押し寄せる書類、日々起きる問題、鬼気迫る晃さん。
それらを如何にサラリと処理するか、ヒラリとかわすかが、支店長の腕の見せ所なのです!
さあ! 今日も一日、頑張るわよーっ!
『では、お手並み拝見といきましょうか、支店長』
……えっ?
ゴンドラ協会で私とお話をしたあと、晃ちゃんは姫屋の支店へと向かったの。
♪カランコロン……
「いらっしゃいませ! 姫屋へよ…うにゃっ!?」
「おい、そこの店員A。藍華はいるか?」
「は、はいっ! 失礼しましたっ! 藍華さ…いえ、支店長は、支店長室にいらっしゃいます!」
「よし、案内しろ」
「は、はいっ! た、ただいま!」
「お前、何をそんなにビビってるんだ?」
「そ、そんなことはないですよ。アハハハハ……」
「お前、何がそんなに面白いんだ?」
「あっ、その……うえーん。すみません」
「あ?」
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「どうぞ、こちらです」
「うむ、ご苦労」
「あ、あの……」
「何だ?」
「私、お二人だけの
「カンビ? いや、別に見張りが必要な用事ではないんだが」
「えーっ。そうなんですかぁ?」
「お前、何がそんなに残念そうなんだ?」
コン、コン
「はいはーい。あいてるから、入っていいわよー」
カチャッ……バタン
「……」
「ごめんねー。ちょーっと今、書類から目が離せなくって。なぁに? どーしたのー?」
「……」
「悪い報告? ほーら、そうやって黙るの禁止って、いつも言ってるでしょー。……ああ、ここはこういう意味なのね……」
「忙しそうですね」
「そーよー、忙しいわよー。でも、悪い報告なら、すぐ本店にも報告が必要だし、早く言ってよねー。もし私があの晃さんだったら『すわっ! 早く言わんかっ!』って、今頃ブン殴られてるかもよー」
「お言葉ですが支店長。晃さんは、さすがに殴ったりはしないのでは?」
「もー、私と話す時は『支店長』って呼ぶの禁止ーって、言ってるでしょー?」
「……」
「それに、冗談にいちいち反論するのも禁止ー」
「す……いえ、冗談でしたか」
「そーよー。だいたい誰よあんた。そぉーんな、まるで晃さんみたい……な……声……」
「大変申し訳ありません、藍華さん。『あの晃さん』みたいな声で」
ガタッ!
バサバサバサッ!
「う……そ……」
「でも、『あの晃さん』本人なものですから……」
「ぎ……ぎ……」
「どうか許して……くれるんだろうな?」
「ぎゃぁぁぁーーーーーすっ!!!」
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「本っ当にっ! すびばせんでしたぁっ! 深ぐ、深ーぐっ、お詫び致じばずぅっ!」
「すわっ! 仮にも姫屋の支店長が、社員に向かって泣きながら土下座をすなっ!」
「うりゅりゅりゅりゅ……。だってぇ、だってぇ……」
「とにかくそこに座れ!」
「あ……ああっ! はいっ」
「まったく……」
「あの……それで……」
「何だ?」
「き、今日は……一体どんな御用ですか?」
「ああ、そうだったな。お前も忙しそうだから、端的に話す。お前、『船舶運航管理責任者』って言う資格を知ってるか?」
「何ですか? それ」
「あ?」
「ひゃっ!? ダメ……でしたか?」
「お前、支店長だろ? 支店の営業許可証を見てないのか?」
「見てますよ。見てますけど、自分が支配人だってこと以外は、良く見てなくて……」
「お前の他に、もう一人の名前が書いてあっただろ?」
「あっ! そういえば、支配人名の下に、もう一人本店の、管理部門の役員の方の名前が書いてました」
「そう。それだ、それ」
「それが、どうしたんですか?」
「姫屋の幹部会で、お前にも、その資格を取らせよう、という話になったんだが、聞いてないか?」
「聞いてませんよ。でも、毎日毎日、本店からメールがどっさり来るんで、もしかしたら読み飛ばしたかも知れないれす。ううっ……ダメですみません……」
「私は怒ってない! 泣き虫禁止!」
「……はい。でも、役員の方が持ってる、ってことは、その資格って、難しいんじゃないんですか?」
「まあな。ただ、聞くところによれば、お前より若い奴でも取っている資格だそうだ」
「いやいや、若い人が取ってるからって、アリシアさんじゃあるまいし、私が取れるとは……」
「すわっ! 藍華っ!」
「うひゃいっ!」
「お前は、ゆくゆくは、この姫屋を背負って立つ立場なんだぞ! その支店長たるもの、このぐらいの資格を持っとらんでどーする!?」
「はあ……。でも……」
「いいか? 次の試験で、絶っ対に! 合格しろ! 落ちたら承知しないからな!」
「そ、そんないきなり……」
「すわっ! 返事はどうした!」
「あーんもう。わかりました」
「そんな小さな声で、姫屋の支店長が勤まると思っているのか!? 決意表明ぐらいしろっ!」
「はいっ! 分かりましたっ! 私、藍華・S・グランチェスタはっ! 絶対にっ! 試験に合格しまぁーすっ!」
「そうだ! 姫屋に敗北などあり得ないのだからな!」
「敗北って……。一体、誰と勝負してるんですか?」
「アリ……すわっ! お前自身に決まっているだろうが!」
「はぁーい……」
「声が小さいっ!」
「はいっ!!!」
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「……と、いう事みたいなの。アリスちゃん」
「そ、そうだったのですか……。でも、アリシアさんはそれを私に話してしまって、いいのでしょうか?」
「あら、どうして?」
「晃さんに、口止めされていたのでは?」
「晃ちゃんからは、藍華ちゃんと灯里ちゃんにはって、言われているから、アリスちゃんは大丈夫よ?」
「でっかい意味が違う気がしますけど……。しかし、アリシアさんは、何から何まで、でっかい知りすぎな気がしますが……」
「うふふ……どうしてか、知りたい?」
「いいえ。知ったら、私にでっかいピンチが訪れるかもしれませんから……」
「確かに、そうかもしれないわね」
「えーっ。そこは否定してください、アリシアさん」
「あらあら。でも、いまお話したことは、他の人には黙っておいてね」
「はい、わかりました。ところで先程の……」
「そうだ、アリスちゃん」
「はっ、はい!」
「せっかくの機会だから、アリスちゃんも試験に挑戦してみたら、どうかしら?」
「ええっ? 私がですか?」
「ゴンドラ協会の理事としては、アリスちゃんみたいな若いウンディーネさんにも、こういう試験に、どんどん挑戦して欲しいのよ」
「はあ……」
「それに、こういうのって、ひとりで勉強するより、みんなで頑張った方が、より楽しくて、充実したものになるんじゃない?」
「むむむ、確かに。忙しい先輩方とも会う、でっかいきっかけにはなりますね。それに、藍華先輩にできて、私にできない訳はないかと」
「大丈夫。アリスちゃんも、きっと合格できると思うわ」
「考えてみれば、もし藍華先輩が合格したら、でっかい自慢をしてくるに違いありません。そんなの、でっかい屈辱ですっ」
「じゃあ、アリスちゃんも試験、受けてくれるのかしら?」
「はい! 負ける訳にはいきません! 私も先輩達と一緒に、でっかい頑張ります!」
「すごいわアリスちゃん。頑張ってね!」
「ありがとうございます。ではアリシアさん。早速、参考書を買いに行きますので、私はこれで失礼します」
「うふふ、さようなら」
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「……もう大丈夫よ、アテナちゃん」
「ありがとー、アリシアちゃん」
「あんな感じで、良かったかしら?」
「うん。これでアリスちゃんも、三人で頑張ったり、お話したりするきっかけもできたと思うし」
「じゃあ、アテナちゃん考案の『アリスちゃんのやる気倍増キャンペーン』は大成功ね?」
「そうね。でも、まるで本当に見てきたみたいにお話するから、とっても驚いたわ。もしかして、アリシアちゃんには超能力があるんじゃ……」
「すわっ! そんな訳があるかっ!」
「えーっ? 晃ちゃんもそこにいるのー?」
「そうだ。私が考案した『燃えよ藍華 涙の合格大作戦!』も、成功への第一歩を踏み出したのだからな!」
「うふふ、どれも素敵な作戦ね」
「後は、灯里先生の教え方次第だな」
「あらあら、それはきっと大丈夫よ」
「いや、そこだけが心配なんだが?」
「うふふ、大丈夫よ」
「しかし、心配なんだが?」
「あらあら、大丈夫よ」
「やはり、心配なんだが?」
「あのう、晃ちゃんに、アリシアちゃん」
「どうしたの? アテナちゃん」
「なんだか火花がパチパチ散ってそうなところ、悪いんだけど……テーブルの下から出られないの。助けて~」
「お前、何でそんなにドジっ子なんだ?」
「あらあら、うふふっ」
終