友達と話すと喧嘩になる競馬のススメ   作:soiso

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テイエムオペラオーと愉快な仲間たち

 競馬おじさんはITが大嫌いである。

 スマホを持ち、You Tubeを眺め、コンピューター制御された車に乗りながら、常にITに対する憎悪を滾らせている。

 紙こそ至高のツールと信じてやまない競馬おじさんは、現場に携わる人間として、「お前画面割ったことないの?」の一言で解決出来ない現状に絶望している。

 

 

ピロリンッ!!

 

 

 とりあえず、FAXを写真で取ってメールで流すな。

 それはITじゃない。

 

 

 指示待ち人間を嫌う風潮があるが、指示待ちしないで動くと責任を取らされる罠。

 現場というのは常に未知で溢れている。

 予想して当てるゲームである競馬に予想外が多いのはいかがなものかと思わないではないが、仕方のないことである。

 冗長性の確保。

 これは馬券を買う上でも仕事をする上でも大事なことなのだが、SE連中は一言で馬鹿にする。

 

 

「そんなん出来ませんよ」

 何なら出来るのさ。

 

 

 七冠馬になれなかった覇王、テイエムオペラオー。

 お前、そんなんになっちゃったのか筆頭。

 ド真面目秀才。

 地味。

 スター性がない。

 栗毛。

 真面目にコツコツしてたら無敗で古馬重賞完全制覇と獲得賞金世界一になってた労働者の鑑。

 You Tubeにて彼を名乗る彼女を見た瞬間、競馬おじさんは化けて出たと思った。

 真面目な奴ほどこうなるの典型。

 同情とも憐憫とも違う複雑な感情に支配され、競馬おじさんは混乱した。

 美少女だからって男の子向けってわけじゃない。

 世の中、多様性である。

 

 

 地味ではあっても八連勝馬。

 生涯、掲示板から外れなかった馬である。

 これほど地力の強い馬もいない。

 2着以下がイツメンとか言われていたのは、それだけ匹敵する馬がいなかった証拠だ。

 負けた馬さえそうだというのが、この馬の堅実で隙きのない試合運びを思わせる。

 奇をてらう戦法など許さない競馬。

 横綱相撲の極み。

 その当時は全然評価されないで、最近盛り上がってきたなどと言われるが、そんなこともない。

 ただ、競馬はギャンブル。

 金を賭けた人間が冷静になるには時間が必要なのだ。

 

 

 しかし、これだけ小ネタ仕込まれたコンテンツで構成要素のほとんどがオペラ。

 競馬おじさんは動揺している。

 

 

 ディープインパクトとテイエムオペラオー。

 主戦乗り替わりなしの馬である。

 世代が弱かったと言われる2頭。

 確かに性能は飛び抜けていたが、それだけで勝てるなら芦毛のアンチクショウが負けるはずがない。

 アレは本当に規格外である。

 どちらも優駿であったがために、全てを敵に回して戦った。

 競馬はあまり負けた馬の解説をしないが、この2頭のレースを見ると競馬でどう勝つかがよくわかるようになっている。

 数多の戦術を、騎手の腕や馬の地力が捩じ伏せる様はなかなか見応えがある。

 特に騎手が一体となって馬の評価に繋がっているので、初心者にもオススメなのだが、あれが普通と思い込んではいけない。

 普通のエンジニアと予算ではFFもドラクエも作れないんだ。

 

 

 最終直線でヨーイドン。

 競艇と違って、このとき馬群はバラけている。

 この瞬間こそが競馬の醍醐味だ。

 ここでどこにいるかが、騎手の腕と判断。

 それに従えるかが馬の能力であり、度量。

 ディープインパクトが大外を回ってそこにいる。

 その驚愕と絶望。

 それまでのいかなる苦闘も駆け引きも、一切合切が無に帰す。

 それがディープインパクト。

 それが天才。

 

 

 つまり、そこにいなけりゃ勝てる。

 

 

 円周を求めるために簡単な計算をしてみよう。競馬場は基本的に楕円だが、面倒だし、数式の構造は同じだ。

 半径を2倍して円周率を掛けると求められるのが円周。つまり、競馬場の距離である。

 ここからわかるように、1m外に出るだけで距離が2×3.14増えるのだ。

 直線部分は平行であるから同じとしても、コーナーではちょっと外に出るだけで6.28mのディスアドバンテージ。

 1馬身が2.4m、0.2秒であることを考えると、コーナーで仕掛けようと思えば、最低限3馬身弱を縮める力量がいる。

 遠心力を考慮すれば確かに外有利だと言われるが、人間の陸上でトラック競技のスタート地点を見て欲しい。

 あのような並びでなければ、ゴール地点を横一線に出来ないのだ。

 そのゴール地点こそが、競馬における最終直線でヨーイドンする位置である。

 ここに至るまでの間は推進力が遠心力と拮抗し続ける。

 遠心力はカーブの外側に働くため、進行方向とは決して一致しない。

 トップスピードに乗るのが0.2秒遅れただけで、1馬身差がつく世界である。

 馬群に塞がれないなどの点を含めても、大外が不利であることは変わらないのだ。

 この不利を背負って勝ったのがディープインパクトという馬であることは確かだ。

 逆にこの不利を背負わねば戦えない馬であったのも確かなのだ。

 

 

 ディープインパクトが皐月賞を取って15年以上の月日が流れた。

 スタートで躓くディープインパクトに、競馬おじさんは心から共感する。

 あれはなんにもない場所でおじさんが転びそうになる現象と同じだ。

 イメージに体がついていっていないのだ。

 どんだけ逸っているんだこの馬は。

 スタート直後に騎手がブレーキかけないと転ぶ馬とか、ドジっ子にもほどがある。

 本当に乗ってるのが天才でよかった。

 追い込み以外を選んでいたならディープインパクトは死んでいる。

 

 

 あのレースでは同じようにスタート下手のアドマイヤジャパンが第一コーナー前で先行集団に加わる勢いで、実況を驚かせていた。

 後ろの状況を把握していたかはわからないが、先行集団はとにかく前に出る展開。

 アドマイヤジャパンは外枠ながらスルリと内に入る。

 中団後ろに付けていたマイネルレコルトも、向こう正面に入るなり仕掛けている。

 ディープインパクトが上がって行くのを見て、ダンスインザモア他もとにかく前へ。

 実質、4頭が逃げるのをアドマイヤジャパンらの先行、ヴァーミリアンらの中団の境なく追いかける。

 ラップタイム11〜12秒は速い方ではあるが、だからこそこのように詰まった形は珍しい。特にシックスセンスは後ろからの競馬を教えてきたという馬だが、明らかにディープインパクトに合わせて中団にまで上がっている。

 一方で残る馬もいた。ペールギュントやアドマイヤフジなどだ。

 おそらくだが、彼らはペースや先頭での競合いを見て、必ず前は開くと判断したのだ。

 それは先行のアドマイヤジャパンらも同じだっただろう。

 スタミナを消耗した馬はどうしてもコーナーで外に流れる。

 アドマイヤジャパンはそれが3コーナーだと判断したのだと思う。

 しかし、それは起こらずマイネルレコルトが外を躱して行こうとした。

 本来なら楽に抜けて再び内に切り込むつもりだっただろう。

 しかし、ビッグプラネット、コンゴウリキシオー、エイシンヴァイデン、ダイワキングコンの4頭が最後の最後まで粘り切った。

 唯一、躱されたダイワキングコンでさえ、4コーナー手前まで順位を譲らなかったのだ。

 中でもビッグプラネットは、内ラチ沿いをなぞり続ける見事な騎乗。

 小回りは遠心力が強く働く他、スピードを維持するには足さばきも必要になる。

 柵という目に見える脅威や他馬の圧力、遠心力に耐えながら、さらにラップは再び11秒台へ加速しているのだ。

 そこにディープインパクトが来た。

 ここで一並びになったがために、アドマイヤジャパンは外に持ち出さざるを得ず、ダイワキングコンにもマイネルレコルトにも塞がれて加速が遅れる。

 この直線勝負でマイネルレコルトは耐えきれずにヨレた。これに助けられたのがアドマイヤジャパン。ダンスインザモアはディープインパクトの内から差そうとしたところを塞がれて、逆に沈んでいく。巻き込まれてスキップジャック、ローゼンクロイツ。

 ペールギュントもヨレたコンゴウリキシオーらに塞がれて内を抜けるのに手間取った。

 ヴァーミリアンやトップガンジョーに至っては未だに粘るビッグプラネットを躱すので精一杯だ。アドマイヤフジやタガノデンジャラスはディープインパクトよりも大外を回る事態に。

 そんななか、どうしようもない場所に迷い込んだストラスアイラと単純に伸びないパリブレスト。

 勝負どころに絡んでくる馬が多過ぎる。

 弱いというなら1頭ぐらい盤外でお散歩していればいいものを。

 と思えばしれっと、なんの邪魔も入らない代わりにディープインパクトの後ろを行くしかないシックスセンスが2着に飛び込んでいった。

 

 

 出遅れたディープインパクトが圧倒的な実力を見せたと言われる皐月賞。

 しかし、逸る馬を落ち着け暴走を防ぎながら前へと運ぶのは至難の技だ。

 だからこそ、細かな技術の必要ない、力技の外一気に頼るしかない。

 それに勝つためには長い距離を使って少しでも先を行く根性か、内を抜ける技術と度胸が必要だ。

 それが出来ない馬が揃って、この展開が生まれたか?

 勝利を手に入れたのはディープインパクトの実力だが、名手たちを阻んだのは今では無名の馬たちの譲らぬ姿勢である。

 呪われたとも言われるが、40戦、50戦と戦う猛者たちもここにいた。

 あの日ペールギュントに賭けた競馬おじさんは歯噛みする。

 競馬のわからない奴らが勝手を言う。

 負けた言い訳に馬を使う。

 18頭、どの馬だって簡単に勝たせてくれるもんか。

 

 

 弱い馬などG1に出場しない。

 

 

 五年目のヒヨッコが、良血でもない馬が、自らセリにも出せない零細牧場が、人に頼らず自分で何もかも選ぶ外様の馬主が、重賞を荒らし回っている。

 これで闘志を燃やすベテランや良血や大手や馬主がいないわけない。

 追って追われて、差し差され、丸一年。

 有馬は必然だったというが、競馬おじさんはそうは思わない。

 あれが必然だとしたら、悲し過ぎる。

 

 

 あそこにいるならそりゃ勝つだろう。

 

 

 一年あった。

 あのステイゴールドが逃げた。

 前を塞げば大外回って差された。

 外を塞げば真ん中を突き抜けた。

 乗っているのは未熟な若僧。

 全ての戦術が面白いように決まって、馬がそれをねじ伏せた。

 何をどうしようとも残る、どこからでも飛んでくる末脚。

 競合いで勝る闘争心。

 もはやこの馬に勝つビジョンなど浮かばない。

 それでも有馬でなら勝機はあった。

 弱点は明らかで、一度は成功した。

 互いに示し合わす必要もない。

 あの若僧が標的だ。

 さあ、どうする?

 

 

 中山の直線は短いぞ。

 

 

 馬としての能力なら、テイエムオペラオーはディープインパクトに勝る。

 上がり3ハロンが1馬身差なら、理論上外を回るディープインパクトに勝てる道理はない。

 先に皐月賞を見たが、ああなってしまうから大外一気も戦術となる。

 しかし、テイエムオペラオーはあそこを抜けて来るのだ。

 そもそも、弱い馬が一番有利な内沿いを守れるわけがないのだから、ディープインパクトが勝利を重ねた事実こそが世代の強さを証明している。

 では、テイエムオペラオーの世代は弱かったのか。

 馬の名前を連ねるだけで話は終わる。

 弱いわけがないだろうが。

 競馬おじさんはぷんぷんである。

 

 

 それでお前、なんでホットシークレットやねん。

 悪い馬どころか、もの凄いいい馬である。

 単純にちょっと速さが足りないのじゃないかという程度なのだが、前回が前回である。

 逃げを打つステイゴールドと追いすがる先行集団。中団はテイエムオペラオーを押し込んだまま、長い直線に賭ける展開。

 馬群に沈むテイエムオペラオーの最終コーナー。外を塞ぐイーグルカフェをよっこらしょと押し出して、直線で加速を始めると一気に追いつき、並び、競合い、飛び込んだ。

 これを中山で出来れば距離的に優位というのはわかるが、条件はみな一緒である。

 ディープインパクトの皐月賞と同じく前詰まりの展開になるのは目に見えた。

 そうでなければテイエムオペラオーを抑えられてもメイショウドトウ他、有力な先行馬が揃って先着してしまう。

 この先行が強いというのは逃げ馬にとって非常に厄介だ。競りかかられてはスタミナを消耗して二の脚が残せない。

 耐えられるとしたら確かにホットシークレットぐらいだろうとはわかるが、縦長の展開は無理だろう。

 あの癖者が吹いてんのもなんか嫌な予感。

 3年付き合えば、始まる前からこの調子だ。

 ちなみにこの前提が成り立つのは、テイエムオペラオーの鞍上が若僧だからである。

 

 

 なんで毎回そこに飛び込むかな、お前。

 

 

 有馬の包囲網は大手が主犯だと言われる。

 しかし、競馬おじさんにしてみれば犯人は明らかである。

 あの野郎、逃げ宣言をしながら後ろに抑えたのだ。

 騎手というのは馬の能力を引き出して一流。

 レースを動かせて超一流である。

 ディープインパクトを大外から間違いなく、勝てる位置に運んで来る。

 そう思わせたからこそ、熾烈な内争いが起こった。

 アドマイヤジャパンが待てないと直線で外に持ち出したのは馬の能力もあったが、ディープインパクトがそこにいるという確信が間に合わないという思いを強くさせたからだ。

 それで言えば若僧は一流にはなれても超一流には程遠い。

 テイエムオペラオーはどこにいても勝つような馬なのだ。

 それを信じて突っ込んで行けるというのもそれはそれで凄いのだが、シンボリルドルフと違ってテイエムオペラオーは騎手の言い分も尊重してくれる人のよい馬なので絶対にはなれなかった。

 つまり、未熟な若僧が素直さを捨てて馬を疑えば勝機は見えるのだ。

 それは成功した。

 テイエムオペラオーはいつものように馬群の中へ。

 ペースを作るはずの馬が後ろにいるために、騎手たちの選択はオペラオーより前かつ、内沿いとなる。

 逃げは打てない。

 どんな展開でも勝てる馬のスタミナが優れていないわけもなく、ドトウやトップロードやゴーイングスズカもツルマルツヨシもステイゴールドも。とにかく、こいつらを置き去りに出来る能力はもちろん、戦術だっていきなり用意は出来ない。

 となれば、マークを選択した馬も含めてガッチガチに固まってしまうのは予想出来なくはなかった。

 だが、まさかという戦術である。

 出来ないと思ったらとことんやらない男が、出来ると思った時、とんでもないことを仕出かす。

 天才に並ぶ奇才。

 思わず立ち上がる若造。

 観客席の真ん前で、大外を走りながら馬群の様子を眺めるあの野郎。

 確信犯だ。

 奴が黒幕だ。

 この男があの包囲網を作った。

 天才が外を塞ぎ、まさに道は消えたはずだった。

 第三コーナーに入り、スピードを上げ始める各馬。

 何故か大外から内二つ目にいるホットシークレット。

 直線を前に、末脚自慢達に鞭が入る。

 明確な逃げがいなかったために、どの馬も脚を残している。

 とんでもないデッドヒートだ。

 人も馬も前へ、前へと駆け抜けようとするなか、オペラオーが何をしていたか。

 レース直前のちょっとした事故で左目が見えなかった彼は、ただライバルであったドトウを見つめていた。

 道など最初から見えていなかったのだ。背中で懸命に急き立てる若造をあやしながら、ペースを上げていくドトウを追いかけていく。

 最後の第4コーナー。直線に入る直前で、オペラオーはドトウの後ろから僅かに内に斬り込んだ。

 馬体の左側。今のオペラオーには見えない位置。

 全力で首を振って加速しなければならない直線で、オペラオーの首はドトウの方向に向いている。

 そして、辛うじて見える右目の視界からドトウが消えた瞬間、オペラオーと騎手の動きが一致した。

 オペラオーは知っていたのだろうか。ドトウならば、馬群を避けても前に行けると。その内に入れば勝てると。

 まさかそのように考えたのだろうか。

 あの絶望的な包囲網の中で、唯一の道がそこだった。

 

 

 わけではない。

 ダイワテキサスの後ろから付いて行って、直線でちょっとだけドトウを押し出したのだ。

 そう、前回のジャパンカップと同じだ。オペラオーは他の馬をどかしてしまうのだ。天才は流石の制御でそれを防いだが、前にいたオウドウは躱せなかった。

 その隙きをついてオペラオーはドトウの内に付いた。手綱のようにも見えるがバランスを崩したようにも見える。左目が見えないので、わざわざ顔を向けてガンを飛ばした。馬ならば、あの位置でも見えただろう。ドトウが顔を反らしながら、外にヨレた。

 後はもう、オペラオーがお気に入りのリュックに忖度して飛び出して行くだけである。

 

 

 普通の騎手なら諦めるような状況だったが、鞍上はどれだけ塞がれていようとも馬を急き立てた。勝てる馬に乗りながら、勝てない騎手だった。

 だから、若造は馬を信じて勝ちに拘った。

 奇才の策はならなかった。最終直線で伸びなかったのは仕方がないとしても、ほとんど最内で最高の位置にはいたのだから仕事はした。

 逆に言えば、自分が勝つための作戦だった。賭けではあったが、あんなことをすればみんなが迷う。

 迷えばスタミナで勝るホットシークレットの土俵だった。前回の包囲網が頭に残っていれば、中山の構造上、若造は焦る。馬の能力を活かせない騎手に勝てる道理はない。

 しかし、迷いはしても歴戦の騎手たちは乗らなかった。あの展開は決してオペラオーのためのものではなかったのだ。

 オペラオーをマークしたのは、天才の判断ミスだ。あの馬の側にいて、並の馬は前に行けない。

 実際、直線でオペラオーから離れた後のアドマイヤボスは素晴らしい末脚を見せた。

 もっと前に位置するか、焦る若造の好きにさせればあいつだけが奇才の罠に嵌っただろう。誰もが賢い選択をしている中に未熟な若造を押し込めたのは、天才もまた未熟だったからだろう。

 馬群のど真ん中にいるのはいつもの若造で、馬群が固まったのはレース展開によるものだ。オペラオーがいつもの場所からいつものように蹴散らす、盤石のレースだ。

 社台包囲網など存在しない。あの馬を勝たせたくないと思うなら、あんなやり方ではダメだとわかっていた。

 だから、みんな馬の持ち味を活かそうとした。いつものメンツでそれぞれが得意なことをすれば、あの結果になるのは当然のことだ。

 事前の取り決めなどぶっ飛ばした偶然による凡庸な激戦。

 それが有馬の真実である。

 

 

 プログラムにしろシステムにしろ、事前に状況を想定して綿密に作り上げておかなければならない。

 だが、状況などつぶさに変わるのに、状況に合わせるのではなく、プログラムやシステムの方に合わせなければならない。

 何故ならプログラムやシステムは変更に多大な手間がかかるからだ。

 管理者には便利だろうが、現場としては不便極まりない。物事は予定通りになど進まないのだ。

 状況に合わせるだけでは、結果はでない。有馬に参加した綺羅星の如き馬たちがそうだ。

 状況に合わせられなければ、能力があってもしなたがない。天才がそうだ。

 逆に能力がなければ、状況を作っても結果は伴わない。奇才がそうだ。

 能力がなくても、状況にマッチングさえすれば上手く行く。若造がそうだ。

 能力があれば、どんな状況でも結果は出せる。オペラオーがそうだ。

 ITには能力がなく、状況にマッチングしない。

 創意工夫がプログラムやシステムを構築する場面でしか発揮されず、現場からのフィードバックを活かせないというのは、別にデジタルでなくとも毎日顔を合わせる上司連中と変わらないじゃないか。

 上司だけでなく、デジタル機器にさえご機嫌伺いをしなければならない仕事などゴメンである。

 少なくとも、出来ないことが出来るようにならないのであれば、おじさんはITなんか死んでも歓迎しない。

 ブラックになるのは時間を使うからだ。頭を使え。若造ども。

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