を教えるのは上手じゃないかもしれないけれど、ネオ・ヴェネチアにある甘いもののお店は結構知っているから……」

 

ア「アテナ先輩……」

 

グ「お仕事だけじゃなくて、たまには、こういうお散歩とかを、アリスちゃんと一緒に出来たらいいなって、思っていたの」

 

ア「私と……一緒に……」

 

グ「そして、このお店みたいな、とっても甘くて美味しいものがある、二人だけのお気に入りのお店を、アリスちゃんと一緒に見つけられたら……ってね」

 

灯「それは素敵なお散歩になりそうですね」

 

グ「アリスちゃんは、どうかな?」

 

ア「ええっと……あの……」

 

グ「もし、イヤじゃなければ、また、一緒に行ってくれるかな?」

 

ア「あの……はい。是非」

 

グ「そう。良かった」

 

_____________________

 

灯「如何でしたか?」

 

グ「とっても美味しかったわ。ありがとう、店員さん」

 

ア「あ、あの………でっかいごちそうさまでした」

 

灯「また、お会いできると良いですね」

 

グ「え? 店員さん、居なくなっちゃうんですか?」

 

灯「いっ、いえ。そういう訳ではないのですが、またいつか、お二人とは別の場所でお会いしそうな気がすると言いますか……」

 

グ「ふうん……」

 

灯「あっ、それより、グラスを見てみてください」

 

ア「グラスが……何か?」

 

灯「お二人のグラスに出来たこの輪っか。これは、エンゼルリングと言って、とっても特殊な条件でないと出来ないんですよ」

 

グ「へえ、そうなんですね」

 

灯「なので、ホットチョコレートが導く、『奇跡の出会い』だ、と言う方もいるんです」

 

グ「奇跡の……出会い?」

 

灯「はひ! それがお二人に出来ていると言うことは、きっと、お二人がその『奇跡の出会い』をされたからではないかと思いますよ、うふふっ」

 

グ「へえ。ねえ聞いた? アリスちゃん。私達、『奇跡の出会い』なんですって」

 

ア「…………」

 

グ「あれ? アリスちゃん、どうしたの?」

 

ア「……あの、店員さん」

 

灯「はひ!」

 

ア「そんなでっかいデタラメ、私には通用しませんよ!」

 

灯「………はへっ?」

 

ア「奇跡と言いながら、あちらも、そちらも、どちらのテーブルでもみんな、このエンゼルリングとやらが出来ているではありませんか!」

 

灯「えっ?」

 

グ「あら、本当に、みんなにできてるわね」

 

灯「あれっ?」

 

晃「なんだなんだぁ? さっきから聞いてりゃ、おかしなこと言いだして」

 

灯「は、はわわ……」

 

フ「店員さん。ちょっと言いにくいんですけど、流石にそういう適当な事を言うのは、いけないコトじゃないかしら?」

 

灯「そ、そんな……」

 

藍「こりゃーっ! 恥ずかしい&ネボケたセリフ、禁止!」

 

灯「えーーーっ!?」

 

____________________

 

藍「ねえ、灯里ってば!」

 

灯「はひっ!」

 

ガタッ!

 

ア「うわあっ!」

 

藍「どっ、どしたの?」

 

灯「申し訳ありません、お客様! それから店長さんごめんなさいっ!」

 

藍「……は、はあ?」

 

ア「な、何なのでしょうか……」

 

灯「……は、はへっ? ここは?」

 

藍「ちょっと、大丈夫? いや、疲れたから眠いのは分かるわよ? でも、寝るならもう少し穏やかに寝てくれないと、私達もビックリしちゃうわ」

 

灯「お、穏やかじゃなかったって……」

 

ア「はい。何かにビックリした後、急に泣きそうになり、その後『カンパニーレ』と言いながらピースサイン。そして鼻歌を歌ったかと思えば、突然真剣な表情になり、『私は大丈夫』『真っ白なクリームです』などという謎の言葉を連発してから、最後は慌てふためくという……」

 

藍「本当にもう。恥ずかしいうたた寝、禁止ー」

 

灯「えーっ?」

 

ア「それで、灯里先輩は一体、どんな夢をご覧になっていたのですか?」

 

灯「ええっと、何て言うか、このお店で働くという……」

 

藍「あらヤダ、転職願望?」

 

灯「ううん、そういう訳では……」

 

藍「ふうん……そ。まあ困った事があったら、いつでも言いなさいよ? 『どうした灯里!? 緊急会議 in ARIAカンパニー』、開いてあげるからさ」

 

ア「それは、灯里先輩の為と言うより、アリシアさんに会う口実なのでは?」

 

藍「ええ~、でもでも、そういう事でも無いと、なかなかアリシアさんとも会えないじゃないのよ〜」

 

ア「確かに、それもそうですね」

 

灯「ふ、ふたりとも……」

 

藍「冗談よ、冗談。ところでさあ、後輩ちゃんから私達に、とっておきのお話があるそうよ」

 

灯「えー? 何だろう?」

 

ア「いえ、そこまでの話ではないのですが、実は、灯里先輩の寝顔を見ていたら、アテナ先輩と初めてこのお店に来た時の事を、ふと思い出しまして」

 

藍「灯里の寝顔?」

 

ア「はい。実はその時、アテナ先輩も私も、偶然グラスに輪っかが出来たのですが、それを見た女性の店員さんから『これはエンゼルリングと言って、とっても特殊な条件でないと出来ない』と言われたんです」

 

灯「えっ?」

 

藍「へえ、それから?」

 

ア「はい、それを『ホットチョコレートが導く、奇跡の出会いだ』と言う人もいるそうなんですが、それが二人とも出来た、という事で、『アテナ先輩と私も、奇跡的な出会いをしたのでは?』というお話だったのです」

 

藍「ふうん、奇跡的な出会いかぁ。何だか、ちょっと恥ずかしい話ね」

 

灯「ち、ちなみにその女性の店員さんって……」

 

ア「店員さんですか? 確か、もみあげが異様に長い、特徴的な髪型の店員さんだった、というのは覚えているのですが……」

 

藍「あら、世の中には、そんな変ちくりんな髪型の人も……いるのねえ」

 

灯「わ、私のは、もみあげじゃないからね……」

 

ア「ただ、それをきっかけに、アテナ先輩と少し打ち解けた感じがするんです。だから、あの店員さんには、でっかい感謝しています」

 

灯「そんなあ、アリスちゃん……」

 

ア「あ、いやすみません。別に、このお話は、灯里先輩に感謝している、と言う訳ではないのですが……」

 

灯「あっ……あははっ、そっ、そうだよね」

 

藍「でも、そんな感謝している割には、さっきまで思いっ切り忘れてたじゃないの」

 

ア「確かにそうなんですよね。何故でしょう? 何だか突然思い出しまして……」

 

藍「みんな疲れてるのかしらねー。あらイヤだ、もうこんな時間。明日からまた仕事だし、そろそろ帰りましょうか?」

 

ア「そうですね。しかし……」

 

藍「あによ?」

 

ア「残念ながら、今回、私達には誰にも出来ませんでしたね、エンゼルリング」

 

藍「私達は奇跡的な出会いじゃ無かったってこと? そりゃあ奇跡なんて、何度も起きやしないんだから、仕方がないんじゃない?」

 

灯「それは違うよ」

 

藍「あら、何が違うの?」

 

灯「私達は、奇跡的に出会った訳でも、偶然出会った訳でもない。運命的な出会いだったんだから!」

 

藍「やっぱりきたっ! 恥ずかしいセリフ、禁止っ!」

 

灯「えーっ!?」

 

ア「まさに、必然的なツッコミでしたね……」




と、いう訳で、ちょっぴり疲れたけれど、とっても楽しくて、不思議なお休みは、無事に幕を閉じたのでした。
ちなみに、藍華ちゃん曰く、『私達は、三大妖精が導いたくされ(・・・)縁に違いない』とのことです。
ちなみにアイちゃんは、何か、奇跡的な出会いだって思ったことはありますか?

灯里さん
私はやっぱり、灯里さんとの出会いは、奇跡的な出会いだったんじゃないかなって思うな。
どうして、運命的じゃないのかって思った?
だって、灯里さんとの出会いは、『もしも』がたーっくさん無いと、説明がつかないんだもの!
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