ARIA The CONVERSATION   作:辰巳しおん

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私、藍華・S・グランチェスタは今、燃えに燃えていますっ!
押し寄せる書類、日々起きる問題、鬼気迫る晃さん。
それらを如何にサラリと処理するか、ヒラリとかわすかが、支店長の腕の見せ所なのです!
さあ! 今日も一日、頑張るわよーっ!
『では、お手並み拝見といきましょうか、支店長』
……えっ?


その ウンディーネの資格は……(EX2)

ゴンドラ協会で私とお話をしたあと、晃ちゃんは姫屋の支店へと向かったの。

 

♪カランコロン……

 

「いらっしゃいませ! 姫屋へよ…うにゃっ!?」

 

「おい、そこの店員A。藍華はいるか?」

 

「は、はいっ! 失礼しましたっ! 藍華さ…いえ、支店長は、支店長室にいらっしゃいます!」

 

「よし、案内しろ」

 

「は、はいっ! た、ただいま!」

 

「お前、何をそんなにビビってるんだ?」

 

「そ、そんなことはないですよ。アハハハハ……」

 

「お前、何がそんなに面白いんだ?」

 

「あっ、その……うえーん。すみません」

 

「あ?」

 

_____________________

 

「どうぞ、こちらです」

 

「うむ、ご苦労」

 

「あ、あの……」

 

「何だ?」

 

「私、お二人だけの甘美(かんび)なひとときが、誰にも邪魔されないよう、外で見張っていますから……。その……ごゆっくり……」

 

「カンビ? いや、別に見張りが必要な用事ではないんだが」

 

「えーっ。そうなんですかぁ?」

 

「お前、何がそんなに残念そうなんだ?」

 

 

コン、コン

 

「はいはーい。あいてるから、入っていいわよー」

 

カチャッ……バタン

 

「……」

 

「ごめんねー。ちょーっと今、書類から目が離せなくって。なぁに? どーしたのー?」

 

「……」

 

「悪い報告? ほーら、そうやって黙るの禁止って、いつも言ってるでしょー。……ああ、ここはこういう意味なのね……」

 

「忙しそうですね」

 

「そーよー、忙しいわよー。でも、悪い報告なら、すぐ本店にも報告が必要だし、早く言ってよねー。もし私があの晃さんだったら『すわっ! 早く言わんかっ!』って、今頃ブン殴られてるかもよー」

 

「お言葉ですが支店長。晃さんは、さすがに殴ったりはしないのでは?」

 

「もー、私と話す時は『支店長』って呼ぶの禁止ーって、言ってるでしょー?」

 

「……」

 

「それに、冗談にいちいち反論するのも禁止ー」

 

「す……いえ、冗談でしたか」

 

「そーよー。だいたい誰よあんた。そぉーんな、まるで晃さんみたい……な……声……」

 

「大変申し訳ありません、藍華さん。『あの晃さん』みたいな声で」

 

ガタッ!

 

バサバサバサッ!

 

「う……そ……」

 

「でも、『あの晃さん』本人なものですから……」

 

「ぎ……ぎ……」

 

「どうか許して……くれるんだろうな?」

 

「ぎゃぁぁぁーーーーーすっ!!!」

 

____________________

 

 

「本っ当にっ! すびばせんでしたぁっ! 深ぐ、深ーぐっ、お詫び致じばずぅっ!」

 

「すわっ! 仮にも姫屋の支店長が、社員に向かって泣きながら土下座をすなっ!」

 

「うりゅりゅりゅりゅ……。だってぇ、だってぇ……」

 

「とにかくそこに座れ!」

 

「あ……ああっ! はいっ」

 

「まったく……」

 

「あの……それで……」

 

「何だ?」

 

「き、今日は……一体どんな御用ですか?」

 

「ああ、そうだったな。お前も忙しそうだから、端的に話す。お前、『船舶運航管理責任者』って言う資格を知ってるか?」

 

「何ですか? それ」

 

「あ?」

 

「ひゃっ!? ダメ……でしたか?」

 

「お前、支店長だろ? 支店の営業許可証を見てないのか?」

 

「見てますよ。見てますけど、自分が支配人だってこと以外は、良く見てなくて……」

 

「お前の他に、もう一人の名前が書いてあっただろ?」

 

「あっ! そういえば、支配人名の下に、もう一人本店の、管理部門の役員の方の名前が書いてました」

 

「そう。それだ、それ」

 

「それが、どうしたんですか?」

 

「姫屋の幹部会で、お前にも、その資格を取らせよう、という話になったんだが、聞いてないか?」

 

「聞いてませんよ。でも、毎日毎日、本店からメールがどっさり来るんで、もしかしたら読み飛ばしたかも知れないれす。ううっ……ダメですみません……」

 

「私は怒ってない! 泣き虫禁止!」

 

「……はい。でも、役員の方が持ってる、ってことは、その資格って、難しいんじゃないんですか?」

 

「まあな。ただ、聞くところによれば、お前より若い奴でも取っている資格だそうだ」

 

「いやいや、若い人が取ってるからって、アリシアさんじゃあるまいし、私が取れるとは……」

 

「すわっ! 藍華っ!」

 

「うひゃいっ!」

 

「お前は、ゆくゆくは、この姫屋を背負って立つ立場なんだぞ! その支店長たるもの、このぐらいの資格を持っとらんでどーする!?」

 

「はあ……。でも……」

 

「いいか? 次の試験で、絶っ対に! 合格しろ! 落ちたら承知しないからな!」

 

「そ、そんないきなり……」

 

「すわっ! 返事はどうした!」

 

「あーんもう。わかりました」

 

「そんな小さな声で、姫屋の支店長が勤まると思っているのか!? 決意表明ぐらいしろっ!」

 

「はいっ! 分かりましたっ! 私、藍華・S・グランチェスタはっ! 絶対にっ! 試験に合格しまぁーすっ!」

 

「そうだ! 姫屋に敗北などあり得ないのだからな!」

 

「敗北って……。一体、誰と勝負してるんですか?」

 

「アリ……すわっ! お前自身に決まっているだろうが!」

 

「はぁーい……」

 

「声が小さいっ!」

 

「はいっ!!!」

 

____________________

 

 

「……と、いう事みたいなの。アリスちゃん」

 

「そ、そうだったのですか……。でも、アリシアさんはそれを私に話してしまって、いいのでしょうか?」

 

「あら、どうして?」

 

「晃さんに、口止めされていたのでは?」

 

「晃ちゃんからは、藍華ちゃんと灯里ちゃんにはって、言われているから、アリスちゃんは大丈夫よ?」

 

「でっかい意味が違う気がしますけど……。しかし、アリシアさんは、何から何まで、でっかい知りすぎな気がしますが……」

 

「うふふ……どうしてか、知りたい?」

 

「いいえ。知ったら、私にでっかいピンチが訪れるかもしれませんから……」

 

「確かに、そうかもしれないわね」

 

「えーっ。そこは否定してください、アリシアさん」

 

「あらあら。でも、いまお話したことは、他の人には黙っておいてね」

 

「はい、わかりました。ところで先程の……」

 

「そうだ、アリスちゃん」

 

「はっ、はい!」

 

「せっかくの機会だから、アリスちゃんも試験に挑戦してみたら、どうかしら?」

 

「ええっ? 私がですか?」

 

「ゴンドラ協会の理事としては、アリスちゃんみたいな若いウンディーネさんにも、こういう試験に、どんどん挑戦して欲しいのよ」

 

「はあ……」

 

「それに、こういうのって、ひとりで勉強するより、みんなで頑張った方が、より楽しくて、充実したものになるんじゃない?」

 

「むむむ、確かに。忙しい先輩方とも会う、でっかいきっかけにはなりますね。それに、藍華先輩にできて、私にできない訳はないかと」

 

「大丈夫。アリスちゃんも、きっと合格できると思うわ」

 

「考えてみれば、もし藍華先輩が合格したら、でっかい自慢をしてくるに違いありません。そんなの、でっかい屈辱ですっ」

 

「じゃあ、アリスちゃんも試験、受けてくれるのかしら?」

 

「はい! 負ける訳にはいきません! 私も先輩達と一緒に、でっかい頑張ります!」

 

「すごいわアリスちゃん。頑張ってね!」

 

「ありがとうございます。ではアリシアさん。早速、参考書を買いに行きますので、私はこれで失礼します」

 

「うふふ、さようなら」

 

___________________

 

「……もう大丈夫よ、アテナちゃん」

 

「ありがとー、アリシアちゃん」

 

「あんな感じで、良かったかしら?」

 

「うん。これでアリスちゃんも、三人で頑張ったり、お話したりするきっかけもできたと思うし」

 

「じゃあ、アテナちゃん考案の『アリスちゃんのやる気倍増キャンペーン』は大成功ね?」

 

「そうね。でも、まるで本当に見てきたみたいにお話するから、とっても驚いたわ。もしかして、アリシアちゃんには超能力があるんじゃ……」

 

「すわっ! そんな訳があるかっ!」

 

「えーっ? 晃ちゃんもそこにいるのー?」

 

「そうだ。私が考案した『燃えよ藍華 涙の合格大作戦!』も、成功への第一歩を踏み出したのだからな!」

 

「うふふ、どれも素敵な作戦ね」

 

「後は、灯里先生の教え方次第だな」

 

「あらあら、それはきっと大丈夫よ」

 

「いや、そこだけが心配なんだが?」

 

「うふふ、大丈夫よ」

 

「しかし、心配なんだが?」

 

「あらあら、大丈夫よ」

 

「やはり、心配なんだが?」

 

「あのう、晃ちゃんに、アリシアちゃん」

 

「どうしたの? アテナちゃん」

 

「なんだか火花がパチパチ散ってそうなところ、悪いんだけど……テーブルの下から出られないの。助けて~」

 

「お前、何でそんなにドジっ子なんだ?」

 

「あらあら、うふふっ」

 

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