徒然なる中・短編集(元おまけ集)その2   作:VISP

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リハビリがてらのやっつけ
うーん雑だなこれ
書けたから一応投稿


ウマ娘SS チート転生料理人主による善行

 「は、行き倒れか?」

 

 その声は今もはっきりと覚えています。

 

 とある年の暮れ、雪の日の夜の事。

 元々膝が悪かったものの、それでも当時二冠ウマ娘となった私は破傷風に伴う敗血症によって身体を壊してしまいました。

 幾日も生死の境を彷徨った後に辛うじてベッドから起き上がれるようになった頃、医者にもう二度とレースに出られないだろうと断言された私は、それでも諦めきれずに必死にリハビリを続けていました。

 でも、でも、テレビやラジオではどこも有マ記念の様子を中継していて、私の心は折れてしまいました。

 

 

 なんで、あそこに、わたしはいないの?

 

 

 病院を抜け出し、ふらふらと冬の街を彷徨い歩く。

 リハビリはしていても、長い入院生活ですっかり体力の落ちた私の身体は冬の寒さへ抗するだけの体力をすっかり失っていました。

 いえ、いえ、正しくは生きる気力を失っていたんです。

 私の青春、私の夢であるレースに、もう二度と出る事が出来ない。

 その事実が私から生きる希望を奪っていたのです。

 夜も遅く、雪も降って、人っ子一人いない静かな冬の街。

 道端で倒れた私はそのまま目を瞑り、そのまま永い眠りに就くと言う時、

 

 

 「は、行き倒れか?」

 

 

 彼の声が耳に入りました。

 

 

 ……………

 

 

 オッス!オレ転生者!

 ガチャで当たった転生特典持って転生したんだ!

 幸いにも平和な世界だから、自分の趣味かつ前世の仕事でもあった「料理」スキルを活かして生きていこう!

 これでクッソヤベー戦時中の世界だったらもっと考えないといけんかったが、幸いにもこの世界は死んだ時流行ってたウマ娘のいる世界!

 勝ったな、ガハハ!

 で、以前は持ってなかった調理師免許もしっかり取得し、母方の実家で経営してる喫茶店(後継者おらずで畳む予定だった)を継ぐために調理学校卒業後はその喫茶店で働いていた。

 資金が貯まれば老朽化しつつある喫茶店を改装する予定を立てながら、日々精一杯お仕事をしていた。

 幸いにも自分が厨房に立つようになってからは昔からの常連客のみならず新規の客も増え、客入りは増える一方で商売繁盛で順調だ。

 とは言え、チートスキルはこれでも全開にはしていない。

 前に一度自分で試したら意識が跳びかけたので、全開の料理=合法麻薬みたいなものと判断し、それ以来決して作るまいと決めていた。

 

 「は、行き倒れか?」

 

 だが、ある年の暮れの雪の日、店の前の通りで倒れたウマ娘を見た時、その決まりを破る事となった。

 

 「おい!おいアンタしっかりしろ!」

 

 薄らと雪が積もっていたのも構わず、その場で身体を揺すって大声で呼びかける。

 

 「…ぅ…。」

 

 よし生きてる!

 そう分かったオレはそのウマ娘を抱えて店に戻った。

 

 「おい坊、どうしたその娘さんは?」

 「表で行き倒れてた!爺ちゃんは救急車呼んで!婆ちゃんはお湯沸かして!」

 

 暖房の効いた店内に戻るとまだ起きていた二人にそう叫び、ウマ娘の身体から雪を払い落すと急いで暖房の設定温度を更に上げ、久々に本気を出すべく厨房に入る。

 

 (チートスキルを用いれば、弱ったウマ娘一人くらい何とでもなる筈だ!)

 

 今までの経験からそう判断したオレは急いで有り合わせの材料である飲み物を作り、ものの数分でそれを大き目のマグカップに入れてスプーンと共に4人がけの客席に寝かせていたウマ娘の下へと持っていく。

 作ったのはチートスキル全開で作った生姜湯だ。

 全開で作る際はどうしても千分の一レベルでの調理が必須で面倒なので多用はしないのだが、今回は人命救助故に仕方ない。

 はちみつと生姜多めのそれは、チートもあってよく効いてくれる筈だ。

 

 「おいアンタ!一口だけでいいからこれを飲んでくれ!少しはマシになる筈だ!」

 

 何せ人命救助である。

 普段ののんびりした言動をかなぐり捨てて大声を出し、寒さによって意識の朦朧としているウマ娘に話し掛ける。

 上体を起こして驚くのはその体温の低さだ。

 間違いなく低体温症になってそうな冷たさに改めて焦りを感じつつ、その口元へとチート生姜湯をスプーンで運ぶ。

 

 「ん、ぅ……う!?」

 

 僅か半匙程度だが、反応は劇的だった。

 たった半匙と数拍で身体から冷たさが吹き飛んだそのウマ娘は、がばりと起き上がるとオレの持っていたチート生姜湯入りマグカップを一瞬で奪い取ると、熱い筈なのに砂漠で水不足状態だったかの如くゴクゴクと飲んでしまった。

 

 「美味いッ!!お代わりッ!!」

 「お、おう。」

 

 結局、蒸しタオルで身体を拭いて救急車が到着する前にこのウマ娘は小鍋で作ってた生姜湯を飲み干し、更にお代わりを要求して鍋一つ分をゴキュゴキュ飲み干してみせたのだった。

 この妙な出会い以来、何かと彼女とは長い付き合いになるのだとこの時はまだ知らなかった。

 

 

 ……………

 

 

 あの夜以降、すっかり生きる気力を回復してしまったトキノミノルはリハビリしつつあの店へとほぼ毎日通い続けた。

 彼女はすっかりあのチート料理人の作る料理に魅せられてしまっていたのだ。

 そして、チート料理人も「また死なれちゃ目覚めが悪い」と彼女の健康、即ちリハビリに配慮した専用メニューでそれに応えた。

 

 「傷の治りを早くする…タンパク質にビタミンC、亜鉛に鉄分、後はDHAとEPAか…。」

 「貴方の作るものなら何でもいいわ。」

 「よし、蝗の佃煮だな。」

 「限度があるでしょうが!?」

 

 でも、出された料理は何だかんだでトキノミノルは完食し続けた。

 だって美味しいし、凄く美味しいし、確かに傷の治りが早くなってるんだもん。

 時折彼女のトレーナーも顔を出したが、やはり彼も常連客となって店に通うようになった。

 心労で胃壁をすり減らしていたトレーナーには胃袋に優しい卵入りおじややそうめん等が中心であった。

 喫茶店で普通そんなメニュー出されたら怒られるかもしれないが、思いやりと美味さと美味さと心身への回復効果は確かに本物であり、トレーナーもまた夢中になって食っていた。

 そんな日々を続けて半年、驚異的な速度で奇跡の様な回復を遂げたトキノミノルは遂に以前の医者の診断を覆して現役へと復帰する事になる。

 

 これはとある2冠ウマ娘が追加で三つも重賞を取る前のある日の出来事だった。

 

 

 ……………

 

 

 月日が経つのは早いもの。

 惜しまれながらもピークを過ぎてしまったトキノミノルは現役引退を発表、後進の育成に注力すべくURAの事務職を目指して勉強し始めた。

 その一環として、彼女はとある料理人に話を持ちかけた。

 

 「という訳で、怪我とか健康に良い料理のレシピくれません?」

 「いいぞ。」

 「無論タダとは…え?」

 

 勿論世話になった+常連の身なのでしっかりお金は出すつもりだった。

 が、この料理人は彼女の思ってる以上に商売っ気が無かった。

 

 「いえいえいえ!ちゃんとお金出しますよ!タダなんてとんでもない!」

 「いや、タダとは言わねぇが、レシピは兎も角研修も無いとまともに効果出ないぞ。」

 「え、本当ですかソレ?」

 「本当本当。最低でも百分の一グラム単位で計量しないと効果は出ないぞ。」

 

 チートスキルの弊害で常に最適な調理は分かるものの、それでも他者が作っても効果の出るレシピを考案するのは大変なのだ。

 況や治癒や健康に効果のある普段からの食事となったら言うまでもない。

 

 「っつー訳で先ずはお前さんからな。」

 「えっと…お手柔らかに…?」

 「んな訳ねーだろ。厳しくいくわ。」

 「やっぱりー!?」

 

 この日から半年後、漸く料理修行が一応終わったトキノミノル(本名駿川たづな)によってURA中央トレセン学園調理部門に健康増進メニューが取り入れられた。

 当初はその効果は疑問視されていたものの、驚異的な美味さと怪我・病気の回復力向上、食の細いウマ娘も積極的に食べる事から徐々にメニューは増えていき、同時に特別研修としてとある喫茶店に一定期間勤務する特別研修(店側にも報酬多数)が設置される事となる。

 だがしかし、この健康増進メニューにはある問題があった。

 

 「お代わり!」

 「お代わりです!」

 「健康ランチA特盛7つ!」

 「健康野菜セット追加で5つ入ります!」

 「ッ!?オグリキャップとスペシャルウィーク、ライスシャワーが来ますッ!!」

 「休憩中の職員とたづなさんを呼んで来い!急げ、間に合わなくなっても知らんぞー!!」

 

 余りにも美味すぎた故に食費が激増してしまったのだ。

 更には食べ過ぎる者が続出したせいで【太り気味】になる者も多発した事で一時は全ての健康増進メニューの廃止すら検討された程だ。

 しかし…

 

 「それをすてるなんてとんでもない!」

 「止めてください!美味しいご飯は皆の勝利の源なんです!」

 「もしもし爺や?えぇ、廃棄予定のレシピの回収を…。」

 「譲ってくれ頼む!」

 「ころしてでもうばいとる!」

 

 全生徒の嘆願と余りの大混乱によって廃止は棄却され、その日はいつにも増して食堂は大盛況となった。

 このメニューを食べたいがために地方から編入してきたガチ勢すらいるのだから、廃止されたらどうなるのか考えれば、秋川理事長らの判断は正しかったと言えよう。

 その代わり、健康増進メニューを考案した料理人の店(現在各種5店舗まで拡大中)の存在を明かされた事で、レースで資金を稼いだウマ娘達は挙ってそれらの店へと向かうようになったのだった。

 

 「おい おいたづな。」

 「うふふ、商売繁盛で良かったですね♡」

 「ふざけんなよ!?本店の場所まで明かしやがって!お陰で大食い勢がほぼ毎週突撃してくるんだぞ!?」

 「うふふふ、弟子から師匠への応援です♡」

 「お前もう少し歳考え、うおおおお!?」

 

 ちゃんちゃん♪

 

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