「順調ですね~。」
「そ、う、だ、ね!」
編入して割と直ぐにデジタルと専属トレーナー契約を結んで約半年。
私達は順風満帆だった。
既にメイクデビューを済ませた私達は日本全国津々浦々を毎月の様に遠征して観光しつつ様々なレースに出る日々を送っていた。
というのも、私に原因がある。
「どんな風に走りたいですか?」
「賞金最優先。大逃げか追い込み。」
「芝もダートも長距離も短距離もいけるとなると…。」
「短距離はささっと終わらせて、長距離はシンザンみたいな走りにしようと思う。」
「わっかりました!ブラックさんは頑丈とは言えガラス細工のウマ娘ちゃんなので、賞金額の多いレースを優先してほどほどに頑張っていきましょう!」
神話の住人シンザン。
彼女は金にならないレースはする事は無かったという。
最終戦績十九戦十五勝、二着四回。
競走馬時代のブラックアイアンによって破られるまで誰も超えられなかった神話的記録。
シンザンは「ハナ差勝ち」で構わないという考えの持ち主であり、レコード勝ちに興味を示さなかったという。
結果、脚に過度の負担を蓄積させる事はなかったものの、当時のレースを見た人々から「そんな圧倒的に強いとは思えなかった」と言われている。
とはいえ勝ちは勝ちだし、興行的にはギリギリの勝負の方が人気なので、当時のURAから注意される事は無かったという。
(やられたウマ娘からすればたまったもんじゃないだろうけどなぁ…。)
大抵のウマ娘ならばそれこそ皇帝シンボリルドルフの先輩や同期の多くと同様に心をへし折られるだろう。
私はそうならない様に気を付けてはいるが、掛かった連中と言うか地方の良い所の出のお嬢様とその取り巻きなんかが喧嘩売って来る事もあるので、そういった場合は(レースで)容赦なく潰す事にしている。
レース前後の盤外戦術とか舌戦の類は良いけれど、ガチで喧嘩売る連中には容赦しない。
「はい、クールダウン終了!後は寮に戻ってお夕飯食べてお風呂入ってストレッチしてお勉強して就寝です!」
「ふぃーお疲れ様でしたー。」
「この調子なら今月の朝日杯ジュニアステークスも大丈夫ですよ!」
既に出たレース数は6を超えている。
その半数が重賞であり、全てが数バ身差の一着である。
余力も残し、更に脚への負担も少なく、それでいて賞金はガッポガッポ。
この勢いのまま初のG1である朝日杯を勝ちたいもんだ。
「これで勝てば重賞4連勝かー。」
「今年度のジュニア級の中じゃ敵う子はいませんけども、レースに予想外は付き物ですからねー。」
「分かってる。何かあった時用の余裕は残しておくよ。」
史実テイエムオペラオーの様な悪質な妨害、マルゼンスキーの様な露骨なハンデ、ライスシャワーの様なふざけた罵倒等受けたくはない。
その点、シンザンは本当に上手くやってみせたんだなぁと改めて思わされた。
……………
「貴女なら、うちのチームでも十二分にやっていけると思うのだけど…どうかしら。」
「………。」
寡黙なウマ娘だった。
暗い赤褐色の鹿毛の長髪に額に白い星が一つ。
すらりとウマ娘としては小柄ながらも強い意志を持つ瞳で、自分に声をかけてきたトレーナーを見据えた。
「…ブラックアイアン。」
「彼女と何か因縁が?」
告げられたのは、目の前の彼女よりも少し先に編入してきたウマ娘の名だった。
あらゆるコースと距離、馬場を問わず同年代の誰よりも速く駆けるその姿は既に誰もが頭を抱えて久しい。
余りにも荒唐無稽で、余りにも無頓着で、余りにも暴虐が過ぎる怪物。
先週の地方のレースでは、自分以外の出走者全員にマークされ、囲まれ、妨害されたと言うのにそれら全てを撫で斬りにして大差勝ちしてきたと言う。
シンボリルドルフ他レジェンド級がドリームクラスに移った現在、アレを止められる者に皆心当たりが無かった。
今目の前にいるただ一人を除いて。
「…話した事は無い。でも」
負けたくない。
轟、と静かに漲る気迫に、東条トレーナーは口の端を上に歪めた。
この子だ。
あの絶対の皇帝にすら引けを取らない、否、凌駕する程の才覚の片鱗を既にして彼女は持っていた。
あの無敵の怪物を討ち取る希代の英雄となれるだろう巨大な原石。
「…私は、ディープインパクト。あの怪物と戦えるのなら、喜んで。」
「改めて、私は東条ハナ。ようこそ、チーム・リギルへ。」
こうして、希代の大英雄は最高のパートナーの手を握った。
嘗て矛を交えるも、三度とも引き分けた怪物を討つために。
自分を置いて、あっさりと遠くへ逝ってしまった宿敵を、今度こそ手折るために。
……………
競馬関係雑談スレpart○○○
………
……………
…………………
516:名無しのウマ
今年もこの日が来てしまったか…
517:名無しのウマ
あぁ、月日が経つのは早いなぁ…
518:名無しのウマ
う、うん?
519:名無しのウマ
なんかあちこちの掲示板でお通夜なんだけどどしたん?
520:名無しのウマ
あー、そう言えば現役だったのディープと一緒だったし、もう若い人は知らんよな
521:名無しのウマ
昔昔その昔にブラックアイアンっていうクッソ強い馬がいたの
今日はそいつの命日
522:名無しのウマ
ディープ相手に三度戦って三度とも同着で他の戦績も頭おかしい無敗の化け物
523:名無しのウマ
あーそう言われると何か聞いた事ある気がする
524:名無しのウマ
待ってなんでそんな名馬があんまり名前聞かないの?
525:名無しのウマ
端的に言うと当時マスコミとJRAが異常にディープを推してて、その影に隠れちゃったというか
526:名無しのウマ
しかも最後がマジで胸糞でなぁ
527:名無しのウマ
馬主さん、あの事件でめっきり老け込んじゃったもんな
528:名無しのウマ
ちょっとWiki見てきた
怪物より怪獣王って感じやねブラックアイアン
しかも最後おい
529:名無しのウマ
まさかの侵入した強盗による銃殺とかさぁ…
530:名無しのウマ
しかも馬主兼生産者の息子を庇ってとかさぁ…
531:名無しのウマ
しかもマスコミは警備しっかりしてないからだとか騒ぎ立てたりさぁ…
532:名無しのウマ
大事な大事な名馬を殺された挙句これは無い
533:名無しのウマ
今現在馬主さんどうしてるんだっけ?
534:名無しのウマ
数少ないブラックアイアン産駒の一つとその母ハルウララと一緒に地方でのんびりしてる筈
535:名無しのウマ
はい?
536:名無しのウマ
え、ハルウララ今ブラックアイアンの馬主さん所にいるの?
537:名無しのウマ
行方不明(評判悪い馬主の所にいた)のを保護したんだって
以前からブラックアイアンが気にしてたから、お嫁さんにしてたんだって
538:名無しのウマ
生まれた産駒は一頭のみか
539:名無しのウマ
あんまぱっとしないけど長生きはしてほしい
540:名無しのウマ
ハルウララは生きてくれてるだけで嬉しい
541:名無しのウマ
ぐう分かる
542:名無しのウマ
にしても戦績がおかし過ぎる
543:名無しのウマ
実は日本初凱旋門賞馬だったのに何故にこの扱い?
知名度低過ぎない?
544:名無しのウマ
つ生産元がマジ無名
545:名無しのウマ
つディープがめっちゃプッシュされてた時期
546:名無しのウマ
つ配合も国産だけど全然パッとしない
547:名無しのウマ
つ勝ち方も大差とかレコードほぼ無しで地味
548:名無しのウマ
いや四つめはおかしいやろ
549:名無しのウマ
言うてシンザンだって総合成績見たらヤベーけど当時はそんな言われてなかったらしいし
550:名無しのウマ
よく見ればおかしな奴らだらけなのが競馬史
551:名無しのウマ
せやろか?……せやな!(ゴルㇱ
552:名無しのウマ
そいつはUMAだから…
553:名無しのウマ
癖馬オブ癖馬
554:名無しのウマ
ゴルㇱ故致し方なし
555:名無しのウマ
さっきブラックアイアンの献花台に花置いて来た
他にも結構な数あって人気自体はちゃんと今もあるんだなってほっこりした
556:名無しのウマ
間違いなくレジェンド級名馬故当然
557:名無しのウマ
オレラがいけん分もありがとな
558:名無しのウマ
ディープより一歳上だから対戦した数は少ないのに当時の映像見るとマジでライバルって感じ
559:名無しのウマ
ディープ相手に大逃げ打った時はよくぞ同着に持ち込めたな
560:名無しのウマ
あれはかなり酷い重馬場なのもあったと思う
でなければまた違った結果だった
561:名無しのウマ
たられば言ってもなぁ
562:名無しのウマ
どっちも名馬故致し方なし
563:名無しのウマ
でも、出来るならもっと何度もバチバチにやってほしかった
564:名無しのウマ
それはそう
565:名無しのウマ
間違いなく名勝負だったろうに
566:名無しのウマ
返す返すも馬主さん可哀想
手塩に掛けて育てたレジェンド名馬がなぁ…
567:名無しのウマ
零細故そこまで頭が回らんかったんやろな
568:名無しのウマ
大手もあの事件で警備態勢見直したらしいからなぁ
569:名無しのウマ
産駒しっかり活躍してるし、もっと種付けしてればなぁ
余りに早過ぎた
570:名無しのウマ
悲しい…
571:名無しのウマ
【速報】ブラックアイアン実装【ウマ娘化】
572:名無しのウマ
え
573:名無しのウマ
「」
574:名無しのウマ
("゚д゚)
575:名無しのウマ
ふぁーーーーwwww
576:名無しのウマ
ま さ か の
577:名無しのウマ
【速報その2】ディープインパクトの馬主さん、許可出す【ウマ娘化】
578:名無しのウマ
キタ――(゚∀゚)――!!
579:名無しのウマ
今度こそマジだよな!?そうだと言ってくれ!
580:名無しのウマ
今こそタマモ貯金を切り崩す時!
581:名無しのウマ
ちょっくらATMに行ってくる
582:名無しのウマ
無(理の無い)課金でな
583:名無しのウマ
今後の動きが楽しみ
584:名無しのウマ
さて、今から一体何人がディープ&アイアンを引けるのやら