ダークエルフ押しかけ妻JKは、惚気るのを我慢できない   作:和鳳ハジメ

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自分に嘘はつけなかったよ……(サブタイをばっさり消しながら/実は普通の長さが好きなヤツ)


第5話 玉手箱

 

 

「うーし、ホームルーム始めっぞーー。席つけー」

 

「アサセン来――ん?」「んじゃあ戻ろ――?」「え?」「あれっ?」「だ、誰?」

 

(そんなに変か? やっぱイメチェン失敗してんじゃねぇのか?)

 

 生徒達の反応に不安を覚えながら、省吾は全員が着席するのを待った。

 そしてクラス委員であるメリッサが、おずおずと挙手し。

 

「す、すいません……浅野先生ですか?」

 

「他の誰に見える? まぁ、ちょっとばかしイメチェンしてみたんだが……やっぱ変か? 忌憚ない意見を言ってくれ覚悟は出来てる。職員室でも変な空気だったんだよな……」

 

「ちがっ、違います先生!! 余りにも印象が百八十度違うと言いますか……、でも安心してください前より凄く良くなりました! 具体的には冴えない窓際教師から、将来有望な新進気鋭の大学助教授って感じで!! 凄いです!!」

 

「え、マジ? マジなの? お前らもそう思った?」

 

 半信半疑の省吾に、彼らは口々に誉める。

 

「良いじゃんセンセ!!」「そうだぜバッチリ決まってる!」「顔が怖いんだから、前からそうしてくれたら狙ったのになぁ……」「あ、分かる。磨けばイケそうみたいな?」「でもその磨く難易度がどちゃくそ高いみないな?」

 

「ふふーーんっ!! もっと! もっと誉めてくださいみんなっ!! どうです浅野センセは素晴らしいでしょう!! この私がっ!! 浅野センセの愛する妻! 妻であるこの私がイメチェンさせたのです!!」

 

「ぐぬっ、大声を出すなぐらいにしか注意する所が無いッ!!」

 

 ちょっと悔しげな省吾を置いて、シオンの発言にクラスはどよめいた。

 何せ、文字通り万年処女も確実視されていた喪女。

 六大英雄の一人、シオンの本気が見えたからだ。

 

「なぁ、そっちにはショタコンの概念は無いのか? シオンさんとセンセって犯罪じゃないのか?」「え、エルフには希に良くある事だから(震え声のハイエルフ)」「やっぱ明日は雪……いや昼からか?」「邪神の復活かもしれんぞ」「ひぇええ、シオン様がっ、あのシオン様が本気ですっ! これは我らドワーフ族長にも連絡しておかないと――――」

 

「ちょっとみなさんっ!? その反応はおかしくありませんっ!? 私の愛情深さに砂糖を吐くとか、怖面のセンセを見事にイメチェンさせた腕を誉める所じゃないですかっ!?」

 

 人間も多種族も一致団結して戦慄する姿に、省吾としては苦笑しかない。

 生徒達がこうなら、きっと職員室でも変わりすぎて戸惑った反応。

 或いは、誰がイメチェンさせたかを察し驚いていたに違いない。

 

「はいはい注目ッ! 気持ちは分かるが落ち着け。まだ朝の挨拶すら終わって――――ッ!? そ、そうかッ!?」

 

 瞬間、省吾は閃いた。

 なんというアイディア、自分が恐ろしい。

 これならば、あらゆる意味でイケる筈だ。

 

(これは好機だ、今この瞬間こそが好機!! ウケケケケ、過去だって何だって使って目標を達成してやるぜッ!!)

 

 お前本当に前世は勇者なのか、そんな怪しげな笑みを心の中で浮かべながら省吾は笑いかける。

 

「――――聞いてほしい皆、どうか俺に力を貸してくれないだろうか?」

 

「はうっ!? 省吾さんその笑顔はっ!?」

 

 顔を赤くして驚くシオン、そう省吾はアルカイックスマイルを使ったのだ。

 不安に満ちた人々を安心させ、時には優しく導いてきた笑顔。

 

(嗚呼、清潔感に溢れたイメチェンをしていて良かった……、これが前のままだとシオンにしか通用しなかったからな)

 

 前世とは流石に格が落ちるが、教師として生徒達を導く立場ならば。

 シオンと結婚し、不本意ではあるがある種の勇者として認識されている今ならば。

 だからこそこのクラスの生徒ならば、その心を掴むのに十二分である。

 

「皆も思った通り、俺は変わった。シオンの愛情によって教師に相応しい姿に生まれ変わった……」

 

「いやんいやーん、もっと誉めてくださいセンセっ」

 

「誓おう……これからは、姿に相応しい教師である事をッ!! その為の第一歩としてシオンに恩返しがしたい、そこでッ!! 君たちに力を借りたいんだ!!」

 

「ううっ、そんなセンセ……。惚れ直しちゃいますよぉ」

 

 くねくねテレテレするシオンを見ないフリをして、生徒達はお互いの顔を確認する。

 確かに彼の言ったとおり、前とは違う雰囲気だ。

 服装の効果以上に、聖職者の様な清らかな雰囲気さえ出ている。

 そして何より。

 

「面白そうじゃん、俺は乗った!」「俺も俺も!」「相手がシオン様、いえシオンさんなのが気がかりですが僕も」「わたしも!」「青春ぽい! オッケーだよ先生!」

 

「そうか……皆、協力してくれるかッ!! 先生は嬉しいぞ!!」

 

 ならば、このまま突っ走るのみ。

 省吾は生徒全員の顔を確認し、最後に大きく頷く。

 

「先ずは最初に恥ずかしい事を言わせて貰う、だが勘違いしないでほしい。これはとても大切な事なんだ。…………俺の好みは『薄幸巨乳人妻』風の美人だ、それ以外では勃起しないと言って良い」

 

「…………――――ちょっと? ねぇちょっと省吾さん?」

 

「黙らっしゃい、そして学校では浅野先生と呼べ」

 

「浅野センセっ!? いきなり何を言ってるのっ!?」

 

 目を丸くして叫ぶシオンに、生徒達も同意の面持ち。

 だがそれは、省吾の想定内だ。

 

「シオンは俺を愛してくれている……だが考えてみてくれ、俺はその愛に返す事は出来ないのだッ!! 好みじゃなくて俺はコイツを愛せないのだッ!! シオンに報いる為に、そんな事が許されると思うのだろうか!! 否ッ!! 答えは否だッ!! そこでそれを克服しようと思うッ!!」

 

「お、おお?」「そうだな?」「そうかも?」「うーん?」「なるほど?」「つまり?」

 

「戸惑う気持ちは分かる、だがこれは君たちにも利益のある事柄だ。――――聞いたことがあるだろう、浦島太郎の『玉手箱』の事を」

 

 唐突に出てきた日本のおとぎ話に、生徒達は首を傾げた。

 いったい、何を言い出すのか。

 呆れより興味が上回り、そのまま話を聞く姿勢を続行する。

 

「詳しい者は、浦島太郎のルーツが日本神話にあり二つの部族の争いの話が原型になっていると言う者もいるだろう。…………だが真実は違う、あえて言おう――――浦島太郎は本当にあった話だ」

 

「え、センセ? どういう事っ!? 浦島太郎ってこっちのおとぎ話でしょ? 魔法も何も無いコッチの世界で……実話?」

 

「良い質問だシオン、これは大学時代の個人的な研究でな。まぁ証拠があと一歩集まらずに没にした研究なんだが、ともかく俺には確固たる自信がある。浦島太郎の『玉手箱』が実在した事を!!」

 

 余りにも確信した勢いに、シオンすらヨタ話だと笑い飛ばせなくなって。

 それを察した省吾は、ニヤリと笑って続けた。

 

「いいか、この世界と異世界セレンディアは高尾山によって地続きになった。――――つまりはそれと同じだ!! 浦島太郎が亀によって連れられて行ったのは竜宮城ではないッ!! 異世界セレンディアのマーメイド族の城だ!! マーメイド族に詳しい者が居るなら思い出せッ!! 彼らの宝の一つ、時の秘薬の事をッ!! そして高尾山のゲートの調査結果も思い出せッ!! あっただろう、不安定な状態では時間軸が歪んでしまうとッ!!」

 

「はうあっ!? 繋がったっ!? 浦島太郎がアッチの世界と繋がったっ!?」

 

「そうだシオン!! 世界各国の神話やおとぎ話! それは突発的に出現した不安定なゲートに関わる話が混じっている!! そして――――この俺は、マーメイド族の時の秘薬のレシピを知っているッ!!」

 

 どよめく生徒達、もしやこれは凄い事なのでは。

 もしかすると、もしかするのでは、そんな期待を省吾に投げかける。

 

「そうだッ!! 君たちの想う通りだ!! 『時の秘薬』を『玉手箱』を作り上げれば歴史的大発見だ!! 確固たる証拠にはならないが、業界どころか世界を揺るがす歴史の手がかりになるのだッ!! ――――その一歩を踏みだそうではないか!!」

 

「凄い!! 凄いですセンセ!!」

 

「そしてだッ!! 時の秘薬の完全版は、玉手箱の様に老化させるだけじゃない!! 誰かを若返りさせる事も可能!! これがどういう事が理解できるか? ――――…………そうだ、シオンを俺好みの美女に変かさせる事が出来るッ!! 出来るのだ!!」

 

「…………は? はぁ? ……ええ? は? は? は?」

 

「聞け俺の生徒達よ!! 想像してくれ、君たちの愛する者を好みの年齢に変えられる事を!! ショタもロリもロマンスグレーもお婆ちゃんも思いのままだ!!」

 

「こんな戯言に乗らないでくださいっ! 乗りませんよねみんなっ、こんな怪しい話っ!!」

 

 慌てて制止するシオンだったが、時は既に遅し。

 クラスメイト達は、決意と欲望に満ちた顔をして。

 

「――――クラス委員長として、メリッサ・板垣が代表して問います。先生、何が必要ですか?」

 

「良く言った板垣ッ!! 先ずは理科室を押さえろ! 一時限目はどのクラスも使っていないから大丈夫な筈だ、それからマーメイド族はすまないが涙を流してくれ、数滴で良い材料になる! それからエルフは樫の木の若葉を魔法を使ってでも、ドワーフ族は調合を、サキュバスやヴァルキリーの様に飛べる者は――――」

 

「ええっ!? ちょっとセンセっ!? みんなっ!? ダメですって! ねぇそんな軽々しく――もうっ、聞いてくださいってばぁ!!」

 

 戦場を支配する有能な指揮官の様に、的確な指示を出す省吾に。

 生徒達は、猛然と行動を開始する。

 シオンの制止の声も虚しく、ちゃくちゃくと薬は作られた。

 

(ふふっ、あはははははっ、やってくれましたねセンセェ!! そんなに私の体に不満ですか? 不満なんですね? ええ、こうなったら私にも考えがありますよ!!)

 

 座った目で省吾達を見るシオンに、誰も気づかず一時間後。

 理科室の外には、興味本位で集まった生徒達。

 調合をしているドワーフ族の生徒は、いつの間にか物理教師にとって代わり。

 おまけに校長以下、数々の教師が見守って。

 

「――――出来ました、これがマーメイド族の宝の一つ『時の秘薬』です!!」

 

「やったぜッ!! じゃあ後はこれをシオンに飲ませれば――――」

 

「出来ました? じゃあちょっと拝借&そぉいっ!!」

 

「――ッ!? がはッ!? テメェ何すんだ、何で俺に飲ませたッ!!」

 

「は? 省吾さん? 今の私を否定して勝手に年を取らせようとした貴男がそれを言っちゃいます?」

 

「ぐぐぐッ、そ、それは――――…………ッ!?」

 

 言い返そうとした省吾だが、途端に体から煙があがって。

 あっという間に、彼の体を覆い隠す。

 その光景に誰もが吃驚し、シオンは高笑い。

 

「ふふふ、あははははっ、どうやら気づかなかった様ですねっ!! この薬はこっそり若返る様に私が調整しておきましたっ!!」

 

「シオンッ!? テメェ何を考えてんだッ!? ああっ、なんか声がガキみたいに若くなってんぞおおおおおおおおおおおおおおおおっ!?」

 

 煙が晴れるとそこには、幼稚園児ほどに幼くなった省吾の姿が。

 そう、秘薬は正常に機能した。

 機能はしたのだが――――。

 

「はいはーいっ!! これで効果は実証されましたね? じゃあ校長、後はお任せします。ふふふっ、これは罰でちゅよ省吾ちゃ~~ん、効果が切れる夜まで私が思う存分お世話して可愛がってあげますからねぇ…………じゅるりっ!!」

 

「ぬおおおおおおおおおおおおッ、誰かッ、誰か助けてくれれえええええええええッ、ショタコンダークエルフに襲われるううううううううッ!?」

 

「あー、強く生きてね浅野先生。後の事はコッチでやっておくから。はー忙しい忙しい、校長の仕事もあるのに歴史的発見も処理しなきゃいけないからなー、忙しいわぁ」

 

「あ、俺授業に戻るわ」「俺も俺も」「私もー」「ふむ、そういえばテストの採点の途中でしたな」「次の授業の準備が」

 

「見捨ててんじゃねぇよテメェらああああああああああ!! ばぶぅ!!」

 

「おーよちよち、かわいちょーでちゅねー省吾ちゃんっ!!」

 

 その日、省吾は屈辱を味わった。

 彼は思い出した、己が赤子の頃からシオンにストーカーされていたその意味を。

 なお、次の日から彼は生徒達の人気が上がり。

 特に受け持ちの生徒達が、彼を囲む姿が見られる様になった。

 なったのだが。

 

「うぎぎ、ぎぎぎぎっ! 距離が近いっ、近いですよみなさんっ! そりゃあ省吾さんが人気者になるのは妻として鼻が高い事ですけどっ!! うぅ~~、そこは私の場所なのにぃっ!!」

 

 その光景を、柱の陰から嫉妬深く見つめるダークエルフが一名。

 そう、愛情深い上に嫉妬深い女がじっとり粘液性の視線で見てたのだった。

 

 

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