恐れよ、暴れる竜を。狩れ、友の為に。   作:X2愛好家

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切れ端の物語


断片

【再会】

 

「改めて見ると、やはり独特な文化だな」

 

紆余曲折を経てカムラの里へ到着し、独自の文化に驚いているビオ。ガルクを始めとした、狩猟にも密接に関わってくる部分は特に学んで帰りたい所である。と、そんな事を考えながら、何故かオトモ広場の方から歩いて来たビオを見付けた二人のハンターが居た。

 

「お?んー?・・・ダメだ、誰か分からん」

「まだ着いてないハンマー使いだと、ビオさんじゃないですか?というか何故向こうから?あっちにはオトモの施設しか無いって───この匂いは・・・」

 

「やはり居たか・・・」

 

見回りか買い物か、連れ立って歩いていたのは弓使いの男性ハンター「カノン」と緑色の装備が目を引く少女「フィオドーラ」である。フィオドーラの方は何かを感じ取り、ビオは嫌な予感がしていた。

 

「ビオさん?で合ってます?お久しぶりでーすカノンですよ~」

「おひさしプケプケさんの匂いがします。まさか抜け駆けとかしてないですよねビオさん?」

「カノンか、久しいな。フィオドーラは落ち着け、倒したのはアンジャナフとかいう獣竜種だ」

 

カノンは訓練所時代から変わらず軽い雰囲気。フィオドーラは瞳から光が消え、尚且つ目を限界まで見開いている。15にもなっていない少女がしていい表情と気迫ではないと思うのだが。これでさらに貴族の出だと言うのだから何がどうなっているやら。

 

「むぅ・・・間違いなくプケプケさんの匂いだと思ったんですが・・・確かに少し薄いし、どこかですれ違ってただけなのかな?ビオさんの言う事を信じます」

 

やや疑いながらも、一応引き下がってくれたフィオドーラ。素顔の見えているカノンも苦笑を隠せていない。

 

「ビオさんはこっちで案内するから、フィオちゃんは団子でも食べてきなよ」

「そういえば小腹が空きましたね。ではお言葉に甘えて食べてきます」

 

そう言って集会所へと小走りしていくフィオドーラ。プケプケ狂いを一時的に誤魔化せる程には美味なカムラの里の団子と、機転の効くカノンに感謝する。

 

「・・・助かった」

「いえいえ。で、本当の所は?」

「戦闘にはなった。討伐はしていないがな」

 

そう、嘘は言っていないのである。「倒したのは」アンジャナフだけで、プケプケは撃退したのだ。

 

「バレたらヤバいですねぇ・・・確実に面倒な事になるんで言いませんけど。あぁそういや、何でオトモ広場の方から来たんです?」

「プケプケと遭遇したのも徒歩で狩場を経由したからでな。そこでウツシのオトモに会って案内してもらった。ただ夜も遅かったから、門からではなくオトモ用の出発口から入ったんだ」

「なるほど。あの筋肉よりはマトモですね」

「走ってでも来たのか?」

「らしいですよ・・・」

 

冗談のつもりだったのだが、本当に走ってカムラの里にエントリーしたらしい。つくづくクセの強いハンターが集まったな。と同期を評するビオとカノンだが、彼らも他の一般的なハンターから見れば新人の括りから逸脱しかけているトンデモ人材だったりするのだ。

 

「やぁおはよう!!!カノンに・・・ビオかい!?いつ到着していたんだ!!!久しぶり!!!」

「朝イチから騒がしいのが来た・・・」

「訓練所の時より声大きくなってないか?」

 

その暑苦しさで古龍の嵐すら吹き飛ばして晴れにする男ウツシが居た。さすがに誇張だが、やってみせるとも言い出しかねないのがウツシという男である。

 

「お前のオトモ、デンコウに案内されて深夜にな。お前こそ誰かを迎えに行っていると聞いたが?」

「アダイトをね!俺達は夕方を過ぎた辺りに戻って来たんだ」

(となるとテリヤキが無断出撃したのと入れ違いか)

 

テリヤキは先程オトモ広場にて正座させられ、特殊な装備と思われる黒い防具を纏ったアイルーに説教されていた。おそらくあれが頭領だろう。自業自得とはいえ、さすがに説教の追撃は可哀想なので、ウツシにはテリヤキの事は黙っておく。

 

「そのアダイトは?」

「集会所で起きてる他の同期と寛いでいるよ。気を張り過ぎるのも良くないからね」

「あービオさん?さっきから気になってたんですけど」

 

「テリルさんは一緒じゃないんですか?」

 

カノンの一言が、ビオの胸に重い何かを落とす。無論悪意など無い純粋な疑問。それにウツシも乗ってくる。

 

「俺も気になっていたんだ、便りも返ってこないし、ビオとも一緒じゃないし。別の任務に呼ばれて───」

 

「死んだよ。アイツは」

 

自分でも驚くほどに冷たい声が出た。

 

「・・・えっ?」

「死ん、だ?テリルさんが?」

「訓練所を出て、駆け出しの時に恐暴竜に襲われてな」

 

あまり語りたくない話のはずなのに、スラスラと言葉が出てくる。だが【奴】の姿を思い出した瞬間、燃え盛るような凍てつくような、とにかくドス黒い殺意が湧いてくる。苛立っているのか冷静なのか自分でも分からない状態。

 

「今回集まってるのは何人なんだ」

「え、あ、あぁ同期全員に連絡を取ったから30人だ」

「悪いなウツシ。29人に訂正してくれ」

「わかった・・・」

「ビオさん、この事は」

「聞かれたら答えて構わん。別の任務で手が離せないと誤魔化すなり、喰われて死んだと真実を伝えるなり、それはお前達の判断に任せる。俺は事実を言うしか出来ないがな」

 

頑なに外そうとしない鎧、スキュラヘルムの奥でビオはどんな顔をしているのだろう。たった一年と少しで大きく変わってしまったビオ。生存すらしていない彼の相棒だったテリル。恐暴竜という単語、纏っているスキュラシリーズ、腰に提げた轟竜の鎚から、仇討ちの為に相当な無茶を重ねてきたのが分かってしまうウツシ。レウスシリーズに「着られていない、使いこなしている」アダイトと、似て非なる「自戒、使っている」という負の念を感じ、ウツシの瞳に悲しみが宿る。

 

「・・・すみません。知らずにズケズケと」

「すまないビオ。辛かったろうに」

「いや、俺こそ悪かった。勝手に暗い話を押し付けて」

 

払拭しづらい重い空気になってしまった矢先、パァン!と何かを叩く音が響く。ウツシが自分の頬を打った音である。

 

「ヨシ!ビオが到着した事を皆に伝えようじゃないか!聞かれたら正直に答える!それしか出来ない!そして作戦会議だ!守ってもらう場所と組み合わせの最終調整をしないとね!行くぞ!!!」

 

かなり強引に空気をぶち壊したウツシが集会所に走っていく。それを見たビオとカノンは、一瞬ポカンとした後に揃って苦笑する。ああそういう奴だったな、と。

 

「変わらん奴だ、前よりうるさくなったな」

「まぁそこに救われる部分もありますけどね・・・」

「そっちも何かあったか?」

「あらら、お見通しですか」

「共存も感謝もかなぐり捨てて腕を磨いていたからな。何となく同じ匂いがしただけだ」

「・・・ビオさんほど折り合いつけられてないんで、すいません」

「詮索はしないさ。何に生きるかは個人の自由だ」

 

そう言って集会所へと歩きだすビオ。カノンはその寂しげな背中に何を見るのか。

 

「さて、切り替えていきましょうかね。・・・ビオさん!場所分からないでしょ!案内しますからちょっと待ってくださいよ!」

 

訓練所から見せていた軽い雰囲気に戻し、ビオの後を追って駆け出すカノン。この後集会所にて再会の挨拶を交わし、百竜夜行へ備える事になる。ウツシが気を遣ったのかビオとカノンは同じエリアで防衛を担当する事になり、ワケあり者二人による共同戦線が張られるのだが、それはまた別のお話。

 

 

▲▽▲▽▲▽

 

 

【裏方】

 

翡葉の砦にて百竜夜行が撃退され、集ったハンター達が解散して数日。ビオが拠点としているビーハの街にて、彼の帰還を待っている女性が居た。

 

「あぁ~ビオさんまだ帰ってこないのかなぁ」

「それ通算25回目よ」

「毎日言っていますね」

 

受付嬢三人娘である。ビオの帰還をしつこく待っているのが出発時にも見送りをした「ルア」。呆れたように回数を指摘したのが「アーフェ」。書類を片付けながら日課のようになったルアの発作を流したのは「トラス」。

 

受付嬢としての業務が忙しかったのもあり、今までは控えていたが今日のクエストカウンター業務は終了し、ウンザリさせられた分のささやかな仕返しとして「とある質問」をぶつける事にしたアーフェ。

 

「そんなに帰ってきてほしいとか・・・アンタ、ビオさんの事好きなの?」

「アーフェもそう思いますか?私もルアが恋慕しているのだと思っているわ」

 

そう、「ビオの事が好きなのか?」である。ビオとルアの心理的な距離は、他のハンターよりも近いように見えているアーフェとトラス。一人のハンターに肩入れし過ぎるのも良くない為、同僚としても聞いておきたい所というのがトラスの考えだが、アーフェは完全に野次馬のそれ。とても悪い顔でニヤニヤしている。そんな二人への返答は───

 

「二人にそんな目で見られていた事に驚きだよ」

 

驚愕、に少し引いたような感情が混ざっていた。

 

「いやいや!あの距離感は絶対そうでしょ!」

「まぁルアの対人距離は基本的に近いですが」

「う~ん・・・恋人というよりは放っておけない弟?みたいな感じかなぁ」

「・・・ビオさんの方が年上よね?多分」

「ルアとアーフェより年上、私より年下ですね。ギルドカード通りなら」

 

ルアとアーフェが同じ20歳。トラスが25歳で、ビオは22歳であり、受付嬢三人に混ぜればビオがちょうど中間の年齢となる。にも関わらずビオの事を「弟のよう」と言ったルアの真意とは。

 

「ビオさんがこの街のギルドに正式所属になった頃からの付き合いなんだけどね、割と無茶な狩猟する事が多いのよ」

「あー、それは分かるわ。あたしが担当した時も前のクエストからほぼ休んでないっぽかったし」

「問題児、と呼ぶギリギリのラインですね。狩場への移動で体を休めている、で通しますし、その上クエストは今のところ失敗知らず。危なっかしいけど注意のしようが無いというタイプです」

「失敗したのは飛竜の卵の納品くらいでしょ?あれも不安定ですらなかった狩場にいきなり別のモンスターが乱入してきて縄張り争い始まって、運搬が困難になったからだし」

「顛末としては卵の採集は別のハンターに任せて、乱入してきたモンスターの狩猟を改めて受注し直した。でしたね」

「それ!そういう所なの!わたしが言いたいのは!」

 

やや脱線しかけていたアーフェとトラスの思い出話。それに鋭く反応したルア。

 

「ビオさん基本的に良い人だし、採集クエストも引き受けてくれるし、強いし・・・でも、命を投げ出したいように見えるというか、先輩の言うように危なっかしい人っていう印象が強くて」

「あぁ放っておけないってそういう意味」

「確かに、無鉄砲とも臆病とも違う、新人にしては異常な感性と実力ですね」

 

納得した二人。となると後は弟という表現だが。

 

「で、何で弟?」

「わたし弟が欲しくて!」

「想像以上にくだらない理由だった・・・」

「そんな事だろうとは思いました」

「アーフェも先輩も酷くない!?わたし一人っ子だから兄妹姉弟が欲しかったんだよ!」

 

受付嬢三人寄れば姦しい。夜の集会所、書類処理等をするための執務室で会話が盛り上がる三人娘。ガールズトークはどこも共通して騒がしいモノなのだろうか。

 

「小娘共うるさいニャー」

「引き継ぎが済んだらさっさと帰って寝るニャ」

 

ヒートアップしかけた三人娘の騒ぎを窘めたのは二匹のアイルー。酒場の業務を終了し、夜に帰還したハンターの対応をする為の夜勤アイルーである。他にもう一人夜勤の受付嬢が居るのだが、そちらは既にクエストカウンターで対応中らしい。

 

「はーい」

「小娘って言うなニャン公め」

「では引き継ぎは私が、お疲れ様でした」

 

先程までまとめていた今日分の書類を手にアイルーへの引き継ぎを行うトラス。ルアとアーフェは手荷物をまとめて裏口から帰宅していく。ギルド職員の宿舎に辿り着き、また明日ねー、とそれぞれの自室前で別れる。

 

「あふぅ・・・疲れた~」

 

荷物を机に投げ出し、ベッドへ倒れ込むルア。ギルドの看板として身だしなみは整えなければいけないので、水浴びなり何なりをしなければならないが、今日はいつもより対応が多く疲労が溜まっている。

 

「はぁ・・・早く帰ってこないかな、お団子食べたい」

 

色気より食い気じゃないか、とアーフェのツッコミが入りそうだが、疲れている今は甘いものが食べたい気分である。ギルドマネージャーから聞いたカムラの里のお団子と、ビオを思いながら女性用の浴場へと向かうルアだった。

 

 

▽▲▽▲▽▲

 

 

【暗躍】

 

「まさか、こんな形で見付ける事になるとはねぇ」

 

受付嬢達が宿舎に引き上げた後の時間帯。自室にて手紙を読んでいた女性が独り言を呟く。ビーハ街ハンターズギルドのギルドマネージャーである。彼女が読んでいた手紙の内容は───

 

『各ハンターズギルド及びモンスター生息圏の村への注意喚起』

『現在特定の街とその周辺集落、村に対し危険度の高いモンスター出没の注意喚起を行っている。対象となっているハンターズギルド設置街・村は以下の通り。

ビーハ、パルタ、スカスマ、ワイベー、ガッサ、ルービオ及びその付近の人種生活圏』

『かつてワイベー付近の狩猟区画にて、ハンターランクの低い下位ハンターが恐暴竜の襲撃を受ける事件が発生した。さらに先日ビーハからパルタへ行商目的で移動していたキャラバンが、上記の同一個体によるものと思われる襲撃により壊滅する事件が発生。ガッサ~ルービオ間の街道でも同じ被害が報告されており、今回の注意喚起となった』

『現在、上位ハンターを中心とした討伐隊を結成し、恐暴竜の捜索にあたっている。対象個体の討伐が確認されるまでは厳重な警戒と細心の注意を求める』

 

「ここまで大々的に警戒されたら、ビオ坊にも伝わっちまうじゃないか・・・理屈をこじつけて狩場に出ずっぱりになるに決まってる」

 

『特に若年の下位ハンターは留意されたし。同個体は少なくとも三人のハンターを捕食していると思われ、その何れも駆け出し、新人と呼ばれる経歴一年未満のハンターであった事の確認が取れている。若い人間の肉の味を覚えた特異個体の可能性が高く、休息場所を特定次第クエストが発行される予定である。上記の街及び近隣の集落・村に在籍している下位ハンターには一時的な移籍を推奨する』

 

「そんな警告だけで引き下がる男じゃないさ、アレは」

 

起こりうる最悪の展開が見えてしまい、天を仰ぐギルドマネージャー。

 

復讐者の物語は、大きく軋みながら動き始める。

 

 

【美食求めるイビルジョー】

この恐暴竜は後にそう呼ばれるようになる。




【テリル】
イビルジョーに喰われ死亡したビオの相棒。
幸か不幸かカノンとウツシ以外に彼女の不在には触れなかった為、死亡した事実は伏せられている。
別の世界線ではビオと立場が逆になっていたりする。

【カノン・アルグリーズ】(原案 疾風。様)
ロワーガとブナハの混合装備を纏う弓使い。
過去に何かがあったらしく、ビオと共闘した百竜夜行では終結時にビオの「また生き残ってしまった」という発言に同調していた事から、今回のようなやり取りになった経緯がある。

【フィオドーラ】(原案 ひがつち 様)
前回話題に上がったプケプケ狂いの本人。
ビオとカノンに誤魔化された為、結局今回の百竜夜行では愛しのプケプケと出会えないどころか、見掛けてすらいない。

【アダイト・クロスター】(オリーブドラブ 様)
原作「故郷なきクルセイダー」の主人公。今回も登場はしなかった。本当に申し訳ない。

【ルア】
ビオが拠点としている街「ビーハ」の集会所に勤める受付嬢の一人。ビオの出立を見送ったのも彼女。業務は完璧にこなすが、ややポンコツ気味。

【トラス】
ビーハギルド受付嬢の最年長。眼鏡を掛けたクールビューティー。誰とでも、ですます口調の丁寧な姿勢で話す。

【アーフェ】
ルアの同期。外見の特徴は金髪のツインテール。イケメンでクエスト達成率の高いハンターとお付き合いして寿退職するのが目標。
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