神転して理想の生活を送りたかっただけなのに 作:名も無き二次創作家
「いいの?ここに残って」
言外に「お前は私に勝てない」と言ってくるメデューサ。
「いいから代わった。博士に先に行ってもらえれば、鬼神復活を阻止できる確率は格段に上がる」
しかしこの会話はおそらく様子見。
俺たちが魂の共鳴をしても狂気に飲まれていないことを興味深げに眺めているのがわかる。
「そんなに気になるか?俺の黒血」
「ええ。私、研究者なのよ。特に
知ってるよ。
俺はこいつの黒血についての実験体、つまりクロナを殺している。
だから、今はこいつの手元に
俺がメデューサの足止めを引き受けたもう一つの理由はそこにある。
俺は貴重なサンプルだから、もし負けても殺されない可能性がある。
俺に実験材料としての価値を見いだしてくれればありがたい。
死は恐れていないが、アリスのためにも無駄に死ぬのはよくないからな。
それに、奴は研究者だ。
自分の研究分野のことになると非常によく喋る。
そのお喋りで時間を稼ぎたい。
この戦いは鬼神を解き放たせないことが目的であり、魔女を討伐することが目的では無いからだ。
「まあいいわ。実力差も理解できない馬鹿な子にはお仕置きよ。
蛇のようにうねる邪悪な矢印の群れが迫る。
通常のベクトルアローの三倍。
威力の方は変わってない。
俺は白光剣を振るい、斬撃を飛ばしてすべての矢印を切り払った。
そして斬撃はそのまま進み、周囲の壁に衝突した。
ここは地下道だ。
このまま同じような応酬を繰り返せば崩落する危険がある。
「近接戦の方がお互い都合がいいな」
「……それだけ強力な魂の共鳴をしながら、狂気に汚染されていないわね。どういう手品を使ったの?」
「別に、俺は1人じゃ無いってことだ。職人と武器は二人で一つ。俺のパートナーは既に黒血を完全に制御下においているし、狂気汚染も効かない」
感情のないアリスに狂気を浴びせても無意味。
俺の狂気を波長に乗せてアリスに届け、狂気をろ過して魂の波長だけ増幅して送り返してもらう。
それが、今俺が正気を保っていられる理由だ。
アリスさまさまだな。
「へえ、面白いわ……ねッ!」
急接近してくるメデューサ。
やはり崩落は困るのか、近接戦に応じてくれるようだ。
ネークスネーク コブラコブブラ
地面に黒い矢印が幾つも出現する。
まるで美術館などの順路にあるかのようなその矢印は、矢印の上にあるものをその方向に動かす移動魔法。
それを踏んだ彼女が、俺の視界から消えた。
たとえ人間離れした身体能力を誇る職人でも目が追いつかない速度。
だが、その動きは原作で見ている。
振り返らず、俺は背後へ刺突した。
咄嗟に反応したメデューサが右足で繰り出していた大振りの回し蹴りをキャンセルしようとする。
だが白光剣の刃幅が広すぎて、彼女は足に深い傷を負う。
あれではまともに歩けないだろう。
ベクトルプレートという移動魔法があるからまだ勝てたわけでは無い。
だが、かなり有利な状況だ。
もしやこのまま勝てる?
ここで魔女メデューサを殺せる?
殺せるのなら殺すべきだ。
アリスの安全のためにもだし、デスサイズにするためにも。
よし、殺そう。
無鳴共鳴
「……あまり調子に乗らないことね。
地面に現れる無数の矢印。
すべて俺を囲むように設置されているが、肝心のメデューサの足下には一つも設置されていない。
そうか。
プレートで自分を射出しても、足が使えないから着地できない。
だからメデューサは自身にベクトルプレートを使えないんだ。
つまり、この大量のプレートはブラフ。
だが、伸びない。
おかしい。
身体がおかしい。
魂の波長が制御できない。
狂気か。
おかしい。
どうして?
そこで初めて、左足の後ろに違和感を覚える。
まるで針に刺されているような感覚。
これは…………注射器?
「黒血の促進剤よ♪気分はいかがかしら?」
黒血の促進剤。
原作でも錠薬で出てきたアイテムだ。
地面に落としておいた注射器を、プレートで跳ばしてきたのか……。
「最悪……だ……。だけど残念、だったな。俺の血は、全部、黒血に汚染……、されきっている。今更黒血を、
意味は無い。
はずなのに。
どうしてこんなに黒血が
どうしてこんなに狂気に飲まれそうになっている?
「黒血の促進を引き起こす。その方法は、黒血を
◇◇
「乗れ、ブラック☆スター!」
デスサイズを構えるシュタイン博士。
博士はデスサイズの柄込みにブラック☆スターを乗せて、思い切り振り抜いた。
「ヒャッホー!ついに俺は距離すらも超越したァ!!!もはや追いつけないものはねえ。俺はこの世のすべてを追い越す男だァ!」
職人の身体能力は一流のアスリートをも凌駕する。
そのなかでも最強の職人が、最強の武器を使っての投擲。
そして弾の方も弾の方で身体能力お化けだ。
博士が振り抜くタイミングに合わせて跳んだ結果、ニュートンもびっくりな超長距離水平飛行で一気に突進する。
そのまま直進したブラック☆スターは、ついに先頭の魔女に追いついた。
というか、直撃した。
その魔女は背骨が砕けるのではというほどの衝撃に転げ回り、持っていたアタッシュケースを落としてしまう。
「いてて……。お、これが鬼神復活に必要な黒血注射の入ったアタッシュケースか?椿、モード妖刀!」
念の為に破壊して中身を確認する。
中からは注射器のガラスの破片と黒血が飛び散った。
「よし、本物みたいだな」
「ブラック☆スター、よくやってくれました」
「お、博士。見ての通り、鬼神復活は俺様が阻止してやったぜ」
「流石です。ところでそのアタッシュケースを持っていた魔女は?」
「なはははは!それならそこに……あれ、いねえ!?」
「……逃げ足の速い魔女だ」
魔女メデューサの陰謀、鬼神復活の阻止。
地下攻防戦は死武専側の勝利に終わった。
ギリギリの戦いを制した彼等は、より強い絆で結ばれた。
和気あいあいとしながら地下の入り口まで戻ったマカ、ソウル、ブラック☆スター、椿、キッド、リズ、パティ、博士、デスサイズの9人は、一つの人影を見つけて駆け寄りながら声をかける。
「アリスちゃん、お疲れ様!」
「……」
マカが声をかけるが無反応。
続いてブラック☆スターが話しかける。
「そういえばスィナーがいないけどどうした?この流れでついでにあいつにも勝ち越したかったんだが」
「…………」
鬼神復活阻止をかけた地下攻防戦
結果:死武戦の勝利
損害:
パートナー曰く、魔女メデューサに拉致されたとのこと
アリスてゃんと主人公はいつか酬われるときがくるのかしら。
来まぁす!
ほんとぉ?
ソウルイーター再再放送まだあ?
小見川さんの声聞きてえよお……聞きてえよお……。
ソウルイーターみたせいであの声が流れる度にマカ思い出す。
デビュー作だもんなあ。
あ、涙が……。