ARIA The CONVERSATION   作:辰巳しおん

8 / 44
『オレンジプリンセス。もう自分の通り名には慣れたましたか?』
はい! でも、なぜおばさんがこんな所に?
『フフフ、寮のおばちゃんは仮の姿。その正体は……』
ああっ!
『裏の組織〈クロノアキラ〉の、怪盗ローゼンクイーン様よ! てなワケで、この黄金のオールは私が戴いてくわ! じゃあね~、水無の嬢ちゃ~ん』
『まてぇ~、クイーン! たいほだぁ~!』

……何ですか? これ。



その ウンディーネの通り名は……(2)

「つまり、後輩ちゃんは、この『月刊ウンディーネ』後輩ちゃん大特集号にある、グランマのコラム『城ヶ崎便り』には、私達一人前(プリマ)ウンディーネの通り名に関する事が書かれているけど、グランマ自身の通り名について全く書かれて無いのがでっかい不思議、ってことなのね?」

 

「はい、藍華先輩。何だかでっかい説明風ですが、その通りなんです」

 

「ホント、ふしぎだねー」

 

「でも、通り名って、意識しないと全然使わなくない? お客様をご案内してる時も、『ローゼンクイーンさん』なんて呼ばれた事ないし、普段は大体、『藍華さん』とか『支店長』としか呼ばれないし」

 

「わたしも、アリシアさんのことを『スノーホワイト』って呼んだこと、全然なかったなー」

 

「そうなんですか? オレンジぷらねっとでは、一人前(プリマ)の人は、お仕事の時は通常通り名で呼ばれるので、でっかい当たり前だと思っていました」

 

「ふぅーん、へーえ。そうなのぉ?」

 

「何ですか? 藍華先輩。でっかい含みがありますけど」

 

「寮のおばちゃんにー、『オレンジプリンセス』って、何度通り名で呼ばれてもー、気付かなかったのはー、ドーコの、ダーレだったっけなー?」

 

「ええっ!? どっ……どうしてそれを!?」

 

「んふふーん。私の情報収集力を、甘くみないで欲しいわね」

 

「えへへー。アリスちゃんも、意外とドジっ子さんなんだねー」

 

「はっ!? ま、まま、まさか、あのおばさんが……藍華先輩のご親戚? あるいは、姫屋のスパイとか?」

 

「……」

 

「なぜ黙るんですか? 藍華先輩!?」

 

「……それ、どっちもよ」

 

「……えっ? あの、藍華先輩?」

 

「そっかあ、気づいちゃったかあ……。さすがは後輩ちゃん。察しが良いのねー、本当に」

 

「えっと、藍華ちゃん?」

 

「あーあ、あともうちょっとだったのになぁ」

 

「あ……あ……あの……わた、わた……」

 

「はひっ!? アリスちゃん?」

 

「そのおばちゃんの名前はね、アリエナ・E・グランチェスタって言うの。若い頃は、とある国の特殊部隊で、諜報活動とかをしてたそうよ」

 

「私は、ほ、本当に……監視され、され……ううっ」

 

「アリスちゃん……」

 

「で、今業界で一番注目されてる、後輩ちゃんの動向を監視してもらって、あわよくば……ってね」

 

「ねえ、藍華ちゃん。それ、本気で言ってるの?」

 

「フフッ。灯里はさ、私がそんなことをしてたなんて、最低だとか、思ってる?」

 

「それは……そうじゃないけど……」

 

「じゃあさ、この際だから、ハッキリ言わせてもらうけど、もちろんウソよ、ウーソ。んな事ある訳ないでしょ?」

 

「…………えっ?」

 

「「ええーーっ!!」」

 

「ハイー、大声禁止っ! もー何なの? あんた達。ちょっと冗談のつもりで言ったら、真に受けちゃってさ。由緒ある姫屋(ウチ)が、そんなスパイなんて送り込むとでも思ってたワケ?」

 

「はわわわ……だってその、藍華ちゃんなら……って」

 

「はあ!?」

 

「はひーっ! ちょっぴりだけど、思っちゃいましたー! ごめんなさーい!」

 

「ホントにもう。で、後輩ちゃんも何よ。『アリエナ・Eなんて、そんな名前はあり得ないです! でっかいダジャレ禁止です!』とか言うと思ってたのにさ」

 

「アリエナ・E……」

 

「じゃなくて、アリエナイ……」

 

「そーよ。『それは、あり得ません』って、後輩ちゃんがさっき言ってたでしょ?」

 

「「はぁ~……」」

 

「ったくぅ。こんな事ぐらいで泣いてたら、この先一人前(プリマ)なんて務まらないわよ? ……って、後輩ちゃん?」

 

「……言いつけます」

 

「ぬなっ! だ、誰によ。ま、ままま、まさか、晃さんじゃないでしょうね?」

 

「いいえ、アルさんです」

 

「ひゃっ! な、なな、何でこんな時にアル君が出てくるのよ! あ、ああ、アル君は、か、かか、関係ないじゃない!?」

 

「いいえ。アリエナ・Eと、アリエナイをかけてるなんて、アルさんが、とっても喜びそうなダジャレじゃないですか。そう思いませんか? 愛華セ·ン·パ·イ」

 

「ええっ? いやっ、ちょっと、後輩ちゃん?」

 

「うふふー。それ、ちょっといいかもねー」

 

「あ、あー、灯里までそんな……。あーもう! わかったわよう! 私が悪かったです! ほら、パフェでも何でも奢ってあげるから! だからお願い! アル君にだけっ、アル君にだけは言わないでえーっ!」

 

「あのう、僕がどうかしましたか?」

 

「……えっ?」

 

「どうも。いやあ、急用でたまたまそこを通りかかったもので」

 

「……」

 

「ただ、アリスさんは泣きべその怒り顔、灯里さんは含みのある笑顔、藍華さんは顔真っ赤で焦り顔という、異様な雰囲気だったので、声をかけるか少し迷ったんですが……」

 

「……」

 

「何だか、呼ばれたような気がして……おや? 皆さん何でそんなドン引きなんですか? 僕、何か変なこと言いました?」

 

「で……で……」

 

「でで? あの、それはどういう…」

 

「「「出たあぁーーーっっっ!!!」」」

 

「うええーーっ!?」

 

_______________

 

 

「はあ……。なんか、すっごい疲れたわ」

 

「はひはへんはひは、ほはひはほほほひふははへふ」

 

「パフェを口一杯に頬張りながらしゃべるの禁止ー…」

 

「でもこのパフェ、すごくおいしいねー」

 

「あっそ……。大体、何で私が灯里にまでパフェおごらなきゃいけないのよー」

 

「だって、アリスちゃんが『灯里先輩の分も』っていうんだもん」

 

「ふひほ、ほへふはひへふんへ……」

 

「だーかーら、何言ってるかわからないってば」

 

……コックン

 

「藍華先輩が、おかしなことを言うからです。むしろ、これ位で済んで、でっかい感謝して欲しい位です」

 

「あーはいはい。サヨウデゴザイマスネ、オレンジプリンセスサマ」

 

「アルくん、とってもびっくりして、そのあと、とってもがっかりしてたけど、大丈夫だった?」

 

「もー大変だったわよー。『駄洒落も何も言って無いのに、皆さんにあんなにドン引きされるなんて……』ってスッゴク落ち込んでたんですもの」

 

「はは、そこなんだ……」

 

「だから『ちょっと、びっくりしただけよ』って、もしあんた達に見られたら、恥ずかしすぎて軽く死ねるぐらいの笑顔で励ましといたわ。ま、今度会う時にまた話しておくから、大丈夫でしょ」

 

「ほほう、デートですか?」

 

「でっ! デートじゃないわよっ! たっ、単に、お買い物に付き合ってあげるだけなんだから!」

 

「うふふー」

 

「もう! 二人とも、からかうの禁止!」

 

「で、話は戻りますが、藍華先輩は、私のドジっ子話を、誰から聞いたのですか?」

 

「今更そこ? ああ、まあそうね。ほら、後輩ちゃんの所に、(あんず)さんっているでしょ?」

 

「はい。以前、先輩方と一緒に、お昼ご飯を食べましたね」

 

「あーっ。そうか、わかったー!」

 

「多分灯里の想像通りよ。その時のメンバーは、杏さんの他に、アトラさんと、姫屋(ウチ)のあゆみさんだったでしょ?」

 

「はい、そうですが」

 

「あの三人は、よくトラゲットで一緒になるんだって。それで、ドジっ子後輩ちゃんをたまたま見た杏さんから、アトラさん、あゆみさん、私、って順で聞いたのよ」

 

「はー……」

 

「ねえ、藍華ちゃん。あゆみさんって、今は支店にいるの?」

 

「そうよ。あんた達にも、詳しい理由は言えないんだけど、今の支店は、本店よりも半人前(シングル)の人の割合が多いの。あゆみさんには、若手の半人前(シングル)の育成も手伝ってもらう為に、支店に来てもらったのよ」

 

「トラゲットはとっても楽しいし、勉強にもなるよねー。時間があったら、またやりたいなぁ」

 

「そんなに楽しいのですか? では、私も灯里先輩とご一緒に……」

 

「なーに言っちゃってんのよあんた達は。片やあのARIAカンパニーの承継者、片や業界初の飛び級昇格者なのよ? そんな一人前(プリマ)二人がトラゲットなんかやってごらんなさいよ。お客様も、他の半人前(シングル)の人も、みんな何事かと思うでしょ?」

 

「あはは、確かにそうだよね」

 

「とにかく後輩ちゃんも、誰かに監視されてるだの、トラゲットやりたいだの言ってないで、もっとドーンと構えなさいよ、ドーンとね。でも、本当に誰かにつけられてたら、その時は、会社にはもちろん、私達にもちゃんと教えなさいよ?」

 

「はいっ。でっかいありがとうございます、藍華先輩」

 

「さあて、落ち着いた所で本題に……って、何の話してたんだっけ?」

 

「「……あっ」」

 

続く

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。