誰かの物語の、主人公   作:ひら_

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天皇賞(秋)の後、宣言。

――時間は少しさかのぼり、有馬記念の少し前。

時刻は夕方となり、周りがオレンジに染まってくる頃。天皇賞(秋)直後の商店街。いつものおばちゃんとの雑談。

 

 

「あらあら〜ネイチャちゃんトレーナーさんと二人でデート?熱いわね〜」

「いやいやいやいや、違いますから。レース後に商店街回ってるだけですから!」

「仕方なく…?それにしても仲が良さそうに見えたけどねー?本当にレース後なの?」

「いやだから違うって!普通だから!ふつう!!!っていうかおばちゃんも見たんでしょ!?【天皇賞(秋)】!!アタシも出てたの知ってるでしょうに……」

「冗談だって!ネイチャちゃんお疲れ様!かっこよかったよ!」

「はいはい…ありがとうございます…毎回この下りやるのやめてもらえませんかね…」

「トレーナーさんとそういう風に見られるのは満更でもない、みたいな顔してるのに?」

「ちーーーがーーーいーーーまーーーすーーー!!!!」

 

いつもそう見えてしまうのかアタシは。

少し、感情を顔に出さないようにする練習が必要かもしれない。…ポーカーフェイス、ポーカーフェイス。

口角が上がらないように指で下す動作をする。実際、少しだけ口角が上がっていた気がした。

 

……いや、別にご機嫌なわけではないですけど。変な誤解されても困るしね?うん。

 

――商店街の人と戯れていると、アタシのもとにあるウマ娘がやってきた。…トウカイテイオーだ。

 

「あれー、ネイチャじゃんっ!担当トレーナーとおでかけ?なっかよしー♪」

「テイオー…!いやいや、全然今レース終わりなんですケド。だからこれは普通、普通だから。」

「そうなの?お疲れ~!ボクはカラオケでライブの練習してきたよー!ネイチャも、今度の有馬記念のライブの練習、ちゃんとやっておかないとだぞー!」

「え……知ってたの?」

「ワガハイは情報収集にも手抜かりナシなのだ!最近のネイチャの調子見るとありそうだな、って思ったんだ!」

 

あのトウカイテイオーが、アタシのことを意識している。

今まで、アタシのはるか先を行っていて相手にもされないと思っていたテイオーが。

 

テイオーはアタシを見て、挑発するような表情でこう続けた。

 

「……あのさネイチャ。教えてよ。

キミは……全部を賭けて、ボクに勝つ気はあるの?」

「――――っ!!」

 

「ボクが自分を超え続けるために。最高の相手がそろう舞台で圧倒的に勝つために。

 ――生半可な覚悟で挑まれちゃ、勝負にならない。」

 

テイオーは本気だ。

アタシとは全く違う。勝ちに貪欲な態度。

 

トウカイテイオーはキリっと眉の頭を下げ、真剣な表情でこちらを見る。

冗談とか悪ふざけとか、そういう話ではなさそうだ。

 

「……それ、は――――」

 

言葉に詰まる。

アタシは、【天皇賞(秋)】で自信が付き始めていたし、それに実際、テイオーに勝ちたいと強く思っている。

 

だけど、ここでテイオーに勝つと宣言すること。

アタシは本気なんだと宣言すること。。

 

それはつまり、

【まだ本気じゃないから】【伸びしろはある】【これがアタシの全部じゃない】

こんな風に言い訳をできなくするということ。

 

そんなもの、宣言できるわけがない。

…今のアタシでは言うことができない。

 

けど、アタシは、昔のままなんかじゃない。弱いままなんかじゃない。

キラキラしたい。そう強く思い始めてる。

 

だから、【アタシは本気じゃない】なんて、

――【テイオーに勝つ気がない】なんて、言いたくない……!!

 

 

ナイスネイチャが言い淀んでいると、見知ったおっちゃんが割り込んできた。

 

「――ネイちゃんが、負けるわけないだろうっ!!」

「…え、は?おっちゃん……ってか、みんな!?」

 

周りに、商店街の人たちがたくさん集まっていた。

テイオーの話を聞きつけ、駆け付けたのだろう。

 

「なに黙ってんだよ、ネイちゃん!この嬢ちゃんはアンタを挑発してるんだぞ!」

「うちらを遣り込める勝気さはどうした!負けないっていってやりなって!」

 

商店街の人たちの言葉が、強く、熱くなる。

 

「ネイちゃん、アンタは強くなった!」

「オレたちが付いてるんだ!何も怖がることなんかねぇ!」

 

――「今のアンタは、誰にも負けやしない!!」

 

それを見たテイオーは、――にやり、と笑っていた。まるで、これを見越していたかのように。

アタシにだけじゃない。テイオーは、商店街の人たち全員に挑発したんだ。

商店街の人たちをそそのかし、アタシを応援させるために。

アタシのホントの気持ちを、引き出すために。

 

 

「周りは関係ないよ、ネイチャ。

 

 ――――キミはどう思ってるの?」

 

 

 

もうすでに逃げ道はなかった。

昔みたいに、ゆるくかわしてあいまいにすることなんてできやしない。

 

「う、うう……うう~~!!」

 

キラキラしたいという思いに、手が届きそうな夢に…嘘をつくことなんてできない。

…それなら。それならば。

 

「ぶちかましてやれ、ネイちゃん!!」

 

 

「――あー……!!もうっ!!!」

 

…わかったよ!!言うしかないのであれば!!

言ってやる!!言ってやるとも!!

 

 

「――勝つよ!!

 アンタに勝って、アタシだってキラキラしてやるーー!!!!」

 

 

…そう。アタシは宣言してしまったんだ。

トウカイテイオーに、あのキラキラウマ娘に勝つって。

 






ネイチャ育成シナリオとの整合性を持たせるために、一部セリフを意図的に合わせてます。
…問題あれば教えてください…。
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