徒然なる中・短編集(元おまけ集)その2   作:VISP

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オレが守らねばならぬと覚悟してる転生者その6

 side 桜塚 星史郎

 

 「くわぁ・・・。」

 

 ここ最近はとても平和だ。 

 先日のクロウカード解放直後の乱痴気騒ぎの夜を越えてから、外部からのオカルト犯罪者やら国の紐付きや傭兵、魑魅魍魎からの襲撃はめっきり減った。

 裏で起きた事とはいえ、世界規模の大事件となったあの夜に起きた事は実は簡単だったりする。

 

 1、クロウカード及び大結界の秘密を求めた米中露オカルト戦力による友枝町への大規模襲撃発生

 2、大結界突破のための攻撃を呪詛返しでカウンター&位置逆探&敵味方識別

 3、英霊「源為朝」憑依召喚からのカスタム済み宝具による大規模砲撃

 4、増援や反撃対策としてイヌガミ・ネコマタ達による警戒態勢継続

 5、米は24時間後、露は三日後、中は一ヶ月後に公安通じて詫びが来たので対価(金やオカルトアイテム等)貰って宝具解除

 

 大体こんな感じだった。

 カスタム済み宝具だが、発射した矢がちょっと違う。

 原作が純粋な超高精度・大威力の魔力砲撃に対し、源為朝を祀る各地の為朝神社由来のものへと変更されている。

 実は【源為朝】を祭神として祀る為朝神社は現在も一般人が立ち入れる範囲だけでも全国に7カ所あり、更にその伝承も各地で差異があったりしてバリエーションも豊富だ。

 源為朝はその優れた武勇と伊豆大島へと流罪となった経歴、極めて健康で病気一つした事が無かったため疱瘡絵の題材となった事から主に武勇や勝利、疫病退散に無病息災、航海の安全が御利益として信仰されている。

 他のマイナーな御利益として水難除け、鎮火、耳疾治癒がある。

 今回の矢はこれらの内、厄除けと無病息災をベースに改変している。

 厄除けも無病息災も要は「悪い物事が降り掛からない事」だ。

 

 ならば、心身から一切の悪いモノを除くものへと改変する事も容易だろう。

 

 「水清ければ魚棲まず」と言える程の過剰な浄化、それによる体内の老廃物や病巣、過剰な脂肪に悪玉菌等の一斉除去によるショック死。

 それこそがあの矢の本質だ。

 加えて、日本独特の穢れの概念=死・病気・出産・性交・女性・怪我・排泄の一切も祓われるため、それらの原因となる本能、つまり性欲や食欲、延いては生存のための闘争·防衛本能すら消失する。

 更に疱瘡という非常に感染力の高い感染症に対する御利益から、逆に「流行病を駆逐する程の広範囲かつ感染性の高さ」を抽出する事で戦略規模での効果範囲を実現している。

 なお、女性は【穢れ】判定を受けるため、感染した時点でほぼ問答無用で消失させられる可能性があったりする。

 また、これらを呪いと看做して呪詛返ししようにも「憑依した英霊【源為朝】が放った矢」であるため、その対象は【源為朝】へと向けられる事となる。

 つまり、極東のマイナー英霊かつ後天的とはいえ人類では基本的に太刀打ちできない知名度と信仰を持った歴とした神へと呪詛を向ける事になる。

 結果、何とか呪詛返しに成功した者達は更にカウンターとして本物の神による「祟り」を受ける事になるのだ。

 国外に通じる様な有名所ではないとは言え、武勇に優れたる血気盛んな武人であるからにはその報復は必然的に苛烈となる。

 アワレ、海外術者=サンは爆発四散!御達者デー!

  

 「後でちゃんと神社にお参りしないとなー。」

 

 こんな感じで現在はどの為朝神社に行くべきかなと今後の予定を立てつつ、拠点としている雑居ビルの屋上でペットの犬猫達とイヌガミ・ネコマタ達に囲まれながらのんびりとお昼寝中だ。

 無論、オレがいなくなったらまた湧いてくるだろうが、さくらちゃんがクロウカードの主となり、星のカードとクリアカード編まで比較的平和に暮らす事は出来るだろう。

 それ以降?流石にオレがカバーできる範囲を超えるから・・・仕方ない。

 

 幼年期の終わりという事で、このオカルト蔓延る世界の「大人」になってもらうしかない。

 

 その結果、彼女が何を選択するかは分からない。

 しかし、一ファンとして、一個人として成長した彼女がどんな選択をするのか興味は尽きない。

 もしかしたら、小狼と共に自分を討伐しようと挑んでくるかもしれない。

 

 「その時のためにも用意はしておくべきかな。」

 

 米中露の三国の他、未だに諸勢力はこの土地を、クロウカードを、延いては彼女を狙っている事だろう。

 それらへの対応のためにも戦力の増強は急務だろう。

 

 「幸い、もう材料は揃ってる。」

 

 英霊、否、殆ど神霊を身体に卸し、その権能を行使した経験。

 友枝町というこの世界でも最上位の霊地での生活。

 大結界及びクロウカードというこの世界で最上級のオカルト技術の集大成の観測。

 ここに自身の知識と技能も併せれば、とある解答を導き出せる。

 

 「作れるかもね、クラスカード。」

 

 とある魔術師の一族が開発した、超級の魔術礼装。

 カードを介して英霊の座へとアクセスし、クラスに応じた英霊の力の一端を引き出す神秘の一品。

 (愉快型)魔術礼装にカードを読み取らせて宝具を顕現させる限定展開(インクルード)と自身の身体を媒介に疑似召喚することで自身を英霊化し、その能力を英霊の記憶の残滓ごと自身の身体に纏わせる夢幻召喚(インストール)を使い分ける事を可能としている。

 これをクロウカードを元に開発し、あらゆる状況へと対応できるだけの引き出しを作る。

 

 「それに、そろそろ貯まるかなぁ。」

 

 優れた術者や異能者の肉体はそれだけで優れたオカルト素材となる。

 髪の毛や血液を使う術やおまじないは枚挙に暇がない程で、皮膚や肉、骨に眼球に手足を用いた儀式は古代から無数に存在する。

 自分もまた少しずつ髪の毛や血液、皮膚や骨に肉を傷を癒やしながら採取し、保存してきた。

 それらの量がもうそろそろ予定量に達する見込みだった。

 

 「オレの身体の素材を溶かした鉄で作った鎧・・・式神という人工知能を搭載した劔冑の作成。」

 

 随分多くの図面と敵対した術者や異能者の死体を用いた試作品を積み重ねて、漸く納得のいく技術水準になろうとしていた。

 特に鍛冶師としては殆ど門外漢だったので一から学ぶ必要があり、古くからの手法を知る腕利きの鍛冶師を見つけて師匠にするまでが大変だった。

 幸いにも偶々助けた人間の伝手で師匠となる鍛冶師を見つけ、暫くの間師事する事も出来た。

 最終的に一年ほど師事した後に忌々しい声と顔で免許皆伝を言い渡されたが・・・あのご老人は今どうしているだろうか?

 本当ならばサーヴァントを召喚できれば良いのだが、アレは術式が大聖杯無しでは複雑過ぎ&必要魔力が多過ぎてとてもではないが人の身では出来ない。

 その辺をクリアしても召喚されたサーヴァントとの相性の問題もあり、最悪は殺し合いに発展する。

 苦労して呼び出した結果がそれではリスクばかりが大きすぎる。

 そしてオレに主人公属性は無いので、挑戦する訳もない。

 だからこそ、最低限の人工知能と金属製の躯体を持つ劔冑は比較的弱い純粋フィジカル面の底上げをする意味でも大きい。

 呪骸とかもあるが、呪力という人の負の感情に起因する力を原動力にしている関係上、悪堕ちの可能性が否めないので却下だ。

 キョンシー等は手法が古いために対策が多く、更に昼間は動けないと来た。

 であれば、量産型の数打ちならば乗り物として何処にでもある劔冑は割と合理的だ。

 肝心要の金神の加護のある水(正確には金神片の浸かった水脈の水。これと作成者の心身を捧げる儀式をしないと劔冑はできない)に関しては、鍛冶系統の神霊や英霊を卸す事で代用にする予定だ。

 まぁ劔冑とは言ってるが、要はパワードスーツへの変形機能を盛り込んだ機械製の自律型式神と言って良い。

 もっと効率良い奴あるだろ?10割趣味だから良いのだ!

 

 「んーいよいよ専用機の作成となると否応にもテンションgぶば!?」

 

 今までの試作品ではなく、遂に目標としていた専用機の開発に心躍る。

 一仕事終えて快晴だからと調子こいて屋上にパラソルとビーチチェアを用意して寛いでいたら、保護した犬猫sの一部があそぼ♪あそぼ♪あそべェッ!とばかりに突撃し、オレの上に乗ってきた。

 当然ながら突然の事にバランスを崩してビーチチェアは倒れ、オレは屋上の床へと落ちる。

 

 「ちょ、ま、待って待って、待てってば!こらー!!」

 

 圧倒的もふもふ達による質量と手数の暴力!

 全身をべろんべろんと舐められつつほぼタックル同然のかまって攻撃!

 乱暴にする訳にもいかないので、オレは暫く為すがままになるのだった。

 その後滅茶苦茶遊び呆けたのは言うまでも無い。

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 「で、今回の被害はどの程度になりそうですか?」

 

 ぽそぽそと、表向き一般企業の持ち物件になっているとあるビルの一室にて

 没個性でありながら、見る者が見れば即座にそちら側の住人である事が分かりそうな者達が話し合っていた。

 

 「測定不能です。霊的は勿論、経済的にもです。」

 

 彼らはこの日本の公安警察の者達だった。

 より正確に言えば、その中でも表に出される事のないオカルト部門の者達だった。

 嘗て派手に叩き潰されて消滅した警視庁公安部に設置されていたオカルト部署では勿論ない。

 各都道府県警察に設置されている警備部の公安課・外事課であり、主に名家出身だが特に霊能等に秀でる事もなく、隠蔽等の情報工作を担当している。

 実際のオカルト事件解決において各都道府県の霊能名家やフリーの人材に依頼を斡旋する部署でもある。

 勿論この業界らしく年中人手が足りないので、何時でも新入り歓迎なのだが、本当の意味での霊的戦力が加入してくれる事は極めて稀だったりする。

 だって公務員だとやりたくもない仕事から逃げる事も出来ないし、稼ぎも安定してるが売り手市場のオカルト業界ではフリーより低いからだ。

 この辺は大体GS美神のオカルトGメンとフリーのGSみたいなものだ。

 

 「人的被害だけでも中国だけで既に一万を超えています。ロシアとアメリカはそこまでではないですが、それでも四桁にはなってます。」

 「霊的被害に関しては・・・もう聞くまでもないか。」

 

 今回、彼らは後手に回ってばかりだった。

 それでも彼らは仕事から逃げる事はなく、少ない伝手を辿って国外の情報収集及び国内の工作員の特定と排除、何よりも一般人に公になる事でオカルト案件が激増する事態を防ぐための隠蔽工作に忙殺された。

 

 「結界に守られていた霊地にアイテム。契約していた霊的存在や信仰する対象からの加護。一族や団体が紡いできた信仰による強化。何よりも貴重なオカルト案件に対応出来る人員が一夜にして失われたのですから被害額を算出する事すら難しいでしょう。」

 

 はっきり言うと、国が傾くレベルの大被害である。

 表の三大国家だからこそ屋台骨が多少傾く程度で済んでいるが、衰退中の欧州が同様の被害を受けた場合はマジで霊的に亡国になりかねない程の被害だったりする。

 

 

 「で、連中は何と?」

 「中国はアレを排除しろの一点張りですよ。余程恐ろしかったと見えます。」

 「米露はまぁ予想通りというか・・・謝罪と賠償のための人員を直接送りたいと言ってます。」

 「死人が増えるだけだから止めさせろ。ったく、自分達で仕掛けておいていざ大負けするとこれか。」

 「強かですよねぇ。」

 

 国際社会において、特に表に出ない領域では正邪は重要ではない。

 如何にして国益に繋げるか、その一点のみが重要だった。

 とは言え、流石に表に出せない所で大負けも負けたと判じた瞬間に損切りに走るのは流石と言えた。

 

 「まぁ中国は裏側と言えど揉めたみたいですけどね。」

 「流石に党主席の側近にまで被害が及べば正気に戻るか。」

 

 一ヶ月間誰がどのように日本の小鬼に頭を下げるかで揉めた挙げ句、被害が拡大しまくって党の幹部にまで被害が及んだ時、その後がどうあれ党内部で粛正が始まる事が決まってしまった。

 大革命、もとい大粛正によるオカルト戦力の激減に端を発するこの事態により、あの国の霊的防衛力の充実はまた遠くなる事だろう。

 これで少なくとも数年は対外行動は控えてくれるだろうとも期待できるが・・・逆に表側で弱みを見せないように散々挑発行動をしてきそうとも思える。

 

 「で、対象は大人しいまま?」

 「全ての謝罪と賠償を受け入れた後『次はとことんやるからな』と言ってましたよ。」

 「あー・・・嫌な言葉聞いちゃったな・・・。」

 

 この場合のとことんとは作戦を実行した実働戦力のみならず、それを指示した指揮官に許可を出した偉い人とその更に上司も含めた「国家規模の報復行動」を意味している。

 具体的には今回行われた国家規模のカウンター単品ではなく、その後の強襲や制圧も含めた殲滅戦が行われるという事である。

 一個人が、表の三大国家を相手にして、である。

 それが成立してしまうのが桜塚星史郎という、現代に生まれた神話の住民の持つ力だった。

 

 「では後はいつも通り頼んだぞ。」

 「なるべく刺激しないで御用聞きに徹する、ですね。」

 

 現代版ヘラクレスと事を構えるなぞ下の下。

 彼らは公務員。国家に、市民に奉仕するお役人。

 必要とあらば幾らでも強者に媚び諂い、おべっかを使うのは現代人としての必須スキルは勿論ながら極めて高レベルに習得していた。

 その対象がギリ十代前半の少年であろうとも、彼らのスキルが鈍る事は無いのであった。

 

 「彼が好きそうなお土産を忘れるなよ。今週の模型やゲーム雑誌はマストだ。」

 「先週彼が追ってるゲームの新作が発売されてましたから、そっちもやり込んでます。」

 「それだとパンチが低いな。新作のプラモも幾つか持っていこう。」

 

 一見するとオタリーマンの集いだが、彼らは公安という警察組織の中でもエリート中のエリートだった。

 やってる事が十代前半の少年のご機嫌伺いだろうが、彼らはエリートなのだ。

 

 

 




なんかちょっとやっつけになった感

次回は久々に原作キャラを描写予定
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