恐れよ、暴れる竜を。狩れ、友の為に。   作:X2愛好家

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再会の前の一幕


共闘

月明かりが照らす。

生物であるなら大抵眠っているであろう時間帯。夜行性の獣が活動を始め、人は門を固く閉ざし明日に備えて眠る。明確な目的が無ければ足を踏み入れない夜の世界に月を眺めながら黄昏る男が一人。

 

「迷ったなこれは」

 

ビオである。キャラバンと別れ、森を駆け抜け、一人夜営をして辿り着いたのは、またしても森。岩壁や何かの遺跡らしき建築物が目立つようになった為、走り抜けた森とは違うエリアらしいが如何せん地理が分からない。完全に迷子である。

 

「高所から見渡せば行けるか?」

 

下手に動かず、朝を待った方が良い気もするが動かざるをえない状況でもあるのだ。

 

(モンスターの痕跡、里だけでなく敵も近いか)

 

木に付けられた爪跡や焦げたような地面。カムラの里周辺が、何も無い空間にいきなり傷や炎が発生する超空間だと言う訳もなく、明らかに生物によってつけられた痕跡がいくつも見受けられるのだ。そして何よりも、先程からビオの周囲を浮遊している色とりどりの火。目を凝らせば小型の鳥だと分かるのだが、どんな生物なのか知識が無い以上気を許す訳にはいかない。幸い鳥も一定距離より近付いてはこないので武器を抜く必要は無さそうだが。

 

「まずは・・・あの辺りに登るか」

 

登りきった先に広めの足場がある崖。そこを目指す事にしたビオだが、崖の下に辿り着いてから辟易する。

 

「遺跡平原と同じかそれ以上に立体的だな・・・ウツシはこんな所で育ったのか」

 

慣れたフィールドである遺跡平原。高低差のある崖や岩壁、蔦が絡み合った足場等かなり立体的な地形なのだがこのエリアも中々に複雑らしい。

 

 

▲▽▲▽▲▽

 

 

「ここで狩猟となったら面倒な事になりそうだ。追跡だけでも一苦労だな」

 

崖を登り、高所に陣取る事が出来たビオ。ウツシからの手紙では百竜夜行の迎撃は未完成の砦で行うらしいが、この遺跡と森林の混成エリアでの戦闘となれば、地形に不慣れな自分達は苦戦を強いられていただろう。

 

「さて、里はどこか」

 

里に急ぐ為にもこの地帯を抜けなければならない。周囲を見渡し、敵影が無い事を確認してから崖の縁に立ち、遠くを見やる。

 

(こんな事なら双眼鏡も持ってくるんだったな)

 

フィールドに慣れたハンターほど使わなくなる双眼鏡。今ほど手元に無いのが悔やまれる瞬間は後にも先にも今回限りだろう。なんにせよ後の祭り、思考を切り替えて里や人の営みの証である灯りを探す。とは言ってもこんな時間にこんな場所で火を灯している者はそうそう居ないだろうが。先程の鳥でもなければ。

 

「ウニャ?ハンター?」

「ん?」

 

ビオの後ろから声。人の言葉だが、特徴的な語尾と声質をしている。振り向いたビオが視認したのは二足歩行の獣人【アイルー】である。オトモアイルーとしてハンターの支援をしたり、地域によってはニャンターというハンターとして認められた者も存在する獣人種。ビオの記憶で最新のアイルーは、キャラバンでアプトノスを操っていた御者アイルーだ。目の前の個体は黄色の毛並みと青い頭巾と服が特徴と言えるだろう。

 

「ここは狩場でもニャいのに珍しいニャ」

「その服、オトモかニャンターか?」

「オトモアイルーニャ。慌てたりしない所を見るに密猟者とかではニャいと思って良いニャ?」

「当然だ、と言いたい所だが素行の悪化を鑑みれば疑うのは当然だな」

 

互いに探り合っている状態。先に切り出したのはビオ。

 

「カムラの里を探している。ウツシというハンターに心当たりは無いか?」

「ニャ?旦那さんの知り合いかニャ?それなら先に言ってほしいのニャ」

 

カムラの里とウツシの名を出した瞬間に黄色い毛並みのアイルーが態度を軟化させる。このアイルーがウツシの事を【旦那さん】と言った事をビオは聞き逃さなかった。

 

「お前ウツシのオトモか?」

「ニャ。デンコウと言うニャ。お見知り置きをニャ」

 

黄色い毛並みのアイルー改め【デンコウ】。迷子だったビオだが、一気に光明が見えた。

 

「俺はビオ。ウツシとは訓練所の同期で、百竜夜行迎撃に協力する為に来た」

「待っていたニャ・・・ライゴウが迎えに行った人とは違うのかニャ?」

「その、ライゴウ?というのは」

「オトモガルクニャ」

 

【ガルク】カムラの里以外では馴染みの無い名前。やや大型の犬のような獣であり、武器を咥えてモンスターを攻撃したり、ハンターを背に乗せてフィールドを駆け回ったりする等アイルーとはまた違う頼もしい相棒。という解説を後にウツシから聞く事になる。

 

「ガルク、とやらの説明はウツシにでも聞くとして、迎えに行った?」

「ニャ。一人分だけ報酬と旅費が工面出来なかったらしいのニャ。旦那さんとライゴウがその一人を直接迎えに行って連れてくる予定ニャ」

「となると今は里に居ないのか。本人が居ればスムーズに入れると思ったんだが」

「目の前に案内役が居るのニャ。同期さんみたいに森を抜けてくる人を道案内するのも任務の一つニャ」

 

どうやら無茶な方法で里に辿り着こうとする面々のケアもバッチリらしい。自分以上に迷ったり、徒歩で駆け付けたりしそうな面々に心当たりがあるビオだが、現に迷っているのは自分。手厚い対応への呆れも苦笑も封じ込める事にする。このまま里に案内してもらえるかと思われたが、そうもいかない事情がある様子。

 

「もし良ければ少し手伝ってほしい事があるニャ。個アイルー的な依頼ニャ」

「構わんぞ。後で素材ツアー扱いにでもしておいてくれ」

「そうもいかんニャ。長旅で疲れてる所に無理を言うんだからキッチリ報酬は払うニャ」

 

ペットは飼い主に似る、オトモは雇い主に似るとは良く言ったものだ。変な所で義理堅いのはウツシに似たからだろうか。何にせよ引き受ける姿勢のビオにデンコウは内容を語り始める。

 

「百竜夜行が近い事は勿論知ってるニャ?それで今は里の皆が全員ピリピリしてるニャ。アイルー、ガルク問わずオトモも総出で物資を運んだり、こうして案内役になったりして手伝っているんニャが、血気盛んなアイルーが、百竜夜行を追い返す!特訓ニャ!とか言って狩場に飛び出してしまったのニャ」

「なるほど?その怖いもの知らずを探して連れ戻せば良いと」

「ニャ」

 

デンコウが言った通り、なんと血気盛んな事か。よほどベテランのニャンターでなければモンスターの討伐など夢のまた夢だろう。

 

「発覚したのがつい数時間前ニャ。一応狩場の外に出てないかの確認も含めて、里から一番近い狩場に向かって包囲網を敷くように探しているニャ」

「となると他にもオトモが居るのか」

「ウニャ。包囲網はこっちで縮め続けるから、同期さんは狩場に向かって探してほしいのニャ。アソコに見えてる尖った岩が目印ニャ」

 

デンコウが示す先に、確かに目印と言える尖った岩。地理を知っている者以外には、他の岩や遺跡と同じに見える為、ビオとしてもデンコウと出会えたのは幸運だろう。

 

「分かった。もし、モンスターと遭遇した場合の狩猟許可は?」

「討伐ないし撃退すれば良いニャ。里に近付かせる訳にはいかニャいからニャ。もし大事になったらオトモ全員で嘆願書を出すニャ」

「ふっ・・・ありがたい限りだな。では、また後でな」

「ニャ!気を付けるニャ。そしてありがとうニャ」

 

尖った岩の方向に向けて歩くビオ。次の瞬間、先程登った崖を一息に飛び降りた。これにはデンコウも驚きを隠せない。一応下を覗いてみるが、あっさり着地し何事も無かったように狩場へ走るビオが見えた。

 

「ニャア・・・旦那さんも含めてハンターは化物じみてるのニャ。ビオ・・・確かストイックでマトモな方、だったかニャ?アレでマトモ?他の同期さんはどんな魑魅魍魎なのニャ・・・?」

 

体力が尽き、心が折れない限り、炎で焼かれようとも、雷に打たれようとも、猛毒に侵されても何度でも立ち上がり、武器を構えて向かってくる。モンスターは自然の脅威だが、そのモンスターからすればハンターの方がよっぽど恐ろしい存在ではなかろうか。

 

ちなみに、後にとある呼び名が付くビオを含めた特定の世代の訓練生達。現時点で妙に濃いキャラとクセと高い実力を発揮している者も少なくない為、デンコウの「魑魅魍魎」という言葉は間違っていなかったりする。

 

 

▽▲▽▲▽▲

 

 

「フィールド到着、でいいのか?キャンプ以外から始めるのは妙な気分だな」

 

デンコウを若干引かせた一般人には出来ないハンタームーブを繰り返し、血気盛んなアイルーが居ると思われるフィールドに辿り着いた。この時点のビオは知らないが、狩場としての名前は【大社跡】である。地図でいう所のエリア12に、いきなり降り立ち入り込んだ形となっている。

 

「さて、どちらから回るか」

 

ビオから見て右側には川が流れており、左側は岩場。正面の蔦も登れなくはなさそうだ。

 

「たまには直感に任せてみるか。どのみち歩き回る事は確定しているしな」

 

誰に伝えるでもない独り言を呟き、左の岩場へ歩き出すビオ。だが、途中で背の低い岩壁を見て立ち止まる。あっ、これ登れそうだな……みたいな顔をするんじゃないよ。ハンターとしての本能が疼く程度には復讐鬼に堕ちきれていないらしく、ビオでも「未知のフィールドを探索する楽しみ」には抗えないらしい。

 

「アイルーなら岩場にも楽々登るしな」

 

その言い訳は誰に向けたモノなのかな?

 

 

▲▽▲▽▲▽

 

 

「ここにも居ないか。姿形どころか鳴き声一つ聞こえないとはな」

 

あの後、岩場をいくつか乗り越え一際大きな建造物を通過し、こういう細道も見ておくか、と特に深く考えず入った道がいつの間にか上りになり、木造の足場を通り、頑丈に絡んだ蔦を登って辿り着いた高所のエリア。決して探索が楽しくて、こんな所まで来てしまった訳ではない。決して。

 

「森の方に降りるか。抜ければ開けた場所に出れそうだ」

 

さらっと降りると言っているが、特別鍛えていない一般人がやろうものなら骨折確実な高さである。受け身の取り方など、特殊な訓練を積んだハンターだからこそ可能な事ですので絶対に真似しないでください。と、またデンコウが引きそうなハンタームーブを行おうとしている所に、変わった客が現れた。

 

「・・・」

 

視線。大型モンスターが発する明確な殺意は感じない。ジャギィのような小型種が様子を窺っているのか、ケルビ等の草食種だろうか。何にせよこの地で、デンコウと光る鳥以外で初めてビオに注意を向けてきた存在が居る。腰に提げているストライクストライプに、片手だけ掛けて引き抜けるようにしておく。そうしてゆっくりと振り向き背後を確認するが、それらしき姿は見当たらない。だが視線は外れておらず、気配も消えていない。注意深く辺りを見回し、視線の主を探す。

 

───カタッ

 

「!・・・ん?」

 

ビオから見て右上。変わった形状の構造物、扉の無い門のようにも見える何かがあるのだが、その上から鳴った音に反応してビオも構える。が、直ぐに構えを解き、今度は困惑している。門の上からビオを見ていたのはキツネのような獣。獣竜種や鳥竜種よりも小さく、下手をすればジャギィやゲネポス等よりも小さい。だが、それらのならず者とは違う不思議な雰囲気を纏っていた。

 

「モンスター、ではないか。野生動物か?」

 

───?

 

「言葉が分かるのか?」

 

───???

 

「むぅ・・・俺の動きに反応しているだけか」

 

首を傾げたビオに合わせるように、顔の角度を変えたキツネモドキ。ビオが言ったように言葉ではなく動きに反応しているだけのようだが。

 

「・・・よぉ」

 

───!!!

 

軽く手を挙げて挨拶するビオ。それを見たキツネモドキは嬉しそうに跳ねている。どこか神聖な雰囲気を纏っているが、意外と人懐こい動物なのかもしれない。滑りそうな屋根の上でバランスを保ちながら喜び跳ねる辺り、身体能力は高そうだが。

 

「アイルーを探しているんだが、見てないか?」

 

───?

 

再び首を傾げるキツネモドキ。言葉の内容を理解して知らない、という事を伝えたいのか、さすがに人の言葉は理解できておらず反応しただけか。

 

「まぁ、分かるわけないか。悪かったな」

 

───!───・・・?

 

ビオの謝罪に、何故か嬉しそうな反応を示すキツネモドキだが、突然その視線をビオから外し一点を見つめだした。方向的にはビオの背後だが。

 

───ァァァァ!

 

「モンスターの咆哮?」

 

ビオでもキツネモドキでもない声。少し離れているのか掠れ気味だったが、ビオは聞き逃さなかった。

 

「行ってみるか。お前も気を付けろよ?」

 

───!!

 

最後にビオをよく見ようとでもしたのか、一際前に出てきたキツネモドキ。歓喜を表現するかのようにブンブンと振られている尻尾は、複数に分かれているようにも見える大きな物だった。また一息に崖を飛び降り、咆哮が聞こえた場所へと急ぐビオ。キツネモドキはその背中を見えなくなるまで見つめていた。

 

 

▽▲▽▲▽▲

 

 

「ウニャア~~!!!コイツが居るなんて聞いてないニャ!!!」

 

────クアァァァァァ!!!

 

他のエリアに比べて、比較的見通しの良い開けた場所で追いかけっこをしている二匹。赤茶の毛並みが特徴的なアイルーと、緑色の鱗にギョロリとした眼球、長い舌と尾が目を引く鳥竜種。名を【プケプケ】。何がプケプケをそこまで怒らせたのか、赤茶のアイルーを親の仇のように追い回している。小柄な体躯と点在する岩を活かして逃げ回るアイルーだが、怒り狂ったプケプケの体当たりや伸ばした舌で隠れられる岩が砕かれていく。軽視されがちな鳥竜種といえど竜は竜なのだ。また、プケプケの武器は体を使った直接攻撃だけにあらず。

 

────ゴアップェッ

 

「危ニャ!?そして汚いニャ!」

 

毒を吐いてくるのである。悪口や嫌みではなく正真正銘の毒。獲物を仕留める為の立派な能力である。さらに着弾した毒はしばらくその場に留まり、即席のトラップにもなる。地に足を付けなければならないハンターやアイルーにとって、かなり厄介な罠である。

 

「ニャッ」

(あっこれ死んだニャ)

 

アイルーの行く手を遮るように吐き出された毒液。それを軽やかなステップで回避したものの、疲れからか着地の瞬間に足を滑らせてしまった。背後に迫るのは毒妖鳥の舌。流れる時間がスローになったような錯覚。赤茶のアイルーの脳裏には、アイルーとガルクを愛する一人の少年の姿が浮かんでいた。もう二度と会えないであろう少年に謝罪しながら、背中から派手に着地する。

 

「ギャブッ」

(ニャ?生きてる?)

 

────グェアァァァ!?!??!

 

「プケプケ、か?・・・ハァ・・・コイツが居るなんて聞いてないぞ・・・」

 

舌に絡め取られる感覚は襲ってこず、プケプケは悲鳴を上げ、それと同時に聞こえた衝撃音。そして最後にアイルーの聴覚が捉えたのは、何故か妙に嫌そうな、呆れたような声色で先程の自分と同じ言葉を溢す人間の声だった。

 

 

▲▽▲▽▲▽

 

 

────グゥゥゥ・・・

 

「アイツに見付かる前に逃げた方が身のためだぞ?と言っても通じないだろうが」

 

何やらアイルーを追っているモンスターを発見し、先回りして木の上で待ち構えていたビオ。溜め3と呼ばれるハンマーの基本動作を、木から飛び降りながらモンスターに叩き込みつつ着地した。のけ反りながら大きく後退したモンスターを改めて正面から観察すると、訓練所で散々見せられた、モンスター図鑑に描かれていたプケプケとやらに似ている。夢であってくれと思うが、残念、現実です。と言わんばかりにビオを威嚇してくるプケプケ。

 

「仕方ない・・・せめて朝になる前に狩猟する」

 

他の同期にも声を掛けている事はウツシからの手紙と、デンコウの発言からほぼ確定。そうなると【アイツ】も来る可能性が高い。また、このカムラの里に近いらしいフィールドでプケプケの出没が頻繁に確認されているなら「プケプケが居る」とでも書いて送れば【アイツ】は絶対に来るだろう。もしかすると既に里に到着していて、今は寝ているだけなのかもしれない。起きてくる前に狩るしかない、と強く決めたビオだった。

 

「下手をすれば、プケプケの気配を察知して目覚めるまでやるからなアイツは・・・」

「助けてくれたのは嬉しいけど、何ブツブツ言ってるニャ?」

「こっちの話だ。お前がデンコウの探していたアイルーか?」

「うげぇ・・・デンコウが来てるのかニャ」

 

反応からして確定だろう。一旦あのプケプケ狂いの事は忘れて、単純明快な命のやり取りに集中する。

 

───クアァァァァァ!!!

 

「チッ」

「ニャー!危ないニャー!」

 

毒や舌ではなく、ただの突進。だが大柄な生物は動くだけで脅威になる。ビオは左に、アイルーは右にそれぞれ回避してやり過ごす。

 

「とにかくコイツを狩猟する!名前は!」

「オイラはテリヤキニャ!」

「追い掛けられてたのは名前のせいじゃないか?」

 

そんな筈は無いと信じたい。

 

(解毒薬は手持ちに無い・・・毒をもらう訳にはいかないな)

 

今ビオのポーチに入っているのは回復薬と携帯食糧に砥石だけ。何が起こるか、どんなモンスターが相手なのか分からない以上、解毒薬なども用意するべきなのだが、それらはカムラの里で揃える予定だったのだ。余計な物は持たないビオの性格が裏目に出てしまったようだ。

 

「来るニャ!」

「まずはその口を閉じろッ!!!」

 

脅威度が高いビオを先に始末するつもりか、ビオに向けて毒液を吐こうとしているプケプケ。テリヤキからの警告が飛ぶが、目の前でそんな悠長な行動を取るなど、ハンターからすればフリーカウンタータイムなのだ。素早く踏み込み、渾身のアッパースイングを命中させる。強制的に閉口させられ、口の隙間から毒液を噴き出しながら倒れるプケプケ。不意打ちの跳躍振り下ろしと、アッパースイングを頭部にクリーンヒットさせられ気絶してしまう。

 

(たった二発で・・・あのハンター化物かニャ?)

 

ビオがプケプケに行った攻撃は二回だけ。にも関わらずプケプケを気絶状態に持っていった。的確に頭を捉える技量、一瞬に全力を発揮する怪力、そして何よりも絶対に仕留めるというドス黒い殺意。歪な心技体を磨いた結果、新人の域を逸脱しかけているのがビオというハンターなのだ。

 

「ッ!ヌゥッ!でぃやぁぁぁぁ!!!」

 

テリヤキがドン引きしている間も攻撃の手を緩めないビオ。立ち上がろうともがいているプケプケに対し、二回の振り下ろしから全力でカチ上げる連係を繰り出し、プケプケの傷を更に深いモノにしていく。

 

「ハッ!オイラも負けてられないニャ!ウニャア!」

 

ここで呆けていては何の為に里を飛び出したのか分からない。オトモ広場から持ち出した「カムラネコノ木刀」でプケプケの尻尾を斬りつける。頭はビオに任せる、というかビオの勢いが怖くて近寄りたくない。

 

───グエッ!ガッ!グァァァァ!!

 

ようやく起き上がったプケプケ。叩かれ続けた頭は原型を留めてはいるが、部位破壊判定は確実。右目は潰れ、視えているか怪しいほど。尻尾の根元もテリヤキが攻撃を続けた成果か、切断には程遠いものの出血はしている。致命傷ではないが重傷。そんなプケプケが次に取った行動は逃走だった。

 

「逃げるか。追うぞ!」

「おー!」

「いや、ここまでで結構ニャ」

 

飛んで逃げたプケプケ。追跡しようとするビオとテリヤキだが、それを制止する声。黄色い毛並みのアイルーことデンコウが二人の前に降り立った。

 

「デンコウか」

「ニャ。あのプケプケが飛び去ったのは里と真逆の方向ニャ。あそこまで徹底的に痛め付けられたら回復まで相当な時間が掛かるニャ。同期さんの目的は百竜夜行ニャから、余計な体力は使わない方が良いニャ」

 

途中から見ていたのか、プケプケの状態を口に出すデンコウ。確かに片目を潰されたのならそうそう人前に出ようなどとは思わないはずだ。轟竜や迅竜といった、傷を負った結果より暴れだすタイプでもなければ。

 

「それに、こちらの目的も達したニャ・・・」

「ギクッ」

 

抜き足差し足忍び足でコッソリ逃げようとしていたテリヤキ。見逃す程デンコウは甘くない。

 

「頭領のお説教は覚悟しておくニャ」

「そんニャァァァァァァ!」

 

崩れ落ちるテリヤキ。その「頭領」がどんな存在かは知らないが、まぁ自業自得だなとドライなビオ。

 

「同期さんもお疲れ様ニャ。里まで案内するから付いて来てほしいニャ」

「分かった。アレは良いのか?」

「大丈夫ニャ。ほら」

 

途中で逃げ出さないようにか、大型の犬か狼のような獣が現れテリヤキの首もとを咥えて持ち上げる。ビオに一礼するように首を下げた後、凄まじいスピードで駆けていく犬狼。あれがガルクだろうか。

 

「さ、行くニャー」

「頼む」

 

デンコウに先導され、カムラの里へ歩き出すビオ。朝になって懐かしい同期達と顔を合わせ、共に百竜夜行へと立ち向かう事になるのだが、それはまた別のお話。

 

 

▽▲▽▲▽▲

 

 

どうしてこうなった

 

静かに眠っていた自分の尾を思い切り踏んだ獣人。報いを受けさせるべく追い掛ければ、忌々しき狩人が乱入してきて目を潰されてしまった。何とか羽ばたき、空を飛んで逃げた。

 

どうしてこうなった

 

狩人は空を飛べない。それをこの毒妖鳥は知っている。何度も狩人から逃げた経験もある。毒を浴びせれば何かの水を飲んで治癒する事も。この毒妖鳥は賢しかった。

 

どうしてこうなった

 

だから思わずにはいられない。生き延びたはずの自分が何故、地に横たわっているのか。何故、狩人から逃げた先に【これ】が居るのか。

 

どうしてこうなった

 

不運としか言えない。納得出来るかなど、これから死ぬ者には関係無い。

 

どうしてこうなっ────

 

 

 

鬼火が爆ぜ、槍が貫く。

一匹の毒妖鳥がその生涯を終えた。

 

その傷痕は、とある狩人が遭遇した蛮顎竜と似ていた。

 

【悪逆無道】此処に有り

されど戦の狼煙は未だ上がらず

未来に立っているのは狩人か怨虎か




百竜夜行での一幕はオリーブドラブ様の「モンスターハンター ~故郷なきクルセイダー~」特別編「追憶の百竜夜行」にてお楽しみください。
ビオ以外のハンター達も大活躍ですよ(ダイマ)

【テリヤキ】
オリジナル。
赤茶の毛並みが特徴のオトモアイルー。
里に戻り、朝になって皆が起床し始めた頃に頭領からお説教された。

【デンコウ】(原作 モンスターハンターライズ)
ウツシ教官のオトモアイルー。雷のような黄色い毛並みが特徴。原作では操作チュートリアルで登場した。
今作においてはビオを里へ案内した。
ちなみにビオに支払うと言っていた報酬は、オトモ広場のフクズクの巣にあった「金のたまご」。百竜夜行終結後にカゲロウの店で換金された模様。

【ライゴウ】(原作 モンスターハンターライズ)
ウツシ教官のオトモガルク。黄色い毛並みと片目に付いた傷が特徴。こちらも操作チュートリアルで登場した。
クルセイダー時空ではウツシと共に同期の一人を迎えに行ったガルクでもあり、この時点では目の傷が無い。

【キツネモドキ】(原作 モンスターハンターライズ)
大社跡のレア環境生物。もちろん正式名称は他にある。夜にビオが立っていた場所に行けば会えるかも。挨拶などのエモートに反応して跳び跳ねたりする可愛いやつ。

【迎えに行った同期】(オリーブドラブ様)
名前はアダイト。原作である故郷なきクルセイダーの主人公。14という若年にしてレウスシリーズを身に纏う少年ハンター。デンコウが例えた「魑魅魍魎」の一人にして筆頭。

【アイツ】(原案 ひがつち 様)
プケプケに魅入られた少女。
本名はフィオドーラ。
モンスターに人生を狂わされたという意味でビオと似ていなくもない。やっぱ似てないわ。
亜種は何か違うらしい。
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