ARIA The CONVERSATION   作:辰巳しおん

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アイちゃん
実はこの前、いつもの三人で、海辺のカフェで、お茶をすることになったんです。
それと言うのも、その日は三人とも、お客様のご予約が入っていたのですが、その、ご案内をする場所と時間が、たまたまとっても近くだったんです。
それじゃあ、せっかくだから会いましょう、という事になったんですが……。
まさか、あんな事になるなんて……。



その のどけし しりとりは……

ザザーン……ザザザーン

 

「……」

 

「来たのね、灯里」

 

「……うん」

 

「灯里。いつかはこういう日が来るんじゃないかと思っていたけど、まさかアンタと対決する日が、こんなにも早く来るとは思ってなかったわ」

 

「そうだね。わたしも、思ってなかった」

 

「ま、いつやった所で、灯里なんて私の敵じゃあないけどね」

 

「うふふ。そんなこと言って、いいのかな? 後で、泣き虫さんになっても、知らないよ?」

 

「あら、珍しく強気ちゃんじゃない? でも、そういう灯里も、私は好きよ」

 

「わたしも、その、怖いぐらい真剣な眼差しをしている藍華ちゃんのこと、嫌いじゃないよ」

 

「そう、ありがと。じゃあ、早速私から行くわよ! 『アクア』!」

 

「えーっ? いきなり? はわわっ、えーと、あ、あ、『アリア社長』!」

 

「フッ、そんなことで慌てるようじゃ、灯里もまだまだね。『浮き島(うきしま)』!」

 

「ま? うーんと、えーっと、まー、まー、あっ! 『まぁ社長』!」

 

「う? う、『裏誕生日』!」

 

「えーっ? 『び』で始まるのは、思い浮かばないよう」

 

「あら、もう降参? 灯里の実力はこんなもんじゃないでしょ? もっと全力で向かって来てくれなきゃ、つまらないわ」

 

「くっ……」

 

「まあ、ハンデってことで『ひ』にしてあげてもいいわよ。でも、人に何かしてもらう時には、何かすることがあるんじゃない?」

 

「うっ……。藍華ちゃ……いえ、藍華さま。どうかわたしにハンデをつけてください。お願いします」

 

「ううーん! よくできました。いいわよ、その表情。ゾクゾクしちゃう! じゃあ、お願いできたご褒美に、『ひ』にしてあげる」

 

「『ひ』でいいの? じゃあ、『ヒメ社長』!」

 

「えっ!? また『う』なの? う? う、う、うーん、ダメだわ、降参」

 

「やったあ! 「ん」がついたから、藍華ちゃんの負けだね!?」

 

「はあ? そっち?」

 

____________________

 

「……という、先輩方が、でっかい壮絶かつスペキュタクラーなしりとりをしている夢を見たのです」

 

「いや、壮絶さとスペ? 何とかいうのがよくわかんないけど、その夢のどこにそんなものがあるのよ! 大体、何で後輩ちゃんの夢なのに、私と灯里しか出て来ないのよ!」

 

「それは、私に言われましても……」

 

「アリスちゃん、とっても不思議な夢を見たんだね。もしかして、本でも読みながら寝ちゃったのかな?」

 

「はい。さすがは灯里先輩、よく分かりましたね」

 

「いや……夢見る時なんて、何かしながら寝落ちしたとか、ぐっすり寝らんない時とか、そういうパターン多いから」

 

「でも、しりとりで私が藍華ちゃんに勝つなんて、夢の中でも、ちょっぴり嬉しいなあ。うふふっ」

 

「そこよ! それがこの夢一番の、ダメダメポイントだわ! 何で私が助け船出した挙げ句に、この灯里なんかに負けなきゃいけないのよ!」

 

「えーっ?」

 

「そこは、私の深層心理と言いますか、『正義は勝つ』という願いが込められていたと言いましょうか」

 

「ちょっと! 後輩ちゃんの中では、灯里は正義で、私は悪なワケ?」

 

「えっ? い、いえっ! そんなことは断じてないと、私の深層心理がおっしゃられていらっしゃいませこんにちは、というような……」

 

「何なのよ、それ……」

 

「でも、実際にしりとりをやってみたら、誰が勝つのかなあ?」

 

「はあ? 普通にやったら、私がアンタ達なんかに負ける訳ないじゃないのよ!」

 

「そうだよねー。藍華ちゃんって、こういう勝負事は、とっても強そうだものねえ」

 

「灯里先輩。確かに今の藍華先輩は、強くて、歯がたたないのかもしれません。しかし、諦めたら、そこで試合終了ですよ? 」

 

「アリスちゃん……」

 

「『勝利の女神は、諦めない奴が好きらしい』という言葉もありますので、私と灯里先輩が諦めずに戦えば、きっと勝機も見えてくるはずです!」

 

「そっかぁ。そうだよね!」

 

「ちょっと待った! 何で灯里が味方で、私が敵みたいになってるのよ?」

 

「そうですか? 気のせいでは?」

 

「気のせいなら、さっきの正義はどう説明するのよ?」

 

「ですから、深層心理なので、私からは何とも……。ただ、藍華先輩がお気を悪くしたのであれば、後ほど私の深層心理によく言い聞かせておきますので。これ! 私の深層心理! 後で反省会ですよ! 覚えておきなさい! はい、これで」

 

「……ったくう。なあんか、頭にくるわねー」

 

「まあまあ、ふたりともー」

 

「では、早速やってみましょうか」

 

「そうだ! どーせやるなら、このネオ・ヴェネチアに関係するものに限定してやるのはどう?」

 

「えっ?」

 

「普段、お仕事で観光案内してるんだし、二人は当然大丈夫よね?」

 

「はい。それはいいですね。今日は時間もあまりありませんので、すぐに終わりそうですし」

 

「じゃあ、私、後輩ちゃん、灯里の順でやりましょ?」

 

「はーい」

 

「分かりました」

 

「じゃあ行くわよ、『ボッコロの日』」

 

「ひ、『姫屋』」

 

「や? うーんと、えーっと……」

 

「まさか、いきなり?」

 

「あっ! そうだ! 『夜光鈴(やこうりん)』!」

 

「……」

 

「……」

 

「はへっ? どうしたの? 二人とも。もしかして、わたしの勝ち?」

 

「あの、灯里さん?」

 

「今、何と、言われたのですか?」

 

「えっ? 『夜光鈴(やこうりん)』って……」

 

「灯里。まさかとは思うけど、古今東西とかと、勘違いしてないでしょうね?」

 

「あっ……そ、そんなこと、ないよ! ちょ、ちょっぴりうっかりさんだっただけだもん!」

 

「そうですよ! 灯里先輩が、そんな間違いをするわけないじゃないですか!」

 

「いや、今『あっ』って言ったじゃない。大体、後輩ちゃんは何で灯里の肩をもつのよ?」

 

「肩など持っていませんよ。藍華先輩が負けなかったので、ちょっと悔しいだけですよ」

 

「ぬなっ! ま、まあいいわ。じゃあ今度は灯里からね」

 

「はひ! 今度は間違えないように、えーと、『マルコ・ポーロの生家(せいか)』!」

 

「か、『カンパニーレ』!」

 

「れ、『レデントーレ』!」

 

「れ? うーんと、えーっと……」

 

「まさか、二度目はないわよね?」

 

「 あっ! そうだ! レガッタの選手さん!」

 

「……」

 

「……」

 

「はへっ? どうしたの? 二人とも。もしかして、今度こそ、わたしの勝ち?」

 

「んなワケないでしょうが!」

 

「わあ、アリスちゃん。次は『が』だって」

 

「おいおい……」

 

「灯里先輩。その、大変言いにくいのですが……」

 

「だからアリスちゃん、『あ』じゃないよ、『が』だよ?」

 

「「人の話をよく聞いて!」」

 

「はひっ!」

 

「えー、審議の必要もなく、今回も、最後に『ん』がついたので、灯里先輩の負けですね」

 

「えーっ? またわたしの負けなの? ……はふっ!」

 

「うん? この口がポンコツなのか? それとも灯里がポンコツなのか? うん?」

 

「ふええっ、はいはひゃん?」

 

「ああっ!? 藍華先輩! 灯里先輩の頬をでっかい引っ張ったり挟んだりしてはいけません! 灯里先輩も、この後のお客様がいるのですから、顔はダメです! 落ち着いて!」

 

「あっと……そうだったわね。私としたことが、いつになく、取り乱しちゃったわ」

 

「それは『いつもの様に』の間違いでは?」

 

「後輩ちゃん? 今、何か、言ったかな?」

 

「いえ、私は何も。アルバトロス(アホウドリ)が遠くで鳴いているのが、人の声に聞こえたのでは?」

 

「あっそ。はぁー……なんか、すっごく短時間なのに、すっごく疲れたのは気のせいかしら?」

 

「気のせいだと思ってください。その方が、毎日ポジティブに過ごせると思いますよ」

 

「わたしはポンコツ……わたしはポンコツ……」

 

「ああっ! こんな時に、灯里先輩がテンションダダ下がりに!? いけません灯里先輩! こういう時は、ARIAカンパニー伝統の素敵パワー全開で乗りきらなければ! 」

 

「そ、そう……だね。うん、そうでした! 水無灯里、頑張ります!」

 

「おおっ! さすが素敵パワー! でっかい回復力!」

 

「あ、あの……灯里さん?」

 

「うふふ、なあに? 藍華ちゃん」

 

「まったくこのコは……。でも、そろそろご案内の時間だし、次で最後にしましょ。灯里、今度はちゃんとやるのよ?」

 

「うん! 今度は負けないよ!」

 

「では、また灯里先輩からお願いします」

 

「はひ! じゃーあ、『大鐘楼(だいしょうろう)』」

 

「う、『浮き島』!」

 

「ま、『マルコ・ポーロ国際宇宙港』」

 

「う? えっと、『ウンディーネ』」

 

「ね、『ネオ・ヴェネチア』!」

 

「あ、『アクア・アルタ』」

 

「た? うーんと、『溜め息橋』」

 

「し、『シルフ』!」

 

「ふ、『フェニーチェ劇場』」

 

「う? うーんと、えーっと……」

 

「しまった! 『う』は2回も出てきたのに、それを灯里先輩に回してしまった!」

 

「あらあ? これでまた、灯里の負けかしら?」

 

「うーんと、えーっと……」

 

「灯里先輩……」

 

 

ドックン、ドックン………

 

 

「はへー、ほへー……あっ!」

 

「灯里先輩! 何か、降りて来ましたかっ!?」

 

「ふん! どーせまた、しょーもな……」

 

「うさぎ 、ぺったんこ餅っ!!!」

 

「……」

 

「……」

 

「……はへっ?」

 

「うさぎ……」

 

「ぺったんこ餅……」

 

「宇宙ステーションで売ってるお土産で、確か、月を詠んだ俳句集がおまけについているんだけど、だ……ダメだったかな?」

 

「……」

 

「……」

 

「あの、藍華ちゃん? アリスちゃん?」

 

「……や、や、やりましたっ! 灯里先輩っ!」

 

「大丈夫なの? やったあっ!」

 

「はい! 私は今、猛烈に感動しています! 灯里先輩なら……きっとやってくれると……信じてました……」

 

「ア、アリスちゃん。そんなに泣かなくても……」

 

「す、すみません。さあ! 藍華先輩! 次は『ち』ですよ! 続きを……おや?」

 

「藍華ちゃん? 顔が真っ赤だよ?」

 

「……降参」

 

「はへっ?」

 

「降参だって言ってるの!」

 

「藍華先輩……はっ!? そういえば、このお土産はっ!?」

 

「もう! 私の負けだって言ってるでしょ!? もうこのしりとりは終わり!」

 

「藍華ちゃん、どうしたの?」

 

「灯里先輩。実は、この前のお月見の時に、アルさんが……(コショコショ)」

 

「あっ! 後輩ちゃん! ヒソヒソ話禁止っ!」

 

「ほへー、そうなんだー。藍華ちゃーん、うふふー」

 

「ああっ、灯里にまで……。くぬぉ……後輩ちゃん!」

 

「うわっ! やめてください藍華先輩! 私もこの後お客様がっ! うわっ!」

 

「うるさいっ! 待ちなさーい!」

 

「ふたりとも、元気いっぱいさんだねー」

 

「灯里先輩も、見てないで止めてください! うわーっ!」




と、いうことで、三人でのネオ・ヴェネチアしりとりは、最後に私が勝って終わりました。
勝ったことは嬉しいんだけど、普段観光案内をしているにも関わらず、いざとなると全然思い浮かばなかったので、まだまだ自分が勉強不足であることを思い知らされた一日になりました。
もし、アリシアさんや晃さん、アテナさんだったら、とっても素敵なネオ・ヴェネチアしりとりがきたのかもしれません。

そうそう、藍華ちゃんの顔が真っ赤になった理由ですが、アリスちゃんによれば、三人とアルくんとでお月見をした時に、藍華ちゃんとアルくんが枯れ井戸に落ちちゃって、その時にアルくんがお話していたのを、思い出したからではないか、ということです。


灯里さん
ネオ・ヴェネチアしりとり、最後に勝てて良かったね!
私はまだ、ネオ・ヴェネチアの事を全然知らないから、もし、いっぱい勉強したら、灯里さんに相手をしてもらえるレベルになれるかな?
素敵なネオ・ヴェネチアしりとりが出きるように、灯里さんにも、沢山の素敵な事を、もっと教えて欲しいな!
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