【各ウマ娘、そろってきれいなスタートを切りました】
【期待どおりの結果をだせるか?一番人気、トウカイテイオー!
先頭は1頭、単身で飛ばしていきます。トウカイテイオーは先頭から4番手の位置です。
――先頭から団子状態となり、1週目の直線に入っていきます。
スタンドの大歓声に迎えられながらウマ娘たちが走り抜ける!】
「ネイちゃーん!!」
「ネイちゃん、行けー!!」
ウマ娘が会場の前を走り、会場の歓声が大きくなる。
ナイスネイチャは中盤よりやや後方。トレーナーがネイチャを見守る横で、商店街の人たちの熱のこもった歓声が響いていた。
とはいえ、この会場の声がウマ娘に届くことはめったにない。
一人の歓声だけでなく、様々な人の思いと声が会場中で混ざり合っているからだ。
当のナイスネイチャ本人はというと、とても真剣な表情で走っているように見えた。
第三者から見れば、とても集中している状態と言えるだろう。
『――――…。』
――それは、ナイスネイチャのトレーナーから見ても同じなのだろうか。
――――――――――――――――
【残り1000mを通過。2コーナーまわって向こう正面。
集団が一つにまとまって、混戦状態です!】
アタシの位置は大体中盤あたり。先頭で逃げるウマ娘の脚が遅くなり、先頭を別のウマ娘が奪っていく。
集団が一つにまとまった状態。誰が抜け出してもおかしくないし、後ろで抜け出すことのできないウマ娘もいるだろう。
トウカイテイオーとアタシは、仕掛けるタイミングを虎視眈々と狙っていた。
レース終盤、4コーナーに差し掛かった時。
そろそろ、ラストスパートをかけるウマ娘が出てくる頃合いだ。
【外をついてスーッとトウカイテイオーが上がっていく!】
トウカイテイオーが上がっていくのを見ながら、アタシはあわててすぐ後ろに追いつこうとする気持ちをぐっとこらえる
ここで上がっていくのは想定済み。テイオーのいつもの勝ちパターンだ。
この前まではテイオーにつられてスパートをかけてしまって、うまく脚を生かすことができなかったんだ。
…つられるな。
…あわてるな。
まだ。まだだ。スパートをかけるのは今じゃない。
アタシの脚を最大限生かせるのはまだ。
あと少し……
前のウマ娘が内にずれ、外に出るルートが見えた。
――「今だっ!!!」
ラストスパートのためにためていた脚を爆発させる。
今までのアタシとは違う。いつも以上に力が脚にかかる。
【ナイスネイチャ!!外を回していい脚で上がっていった!!】
トウカイテイオーは少し先を行く。
近いようでとても遠い。
でも、アタシには勝てるだけの素質があるんだ。
近づくんだ。
追いつくんだ。
3着でもアタシらしい。じゃない。
負けてもいい。じゃない
負けないようにする、じゃない。
3着じゃダメだ。2着でもダメだ。
勝つんだ。
…そう、勝つ。
何回でも繰り返す。
全部を賭けたんだ。
宣言したんだ。
勝つ!!!アタシは、勝つ!!!!
――アタシは!!テイオーの先に行く!!!
――――――――――――――――
ドクン、ドクンと、アタシ自身の心音が響く。
はぁ、はぁ、と、自分の息遣いが聞こえる。
脚に力はかかっている。
全力を出している。
…だけど。
【ナイスネイチャ。スパートをかけたようですが伸びが足りない!トウカイテイオーとの距離は2・3バ身!!】
――――届かない。
――――距離の差は、縮まらない。
…なんで?
アタシは最高の状態なのに。全力を出しているつもりなのに。勝つつもりなのに。全部賭けているのに。
テイオーの先には行けないし、追いつくことすらできない。
これは努力の差?
いや、違う。アタシは努力してきた。テイオーに勝つつもりで。先を行くつもりで。
これが努力の差でないのなら。
…アタシに、残酷なまでの現実が突きつけられる。
――――これが、才能の差なのかな。