今日はまた、カフェフロリアンで、
久しぶりに、雨が降ったので、また室内での開催となったのですが……。
さっきから藍華ちゃんとアリスちゃん二人による熱い議論が続いています。
こういうのを闊達な議論と言うのか、言い争いと言うのかは分かりませんが、何だか不穏な感じがするのですが……。
藍「ダメよ、ダーメ。それはいくら後輩ちゃんの意見だとしても譲れないわ!」
ア「いいえ、いくら藍華先輩といえども、そこは私も譲れません!」
藍ア「むむむむむ……」
灯「はわわ……ふ、ふたりとも落ち着いて」
藍「あら、私は落ち着いてるわよ? たかだかこーんな事ぐらいで、異常なくらいエキサイトしてるのは後輩ちゃんの方じゃないのよう!」
ア「何を仰るのかと思えば、聞いて呆れるとはこの事です。先程から人の意見をろくに聞かず、我を失う程ヒステリックになっているのは藍華先輩の方ではないですか!」
藍「なんですって!?」
ア「ほうら、言い返せないではないですか。それが何よりの証拠ですね」
藍「ぐっ! あ、あーら、後輩ちゃんだって、エキサイトしてる事は認めるワケよね? だからヒステリックに聞こえるだけじゃないのぉ?」
ア「なっ! 何でそうなるのですか!? 私はですね、努めて建設的な意見しか述べていませんよ!」
藍ア「むむむむむむ……」
灯「はわわ、これは、まるで
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蒼天を斬り裂くが如く
藍「うりゅりゅりゅりゅりゅりゅりゅっ!」
大地を揺るがすが如く
ア「にゃーっ!」
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灯「は、はわ、はわわわ……。もう争わないで~」
ア「いいえ、灯里先輩。争い事はでっかい嫌いですが、今回の議題に関しては、自分の意見にでっかい確信を持っている、というだけです!」
藍「はあ? 先輩の言うことが聞けないって言うワケ?」
ア「そんな事、言っていないではないですか。単に、私の意見を頭ごなしに否定するのはおかしいと言っているまでです」
藍「そんな頭ごなしに否定なんかしてないでしょ? 灯里もそう思うわよね?」
灯「わたし? ええっと、何て言ったらいいのかな……その……」
藍「ほうら、後輩ちゃん。灯里は後輩ちゃんの意見なんて、どーでもいいってよ」
灯「えっ? そ、そんなことは……」
ア「そうです! 灯里先輩は、そんなことは言ってませんよ。藍華先輩のワガママさ加減に、呆れているだけです!」
灯「えっーっ? 何でそうなるのーっ?
藍「ほら、違うじゃないのよ! テキトーな事を言うの、禁止!」
ア「いやいや、そうですよね!? 灯里先輩!」
藍「灯里、どっちなのよ!?」
灯「あの……ええっと……わ、わたしは……その……」
?「(マドモアゼル、マドモアゼル)」
灯「えっ? 店長さん?」
店「(ちょっとこちらへ)」
灯「あ、あの……ごめん、ちょっと外すね」
藍「あによ、お手洗い?」
灯「す、すぐ戻るから、ふたりでお話しててくださーい!はひはひ…… 」
店「……いやあ、議論が白熱中のところ、お呼びだししてしまいまして、申し訳ないですなあ」
灯「いえ、あの場を離れる、きっかけを与えてくださったんですよね? ありがとうございます」
店「いやいや。ただ、少々お困りのようでしたから、つい余計なお世話を焼いてしまいました。どうぞお許しを」
灯「すみません、ご心配をお掛けして……はひ…」
店「おや? どこか、雨漏りですかなあ?」
灯「そ、そんな訳はないですよ。でもわたし、こういう時にどうしたら良いか……」
店「では、私からニ点程、ご提案があるのですが」
灯「はひ、何でしょう?」
店「まず一点目は、コッパ・カフェ・フロリアンを二つ、ご注文されては如何ですかな?」
灯「ほへ?」
店「あのお嬢様方は、アイスをふんだんに使ったパフェでも食べて、少し頭と身体を、冷やされた方がよろしいかと……」
灯「あ、あはは……。素敵なご提案ですね。では、早速注文をお願いします」
店「ありがとうございます。では二点目、貴女は普段、ご案内中のお客様が、急に喧嘩を始めたとしたら、どうされるのですか?」
灯「はひ。そういう時は、注意深く、お客様のお話に耳を傾けて、自分に何かできる事はないかを、一生懸命考えます」
店「つまり、お仕事では……お客様に寄り添い、思いやり、幸せな気分になって欲しいと願っているのでは?」
灯「はひ」
店「では、あのお嬢様方にも、同じようにされては如何ですかな?」
灯「えっ? でも、今のあの二人に、わたしの願いは届くのでしょうか?」
店「おやおや? 気心知れたお二人にすら、届かない願いなら、それは、お客様にも届かないのでは?」
灯「あっ!? いえっ、そんなことはないと……」
店「言えますかな?」
灯「言えます!」
店「いやはや、それならもう大丈夫でしょう。何の議論かは存じませんが、素敵な結論が導かれる事を、心から願っております」
灯「はひ!」
店「では早速、コッパ・カフェ・フロリアンを……」
灯「あの、店長さん!」
店「はい?」
灯「わたしの分と合わせて、三つにしてください」
店「はっはっはっ。それでは、すぐにお持ちしましょう」
スウー、ハー……
ペチッ!
灯「水無灯里……行きますっ!」
灯「ごめんなさーい、戻りましたー」
藍「あら、随分時間がかかった…って、灯里?」
灯「なあに? 藍華ちゃん」
藍「何だかさっきと雰囲気が……」
灯「ほへ? 何の事?」
藍「うーん? いやま、気のせい、かしらね?」
灯「ごめん、調べたい事があるから、もう少し二人でお話して貰っても、いいかな?」
藍「いやいや灯里さん。その前に、さっきの話の答えを……」
灯「いいかな?」
藍「えっ? あの、まあ、どうぞ」
灯「アリスちゃんも、いい?」
ア「えっ!? はっ、はい、どうぞ……」
灯「うん、ありがとー」
ア「(急にパソコンを取り出して、何があったのでしょうか?)」
藍「(ま、まあ、灯里の突拍子もない行動は今に始まった事じゃないし、放っておきましょ?)」
ア「(は、はあ……)」
藍「とにかく! 今回においては、後輩ちゃんの意見を通す訳にはいかないわ!」
ア「ふふふっ。甘いですね、藍華先輩。私のこの意見については、なんと、アルさんにもご賛同を戴いているのです」
藍「な、ななな、何ですって!? あんた、そんなのいつ話をしたのよ?」
ア「ええ、この前、偶然にもアルさんとばったりとお会いした時に、少しお話を」
藍「はあっ? 会ったの!?」
ア「はい。アルさん、私に『とっても魅力的だ』と仰って下さいました」
藍「ええっ!?」
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アル君と、後輩ちゃんが、公園のベンチで……
ア「貴重な外出時間中なのに、でっかいすみません」
ピ「いいんですよ、それより、お話って?」
ア「はい、実は……」
グイッ
ピ「うわっ! ちょ、ちょっと……顔と、顔の距離が、近すぎじゃないですか?」
ア「裸眼で、ありのままの私を見て戴きたくて……。でも、私なんて、藍華先輩のように魅力的じゃ無いですし、近くで見ても辛いだけですか?」
ピ「いっ、いえっ、アリスさんも、とっても魅力的ですよ? ただ、近すぎて、目がチカチカする、なんちゃってー」
ア「ふふふっ……。おや? お顔が赤いですよ? そうだ、せっかくですから、もっと人気のない所で、少し、お休みしませんか?」
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藍「イヤッ! ダメぇっ!」
ア「あの、何を想像されているのですか?」
藍「あ、あんたっ! ア、ア、アル君を、たぶらかしたんじゃないわよね!?」
ア「たぶらかす? ああ、もしや ……」
藍「そのニヤつき! 絶対怪しいわ! 事と次第によっちゃ、ゆ、許さないんだからね!?」
ア「はい、実は……」
藍「実は?」
……ゴクリ
ア「立ち話をしただけですよ。何でも、ある女性との待ちあわせで急がれていたそうで」
藍「……へっ? あっ、そうな……ん? ちょっと待って。女性と待ちあわせ?」
ア「はい。『チコっと遅刻しそうだ、なんちゃってー』とかで、でっかい急がれていたようでしたが……」
藍「だっ、誰なのよ!」
ア「はて、誰かとは?」
藍「その女性よ!」
ア「それは……」
藍「し、知ってるのね! な、なら言いなさいよ!」
ア「はあ。何でも、以前遅刻した時は、『金輪際、遅刻禁止!』とでっかい叱られたそうで。思い出されたのか、あの時のアルさんのお顔は、まるで腹を空かせた肉食獣に怯える小動物のようでした」
藍「あ、あの……それって、まさか私の事じゃあないわよね」
ア「さあ。誰なのかは、アルさんに聞かれたら如何ですか?」
藍「ぐっ……。で、でもさあ、や、やっぱり、三人の議題なのに第三者を巻き込むのは良くないわよ。灯里もそう思うでしょ?」
灯「うーん、そうだねえ」
ア「ええっ?」
藍「ほうらみなさい!」
ア「しかし、こういう議論においては、やはり第三者の意見も大切では?」
灯「うーん、そうだねえ」
藍「ぬなっ!?」
ア「ほうら、やっぱり灯里先輩は、アルさんの意見も大事だと仰っているではありませんか」
藍「えっ? あ、あの、いや、わ、私は別に、アル君のことだからって訳じゃないのよ? でもでも、あくまで三人の話なんだから、それを考えると……ね? 灯里」
灯「うーん、そうだねえ」
藍ア「……」
ア「あの、灯里先輩。先程から『うーん、そーだねえ』としか言ってなくないですか?」
灯「うーん、そうだねえ」
藍「整備の為のゴンドラを運んでくれるシルフの会社は、海猫?」
灯「うーんそう、だねえ」
藍「あはーん……ダメだコリャ」
ア「(藍華先輩)」
藍「(あによ?)」
ア「(何があったんでしょうか?)」
藍「(私が聞きたいわよ! まさか、灯里の飲み物に、変な薬盛ったんじゃないでしょうね?)」
ア「(そんな事を企むのは藍華先輩位ですよ)」
藍「(はあ? 私が何企むっつーのよ! 大体…)」
灯「あーっ!」
藍「うへっ!? な、何?」
灯「これだー、うふふっ」
藍「(ちょっと! どうなってんの?)」
ア「(知りませんよ。先程からパソコンで、色々な事を検索されているようですが……)」
藍「と、とにかく、今回の議題に、第三者の意見は参考にならないわ!」
ア「そうですか、では、藍華先輩はアルさんの言うことは聞きたくないと、そういう事でよろしいですね?」
藍「なっ! 何でそうなるのよ!」
ア「だって、アルさんは藍華先輩にとっては第三者なんですよね? そう言われたら、アルさんはきっと、悲しまれると思いますがねえ……」
藍「だっ…あの…ええっ?」
ア「これは、アルさんにも伝えておく必要がありますね」
藍「ちょーっと待った!」
ア「むむ?」
藍「…………」
ア「藍華先輩?」
藍「ん゛ーーーーっ!」
ア「これは、まさか!」
藍「ぬ、ぬおおおおおっ!」
ア「藍華先輩の心の中で、鬼と悪魔、もとい、越後屋と悪代官の、激しいつばぜり合いが!?」
藍「うっ! うぐっ…」
ア「け、決着がついたのですか?」
藍「……だ……ダメよ……」
ア「えっ?」
藍「ダメったら、ダメよ」
ア「ええーっ!? な、なぜ?」
藍「だって……やっぱり、アルくんは、今回の議論については、あぐまで第三者だがらよー」
ア「それ、滝状の涙を流しながら言うセリフでしょうか?」
藍「ハイ、第三者の意見、却下!」
ア「くっ! とっておきの策だったのに……」
藍「とにかく、まだはっきりしていない、灯里の意見を聞こうじゃないの。まあ私の意見に賛成だろうけどー」
ア「そんな事はありません! 灯里先輩は、一体どちらの意見に賛成ですか? もう、『うーん、そーだねえ』は無しですよ」
灯「わたしは……」
藍ア「うんうん!」
灯「どっちの意見にも賛成です!」
藍「はあ?」
ア「ど、どういう事ですか?」
灯「実は、一見すると、全く合わないような二人の意見だけど、ピッタリと合うんだよ」
藍「あ、いや、訳わからない事言われてもさ……」
灯「ほら、これを見てみてよ」
藍「これって……あっ!」
ア「これは……」
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店「いやはや、お待たせしました」
灯「あーっ、きたきた!」
藍「パフェが3つ? どしたの? これ」
灯「私が頼んだんだよ。美味しそう!」
ア「本当ですね。疲れた脳のでっかい糖分補給にはもってこいです」
藍「ま、それもそうね」
灯藍ア「うふふ」
店「……おや? 少し、遅かったですかな?」
灯「いいえ、店長さん。会議も終わって、とってもいいタイミングですよ」
店「いやあ、そうですか、それは何よりでした。どうやら、マドモアゼルには、
灯「えへへ……」
藍「(どういうコト?)」
ア「(
藍「(ああ、確かに灯里って『はひーん!』って鳴きそうだものね)」
ア「(何故馬の方……。だとすれば、どんな敵にも勇敢に立ち向かい、また、角で水の毒を清めるという、伝説の
藍「(そりゃそっちの方がしっくり来るけど、私達が敵とか毒ってこと?)」
ア「(あくまで諸説ありますから。ま、私『達』のことではないと思いますが)」
藍「(あによ、私がそうだって言いたい訳?)」
ア「(そうやって、いちいち言葉尻を捕らえて怒ってばかりいると、アルさんにも愛想をつかされますよ)」
藍「(何でアル君がまた出てくるのよ)」
ア「(あっ、あんなところにアルさんが)」
藍「うひゃっ!?」
灯「うん?」
ア「ああ、気のせいだったようですね」
灯「何が?」
藍「な、何でもないわよ! さ、早くいただきましょ?」
店「どうぞどうぞ。ところで、皆さんは一体、何についてあのような議論を?」
灯「えへへ……それはですねえ」
藍ア「それは、いわないで〜っ!」
そんな訳で、最初はどうなる事かと思った会議ですが、会議が終わる頃には雨も止み、晴れ晴れしい気分で会議終える事ができました。
藍華ちゃんもアリスちゃんも、お互い意固地な所があったと、反省したようで、最後はいつものように、みんなで元気よく、気勢をあげて終わりました。
『雨降って、地固まる』って言うのは、こういう事を言うのかな?
灯里さん
カフェフロリアンの店長さん、まさか『今度のお休みに温泉に行ったら、お風呂上がりに何を注文するか?』って言う議題だとは思わなかっただろうね!
藍華さんが桃のソーダで、アリスさんがアイスクリームだなんて。私も、迷っちゃうなあ。
でも、温泉のメニューに、桃のクリームソーダがあって、良かったね!
ああ、私も灯里さんと一緒に、温泉に行きたいな!