今更ですが、本作はフィクションです。
実在の国家や団体、個人等とは一切関係ありません。
あと、本作に出てくる魔物達は全て架空のものですが、大体子鬼殺しの世界線みたいな連中とお考えください。
その為、残酷描写やグロ表現があります。
苦手な方はご遠慮ください。
魔法少女になった当初、私には戦いの才能が殆どなかった。
魔物の群れを吹き飛ばす強力な攻撃魔法。
巨大な魔物を粉砕する身体能力強化魔法。
傷ついた人を癒す治癒魔法。
魔物の攻撃から人を守る防御魔法。
どれ一つとして使えなかった。
だから、私は私に出来る事を限界まで突き詰める事にした。
それが固有魔法【融合捕食】。
固有魔法は一部の魔法少女が使える「自分だけの魔法」だ。
強力なものからどう使うのか分からんものまで多種多様に入り乱れるそれは、ベテランが全然使えなかったり、新人が一日目で使えるようになるとか法則性も一切無く、研究者も頭を抱えている。
斯く言う私は典型的な後者であり、幸いにして私の固有魔法はとてもつもなく使えるものだった。
あらゆる生命体を“融合捕食”し、遺伝子形質を取り込んでその能力を獲得するという、とてもではないが人様にお見せできないどー考えても敵サイドの魔法だった。
この魔法のおかげで、私は様々な力を手に入れたけど、代わりに人として大事な物を失ってしまった気がした。
そんな私だけど、それでも少しずつ強くなって、沢山の人を救って……それでも未だに戦いは続いている。
もう異世界からの侵攻が始まって10年になる頃だった。
…………
異世界から侵攻してくると言う魔物。
分裂した他の「私」達からの調査結果から、異世界人と呼ぶには野蛮と言うか野性的な生活をしている事から彼らを人類とは認めない事がえらい人達の話し合いで決まったらしい。
まぁ確かに、知生体ならば略奪なんて事せずに独力で自分の生活を豊かにすべきで、態々異世界くんだりまで略奪しに来るなんて頭がおかしいとしか言えない。
見た目も緑の肌のゴブリンに豚の様なオーク、角の生えたオーガとか分かり易くモンスターなので違和感は無いけど。
一応、彼らの世界にも国があって、王や貴族がいるらしいんだけど、彼らは自分達こそが神に選ばれた存在だと本気で信じているらしく、何があっても絶対に諦めずに攻めてくるそうだ。
正直な話、侵略者の思考回路が全く理解できなかった。
だってそうでしょう? もしも私が彼らの立場なら、素直に農業生産や産業の効率化を図るもん。
ま、宗教や貴族主義なんて中世の価値観で動いてる連中の考えなんか理解できないけどさ。
ともあれ、私達は日々戦い続けている。
今日も市民の平和を守るため、私の収入のために戦うのだ!………………のだが。
あ~もう、今日は最悪……。
本当なら今頃、家でゆっくりしていたはずなのに……。
それもこれも全部あのクソ女が悪いんだ!!
お偉いさんの娘で新入りでも才能があるからって突出して包囲された挙句に捕まるとかアホか!
見た目も魔法少女ってお題目に騙されてるって丸わかりのフリフリドレスに可愛らしーステッキとか、狙ってくれと言ってるようなもんじゃん!
魔法少女ってのは普通の人よりも魔力があるから「母胎に最適」であり、優先的に捕獲対象にされてる。
手足捥がれても傷口塞いで薬で意識だけ奪って強い子供を産むための道具として死ぬまで扱われる。
死んだら?魔力豊富な素材として道具や武器、薬なんかに加工される。
魔法少女に捨てる所無しとはよく言ったもんだよ。……ふぅ、取り乱した。
とにかく、今は救出のためにスニーキングミッションの最中。
融合捕食で捕食したリスやネズミなんかを展開して周囲を探索しつつ、魔物側の拠点の位置、見張りや斥候の位置なんかを捕捉する。
幸いにも、連中には機械とかの近現代文明は無い。
ある事は知ってるけど利用するだけの文明レベルを持っていないと言うべきか。
ま、そりゃー中世の人達に携帯端末渡してもイミフだろうけどね。
で、捕捉した位置を携帯端末で味方に教える。
一応人工衛星からの画像や偵察用ドローンなんかもあるんだけど、幾らお偉いさんの娘だからってアホやった馬鹿を助けるためにそんな大仰な事はしてられない。
どんな場所でもコスト意識って大事だよね、特に命掛かってる場所なら。
…………
そして、何とか魔物の拠点に潜入成功。
見張り?斥候?皆私の一部であるリスやネズミの融合捕食で新しい「私」になったから静かなもんだよ。
ここから先は私の出番。
融合捕食で取り込んだ生物の中には擬態能力を持った奴もいる。
具体的にはカメレオン的な奴だ。
結構強かったので、あいつを見つけて捕食するのはそれなりに苦労した。
まぁ匂いや音までは消せなかったのが奴の敗因だったし、攻撃手段が舌による刺突や打撃だけだったのも悪かったが。
で、それ+骨格を消音機能があるネコ科獣人にして、匂いなんかも融合捕食の応用で消せるし、私は誰にも気付かれずに敵の本拠地へと侵入できる。
後は適当に騒ぎを起こして他の連中を引き付けている間に目標の確保をして離脱すればいい。
こういう時、魔法の才能が無い事が逆に功を奏すとは思わなかったよ。
私は同化しているネコ科の足で床に降り立つと、なるべく物音をたてないように気を付けながら、それでいて可能な限り急いで歩く。目指すは敵の大将の部屋……ではなく、一番生臭く五月蠅い場所。
即ちお楽しみ中であろう奴隷予定の捕虜や母胎を入れておくための牢屋だ。
……
目的の場所に辿り着くと、予想通りというか何と言うか……うん、まぁ想像通りの光景が広がっていた。
牢屋の格子越しに見えるのは裸の男女。
男と女で半々くらいだけど、全員顔を中心に殴られた痕があったり首輪と鎖で繋がれている。
そして一番奥=新人が入った牢屋には何人ものゴブリンやオークが酒や肉を食いながら一人の魔法少女へと群がり、性欲をぶつけて凌辱の限りを尽くしていた。
うーん、予想通りの胸糞かつテンプレな行動パターン。
見張りや斥候も全然真面目じゃなかったのも、こういう戦利品を味わう順番争いで負けたからだよね多分。
で。救出目標の精神状態は……あーあ、こりゃもうダメかな。
ゴブリンやオークって基本的に人間との性交は妊娠目的しかないからね。
それ以外だと繁殖のための苗床とか、魔力や生命力を奪うための供給源とか。
正に産むための機械。
ま、それでもお仕事だし救出だけはしてあげよう、メンタルケアは私の仕事じゃないしね。
融合捕食して中身「私」外見あの子にすればその限りじゃないけど、そんな事するつもりは無い。
やったとしても記憶操作して「私」じゃなく元のあの子のままにして能力貰うだけ。
で、そうこうしている内にどうやらお楽しみは終わったらしく、何人かは満足そうな顔をして去って行った。
残ってるのは……うん、やっぱりまだ元気みたいだね。
さて、そろそろ動くとしましょうかね。
手順は以下の通りになります。
1、満足して牢屋から離れていく魔物達相手に擬態で隠れたまま融合捕食。あいてはわたしになる
2、そうやって人手を増やしてからお楽しみ中の魔物達の所に行って皆融合捕食。あいてはわたしになる
3、救出対象の魔法少女だけ吐き出しておく。おまけで遺伝子だけしっかり貰っておく。
4、増やした人手と繰り出した小動物達をこの拠点中へと放つ。
5、暫くするとこの拠点全ての魔物達は「私」になる。
これにて救出対象+αの救出及び敵拠点の制圧に成功。ミッションコンプリート!
ま、作戦自体はいつも通りで単純明快。
先ずはさっきやった様に残った見張りや斥候をこっそり捕食。
次に、同化させた小動物達に融合捕食させて仲間を増やす。
後は魔物達がどんちゃん騒ぎしている隙に救出対象を確保、ついでに遺伝子を頂戴して敵を殲滅。
その後、魔物達は全員融合してストックしておけば場所にも言い訳にも困らない。
で、実際にやってみた所、なんと一時間としない内に全部終わってしまいました。
これにて一件落着!
…………
「辞令だ。」
「やです。」
先日の救出作戦、成功扱いで出世!……と言う名の左遷でした。
いや、最前線とかなら何度も行ってるから納得なんだけどさ、その左遷先はあんまりじゃん???
「私だって甚だ不本意だよ。」
「私だって仕事しただけですよ少佐。」
元自衛官である上司の魔法少女へとそう陳情するが……あ、こりゃ撤回とか折衷案とか出す気ねーわ。
「何度も言うが今は大佐だぞ。」
「初対面の時は少佐だったもんですからー。」
だって外見も声も○殻の少佐なんだし仕方ないじゃん。
この人の実際の役職は今は日本国防軍対異世界科師団長とか言うのがある。ちな階級は大佐。
異世界からの侵攻が始まって、自衛隊が国防軍へと変更された際に新設された新部署だ。
ちなみに防衛大臣直轄部隊なので、通常の部隊とは指揮系統が違ったりする。
ちな固有魔法は「読心」であり、十代から二十代の女性がなる魔法少女のメンタルケアなんかも仕事の内。
私の魔法の詳細を知ってる数少ない人だ。
他?この人が上に報告してない筈無いんで、何人いるかは知らん。
……大丈夫?その内過労死しない?十代の小娘にも分かる激務とかアカンと思うよ?
まぁそんな事は良いとして、問題は今回の辞令の内容だ。
要約すると以下の通り
・例の救出した魔法少女のメンタルケアのため、お前を彼女のサポート役として派遣する。
・期間は三年。
・その間の給料と手当は出るが、それ以外の給与は無い。(ただし追加手当とボーナスは別)
「必要ですかこれ?」
「先方からどうしても、だそうだ。」
「うへー。」
どう考えても厄ネタじゃん。
単にやらかした新入りのための処置で、この人はこんなに動かない。
良くも悪くもリアリストで大人なのだこの人は。
たかがメンタルケアのために使える手駒を手放す程大人しい性格はしていない。
となると、お偉いさんの内縁人事に託けたメンタルケアをカバーとした何かがあると言う事。
多分、精神面は勿論、肉体・生活面でのケアも含まれているだろう。
「これ、もしかしなくても通常任務含みます?」
「無論だ。アレの面倒を見ながら魔物狩りをするのが次のお前の任務だ。」
あの子がそういう事されそうになった時用のストッパー役もしくは盾って事ね。
ま、確かにこの人とあの子は相性も悪いしお偉いさんの娘、それも何か訳ありとなれば色々便利な私に押し付けられるか。
最悪でも異世界探索部隊送りになるよりはマシだけどさー……。
本体以外の「私」なら幾ら送り込んでも良いけどね。
あの頃は日本の衣食住レベルの高さを思い知ったわマジで。
あ、そう言えば一つ聞いておかないと駄目な事が有ったわ。
私は書類を机に置き、目の前の少佐殿へと向き直る。
そして、意識して意地の悪い笑みを浮かべてこう言った。
「私への報酬は期待してよろしいんですよね?少佐?」
「通常報酬以上が欲しいなら働け。」
ちゃんちゃん♪
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