はい! でも、なぜおばさんがこんな所に?
『フフフ、寮のおばちゃんは仮の姿。その正体は……』
ああっ!
『裏の組織〈クロノアキラ〉の、怪盗ローゼンクイーン様よ! てなワケで、この黄金のオールは私が戴いてくわ! じゃあね~、水無の嬢ちゃ~ん』
『まてぇ~、クイーン! たいほだぁ~!』
……何ですか? これ。
「つまり、後輩ちゃんは、この『月刊ウンディーネ』後輩ちゃん大特集号にある、グランマのコラム『城ヶ崎便り』には、
「はい、藍華先輩。何だかでっかい説明風ですが、その通りなんです」
「ホント、ふしぎだねー」
「でも、通り名って、意識しないと全然使わなくない? お客様をご案内してる時も、『ローゼンクイーンさん』なんて呼ばれた事ないし、普段は大体、『藍華さん』とか『支店長』としか呼ばれないし」
「わたしも、アリシアさんのことを『スノーホワイト』って呼んだこと、全然なかったなー」
「そうなんですか? オレンジぷらねっとでは、
「ふぅーん、へーえ。そうなのぉ?」
「何ですか? 藍華先輩。でっかい含みがありますけど」
「寮のおばちゃんにー、『オレンジプリンセス』って、何度通り名で呼ばれてもー、気付かなかったのはー、ドーコの、ダーレだったっけなー?」
「ええっ!? どっ……どうしてそれを!?」
「んふふーん。私の情報収集力を、甘くみないで欲しいわね」
「えへへー。アリスちゃんも、意外とドジっ子さんなんだねー」
「はっ!? ま、まま、まさか、あのおばさんが……藍華先輩のご親戚? あるいは、姫屋のスパイとか?」
「……」
「なぜ黙るんですか? 藍華先輩!?」
「……それ、どっちもよ」
「……えっ? あの、藍華先輩?」
「そっかあ、気づいちゃったかあ……。さすがは後輩ちゃん。察しが良いのねー、本当に」
「えっと、藍華ちゃん?」
「あーあ、あともうちょっとだったのになぁ」
「あ……あ……あの……わた、わた……」
「はひっ!? アリスちゃん?」
「そのおばちゃんの名前はね、アリエナ・E・グランチェスタって言うの。若い頃は、とある国の特殊部隊で、諜報活動とかをしてたそうよ」
「私は、ほ、本当に……監視され、され……ううっ」
「アリスちゃん……」
「で、今業界で一番注目されてる、後輩ちゃんの動向を監視してもらって、あわよくば……ってね」
「ねえ、藍華ちゃん。それ、本気で言ってるの?」
「フフッ。灯里はさ、私がそんなことをしてたなんて、最低だとか、思ってる?」
「それは……そうじゃないけど……」
「じゃあさ、この際だから、ハッキリ言わせてもらうけど、もちろんウソよ、ウーソ。んな事ある訳ないでしょ?」
「…………えっ?」
「「ええーーっ!!」」
「ハイー、大声禁止っ! もー何なの? あんた達。ちょっと冗談のつもりで言ったら、真に受けちゃってさ。由緒ある
「はわわわ……だってその、藍華ちゃんなら……って」
「はあ!?」
「はひーっ! ちょっぴりだけど、思っちゃいましたー! ごめんなさーい!」
「ホントにもう。で、後輩ちゃんも何よ。『アリエナ・Eなんて、そんな名前はあり得ないです! でっかいダジャレ禁止です!』とか言うと思ってたのにさ」
「アリエナ・E……」
「じゃなくて、アリエナイ……」
「そーよ。『それは、あり得ません』って、後輩ちゃんがさっき言ってたでしょ?」
「「はぁ~……」」
「ったくぅ。こんな事ぐらいで泣いてたら、この先
「……言いつけます」
「ぬなっ! だ、誰によ。ま、ままま、まさか、晃さんじゃないでしょうね?」
「いいえ、アルさんです」
「ひゃっ! な、なな、何でこんな時にアル君が出てくるのよ! あ、ああ、アル君は、か、かか、関係ないじゃない!?」
「いいえ。アリエナ・Eと、アリエナイをかけてるなんて、アルさんが、とっても喜びそうなダジャレじゃないですか。そう思いませんか? 愛華セ·ン·パ·イ」
「ええっ? いやっ、ちょっと、後輩ちゃん?」
「うふふー。それ、ちょっといいかもねー」
「あ、あー、灯里までそんな……。あーもう! わかったわよう! 私が悪かったです! ほら、パフェでも何でも奢ってあげるから! だからお願い! アル君にだけっ、アル君にだけは言わないでえーっ!」
「あのう、僕がどうかしましたか?」
「……えっ?」
「どうも。いやあ、急用でたまたまそこを通りかかったもので」
「……」
「ただ、アリスさんは泣きべその怒り顔、灯里さんは含みのある笑顔、藍華さんは顔真っ赤で焦り顔という、異様な雰囲気だったので、声をかけるか少し迷ったんですが……」
「……」
「何だか、呼ばれたような気がして……おや? 皆さん何でそんなドン引きなんですか? 僕、何か変なこと言いました?」
「で……で……」
「でで? あの、それはどういう…」
「「「出たあぁーーーっっっ!!!」」」
「うええーーっ!?」
_______________
「はあ……。なんか、すっごい疲れたわ」
「はひはへんはひは、ほはひはほほほひふははへふ」
「パフェを口一杯に頬張りながらしゃべるの禁止ー…」
「でもこのパフェ、すごくおいしいねー」
「あっそ……。大体、何で私が灯里にまでパフェおごらなきゃいけないのよー」
「だって、アリスちゃんが『灯里先輩の分も』っていうんだもん」
「ふひほ、ほへふはひへふんへ……」
「だーかーら、何言ってるかわからないってば」
……コックン
「藍華先輩が、おかしなことを言うからです。むしろ、これ位で済んで、でっかい感謝して欲しい位です」
「あーはいはい。サヨウデゴザイマスネ、オレンジプリンセスサマ」
「アルくん、とってもびっくりして、そのあと、とってもがっかりしてたけど、大丈夫だった?」
「もー大変だったわよー。『駄洒落も何も言って無いのに、皆さんにあんなにドン引きされるなんて……』ってスッゴク落ち込んでたんですもの」
「はは、そこなんだ……」
「だから『ちょっと、びっくりしただけよ』って、もしあんた達に見られたら、恥ずかしすぎて軽く死ねるぐらいの笑顔で励ましといたわ。ま、今度会う時にまた話しておくから、大丈夫でしょ」
「ほほう、デートですか?」
「でっ! デートじゃないわよっ! たっ、単に、お買い物に付き合ってあげるだけなんだから!」
「うふふー」
「もう! 二人とも、からかうの禁止!」
「で、話は戻りますが、藍華先輩は、私のドジっ子話を、誰から聞いたのですか?」
「今更そこ? ああ、まあそうね。ほら、後輩ちゃんの所に、
「はい。以前、先輩方と一緒に、お昼ご飯を食べましたね」
「あーっ。そうか、わかったー!」
「多分灯里の想像通りよ。その時のメンバーは、杏さんの他に、アトラさんと、
「はい、そうですが」
「あの三人は、よくトラゲットで一緒になるんだって。それで、ドジっ子後輩ちゃんをたまたま見た杏さんから、アトラさん、あゆみさん、私、って順で聞いたのよ」
「はー……」
「ねえ、藍華ちゃん。あゆみさんって、今は支店にいるの?」
「そうよ。あんた達にも、詳しい理由は言えないんだけど、今の支店は、本店よりも
「トラゲットはとっても楽しいし、勉強にもなるよねー。時間があったら、またやりたいなぁ」
「そんなに楽しいのですか? では、私も灯里先輩とご一緒に……」
「なーに言っちゃってんのよあんた達は。片やあのARIAカンパニーの承継者、片や業界初の飛び級昇格者なのよ? そんな
「あはは、確かにそうだよね」
「とにかく後輩ちゃんも、誰かに監視されてるだの、トラゲットやりたいだの言ってないで、もっとドーンと構えなさいよ、ドーンとね。でも、本当に誰かにつけられてたら、その時は、会社にはもちろん、私達にもちゃんと教えなさいよ?」
「はいっ。でっかいありがとうございます、藍華先輩」
「さあて、落ち着いた所で本題に……って、何の話してたんだっけ?」
「「……あっ」」
続く