徒然なる中・短編集(元おまけ集)その2   作:VISP

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リハビリがてらに短編投稿


呪術廻戦ss 私は虚ろな穴

 

 『君はまるで虚ろな穴の様だね。』

 

 以前、私を見てそう評した人がいた。

 黒髪の女性で、妊婦さんで、額に大きな縫い目のある特徴的な人だったからよく覚えている。

 そんな人に、当時の私は何て返したんだっけかな?

 

 『そこ、狭くないですか?』

 

 あぁ、そうだ。確かにそんな事を言った覚えがある。

 何故か大爆笑されて、それ以来顔を合わせたらよく話すようになったんだっけ。

 そんな彼女曰く、私達の世界には呪いがある、らしい。

 私はそれを見た事が無いから、その姿を知らない。

 しかし、あの縫い目の女性が言っていた事だから本当なのだろう。

 時折起きるおかしな事件とかは大抵呪いによって起こされるのだそうな。

 

 「でも、見えないんだし関係ないよね。」

 

 そう、私に呪いは見えない。

 何でも、私の術式?のせいらしい。

 よく分からないけど、呪いでは私に干渉できないらしい。

 ふつーに殴れば良くない?と私は聞いたけど、それも無理との事。

 よく分からない。

 よく分からないが、私は病気や寿命を除けば傷つく事なく生きていける事は確かだ。

 生まれてこの方怪我も無く、碌に病気にかかった記憶もない。

 私は今日も穏やかに生きて、当たり前の様に老いて死ぬのだろう。

 

 

 ……………

 

 

 

 要警戒対象に関する報告書まとめ    

                       執筆者:七海建人一級呪術師  

 

 

 対象名:■■■■

 

 

 1、現在までに判明している対象の術式「虚空」について

 

 五条悟特級術師の六眼による観測の結果、対象の術式が判明。

 対象は常時周囲に存在するあらゆる呪いをまるでブラックホールの様に吸引し、消失させている。

 吸収した呪力は自身のものとして運用可能であり、それによって術式を維持している模様。

 この結果、対象の周囲は呪いによる被害が発生せず、呪い=負の感情すら抱く事なく、穏やかで平和に生活する事が出来る。

 呪霊が接近した場合、存在するための呪力を保つ事が出来なくなり消滅するか、吸引されて消失する。

 呪力は元より呪詛師による物理攻撃も問題なく無効化している事から、吸収の対象は呪いに限定されない事も確認している。

 呪力による攻撃を届かせる場合、呪術師の体内の呪力には比較的干渉力が低い事から至近距離からの大出力呪力攻撃か、対象の術式の処理可能範囲を超える呪力を用いる必要があると推測される。

 

 2、術式「虚空」の短所について

 

 対象はその術式のせいか、呪いを目視する事が出来ない。

 弱い呪い(特級未満)は対象の視界に入る前に吸引・消失してしまう事から、対象は呪いを目視した事がない(本人からの聞き取りより)。

 過去に接触した呪詛師と思われる人物から、呪いの存在そのものは知っているが、実際に見た事は一度もないと証言している。

 

 3、対象の現在の状態

 

 一年前に大学を卒業し、地元仙台の飲食店にて働いていたが、店主が高齢で店仕舞いした所をスカウト。

 術式の関係で呪術関係への就職は難しかったものの、元高専呪術師の営む古物商にて呪物の無効化を目的として配置。

 現在に至るまで21点の呪物の無効化に成功している。

 

 4、対象の人格面

 

 その術式により今まで心身共に殆ど「傷ついた事がない」事からか、一見して極めて温厚な性格をしている。

 対人関係においても変わらず、名家関係者からの威圧にも終始穏やかに対応し続ける事が確認されている。

 しかし、その術式を突破して肉体或いは精神を傷付けられた場合、どの様な反応をするのかが一切不明であり、悪戯に刺激する事は厳に慎むべきであると判断する。

 

 5、総評

 

 処分・放置共に危険性が高いと予想されるため、現状維持が最も安全であると考えられる。

 暴走した場合の危険を考えると早急な処分が望ましいが、それが可能な特級術師が現在は五条悟特級術師一人である。

 そのため、実行の成否は五条氏一人に依存する形になり、五条氏の方針から実行される可能性は低いと考えられる。

 よって、今後も古物商担当の引退した呪術師及び補助監督を用いての経過観察を続行していく形になる。

 

 

 …………… 

 

 

 今日ものんびりとお店で働く。

 このお店は以前の仙台の牛タン専門店よりも忙しくなく、それでいて勤務時間も短いのにお給料が良い。

 ネットで調べた限りだけど大きな企業の初任給程度には良いし、残業代や特別手当なんかもあるのが素晴らしい。

 この特別手当なんだけど、古物の中には所謂「曰く付き」の品も多くて、私がその担当なんかをした時に出るもののようだ。

 …と言っても、私にはどれが曰く付きなのかよく分からないんだけどね。

 何か古そうで凄いけどヤバい品程度の感覚しかない。

 でも、店主さんとかはそれで充分だって言ってたから、特に気にしてない。

 困るのは店を利用する人の中にはスジモノっぽい人達もいて私に絡んでくる時もある事。

 そういう人達って色々独特なルールとか風習とかあるらしいし、舐められたらお終いな所もあるから私みたいな一般人相手でも偉そうにしなければならないみたい。

 まぁ、こっちは店員で向こうは客で、そーゆー人達に目を付けられるのも嫌だし、スマイルで接客する程度の給料は貰ってるから、余り気にしない事にしている。

 時々やって来るハーフの七海さんみたいにカッコいい人もいるけど、あの人は多分例外だからカウントせず。

 

 そんな訳で私の東京での生活は見事に平和に過ごせてる訳でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「すいませーん!高専から来た虎杖でーす!五条先生からのお使いで来ましたー!」

 

 そう、この少年がお店にやってくるまでは、本当に平和に過ごせていたのです。

 

 『…貴様、虚ろか。』

 

 正確には、その内側に巣食ってるモノと出会うまでは。

 

 

 

 

 




主人公はいわば突如地球上に発生した人型ブラックホールです。
人間ではなく、ブラックホールという天体が人型になった感じ。
普段は呪力だけですが、必要ならば物理も吸えます。
応用で人間大グランゾンな事もできます。
万が一暴走した場合の被害はお察しです。
ゴジョーせんせーすら「迂闊なお触り厳禁」と判断しました。
が、自分でなくても宿儺を殺せる可能性のあるほぼ唯一なので、この度接触させて反応伺いかーらーの修行コースです。
渋谷事変後は、店主さんや家族を人質に取られてからの宿儺の器抹殺任務強制スタートです。
一応従いますが、下手にキレさせると日本列島が事象の地平に消えます。
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