桎梏の闇   作:水奈川葵

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▼末尾にて*のついた単語の説明があります。




【前編】

 血筋は申し分ない。

 

 母は先帝の娘、父は権勢並ぶものなき摂関家の長者。

 生まれる前からその高貴な血は、将来の晴れやかな人生を約束していた。

 

 だが、胎内にある時から、何者かが私の命を殺そうとしていた。

 どんなに逃れようとしても、それはまとわりついて息の根を止めようとする。

 

 そうして私は死んで、産まれた。

 

 涙を流す者達の中で、ひっそりと笑みをもらす人間はいたのだろう。

 これから火葬されようとする赤子に、綾錦のくるみを巻き、あらんばかりの花を供えて、幼くして逝った命を悼む。

 

 そうして…今しも焚べて焼かれようとする間際に、私は声を上げた。

 私を殺そうとしていた者に、自分が死んでいないことを知らせた。

 

 生きる。何としても。

 

 その希求(のぞみ)だけが、私という形すらなくそうとしていた者に与えられた依代(よりしろ)だ。

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「またですよ…」

「おぉ…恐ろしい」

「また月読(つくよみ)君*の障りが……」

 

 女房達はヒソヒソと話していた。

 

 もし、その会話を(くだん)の月読君にでも聞かれたなら、癇性な性格の君のこと、どんなにひどく罵倒されるかもしれない。

 罵倒で済めばいいが、下手をすればいつも腰に差した鞭で打たれることもある。

 そうして片目を失明した従者は、そのまま逐電してしまった…。

 

 時の権勢者の長子でありながら、ひどく羸弱(るいじゃく)に生まれたばかりに、その赤子はひたすら甘やかされ育てられた。

 いずれ早晩に死ぬであろうから…と、皆哀れみ、彼の成長を諦めきっていた。

 

 月読君…と呼ばれるようになったのも、夜の月光りの中を好んで立ち歩く姿と、彼の運命が昏く翳り、どこか半分黄泉(よみ)の国の住人として見られていたからだろう。

 

 最初から誰にも生きることを期待されず、半分死者として扱われた子供は、やがて長じるに従って苛立ちを募らせるようになった。

 

 元より誰に咎められることもなく成長し、肥大しきった自尊心は、ためらうことなく他者を傷つけた。それは自分を世話する女房や、家来に対してはもちろん、父母が用意した妻に対しても容赦ない。

 

 今朝方、彼の四人目の妻が亡くなった…。

 

 一体、(ねや)の中で彼が何をし、何を言ったのかはわからない。

 

 

 三年前、形ばかりの元服を済ませた彼の元に()してきたのは、権大納言の三の君*だった。はなから年下の、病弱な夫を見下していた彼女は、一月(ひとつき)後には庭の池に浮かんでいた。

 

 その翌年には兵部卿宮の六の君がやって来たが、三月(みつき)過ぎた早朝に突然、気が触れたように頭から灰をかぶった後、高欄を跨いで真っ逆さまに飛び降り、敷石に頭を打って亡くなった。

 

 それから二年後に婚姻を結んだ少納言の中の君は、二月(ふたつき)後に自ら毒を呷って死んだ。

 

 だがそれらの忌むべき死について公表されることはなかった。

 あくまでも表向きには病死、あるいは物の怪の祟りといった『ありがちな』事として処理された。

 事の詳細を知らぬ彼の両親は、息子の不遇に涙して同情するばかり。

 

 彼自身の体調が優れぬことなども重なって、左衛門督の娘が嫁してきたのは、先の奥方の死から二年後のことだった。

 

 権高だった権大納言の娘、見るからに愚鈍そうな兵部卿宮の娘、事ある毎に尼になりたいと世を儚むばかりだった少納言の娘に比べると、左衛門督の娘は上品で慎み深く、下の者にも気配りのある優しい性質の娘であった。

 きっと癇性なる月読君の御心に寄り添う理想の妻となるであろう…と、女房達は胸をなでおろしていたのだが………

 

「剃刀で頸をかき切って……あな、恐ろしい……」

 

 女房達は言いながら震えて、身を寄せ合った。

 今は僧が来て、どうやら物の怪がいるらしいのでお祓いをしている最中だ。

 

「そもそも…通いもせず、一緒に暮らすのが良くないのですよ」

 ヒソヒソと女房の一人である式部が言うと、同僚の相模(さがみ)が首を振る。

「そうは言っても…月読君が牛車に乗って出かけることなど出来ませんよ」

 

 本来であれば男は妻の家に通うものであったが、病弱な彼は婚礼の儀式*の為に三日連続で牛車に乗ることもできなかった。

 そのため、妻達は彼の屋敷へと嫁してきた。

 多少、世間の流儀から外れていたとしても、当代一の権勢を誇る左大臣の一族に加わるためには、そんな些末なことを気にする親はいない。

 

 屋敷内において、月読君はすっかり腫れ物扱いであった。

 

 彼をまともに相手できるのは、乳母(めのと)近江(おうみ)とその孫娘だけだった。

 近江は全面的に彼に対して服従し、何であれば左大臣の数いる息子の中でも、とりわけ優秀な頭脳を持った彼を褒めそやしていた。

 

「本来であれば、若君様は当代随一の貴公子として、殿上人の憧憬の的であったことでございましょう」

というのが、口癖だった。

 

 月読君はその乳母に対してでさえ、時に鞭を振るって怪我させることがあったが、唯一、一度も鞭を振り上げたことのない相手が一人だけいた。

 

 乳母の孫娘である、日輪(ひのわ)だ。

 

 

◆◆◆

 

 

「今日は随分と顔色がよろしくていらっしゃいますね」

 

 顔を洗う(たらい)を持って現れた日輪は、(しとね)の上でボンヤリと座っている彼にニコニコと声をかけた。

 途端に、彼の顔に苛立ちが浮かぶ。

 

「なにがいいんだ。ひどく頭痛がする」

「……伊南(いなみ)先生が新しい薬だから、少しばかり身体がお辛くなることもあると仰言ってましたね」

「あの医者…よくも分からぬ物ばかり……」

 

 彼は眉間に神経質な皺を寄せたが、日輪は彼の横に盥を置くと、のんびりと言う。

 

「でも、伊南先生のお薬を服むようになってから、顔色もよろしいですし、夜には随分と長く起きていらっしゃるではないですか。昨夜(ゆうべ)も、唐土(もろこし)の難しい本をずっと読んでいらしたのでしょう?」

「……ベラベラといつまでも喋ってないで、御簾(みす)を下ろせ。()の光が痛い…目にしみる」

「あら…とてもいいお天気ですのに。今朝方は皆で筍をとってまいりました。朝餉に用意致しましたから、是非にもお食べ下さいましね」

 

 日輪は立ち上がると、愉しげに話しながら、手際よく御簾を下ろしていく。

 

「これでよろしゅうございますか?」

 ニッコリ笑って尋ねてくるのを見て、彼はフンと鼻をならした。

 

「相変わらずの醜女(しこめ)め。なんだ、その髪は」

「あ、すいません。梳いてもはねてしまって…」

 

 日輪はひどくうねって、どうかすればピョンとあらぬ方へとはねる髪を必死で引っ張って伸ばそうとするものの、手を離せばすぐに波打ってしまう自分の手の中の髪に嘆息する。

 

末摘花(すえつむはな)の君*が羨ましいです。あの方は鼻が赤くとも、髪だけはとても美しくてらしたのですから。私なんて鼻の頭にはそばかすがあるし、髪はこのように赤茶けて(うね)っているし」

「だから醜女だと言ってるだろう。醜女が醜女に憧れたところで同じだ。阿呆なことを言っている暇があるなら、とっとと盥を持っていけ」

 

 ぞんざいに言われたのに、日輪はくしゃりと笑みを浮かべると「はいはい」と盥を持って出ていく。

 彼はその軽やかに歩く姿を見て、唇を噛み締めた。

 

 なにが醜女だ。

 

 髪がうねろうが、赤茶けていようが、あの足は野山を自由に、息が切れることを恐れもせず、走ることができる。

 燦々と照る日の中で、手足を伸ばし、肌をさらすことすら厭わない。

 まるで生きること全てを謳歌するように、体の中心から光を放つ。

 

 日輪(ひのわ)というその名のままに。

 

 成長するに従って、日輪の醜い姿は彼にとって羨望でしかなかった。

 日に焼けた艷やかな肌も、きららかな耀きを宿す赤茶けた瞳も。

 

 翻って自分はどうだろう?

 

 青白い、血の気のない肌。

 幼い頃から幾度も病に冒され、細く弱々しい四肢。

 どこまでも陰鬱な影を宿す瞳。

 

 あちらはただの乳母ごときの孫でしかないというのに、どうして高貴なる自分がここまでの屈辱を感じなければならないのか。

 いっそ適当な理由をつけて、屋敷から追い払えばよいものを、彼にはそうした考えは思い浮かばなかった。

 

 まだ赤子であった日輪と彼が初めて(まみ)えたのは、彼が七歳の時。

 風邪をこじらせて、長く床に伏せていた彼がちょうど床上げをした日のことだった。

 

 しばらく暇をとっていた乳母の近江が赤子を抱いて彼に見せた。

 

「若様のお役に立ちますよう育てますので、どうかお見知りおき下さいませ」

というので、彼は近江の腕の中で眠る赤子をまじまじと眺めた後に尋ねた。

 

「これは、俺のモノか?」

 近江は深々と頭を下げて頷いた。

「左様でございます」

「わかった。じゃあ、ここに置いてやる」

 

 自分のモノであるのを、他所(よそ)にやるという考えは彼にない。

 

 

◆◆◆

 

 

 東国からやって来たというその医者の薬は、確かに彼の体を徐々に変えていっていた。

 力も以前に比べると強くなり、庭を散策しても息が切れることはない。だが彼の苛立ちは収まらなかった。

 

 日の光が鬱陶しいのだ。いや、ときには恐怖すら感じるほどに。

 

 いつしか彼は晴れた日には塗籠(ぬりごめ)*にこもるようになった。

 日のある時間に出てくるのは、雨降りの日など天気の悪い時だけだった。

 ただ夜になれば、体調もすこぶる良かったので、やがて管弦の宴などに招ばれて行くようにもなった。

 

 月読君という名のままに、夜だけ姿を現す彼を、当初は胡乱(うろん)げに見ていた人々は、あっという間に彼の虜となった。

 

 琵琶や(こと)をかき鳴らせば、その音色は幽寂閑雅として響き、笛を吹けば嫋々(じょうじょう)として夜陰にたなびく。

 白居易を諳んじ、史記にも通じ、その知識は大学寮の学者も顔負けでありながら、決して頭でっかちの堅物という訳でもない。

 急に求められた和歌も、時にあはれに、時に機知に富んだ当意即妙な受け答え。

 薄様の紙にさらさらと書いた御手蹟()もまた優美かつ清雅なる筆致。

 何より白皙の、憂いのあるなよやかげな風情に、誰もが心奪われた。

 

 長年、屋敷奥でただただ己の弱い身体を呪うばかりであった彼は、一気に寵児として褒めそやされる日々に、人生で初めて充足を感じた。

 

 だが、それも朝になれば消える。

 

 冬であっても日の明るさに眩暈を起こし、喉がひりつくような熱さと乾きを感じる。

 

「とっとと治せ! どうしていつまでもこんな体なんだ!?」

 

 人に認められるほどに、彼の苛立ちと焦燥は募った。

 いくら人々が持ち上げようと、所詮、自分は遊びの中の人形でしかない。

 殿上人として主上にお目見得することも敵わぬ身。

 それなのに自分よりも遥かに凡庸な弟達ばかりが、父親の血だけにおいて出世して、我が物顔で振る舞っているのだと思うと、虫唾が走った。

 

 

◆◆◆

 

 

「おやおや…随分とお元気になられた」

 

 彼の父が東国より招聘した医者――――伊南(いなみ)旭耀(きょくよう)は、やって来るなり怒鳴りつけてきた月読君を見て、楽しそうに微笑んだ。

 

「以前はそうして大声を出された後は、ひどく苦しそうに胸をおさえておられたが……良かった良かった。どうやら効いてきているようですな」

「うるさい! こんな中途半端な身体にしておいて、何が効いているというのだ! もっとしっかりと治せ! こんなことで治療したなどと(うそぶ)くな!!」

「おやおや…まさかまさか。そのようなことをこの旭耀が致しましょうや? 月読君のご本復を誰より一番に願っておるのはこの私めにございます」

 

 ぬけぬけとよくも…と彼は脇息を投げつけようとしたが、割って入ってきたのは日輪だった。

 

「あら、そんなことはございません。私など、夜明け前から起きて、月読君のご健康を八百万(やおよろず)の神にお祈り申し上げているですから。一番は私に違いありません」

「おお…これはこれは……」

 

 旭耀はハハハと笑って、額を打った。

 

「確かに。若君には誰より心強い味方がございましたな」

「……祈ったところで、何も変わらぬわ。この阿呆が」

 

 吐き捨てるように言った彼に、日輪は一瞬だけ寂しげな表情を浮かべた後、いつもと変わらぬ明るい笑顔で言った。

 

「他の人であればそうかもしれませんが、私には日吉神社の守り神がついております故、きっとお聞き入れ下さいます!」

 

 自信満々に日輪が言うのは、自らの出生における不思議な夢に関わりがある。

 

 日輪の母は長い分娩の間、度々気を失った。

 苦しみがなくなって目を開いた時に、そこにはひどく神々しい光を纏った猿が鎮座していた。

 この猿が自分は日吉神社の神猿(まさる)*であると名乗り、生まれる娘には、太陽の異名である『日輪(ひのわ)』と名付けるように命じたのだという。

 

 その母は産後の肥立ちが悪く、くれぐれも…と、その夢の通りにするように頼んで、亡くなったらしい。

 本当だか嘘だかわからぬ話であったが、当人は面白がって周囲に名乗る度にこの話をしてみせている。

 

「くだらぬ……。用が済んだなら、とっとと去れ」

 彼が冷たく言うと、日輪はあわてて旭耀に声をかけた。

 

「あ、いえ。伊南先生に少しだけ用がございます。以前に仰言(おっしゃ)っておられた花のことです」

「おぉ…思い出されましたか?」

「はい。先の奥様がご存命の折に、一緒に初瀬詣*に連れて行ってもらって……確かに彼岸花に似た花を見かけました。青くて…変わった花だと思ったんです」

「それは良かった…ようやく近場で見つかった」

「後でまた詳しい場所を書いてお渡し致しますね!」

 

 日輪はニッコリ笑って、頭を下げると部屋から出て行った。

 

「なんだ…花とは?」

 彼は大して興味もなかったが、自分だけが会話から取り残されるのは我慢ならなかった。

 

「あぁ…いえ、月読君の薬に必要な花でして、東国から取り寄せていたのですが、どうしても着くまでに枯れてしましましてね。近場でないかと色々と探し回っていることを、日輪殿に話したら、そんな花を見たことがあると仰言っておられたので。その時には場所がわからなかったので、どうか思い出してほしいと頼んでおったのです。これで分量も多く抽出できるでしょう……愈々(いよいよ)、我々二人の宿願が叶う時も近いというもの」

「我々?」

「私めと、日輪殿でございますよ」

「フン……。いつまでものらりくらりとまやかす狸と、うるさく飛び回るだけの雀が、何が願いだ。貴様らごときの願いで、私のこの身体(からだ)が壮健になれるのであれば、とうの昔に治っておるわ」

 

 彼が相変わらず傲慢に言い捨てるのを、旭耀は真面目な顔でじっと見つめた。

 いつにない気迫を感じる眼差しに、彼は眉を寄せて睨み返す。

 すると旭耀はいきなりニコリと笑った。

 

「月読君……」

「なんだ?」

「覚えておいて下さりませ。この旭耀と日輪殿は、きっと君をお救い申す。我らだけが、月読君の側に、いついかなる時も離れずおりますよ」

 

 彼に人の心の襞を感じる能力があれば、旭耀の言葉に言霊が宿っていたことを気付いたろう。

 だが、彼は常に自分にしか興味がなく、旭耀がその言葉に込めた想いを知ることはなかった。

 

「………材料が手に入ったなら、とっとと薬を作れ」

 

 なんらの感傷もなく言った彼を見て、旭耀は少しだけ悲しそうに微笑んだ。

 

 

◆◆◆

 

 

 その日は野分が近づいているのか、やたらと風の強い日だった。

 

 日輪は女房達と一緒に衣替えをしていたのだが、いつの間にか入り込んだ猫が、月読君の薄衣を持って庭へと出ていってしまった。

 楓の木に上った猫と共に、木の枝にかかったその衣は、風に吹かれて下の池へと落ちた。

 

 その一部始終を見ていた月読君は、女房達に取ってくるように命じたが、女房達からすれば池に入るなど、とんでもない。

 男衆に頼んで後で取りに行かせるつもりであったのが、月読君からの命令となれば断ることなど出来なかった。

 

 困り顔で無口になってしまった女房達を見て、日輪は立ち上がると、エイと庭に降り立った。普段より歩きやすいようにと、切袴*をはいているので、女房達のように逡巡することもない。

 

 タタタッと裸足のままで駆けて、腿まで袴をたくし上げ池に入った。

 幸いにも池は膝下程度の深さだった。

 衣が落ちた場所までゆっくりと歩いてゆき、衣を取り上げてから視線を上に向けると、悪戯者の猫が枝の上からナーと呑気に鳴いた。

 

「その猫を連れてこい! 皮を剥いでやる」

 

 月読君がいつもながら横柄な口調で、物騒なことを叫ぶと、日輪は驚いたように「わっ」と声を上げた。

 猫もびっくりして木から降りると、どこかへ走っていった。

 

「なにをしている!」

 

 女房達はまた癇癪の虫が出てきた…と、首をすぼめたが、日輪はザブザブと池の中を歩いて出てくると、濡れ縁にいた弁の君という女房に拾った衣を渡した。

 弁の君は受け取るなり、巻き込まれては大変とばかりに、ソソソとその場を離れてゆく。

 

 彼は足音も荒々しく端近まで歩いてくると、日輪を睨みつけた。

 

「お前、わざと逃したな!?」

「……すいません」

 

 日輪が困ったように微笑むと、ギリと歯軋りする。

 

「捕まえてこい!」

「…申し訳ございません」

「私の言う事がきけないか!!」

 

 激昂した彼が鞭を取り出す。

 日輪はキュッと身を縮めた。

 とうとう日輪までも叩かれるのか…と女房達は寄り添い合って薄目で二人の様子を伺った。

 

 が、月読君は鞭を振り上げたまま、止まっていた。

 日輪を凝視している。

 

 日輪はそろそろと片目を開けた。自分をまじまじと見てくる月読君に戸惑いつつ、その視線の先がよく見れば自分の顔ではないところだと気付いた。

 目線を辿って自分の足を見た時に、日輪は「あっ」と小さく声を上げた。

 

 たくし上げた袴から出た足に、ツツ…と血がつたう。

 

「……控えよ! 日輪ッ」

 

 祖母からの激しい叱責に、日輪は袴を下ろしてしゃがみ込んだ。

 何が起こったのかがわかってはいても、あまりに急なことで動けない。

 

 彼は鞭を下ろすと、白けた顔でつぶやいた。

 

「フン……醜女であっても、女にはなるわけか」

 

 その言葉を聞いた途端、日輪は耳まで真っ赤になって、その場を走り去った。後ろから祖母の怒鳴り声が聞こえていたが、とても立ち止まる気になれなかった。

 

 

◆◆◆

 

 

 月の穢の間は、女房達は実家のある者はしばらく戻り、ない者は屋敷の北西にある小屋の中で過ごす。

 

 日輪はその場所がどういう所かは知っていたが、まさか自分がそこに行くことになるとは思っておらず、数日は落ち着きなく過ごした。

 

 たまたま先客でいた下女のすず菜は、初めてだという日輪に色々と処置の仕方を教えてくれた。

 身分が低い故の言葉遣いはやや乱暴なところはあったものの、日輪よりも年嵩なすず菜は姉のように接してくれた。

 

「ふぅん……アタシなんぞは若君様の目の端にも止まらないだろうからね。まぁ、癇癪がコッチに来なくて良かったと思ってるケドさ。しっかし、アンタも散々な言われようだというのに、よくもまぁそこまで健気に尽くすことだね」

「月読君は…きっと歯痒くていらっしゃるのです。丈夫な身体さえあれば、あれほどの人ですもの。きっと今頃はかの源氏の君のように宮中で活躍なさっていたことでしょう。熱が出てお辛い時でも、無聊の慰みだと仰言(おっしゃ)ってずっと難しい漢籍の本を読んでらして…」

「そんな事してるから、治んないじゃん」

「ずっと横になっているだけというのも…きっとお辛いのでしょう」

「そんなもんかねぇ……。寝て起きて食い物用意してもらえて、身体も拭いてもらうなんて、なんとも楽で気儘なことだよ。まぁ、アタシは今の暮らしで十分に満足してるからいいんだけどさ」

 

 何気なく言ったすず菜の言葉に、日輪は顔を曇らせた。

 

 あれほどの秀逸な頭脳と、見ていて眩しいほどの美しい容姿を持ちながらも、ただ病弱な身体であるが故に、月読君は生まれてこの方ずっと不幸だ。

 不幸だ、と信じ込んでいる。

 せめて、わずかでも彼に幸福だと思える時間があれば、あそこまで偏屈にならずに済んだのだろうが……。

 

「どうしたんだい?!」

 すず菜が驚いて尋ねるのを、日輪はキョトンとして見た。

 

「え? どうかしましたか?」

「こっちの科白(せりふ)だよ。なんで泣いてンのさ?」

「………」

 日輪は自らの頬を伝う涙に気付いて、あわてて拭った。

 

「……すいません」

 謝っている間にも、涙がまた一筋零れていく。

 

 そっとすず菜がその涙に手を伸ばし、指ですくい取る。

 

「………?」

 

 日輪は不意に奇妙な空気の流れを感じて顔を上げた。

 すぐに異変に気付く。

 

 すず菜の顔は緑白色の光を帯びて、額には赤く梵字が浮かび上がっている。

 顔つきも先程までの人懐こい笑顔でなく、うっすらとした微笑を浮かべているものの、霊妙なる雰囲気が漂っている。

 

 日輪は思わずひれ伏した。

 

「……よい、面を上げよ」

 

 すず菜の声はもっとガサガサとしたダミ声であったが、今話しかけてきた声は耳からでなく、日輪の全身を包むように悠揚として響き、恍惚とさせた。

 

「そなたは罪なる子じゃ。それは存じておろう?」

 

 日輪は意味するところを悟り、再び頭を垂れる。

 すず菜―――の体を借りたる者は、しゃがんで日輪の肩にやさしく手を置いた。

 

「そなたの父母は罪を重ね、己が償うことを放棄した。そなたは自らの生まれたる(ゴウ)を背負わねばならぬ。その為に、吾はそなたに名を与え、縛縄(ばくじょう)とした」

「ばく、じょう?」

「呪縛じゃ。形なきものゆえ、(ほど)くことも叶わぬ」

「……私は何をすればよいのですか?」

「流れに身を任せよ。いずれそなたが子を産めば、その子が縄をとくであろう……」

 

 それ以上、何を聞くことも許されぬまま、すず菜はその場に倒れ込んだ。

 日輪はあわててその体を抱えたが、すっかり寝入って(いびき)をかく姿はいつものすず菜に戻っていた。

 

「………いったい…今のは……」

 

 過ぎ去れば夢のようにさえ思える時間。

 

 今のは母が自分を産む時に見たという、山王権現*の神猿(つかい)だろうか?

 だがあまりにも急で突飛に過ぎて、言われている事の半分も理解できない。

 

 日輪はすず菜を床へと寝かせると、外へと出た。

 穢のある間は、小屋から外に出歩くことは禁じられているが、戸口の側に立つことぐらいはいいだろう。

 

 夕闇迫る空は、赤と紺の間に様々な色の雲がたなびいていた。

 

 ―――――そなたは罪なる子…

 

 やはり、どれだけ周囲を(たばか)っても、神仏にはお見通しということだろうか。

 

 自分の出自の卑しさを思い、日輪は唇を噛み締めた。

 

 

◆◆◆

 

 

 日輪が小屋から戻った頃には、月読君の新たな妻が決まったと屋敷は用意で忙しい最中であった。

 

「式部卿宮の中の君ですって。母御前はあまり身分の高い方でいらっしゃらないらしいし、その中の君もご病弱でいらっしゃるようよ」

 

 仲のいい女房の弁の君はどこか嘲ったように話して聞かせたが、日輪はホッとしたように笑った。

 

「ご病弱でいらしたのなら、きっと月読君とも話が合うでしょう。お互いに辛い思いをされたのだもの……」

「まぁ…それもそうかもね」

「お二人で御一緒にお健やかになれますように…って、明日からまたお祈りしないと……」

 

 弁の君は日輪の底なしの善意に溜息をついた。

 

 膳所で働く下女のすず菜と違い、弁の君は日頃から月読君の側近くでヒヤヒヤしながら仕えている。

 正直、胃が痛んで、えずくこともあった。

 あの暴君に対して、祈ってやろうなどという気はとても起きなかった。

 なんであれば、病弱なのだから、いつまでもくすぶってないで早々に亡くなってしまえばいい…とすら思うこともある。

 

 ここで用無しとなっても、左大臣家ではいずれ女御として入内される姫君もまだまだいるので、多少なりと実績のある女房を放り出すことはないだろう。

 弁の君の心づもりは、この屋敷の使用人であれば誰しもが考えていることだった。

 

 唯一…いや、唯二つ考えていないのは、月読君の乳母である近江と孫娘の日輪だけ。

 その忠心をまるで気付かず、二人に甘えるだけ甘え、気に入らなければ癇癪起こす主に、なぜそこまで肩入れできるのか、弁の君には理解できなかった。

 

 ただ、どうかこの娘の気持ちが無下にならないことを、それこそ祈るしかない……。

 

 

◆◆◆

 

 

 愈々、中の君がやって来るという日の前夜に、日輪は祖母の近江に呼ばれた。

 

「………え?」

 

 祖母の口から発せられた言葉に、日輪は絶句し頭が真っ白になった。

 近江は深い皺の間からぎょろりと目を動かして、日輪を冷たく見据えた。

 

「聞いておったか…? 今宵、若様の寝所にて(はべ)りゃ」

 

 再び言われても、日輪は答えられなかった。

 何故? と、疑問が浮かぶ。

 明日には新たに高貴なる姫君を迎え入れられるというのに、どうして自分が呼ばれるのだろう?

 

「日輪……お役目じゃ」

 

 念押しするように祖母が言うのを聞いて、日輪はようやく声を出した。

 

「あ…あの、おばば様。でも私は……私と月読君は……」

 

 言いかける日輪をギッと睨み、すぐに祖母は皺だらけの無表情に戻り、繰り返す。

 

「……お役目じゃ」

「あ……あの……なにか特別な用事があるのですか? 明日のために」

 

 あたふたと日輪は尋ねたが、祖母の顔色は寸分も変わらなかった。

 

「なにも特別なことなどない。周防(すおう)はお役目御免となって、実家(さと)に戻された。次に召されたのがそちというだけのこと」

 

 周防が月読君の側仕えの女房であり、そうした役割があったことは周知の事実である。まだ働き始めて一年も経っていなかったが、やはりこれまでと同じように、続かなかったようだ。

 

 日輪は幼い頃から月読君に仕え、女人の好みも知っている。

 絶対に自分は違う。

 日頃から醜女と言っていたではないか。

 なにかの間違いだ。

 

 そういうことではないのだ、きっと。

 

「………わかりました」

 

 日輪はとりあえず頷くと、月読君の待つ母屋(もや)に向かった。

 

 

◆◆◆

 

 

 だが日輪の予想に反して、月読君は当然のようにその身体(からだ)を求めてきた。

 事ここに及び、とうとう日輪は自らの出生の秘事を明かすしかなかった。

 

「お許しください! 兄様(にいさま)!」

 

 突然、それまで乳母の子として睥睨していた娘から、『兄』と呼ばれて、さすがに彼も驚いて固まった。

「何だと…?」

 

 問い返した月読君から離れると、日輪は這い蹲って深く頭を下げた。

 

「お許しくださいませ。本当は、死ぬまで秘めておかねばならぬ事ですのに。陰ながら兄として慕うだけと決めておりましたものを……」

 

 涙声となって話す日輪を憮然として見つめ、彼はしばらく考えた後、つぶやいた。

 

「……母上か…」

「………」

 

 コクリと、日輪が頷く。

 フ、と月読君は笑った。

 

 父であれば、いかな醜女とはいえ娘を利用せぬ訳がない。

 先頃入内した妹のようにはゆかずとも、目をかけた受領程度に嫁として与えて恩を売ることぐらいはするだろう。

 

 娘を産んだ事を秘めねばならぬのなら、母であるはずだ。

 生まれた時から、既に父との婚姻は決まっていたのだから。

 

 彼が母と会って話したことは数える程しかない。

 先帝の可愛がった唯一の姫宮として、幼い頃から蝶よ花よと育てられ、出来上がったのは木偶の坊の如き、魯鈍で頭の回らぬ、ただ美しいだけの姫だった。

 

 幼い自分よりも幼稚で愚かだった。

 きっと夜這いに来られて抗いもせずにいたのだろう。

 

「それで…父親はどこぞの雑色(ぞうしき)か? それとも下賤の偸盗(ちゅうとう)にでも身ぐるみ剥がされて犯されたか?」

 

 あからさまな侮蔑を浮かべて彼が嗤うと、日輪はギュッと両手を握りしめた。

 

「……私の父は…(そち)の宮様にございます」

 

 その名称にはさすがの月読君も絶句した。

 帥の宮は先帝の八の宮。彼の伯父。二親共に同じうした、母の実兄である。

 

 彼はしばらく言葉を失った後、ハハハと乾いた声で笑った。笑い続け、久々に胸が苦しくなって息を切らす。

 

「……月読君……」

 胸を押さえた彼に、日輪が気遣って手を伸ばしてくると、パン! とその手を払いのけた。

 

「おぞましい…! 我が母ながら、ようも産めたものだな。貴様も知りながら、よくものうのうと…苦しみもせず…生きてこれたものだ……」

 

 彼は俯き、肩を上下しながら、心底軽蔑したようにつぶやく。

 日輪は打たれた手を震えながら握りしめると、再び後ろに退がって頭を下げた。

 

「仰言る通り…生まれながらに不義なる罪を背負うた身です。どうか…捨て置き下さいまし」

 

 日輪は内心で、きっともうここにはいられまいと腹を括っていた。

 元より業の深い身であれば、もっと早くに尼となって、御仏の下で修行して罪を償う道を選び取るべきであった。

 

 深く深く頭を下げ、心の(うち)で別れを告げて、御帳台(みちょうだい)*から出て行こうとした日輪の腕を、彼は掴んだ。

 

 ほんの数年前であれば、難なく抜き払えた。しかしいつの間にか、細く弱々しかった彼の腕は隆々と太くなって、もはや日輪の力では振り払うこともできそうにない。

 

「誰が出て行っていいと言った?」

「……もう、用はございませんでしょう?」

 

 彼は苛立しげに眉を寄せると、グイと引っ張って日輪を(しとね)に倒した。

 そのまま起き上がろうとするのを、上から覆いかぶさる。

 

「……片親が同じくらい、珍しいことでもないだろうが」

「そういう事ではございません! 私は罪を背負って生まれた…忌み子です。子をなしていい人間ではないのです!」

 

 必死に言い募る日輪に、彼はうんざりしたように言い放った。

 

「子供をなすことが問題なら、産まれた子は殺せばいいのだ。間引きなど、下賤の者には慣れたことだ。豆一袋で請負うだろう」

 

「………」

 悲鳴は悲鳴とならず、痙攣した喉の奥で潰れた。

 

 日輪はここに至って、月読君の救い難い冷酷さに気付いた。

 

 幼い頃から、彼の我儘は見てきた。

 その横暴さも、子供ながらの癇癪も、すべては自らの体の脆弱さに対する苛立ちからきているのだと…そう思っていた。

 

 時には、気まぐれであっても優しいこともあったのだ。

 そう…きっと…あったはず。

 けれどいくら思い出を繰っても、優しかった彼の記憶はどこにもない。

 

 これが、今あまりにも非道なことを言われた衝撃で思い出せないだけなのか、本当のところは彼にそんな情愛などなかったのか、わからない。

 あるいは自分は、兄なる人の内実は優しいのだと、思い込みたかっただけなのではないか……?

 

 言葉を失い、蒼白になりながら、自らの体を(まさぐ)る手に絶望する。

 

 ―――――流れに身を任せよ…

 

 山王権現の神猿(つかい)が言った言葉がよぎる。

 

 あれは…こんな陵辱を赦さねばならないという事だろうか……?

 母等と同じように、畜生の如き行為を行うことが、自分に与えられた報いだというのか……?

 

 破瓜(はか)の痛みに顰めた顔を伝って涙が落ちる。

 

 

 その日から、日輪から笑顔が消えた。

 

 

◆◆◆

 

 

 翌日に式部卿宮の中の君は()してきたが、月読君は一通りの儀式を終えた後は、彼女の居る北の対屋(たいのや)*に赴くことも、自らの寝殿に招くこともなかった。

 

 周防の代わりとなった日輪は毎夜のように繰り返される行為に、ただただ絶望が深くなって、日に日に心が凍りつき、固まっていく。

 

 その上、月読君は面白がって日輪に兄と呼ぶように命じてきた。

 

「それだけは………お許しくださいませ」

「なぜ? 真実であろうが」

「祖母と私だけしか知らぬのです。他の女房達が何と思うか……」

「幼い頃から兄として慕っていたのだと…それだけのことよ。誰が何を疑う? 疑ったところで、何ができる?」

 

 狡猾な笑みを浮かべる月読君を見ながら、日輪はわからなくなっていた。

 兄と呼べなかった頃には、その笑顔を優しく見守ることが出来たのに、今となっては恐怖と気味悪さしかない。

 

「……どうか、北の方様の元へ」

 

 今日も一応言ったものの、月読君は苛として眉をひそめた。

 

「わざとか…貴様。毎夜毎夜、同じことを言う。私がどこに行き、何をしようと誰咎めるものか。所詮、いずれ死ぬだろうと思っているのだからな」

「……もはや、兄様は十分に生きておいでです。誰もそのように思っておりませぬ」

「賢しげに口きくことよな、日輪。兄と呼んでいいとは言ったが、私はお前の兄になるつもりはない。お前のような忌むべき存在が妹など、怖気立つ」

「………」

 

 だったらどうして自分を抱くのだろうか……。

 

 日輪には彼の心がまったくわからない。

 その空虚な深淵に立って見ているだけ。

 

 いつかこの中に吸い込まれて自分は消えていくのだろう…。

 

 

 

 

 陰気に黙り込んだ日輪を見て、彼は意地悪い笑みを浮かべていた。

 

 ようやくこれで、あのつまらない羨望から解放された。

 今の日輪は虫籠に入れられ、日に日に弱っている。

 自分は忌々しくも生気に溢れた存在を堕としたのだ……と。

 

 それなのに―――――。

 

 陽の光を避けて隠れる塗籠の闇の中、彼は爪を噛む。

 

 なんだろうか。

 腹の奥底で、名のない感情がザワザワと蠢く。

 

 日輪が泣いているのを見ると、苛立ちながら胸が絞めつけられる。

 この不快な気持ちを取り除きたければ、彼女を消し去ればいいとわかっているのに、いつも首に手をかけながら殺すことができない。

 

 遠くへ追いやることなど、もっと考えられない。

 自分のいない新たな地で、幸せに生きるのかと思うと、吐き気がするほどの憎悪が募る。

 

 この女は自分の手元で、ゆるゆると痩せ細って、醜く、弱くなっていけばいいのだ。―――――

 

 

 それが、とりあえず彼の出した結論だった。

 

 

 

<後編へつづく>

 

 

 

 

 




■単語説明■

[月読・つくよみ]
 月の神。月の精霊。月夜見、とも。古事記にある三貴神の一人、ツクヨミノミコト。昼を統べる天照大御神に対し、夜を統べる神。一説に黄泉の国(死者の国)の王とも言われている。

[三の君・さんのきみ]
 父親から見た娘の呼び名。長女は大君(おおいぎみ)、二番目は中の君。三番目以降は数字に従って「○の君」と呼ばれる。

[新婚の儀式~三日連続で]
 平安時代は妻の家に夫が通う。三日間毎夜通い、三日目の夜に餅(三日夜の餅)を食べ結婚の儀式とする習わし。

[末摘花の君・すえつむはなのきみ]
 源氏物語に出てくる醜女で有名な源氏の愛人。しかし髪はとても美しかったとされる。

[塗籠・ぬりごめ]
 周囲を壁で塗り込めた部屋。寝室や納戸に使われた。

[日吉神社、山王権現、神猿・ひよしじんじゃ、さんのうごんげん、まさる]
 滋賀県大津市坂本にある神社で日吉大社とも呼ばれる。比叡山延暦寺の地主神。最澄が中国天台山国清寺の鎮守神たる山王にまねて山王権現とした。日吉の表記が太陽に通じ、猿神には元々太陽神としての側面があったため、山王権現の使いとしての性質を持ったといわれる。

[初瀬詣・はつせもうで]
 奈良県初瀬山の中腹にある長谷寺にお参りに出掛けること。

[切袴・きりばかま]
 身丈一杯の袴で、裾をくくらないもの。

[御帳台・みちょうだい]
 寝殿造りの母屋内に設けられる調度の一。浜床(はまゆか)という正方形の台の上に畳を敷き、四隅に柱を立てて(とばり)を垂らしたもの。貴人の寝所または座所とした。

[対屋・たいのや]
 寝殿造りで、主人の起居する寝殿に対して東・西や北につくった別棟の建物。妻や子女が住む。



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後編は明日、2021.06.19.土曜日に更新予定です。

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