連載休止 チームフォーマルハウトの旅路、黄金の軌跡と語られた伝説   作:里見レイ

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 ふう。


大荒れ過ぎた皐月賞、絶望のトレーナーと何か希望を見たリョテイ

 クラシックのファンファーレは、レース場を一気に張り詰めた空間へと変貌させる。

 

「......ライアン、頑張れ」

 

 西川にとっても、一番人気で出走しているメジロライアンにとっても初のG1にしてクラシック。加えて、この大一番での一番人気。流れる冷や汗がナイアガラの滝レベルだ。

 

「はっはっは、盛り上がりがまさしくバクシンですね! これは、もうバクシンするしかありませんね! トレーナーさん、私少々レース場の周りを走ってきま......」

 

「君は暫くじっとしていて下さい。そして、二度とこんな装備でレース場に来る事がないようにして下さい」

 

 右腕に巻き付けていたロープを、顔面蒼白で引っ張る西川。ある意味、一つのブレーキ装置としてサクラバクシンオーを引き留めることに成功した。なお、力では引き留める事は出来ないので最終的には彼女の自制心に頼る訳なのだが。

 

「バク! 失礼しました、トレーナーさん。レースに出ていないウマ娘が俊足を披露しては、現在出ているウマ娘の皆さんにご迷惑をおかけしてしまいますからね。じっと、レースを拝見しましょう。シーン!!!」

 

 静かになろうとしても騒がしいのがこの特急ウマ娘だ。周りへの迷惑と彼女の自由さを天秤にかけて適度なブレーキを踏んでいるが、如何せん大一番のタイミングなのでそこまで頭が回っていない。

 

「トレーナーさん、○○○○さんは今日も顔を出されないのでしょうか?」

 

 最近は部室に顔出す頻度だけ上がったメイショウドトウが、今日も西川の気を遣う。今や、このチームの第二のまとも枠となっている。

 

「メールはしょっちゅうやり取りしているのですけどね。今日は、不穏なメールを一通頂いただけでしたよ」

 

 ため息交じりの西川。問題児は、一人も要らない。トレーナー万人の願いだろう。

 

「メール、ですか。それは一体?」

 

「......これです、口に出したくないので」

 

 追加で聞いて来るドトウに、彼は己のスマホを見せた。

 

「えーと。ま、まさか流石の○○○○さんでもこんな予想は当たるはずが......」

 

 ドトウの狼狽えは、ある意味妥当だった。そんな彼らの不安をよそに、ゲートが開いた。

 

 

 レースが始まって僅か十数秒で、リョテイの親友シャインブライアンが先頭に立つ。既に二・三バ身の差を付けた。しかし、すぐに七番のウマ娘へと先頭が移り変わる。

 

「......! ......」

 

 レース場の二階の一角にて、レースを見守るウマ娘がいた。会場に着くなり西川が追う間もなく別行動をしたキンイロリョテイである。

 

「......」

 

 サッと先頭を見た後に、彼女は後方にも視線を移す。チームメイトのメジロライアンは二番人気ライトニングゲイル、元チームメイトエリモレイディーと共に最後方集団で第三コーナーへと差し掛かろうとしていた。

 

「大丈夫、ライアンは掛かっていないし冷静にレースを運べている。大丈夫、大丈夫さ......」

 

 西川の握る手が震えている。

 

『残り八百切りました。後方三名はまだ動いていません!』

 

 そして、そんな彼の不安を助長する実況の声。既に先頭は再びシャインブライアンで、後方にいる有力ウマ娘たちに大きくリードを取っている。

 

『まだライトニングゲイルは後方、四コーナーカーブから直線に向かいました! そして、メジロライアンは一番外に持ち出しているが......』

 

「あ、これは......」

 

 彼の耳から段々と実況の声が遠ざかっている。

 

「と、トレーナーさん。○○○○さんから追伸です」

 

 そして、メイショウドトウからとどめの一言が降ろされた。

 

「な、何と言っていますか? 彼女の事ですから粗方見当は付きますけど......」

 

 顔だけドトウの方を向く西川。腹をくくってその一文を目に映す。

 

『だから言っただろうこのレースはシャインブライアンが勝つって』

 

 その文面を読み切った直後、十一番人気の逃げウマ娘だった。

 

 

 

「......」

 

 ここは、ウマ娘及びその関係者が使用するレース場の裏通路。キンイロリョテイは、まだ未勝利戦も勝っていないが半ば強引にスタッフを弾き飛ばしてやって来たのだ。そして、

 

 ブンッ!

 

 手に持った焼き鳥をぶん投げる。恐らく、売店で買っておいて温めていたのだろう。若干冷めてはいるがまだ適温の範囲内だ。その受け取り手は......

 

「ははは、まさかライブ直後に渡してくるとは思わなかったよ。相変わらず、君は読めないね」

 

 親友、シャインブライアンだ。初めてのG1ウイニングライブを終えて、自分のトレーナーの所に戻ろうとした矢先である。

 

「......//」

 

 そして、キンイロリョテイはこの笑顔だ。これは恐らく、トーホーアートと彼女の前でしか見せないだろう。

 

「......ありがとう。早速頂くよ」

 

 トレーから焼き鳥を取り出し、軽く一口。程よい温度と、油分の溢れ具合が疲れ切った体に染み込んでいく。

 

「うん、美味しい。流石、君が選び抜いた焼き鳥だ。今度、一緒に遊びに行きたいものだ」

 

 静かな笑顔がシャインから零れる。それを見て満足げなキンイロリョテイ。

 こうして、皐月賞は様々な者の希望と絶望の中で幕を閉じた。




 はい、ようやく時系列は皐月賞です。全く、いつになったら阿寒湖を書ける事やら。
 ちなみに、最後の焼き鳥にも若干のネタを含んでいます。宜しければ調べて見てくださいませませ。

 それでは。

 里見レイ

貴方の最も好きなキンイロリョテイ、もといステ〇ゴ〇〇ドの産駒は?

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