連載休止 チームフォーマルハウトの旅路、黄金の軌跡と語られた伝説   作:里見レイ

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 お待たせです。最近、リアルが多忙に襲われています。次の話をいつ書けるか不安はありますが、せめて頑張りたいです。


栄光の先にある頭痛の種は果たして知るべきだったのだろうか

 世間はダービーの前予想で熱気に包まれている東京レース場に、一人ダービーともう一つのレースに追われている男がいた。今回が三回目の未勝利戦、芝2400メートルを走るキンイロリョテイのトレーナー、西川だ。

 

「おやおや、まさか私達と一緒に観戦するとはね。既に勝つ気満々って事ですか?」

 

「まあ、今回はトレセン学園から大した距離ではないので負担ではないですけどね。それに、勝って笑顔のリョテイさんに対し真っ先におめでとうを言える訳ですから」

 

 今日の付き添いはチームプロキオンのシャインブライアンとチームベガのトーホーアート。会場にはメジロライアン、メイショウドトウも来ているが現在は別行動だ。

 

「......リョテイ、今回こそ絶対に勝てる。その為にわざわざ焼肉食べ放題の店を団体予約して給料日の後からヒモジイ食生活をしてきたんだ。勝つってくれなきゃ困る」

 

「......相当ですね。ただ、あいつは無口ですが人の気分には敏感です。きっと、トレーナーさんの並々ならぬ決意は伝わっていますよ」

 

 シャインの明るい励まし。しかし、彼女自身の眼も優しげではなかった。

 

「リョテイさん......」

 

 そして、完全に神頼み状態のアート。手には赤いお守りが握られている。彼女はリョテイに運命的な幸運を祈っている。

 さあ、ファンファーレだ。

 

 リョテイは中段の前の方に位置を付けてレースを開始した。第一コーナーの時点では前から数えて七番目。蓋もされておらず、いつでもスパートできる好位置だ。

 

「ふーん、リョテイもあんな走りするんだね」

 

 西川らとは大分離れた位置からレースを見るメジロライアンは、双眼鏡を片手にこう言った。

 

「恐らくですが、他の皆さんとの併走のお陰かもしれません。スタートダッシュが比較的良くなりました」

 

 隣にいるメイショウドトウの一言。手にはビデオカメラがある。ダービー前で個人メニューをこなしているライアンと違い、ドトウは見学ばかりしているのでリョテイのトレーニング風景をよく見ていた。

 

「勝てるかな? あたし達も焼肉パーティー誘わているけど」

 

「大丈夫だと思いますよ。今回も二番人気ですし。○○○○さんも『今回は勝てる』とメールがありましたから」

 

「そっか、なら心配ないね」

 

 双眼鏡を下ろしたライアンは一息ついた。

 

「トレーナーさんは、今すごく緊張していると思う。勝っても負けても励ませるように、あたし達はトレーナーさんに明るく接さなければいけない。だからこうして距離を取ってレースを見ている訳だけど、ドトウがこんな事提案するなんてどうしたのさ?」

 

 ライアンとシャインは、人の気持ちに対する優しさのタイプが似ている。もしもリョテイが最初に所属していたチームプロキオンから独立をしていれば、ライアンの立場はシャイン担っていたのかもしれない。

 

「......今日から先は、トレーナーさんすごく辛い思いをすると思うんです。勝つ事への拘りや葛藤とか。だから、今日だけは自分の精神力を使い切ってでもトレーナーさんに良い思いをして欲しくて......」

 

 俯いたドトウの言葉は、ライアンも薄々感じていたかもしれない。

 

「......まあ、きっと良い事ならまだあるよ。チームがこれからずっと負け続けるなんて事、あたしが絶対させないから」

 

 しかし、ライアンは今走っている当事者だ。嘘でもいいから強い言葉を紡ぐ。

 自分達の関係は、思いの外繊細なのかもしれないと思ったライアンだった。

 

 

 レースは残り千メートル。先頭のウマ娘が大きく逃げている一方、リョテイも徐々に進出して現在は三番手。

 

「よし、この位置なら! 逸走をしない限り!」

 

 過去の大惨事が脳裏によぎる西川。

 

「大丈夫です。あいつなら、今度こそ!」

 

「......リョテイさん!」

 

 集団が第四コーナーを回り残り400。

 

『さあ、直線入り口で早くもキンイロリョテイ先頭だ!』

 

 実況もだんだん熱を帯びてきた。そして、残り200。坂を上り切ったリョテイ。

 

「よし、まだ先頭! 後ろもかなり追ってきているがこのままいけば!」

 

 体中の血が煮えくり返る勢いで彼は興奮した。そして、実況の声が響く。

 

『あと50メートル、キンイロリョテイ! キンイロリョテイが先頭でゴールイン!』

 

 その差は¾バ身。見事、掲示板のテッペンに彼女の枠番16が刻まれていた。

 

「シャ~~~~!!!」

 

 身を守る時のダンゴムシに匹敵するレベルに背中を丸める西川。ここはレース場、騒ぎ過ぎは他の人に迷惑なので喜びの舞は最低範囲内だ。

 

「ほら、リョテイのトレーナーさん。あいつのウイニングライブ始まりますよ」

 

「行きましょう! あ、ライアンさんから連絡です。今からこっちに来るそうです」

 

「ライアン、今後のデータの為にも全体を見渡しやすい場所に行って貰っていたが......」

 

 ダービー前のウマ娘にこんな事させて良かったのかと疑問にい想う西川。まあ、デビュー前のドトウも一緒だから良しとしよう。

 

「トレーナーさん! おめでとうございます!!!」

 

 そして、間もなくライアンとドトウが姿を現す。どこで用意したのか、人数分のペンライトまで手元に用意している。

 

「......よし、行くか」

 

 こうして、一行はウイニングライブをG1並みの熱意で待ち構えていた。

 

「あのう、トレーナーさん」

 

 とスポットライトが照らされる直前にドトウが質問をした。

 

「リョテイさんって、センターでライブできるのですか? 今までは適当にサブを踊っていただけで、センターは完全に未経験な上に練習不足なのでは?」

 

「......」

 

「......と、トレーナーさん?」

 

 黙り込む西川と心配な表情を出すライアン。そして、止めの一言はリョテイの親友から。

 

「あいつ、本来はウイニングライブ下手過ぎなんだよね。今までは横でワンテンポ遅らせて形を保っていたんだけど、センターになったらあいつは......」

 

 「Make debut!」が流れ出した東京レース場。ライブの微妙な盛り上がり具合とは裏腹に、徐々に喧噪が大きくなっていった。

 

「~あいつーー!」

 

「想像の、斜め上でしたね。どうしましょ~」

 

「シャイン、これ知ってた?」

 

「うん」

 

「以前、木陰で練習されてましたね。このダンスを」

 

 ステータスが表示されるのならば、明らかに「テンポ×」だろう。そして、「歌××」だ。

 無言で繰り出される流れるようなステップから繰り出されるキレが異次元なダンス。そして、足を閉じてバク宙まで披露した。これには観客も驚きを隠せない。

 

「......後で、上の人から叱られなければいいけど」

 

 焼肉パーティーへの心構えも束の間、ある意味問題になりそうなリョテイの奇行を目にする西川だった。

 




 リョテイさんは四本足時代に二本足で立ち上がって騎手を振り落としにかかり、尚且つ数歩歩いたという話があります。
 息子のゴルシがブレイクダンスなら、親父はバク宙くらいしても可笑しくないと思いました。何はともあれ、ようやく一勝です。
 ありがとうございました。

 里見レイ

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