恐れよ、暴れる竜を。狩れ、友の為に。   作:X2愛好家

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怯えるか、抗うか


咆哮

車輪が回る。

多くの商人と収集家、そして彼ら彼女らが取り扱う品物を乗せた荷車を四足の竜が牽いている。竜と言っても、かの【空の王者】や【陸の女王】等と違って草食の大人しい種。【アプトノス】という名が付けられたこれらが何頭も集まり、荷車を牽引し、列を作る。土地から土地へと移動し、各々の目的を果たす為に集まった者達の集団【キャラバン】である。

 

「・・・」

 

キャラバンに限った話ではないが、道中モンスターや山賊に身を落とした者を退ける為の護衛として、ハンターや傭兵などを雇う事が多い。隊列中程の荷車に同乗している男性ハンタービオも今回の護衛の一人である。彼の場合は旧友からの救援要請を受け取り、現地に向かう為の足としてキャラバンを利用し、料金代わりに護衛をしているのだ。と言っても比較的安全が保証されている広い道である為に、ビオを始めとする護衛達は暇をもて余しているが。

 

「あ、あの!」

「ん?」

 

心地よい振動を感じながら、御守りにして仇の一部である黒い鱗を眺めていたビオに話し掛ける者が一人。ビオと同じくモンスター対策の護衛である少年ハンターだ。

 

「それ!もしかしてティガレックスの素材で作られてますか!」

「このハンマーか?その通りだが」

「やっぱり!すっげぇなぁ!」

「ちょっと、初対面の人に失礼でしょ!すいませんこのバカが・・・」

「いや、構わん」

 

腰に提げていたハンマーを取り外し、柄を抱える体勢で待機という名の休憩を取っているビオだったが、少年とその相方らしき少女の話に付き合う事になりそうだ。ビオとしても退屈はしていた為、会話に応じる事はやぶさかではない。少年はアロイシリーズ、少女はジャギィシリーズに身を包んでおり、鉱石の採掘とドスジャギィ率いる群れとの戦いは経験していると思われる。

 

「オレも早く戦ってみてぇな~飛竜種の大物!」

「それは同意するけど、もっと先になるわよ」

 

(若いな・・・俺も昔はこうだったのだろうか)

 

即座に自分の考えを自分で否定して自己完結する。訓練所時代からストイックな奴として見られていたらしい上に、意見が衝突しかけた事もある。そもそも22歳は普通に若い部類である。

 

「防具もネルスキュラのやつっすよね?何匹狩ったんですか!」

「五体は確実だな」

「マジっすか!」

「アレを五匹も・・・うぇぇ無理ぃ・・・」

 

ビオが防具として纏っているのはスキュラシリーズ。【影蜘蛛】とも呼ばれる鋏角種モンスター【ネルスキュラ】の素材で製作された防具である。少女が身を震わせながら気色悪がったように、一般人や駆け出しの女性ハンターには生理的に受け入れられない見た目をしているのだ。生態にまで踏み込めば、電気に弱い自身を守る為にゲリョスというゴムのような絶縁体の皮膜を持ったモンスターの皮を剥ぎ、それを自分の皮膚のように纏うというおぞましいモンスターでもある。知らないようだから、これは伝えない方がよさそうだ。

 

「五回もアレを狩りに行ったんすねぇ」

「いや、一回だな」

「え?ご、五匹同時!?無理・・・悪夢・・・」

「さすがに小分けして誘き寄せながらだったが」

 

当時のビオが受注したネルスキュラ討伐のクエストは「二体の影蜘蛛の狩猟」が目的だったが、既に広大に張り巡らされた巣には五体のネルスキュラが存在していたというもの。確認した時点で一度撤退し、情報の更新と人数の調整をしてから再度挑むのがベターにして正解なのだが、ネルスキュラの縄張りは広すぎる事でも有名であり、近隣の村で行方不明者が続出しているのが依頼の経緯だった為、ビオはクエストを続行。本人が言った通り何度も誘導と分断を繰り返し、クエストの規定時間ギリギリで討伐に成功したというのが事の顛末。

 

「すげぇ・・・」

「行方不明になった人達は」

「・・・知らない方が幸せな事もある」

「っ!ご、ごめんなさい!わたし不謹慎な事・・・」

 

クエストは成功した。ネルスキュラは狩り尽くし、巣の中に居た幼体も殲滅。広大な糸の結界兼縄張りもギルドからの救援と近隣の村の協力によって焼き払われた。「ネルスキュラの狩猟」というクエストは成功したのだ。そこに「村人の救出」は含まれていない。無事だったのは一人の少年だけ。それ以外の村人、もといネルスキュラとビオ以外の生命体は存在しなかった。

 

『お前がもっと早く来ていれば母さんは死ななかったんだ!他の人だって!なんでだよ!なんで助けてくれなかったんだよぉ!!!』

 

(背負う物だけが増えていく。どこかから狂ったのか、最初から狂っていたのか)

 

相棒の死、影蜘蛛の巣。ビオの心に影を落とす出来事はたったの二つ。数としてはそれだけだが内容は非常に濃く、そして重い。

 

「あー・・・えっと、その・・・訓練所!オレたち訓練所で散々しごかれて!」

「ふむ」

「他の人はどうだったんだろうなーって!」

 

多少強引だが、どんよりとした暗い雰囲気をぶった切り少年ハンターが話題を変える。パーティでの活動が多いハンターにはこういう才能も必要だろう。

 

「訓練所、か。俺の同期は本当に新人かと問いたくなるような連中が多いな・・・」

「へぇ!」

「妙な癖を持ってたり性格に難があったり、変わった奴らが多いが全員共通してる事が一つある」

 

ビオの旧知のハンター達に思わず苦笑する少年ハンターと相方の少女ハンター。ビオの言う共通点を聞くために静まる。

 

「全員強い。単純に狩猟が上手いだけの連中とは違う確かな芯がある」

「「・・・」」

 

別の意味で静かになる二人。先程の暗い雰囲気ともまた違う「真剣な空気」とでも形容すべき独特な張り詰め方。萎縮させてしまったかと思い、可能な限り砕けた雰囲気を纏おうとするビオ。

 

「あとは、そうだな・・・俺より若いのが多かったな。ちょうどお前達二人くらいのも居たぞ。それでいて強いんだから、俺の方が挫けそうだった」

「マジっすか!そういうの聞くと対抗心メラメラしてくるぜ!」

「確かに、同じくらいの子には負けられないもんね」

 

良い具合に弛緩した空気に戻す事ができた。はずだったのだが、次の瞬間ビオ達は自分の職業と雇われている理由を思い出す事になる。

 

───ゥゥゥゥ──パァン

───ゴアァァァァァァ!!!

 

「!御者!」

「モンスターニャ!ハンターさんお願いするニャ!」

「行くぞ!」

 

微かに聞こえた何かが打ち上がる音と炸裂音。一般人には【モンスター有り、近付くべからず】という警告。そしてハンターを始めとする関係者には【いざという時、救援求む】の二つの意味を持たせた発煙信号弾。それに続いて聞こえたのはビオの記憶に無いモンスターの咆哮。初めての事態に混乱気味の二人に声をかけ、真っ先に飛び出していくビオ。どうやら先頭集団の近くに現れたらしい。

 

「獣竜種・・・苛つく程度には似ている!」

 

本来は山賊等の「人間相手」専門の傭兵達の数名が、御者アイルーや商人達を避難させつつ手持ちの武器で応戦している。その相手はやはりビオの記憶に無いモンスターだったが、仇敵の恐暴竜と同じ種類と思われる骨格をした獣竜種だった。

 

「くっ!・・・遅いぞハンター!」

「後は本職に任せる!退避だ!」

 

どうしても捨てきれなかったのか、やや大きめの荷物を抱えた男を護衛しながら最後の傭兵が離脱していく。それとすれ違いながら得物であるストライクストライプを構え、獣竜種に走り込んでいくビオ。少し遅れて片手剣を構えたアロイシリーズの少年と、ライトボウガンに弾を装填しているジャギィシリーズの少女も到着する。

 

───スゥッ

 

「っ!」

 

獣竜種が短く、だが確実に息を吸い込んだのが見えた。ハンターや他の大型モンスター等の「外敵」を認識した際に、ほぼ全てのモンスターが行う威嚇と先制攻撃を兼ねた行動。先程も響かせた【咆哮】だ。

 

───ガアァァァァァァ!!!

 

「ううっ!」

「つっ!?」

 

駆け付けた二人の新人は顔を背け、耳を塞ごうと動きを止めてしまう。生命体としての本能に訴えかけるような大音量を正面から浴びれば、誰でもこうなってしまう。防ぐには防具に特殊な加工を施してモンスターの咆哮を軽減、または無効化する【耳栓】と呼ばれる技術が必要になる。のだが───

 

「ふっ!」

 

正面から獣竜種に向かい、咆哮を聞いてもなお動きを止めないビオ。何故か途中で【前転】をしていたが、それこそが秘策にして上位ハンターにも劣らない技術。

 

『良いか!モンスターの咆哮は!どんな屈強な男でも恐怖に竦み!冷静な女でも耳を塞ぐ!動きを見極めろ!予兆を見たら距離を取れ!モンスターの呼吸を読め!』

 

かつて訓練所で教わったモンスター対策の一つ。まずは相手の動きを観察する事。動きを止めてしまっても、叫んでいる間はモンスターも動かない。十分に距離を取っていれば動き出したモンスターにもギリギリ対応できるというのが教官の教え。だが、当時からストイックかつ貪欲に知識と技術を吸収していたビオを始めとする何人かは、特殊な防具無しに咆哮をしのぐ方法を教官に聞いていたのだった。

 

『貴様らにはまだ早い!・・・だから頭の片隅に知識だけ置いておけ。モンスターの咆哮は生物の恐怖を呼び起こす。真正面から「捕食者は自分でお前は獲物だ」と分からせる為に行うのだ。音そのものを聞こえなくするしか対策はできんというのが一般論だ』

『防具による耳栓ですね』

『そうだ!それに頼らない方法も無くは無い!音を聞いて竦み、動けなくなるならどうすれば良いか!それは!』

 

(動かざるをえない体勢で音の弱い瞬間を狙う)

 

確かに厄介な咆哮だが【声】である以上は、息を吸い込む瞬間と吐き始める瞬間がある。特に恐怖を煽る「吼えたと理解した瞬間」までに回避動作を行って「声が弱い瞬間に動き続けて恐怖を抑え込み、後の部分も無視する」というのが教官式防音術なのだ。

 

中々に意味が分からない理屈と技術だが、恐ろしい事にビオを筆頭として、一緒にこの話を聞いていた当時の訓練生の何人かは、今ではそれを完全に習得してしまっているのだ。初見のモンスターにも完璧に合わせられたのは、相棒を喪ってから死に物狂いで磨いた狩猟技術の賜物だろうが。

 

(まず───)

「一撃!」

 

腰だめに構えたストライクストライプを振り抜き、獣竜種の横っ面を叩く。さすがにこの一発では気絶させるに至らないものの、後の戦況を左右するファーストアタックはビオが勝ち取った。

 

───グアァァァ!

 

「チッ」

 

威嚇の咆哮すら踏み倒して自身を殴った無礼な獲物を噛み殺さんと、獣竜種がその顎を開く。見え見えの攻撃に当たってやる義理は無いとばかりに、横方向へとローリングして回避するビオ。逃がしてなるものかと頭をビオへと向けるが、この場に居るハンターは一人ではない。

 

「どぉぉぉりゃぁぁぁ!」

 

硬直から立ち直り、ビオが回避した方向とは逆に回り込んでいたアロイ装備の少年。感じた恐怖を振り払うように雄叫びを上げながら獣竜種の右足を斬りつける。煩わしげに少年を蹴り飛ばそうとするが、今度は喉の部分に弾丸が突き刺さる。前衛二人を援護すべく動いた、ジャギィ装備の少女が持つライトボウガンの弾である。

 

「わたしだって!」

 

「よそ見してる余裕あるのかよ!」

 

少女に向きかけた注意を少年が引き付ける。少年が集めたヘイトを少女が散らす。その繰り返し。新人ながらも二人のコンビネーションは熟達の域にあった。

 

(中々やる。これなら少し自由に動いても良さそうだ)

 

片手剣とライトボウガン。どちらも手数は豊富だが決め手に欠けるという認識だったビオ。だがこうして補い合う事で狩猟を成り立たせている二人を見て、その認識を改める事になりそうだ。あとは決定打を叩き込む重量級のアタッカーが居れば大抵の相手は何とかなりそうな雰囲気まである。

 

「こんな・・・風にな!」

 

その場に留まり、尻尾で周囲を薙ぎ払う攻撃に出た獣竜種。尻尾が通り過ぎ、頭をこちらに向けた瞬間を狙ってストライクストライプを思い切り振り上げる。獣竜種と視線が合った刹那、振り上げた轟竜の鎚を全力で振り下ろす。

 

───ガアァァア!?

 

頭蓋を粉砕するつもりで振り下ろしたストライクストライプの一撃。寸前で反らしたのか、頭をミンチにする事は出来なかったが気絶状態に持っていけた。地にその体を横たえ、立ち上がろうともがく獣竜種。だがそんな隙を、チャンスを、ハンターが逃すはずもなく。

 

「一気に叩くぞ!」

 

少年の片手剣が、少女の弾丸が、ビオの鎚が獣竜種の命を削っていく。

 

そして───

 

グゥゥゥ・・・ガアァァァァ───

 

一つの命が断末魔と共に終わりを迎えた。

 

 

▽▲▽▲▽▲

 

 

「いやー!強敵でしたね!あの・・・名前知らん奴!」

「バカが調子に乗らないの!ビオさんが居たからスムーズに狩猟できたのよ!」

「いや、二人の連携あってこそだ。礼を言わせてくれ」

「だってさ!もうこれは将来有望!敵無しだぜぇ!」

「バーカ」

 

獣竜種の狩猟を終えて小休止中の三人。現在キャラバン付きの学者と解体屋の報告を待っている状態である。少年本人が言った将来有望というのも間違ってはいないかもしれない、と優秀な後進について考えを巡らせているビオに話し掛ける者。

 

「お待たせしました。こちらへ」

「おっ!お待ちかねの時間だぜ!」

「はしゃがないの」

 

自らで狩猟した獣竜種の骸の前に立つ三人。まず学者からの説明が始まる。

 

「このモンスターは蛮顎竜 アンジャナフ。主に森林地帯に生息している獣竜種ですね。他に砂漠地帯での目撃情報もありますが」

「森・・・向こうに見えているアレか?」

「恐らくあそこから餌を求めて出てきたのでしょう。本来は喉の火炎袋から高熱の煤を放ったり、それを強めた火炎放射をする事もあるのですが・・・」

「そんな事したっけ?」

「記憶に無いわね」

 

三人と戦った獣竜種あらためアンジャナフ。ほぼ直前と言っていい記憶を探っても、この個体が火を使った場面は一度も無い。

 

「生まれつきの障害か?」

「その可能性もありますが───」

「その先はワシが話そうかの」

 

遺骸から歩いてきたのはモンスターを始めとした生物の解体屋。

 

「恐らくじゃが、こやつは縄張り争いに負けて逃げてきた個体じゃろうな。それで弱っていたんじゃろ」

 

モンスター同士による縄張り争いは日常茶飯事だ。それに敗北し、新たな自分の縄張りを探して彷徨っている内にキャラバンと鉢合わせ、空腹も相まって襲い掛かってきた。というのが解体屋と学者の見解だった。

 

「負けたという根拠は?」

「見てみぃ。明らかにお前さんらの武器では付かん傷が付いとるじゃろう?」

「ほんとだ・・・全然気付かなかった」

 

転倒中か、少女のライトボウガンでなければ狙えない背中部分。そこに付いていたのは、何かに噛み付かれたような傷痕と爆発したような火傷の痕。もちろんビオ達がタル爆弾等を使った訳ではない。

 

「牙か爪かに裂かれた傷、焼かれたような痕か。同種の縄張り争いか?」

「微妙な所ですね。アンジャナフの煤や火炎ブレスで、このような爆発痕になる可能性は低いのですが」

 

キャラバン内のハンターで最も経験豊富なビオと、学者に解体屋を交えての考察が白熱する。ジャギィ装備の少女も興味深そうにそれを聞いているがアロイ装備の少年はハンターの恒例行事が待ち遠しくて仕方ないようだ。

 

「なぁなぁ!剥ぎ取り!剥ぎ取りしようぜ!」

「うるっさい!」

「でも剥ぎ取りは新鮮な内にって言われてるじゃん!」

「被害の確認に手間取っちまった!悪い悪い!」

「団長」

 

新たな人物が会話に加わる。このキャラバンを率いる団長である。

 

「まずはハンター諸君!俺達のキャラバンを守ってくれた事!感謝する!この蛮顎竜の素材は三人で分けてくれて構わん!余ったらこっちで引き取る!護衛の報酬金も上乗せするぞぉ!」

「よっしゃあ!団長さん太っ腹ぁ!」

「さすがにそれは・・・」

「若いのが遠慮ばっかしちゃいかんぞ?たまにはギルドに報酬金が安い!とか文句の一つでも言ってやれ!」

 

少女の気まずい申し出を豪快に一蹴し、報酬の増額を決める団長。ギルドへの文句云々辺りで学者も苦笑いしているのに気付いてほしい。少年と団長が中心になってすっかりお祭りムードだが、そんな事はどこ吹く風とビオが話を切り出す。

 

「提案はありがたいですが、自分は辞退させてもらいます。目的地は別ですし、素材と報酬金を詰め込むとポーチがかさばるので」

「ん・・・?あぁーお前さんはカムラに向かってるんだったか。それなら仕方ねぇか・・・よし分かった!回復薬と携帯食糧を融通してやる!それでどうだ?」

 

この団長、何がなんでも礼をしたいらしい。さすがにこれは断りきれないと判断したビオは、後方の無傷だった荷車から回復薬と携帯食糧を受け取りポーチに収納する。ちなみに礼の品を受け取ったビオを見て団長は満面の笑みを見せていた。人が良すぎるのではなかろうか。

 

「カムラの里なら、あの森を抜けるのが手っ取り早いようですね。ただアンジャナフの件もありますし、危険度は高いと見た方がいいですね」

「多少のリスクには目を瞑らないと間に合わなくなるので」

「すまんなぁ・・・もう少し進めればよかったんだが」

 

キャラバンが止まっている地域の大まかな地図を広げる学者。アンジャナフが出てきたと思われる森を突っ切るのが、現状カムラの里への最短ルートとなる。キャラバンが前進できればビオももう少し便乗できたのだが、襲撃によって牽引役のアプトノスが何頭か逃げ出してしまい、残っているアプトノスも休ませなければならない。先を急ぐビオとキャラバンはここでお別れになりそうだ。

 

「元々途中で別れる予定でしたし、ここまで乗せて頂けただけでも助かりましたよ」

「そう言ってくれると俺も嬉しいよ」

 

団長と握手を交わし、学者と解体屋に礼を言い、最後に共闘した新人ハンターと別れの挨拶を済ませる。

 

「ビオさん!オレ、ビオさんみたいに強いハンターになりますんで!また会えたら一狩り行きましょう!」

「武器は違えど、ビオさんの動きは参考になりました。これを糧にわたしも強くなります!」

「あぁ、お前達ならきっと強くなれるさ」

 

お達者でー!

声だけでなく手を振る動作も大きい少年ハンターと、それを見て呆れながらも手を振ってビオを見送る少女ハンター。団長と学者、解体屋に傭兵をまとめるリーダーもビオを送り出し、意図せず盛大な別れとなってしまった事に苦笑する。軽く手を上げて応え、森を見据えて表情を引き締める。

 

今この瞬間にも百竜夜行がカムラの里を襲っているかもしれない。他の同期が何人救援に駆け付けるかも分からない。不安は募るが、今は急ぐしかない。

 

「無事でいてくれよ」

 

ハンマーと黒い鱗を揺らし、ビオは駆け出した。

 

友の故郷の為に

 

自らの糧とする為に

 

そして、復讐の為に

 

 

▲▽▲▽▲▽

 

 

「駄目だったか」

「はい・・・」

 

何処かの街のハンターズギルド。ギルドマネージャーの男性と受付嬢が会話している。二人の表情は暗い。

 

「救難信号を確認して駆け付けたようですが、到着した時には既に・・・」

「全滅と。生存者、は聞くだけ無駄か?」

「・・・はい、荷を引いていたらしいアプトノスも一頭残らず食い散らされていた、との事です・・・」

「事前の申請ではハンターが数名護衛に付いていたらしいが、こっちは」

「一名は最初から、途中で離脱する事が決まっていたようです。残りの二名は・・・その」

「胃の中ね」

 

このギルドが置かれた街に到着予定だったキャラバンが物品取引の期日を過ぎても現れなかった。それを不審に思った取引先がギルドに捜査を依頼、救難信号を受けたというハンターの申告があり、そのハンターに事情聴取を行った所、道程で全滅していたらしい。現場には破壊された荷車と無惨に食い散らかされた肉塊しか無かったというのがハンターの報告である。

 

「犠牲になったハンターの所属ギルドに連絡を」

「分かりました」

 

退出していく受付嬢。それを見送ってから、改めて報告書に目を通す。

 

「不運にも程がある・・・駆け出しの新人が恐暴竜の相手なんざ出来る訳ないってのに」

 

【検証結果】

【荷車の幌や地面に溶解した形跡あり

 強酸によるものと思われる

 削られた地形に牙らしき部位

 生存者無し

 足跡の照合・合致

 

 恐暴竜による襲撃を受けた可能性大】

 

「そういや、前にも新人が恐暴竜に襲われたって注意喚起されてたな・・・若いハンターの味でも覚えたってのか?貪食の獣竜が食通気取りとは」

 

【回収遺品】

 

【───】

【────】

【狗竜素材の防具】

【──】

【鉱石素材の防具(鑑定結果 アロイ)】

【周辺地域の地図(復元は困難)】

 

 

▽▲▽▲▽▲




また会えたら


【救難信号】
駆け付けたハンターが見たのは二発目の救難信号。
一発目の際には周囲にハンターや一般人は居なかった。

【咆哮回避】
ゲームで言う所のフレーム回避。
作品に落とし込んだ結果、謎の変態技術となった。
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