徒然なる中・短編集(元おまけ集)その2   作:VISP

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んー何か消化不良。


TWLで白竜シースに転生その2

 戦乱の時代の終わり、その引き金は間違いなく白竜シースが引いた事は間違いない。

 

 彼は無辜の民を助けるため、多くの知識と技術を世界に広めたが、しかし人類はそれを戦争のために使用してしまった。

 これは大きな過ちであり、今現在においても理由はあれども利用を決断した軍部や政治家は非難の対象となっている。

 戦乱の時代末期においては彼らは処刑や軍事法廷の対象となったり、酷い場合には革命や亡国の原因にすらなった。

 血縁者や関係者等も罪は無くとも差別や迫害の対象となった事例も多数確認されており、彼らが如何に民衆から忌み嫌われたかが分かる。

 しかし、それは同時にそんな指導者や軍部に従って動いていた国民にもまた罪がある事を意味していた。

 如何に原因となった者達を裁こうとも、一度犯した罪は決して消えない。

 その事実から目を反らすように、指導者や軍部は苛烈なまでに責められた。

 そんな悲劇の引き金を引いた者でありながら、誰も白竜シースを咎める者はいない。

 何せ、シースにその決断をさせたのは、人類の愚行によるものだからだ。

 

 あの戦乱の時代、シースの持つ知識を独占しようと、彼と彼の保護した子供達の屋敷を襲う者達が現れたのだ。

 

 無論、それを行った者達は妖精王の怒りに触れ、消し炭になった。

 それとほぼ同時期、他国で妖精とその関係者を保護していた次期妖精王たる兄王子が襲撃された。

 兄王子は果敢に戦うも、多勢に無勢の上で多数の敵兵によるオーバーブロットを用いた自爆戦法により殺害されてしまった。

 更にこの訃報を受け、息子を出産した直後で生死の境を彷徨っていた兄王子の妃も死亡すると言う最悪の事態となってしまった。

 この報告を受けて卒倒した女王を医者に届けたシースは覚悟を決め、彼が今まで出版してきた各作品に刻まれていた魔法を発動させた。

 

 シースの各作品には前書きとして、例外なくシースをデフォルメした紋章と以下の文章が記されている。

 

 「これは愛である。

  これは知識である。

  これは慈悲である。

  手放したくば、悪用せよ。」

 

 後に起こった出来事から、この文章は白竜シースからの警告に他ならなかった。

 しかしこの警告を受けながら、人類はシースから授けられた多くの知識を悪用した。

 故にシースはこの文章の通り、人々から自らがタダ同然で与えていた無尽蔵の知識を文字通り取り上げた(・・・・・)

 この紋章と文章には極めて巧妙に、限定的な条件かつ特定の内容で発動する忘却魔法が仕込まれていたのだ。

 この忘却魔法の解析は現在も各国で進められているが、独特の妖精言語と正体不明の幾つかの言語から成立している事以外は未だに不明であると言う。

 そして条件を満たしてしまった事(悪用・シースの許可の二つと言われている)で忘却魔法が起動した結果、世界中で多大な混乱が巻き起こった。

 何せ昨日まであった知識が思い出せず、昨日まで出来た事が出来なくなるのだ。

 思い出そうとして説明書きや書籍を読もうにも、何故か理解できていた内容が分からなくなっている。

 便利な道具も、薬品も、乗り物も使い方が分からなくなってしまって、それに頼り切りだった者達は途方に暮れた。

 戦争には関係ない筈の子供達ですら、お気に入りの絵本や小説を読む事が出来なくなっていた。

 問題なく魔法が使えた事だけは不幸中の幸いだったが魔法士、それも優秀な者は需要に対して数が余りにも少ない。

 魔法を持たない人々は何とか道具無しの昔通りの方法で働くが…一度楽を覚えれば、人間はそれ以前に戻れない。

 元々戦争は直接的な利益にならず、民間人の多くは苦しい生活を余儀なくされていた。

 なのに家族や友人知人が次々死んでいく戦争とそれを命じる権力者や軍備に対して積み重なっていた不満が、この事態を受けて爆発した。

 それから起こった出来事は前述した通りである。

 反戦運動の拡大に革命の勃発が世界中で続き、各国が戦争継続所ではなくなった。

 幾つかの国が滅びた後、遂には国際条約で加盟国間での戦争の永続的停止が決定された。

 これによって漸く、シースは人々に嘗て取り上げた知識を再び与えた。

 知識が戻り、多くの国々が戦後復興で沸き立つ中、各国が二度とこの様な事態を招かない様に改めて平和協定を結び、同時に自国での技術開発・教育を推進する事となった。

 

 この様な経緯から、白竜シースは戦乱の時代を終わらせたと言われている。

 自らの持つ知識の危険性を熟知していたシースによる安全機構がこれ以上なく上手く作動した結果だ。

 この功績を以って高齢かつ兄王子と妃の死で憔悴した女王から跡継ぎに指名されたものの、シースは「不具の自分では臣下から反対されるだろうし、既に長子たるマレウスが誕生しているのでそちらが継ぐべきだろう」と言って辞退している。

 幼少時、彼がその不具から臣下の妖精達から倦厭されていた事は事実であるが、この言葉により女王の反対派への粛清は更に苛烈なものになったと言われている。

 

 こうしてツイステットワンダーランドには200年以上に渡り、今日まで平和な時代が続いている。

 だがしかし、次に戦争が始まった場合、最早シースも止められないだろうとの研究結果も出ている。

 当時から安全機構たる忘却魔法は魔力抵抗の低い非魔法士向けのものであり、魔力抵抗の高い優秀な魔法士には殆ど意味の無いものだからだ。

 当時の軍の主力は武装した非魔法士であり、魔法士の軍人はその希少性故に少数だったため、より忘却魔法の効果範囲や確実性を高めるために敢えて対象から外れていたそうだ。

 更に研究の進んだ近年ではそもそも忘却魔法の無効化やシースに依らない新しい知識や技術の蓄積が行われている事から、シースの世界規模の忘却魔法と言えども効果は限定的になると言われているからだ。

 

 以上が白竜シースと戦争終結までの経緯だ。

 既に学習済みの者もいるだろうが、今月末までにレポート課題を提出するように。

 本日の授業は以上だが……シースの作品だからと娯楽小説等の感想文にした場合、容赦なく補習にするから注意するように。

 

 

  NRC教諭モーゼス・トレイン 魔法史学の授業の一幕にて

 

 

 ……………

 

 

 シースにとって、戦乱の時代を終わらせたのはあくまで本来の目的、即ち趣味である作品の布教・創作・二次創作やその感想・考察等の邪魔だと判断したからに過ぎない。

 加えて、ついつい見捨てられずに保護した孤児達(一部赤子の親等)が沢山暮らす自身の屋敷にまでトチ狂って襲撃された事も理由の一つだ。

 更に、あれだけ跡継ぎとして期待されていた兄王子とその妻の死亡によって、中継ぎとは言えうっかり自分が王位に就かないようにするためでもあった。

 シースが行った自身の広めた知識の忘却で最も被害を受けるのは戦争指導者層ではなく、その下にいる国民達だ。

 蓄えがあり、金で人を雇える富裕層なら直ぐに暮らしに困る事はない。

 だが、碌に働けなくなった国民達は直ぐにその日暮らしていく事にすら困窮する。

 シースはそうした無差別な忘却テロとも言える自身の行為を逆手に取り、王位に就くよう告げる女王に対して反論した。

 

 「他国民とは言え戦わぬ市民にまで無差別に自分は被害を出しました。その様な者が、しかも不具が王位に就く事は誰も望んではおりません。」

 「…分かりました。貴方がそこまで言うのなら、今は納得しましょう。」

 

 その後、兄王子とその妻の葬式を合同で上げたが、シースは参加しなかった。

 兄王子とその妻の顔をシースは興味無いとうろ覚えだったし、既に谷の外に暮らす自分には関係ない事と参加要請を無視していたのだ。

 

 「シース、暫く貴方にはリリアと共にマレウスの世話係を命じます。」

 「えぇ…。」

 「や り な さ い。」

 「ウッス。」

 

 が、流石にそれは許されなかったのか、代わりに次代の王となる予定のマレウスの世話を押し付けられてしまった。

 軍人のリリアは戦争中に大活躍したと聞いているが、子育てに関しては未知数だった。

 リリアとマレウス双方と直接的な面識は全く無いのに、他の種族の子供達が沢山いる自分の屋敷で子育てをせよと言うのは聊か以上に無謀ではないだろうか?

 

 「マレウス、頼むから静かにしてくれ…。」

 

 嫌な予感は当たった。

 自分が拾った子供達は既に屋敷の隣に立てた孤児院で立派に生活しており、既に仕事家事育児が完全に分担されている。

 拾われたばかりの子供達は先ず心身の治療、次に学習を優先し、育児担当の者達から教育を受けている。

 家事担当は広い孤児院とシースの屋敷の清掃に消耗品の補充や食事の準備等々、やるべき事は多々ある。

 仕事担当は茨の谷や近隣に人里に出稼ぎ、或いは森に入って狩人、一部が研究や創作活動を行っている。

 高齢で身体が余り動かない者は簡単な内職や他の者の手伝い、相談等を引き受けている。

 それなりに長い間(妖精基準)この孤児院は運営されているので、現在は全員合わせれば軽く千人を超えている。

 なので、屋敷に隣接する建物は孤児院ばかりではなく、大人になった者達のための宿舎、更に別に既婚者向けの住居、高齢者向けのバリアフリー介護施設すら存在し、それらは外界からの守りのための広大な城壁に囲まれている。

 規模は小さいながらも既に城塞都市と言って過言ではなかった。

 でも、シースにとっては自分の創作活動のための助手とか手伝い育成の結果なので、周辺地域の人々から「シースの城塞」と言われてても特に気にしなかった。

 そんな所にとびっきりの魔力持ちのマレウス(あかごのすがた)が入れられた。

 はっきり言って、被害が怖くて普通の孤児達と同様の扱いは絶対に出来ない。

 うっかりくしゃみで屋敷が吹き飛ぶかもしれないからだ。

 無論、一緒にいるリリアが余程の事が無い限りは防ぐが、事故発生の可能性がそれなりに高いのに一緒にする訳にはいかない。

 何れは集団行動・生活の経験も必要だろうが、それは別に今でなくても良い。

 先ずは心身ともに健やかに育つ事、それが第一だと女王・シース・リリアの見解は一致していた。

 

 「だからってこれはない。」

 「ゔーゔぅー!」

 「かはは、似合っておるぞシース!」

 

 シースは屋敷内でゆっくりする時、人の姿を取っている。

 肌も髪も角も白く、その纏う衣服すら白い彼はアンティーク調の車いすを使用して生活している。

 年齢に比して幼い容貌は何処か何処となく女王の面影を感じさせる。

 その両目は閉ざされているが、しかしそのユニーク魔法によって凡百の魔眼等及びも付かない視界を持つ盲目万智の竜。

 

 その膝には首も座って動きたがりでやんちゃ盛りのマレウスが座り、シースの絹糸の如き白く艶やかな髪を握り締めていた。

 

 「リリア、笑ってないで止めてくれ…。」

 「い、いや、今ここで無理に離したらそれこそハゲに…っ!」

 「頼むマレウス、離してくれ。禿げてしまう…。」

 「んはははははははwwww」

 

 様々な逸話を持つ白竜シースが生まれたばかりの赤子に良いようにされる様を見て、リリアはただ只管に爆笑するのだった。

 

 (この様子ならシースが玉座を盗るためにマレウスを害する事は有り得んじゃろうな。)

 

 内心に抱えた疑念を微塵も見せず、リリアはシースで遊ぶマレウスを見てニヤニヤと笑うのだった。

 

 

 

 

 

 

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