ライスシャワー×マンハッタンカフェ ウマ娘アンソロジー 作:ぴちかー党
それは・・・
「これでよしっと。カフェー、お留守番頼んだよ」
朝食の作り置きが終わり彼女を起こさないように、そっと呟き部屋をあとにするアグネスタキオン。彼女にしては珍しい約2ヶ月ぶりの外出であった。
普段は研究室に引きこもっている彼女だが、ふと気まぐれに日が昇る前から外出をすることがある。無論どこに行きなにをしているのかはわからない。やはり日の光が恋しくなることが彼女にもあるのだろうか?
彼女が出掛けた数時間後、太陽が高く昇りきった時間に漸く彼女は目をさます。
そして起き上がって、ぼんやりと空の景色を眺めている
(タキオンの姿が、見えません・・・)
まだ眠り足りないと言いたげに、小さな欠伸を何度か続ける。
眠たげに目を擦りつつ、ソファに座る。そこで、作りおきの朝食とそばにおかれた置き書きを発見する
(珍しいことがあるものです、タキオンが一人で外出・・・今日は夏ですが雪が降るかもしれません)
そんな突拍子も無いことを考えながら、冷めきったトーストとコーヒーを口に運んでいく。
「ごちそうさまでした・・・」
行儀よく手を合わせ、調理してくれた者への感謝を示し、そして自室へとあとにする。どうやら、彼女達の部屋では調理全般はタキオンが担当しているようである。
(さて・・・ライスさんが訪ねてくる時間はまだ先ですし、いつも通り空の景色を楽しむのも悪くありませんね。おや・・・あれは?)
彼女の視界がベランダの{あるもの}を捉える。
(あれは・・・タキオンの勝負服。お日さまのいい薫りがしてそうです)
今朝日干したであろうタキオンの真っ白な研究衣装。
迷いなくそれをベランダから取り込み、リビングに持っていくカフェ。その表情が、彼女の耳が、そして尻尾が小刻みに動いている。何だか少し嬉しそうに見えるのは気のせいだろうか。
「準備は完璧です・・・」
タキオンの勝負服を綺麗に正方形に折り畳むと、まるでクッションがわりにでもするように畳んだばかりのそれに顔埋めている
(・・・洗い立ての柔軟剤、そして干したばかりのお日さまの薫り。いい匂いです。)
どれくらい経ったであろう・・・
何かを思い付いたように、カフェはタキオンの勝負服を自身の勝負服の上から着てしまった。
(干したての・・・まだ少し残っているお日さまの温もり。たまりません)
先程よりも、耳と尻尾の動きが忙しなく動いているのは嬉しさの現れなのであろうか・・・
マンハッタンカフェ。どうやら彼女は洗い立ての、そして日干しした直後の洗濯物を見ると、取り敢えず顔を埋めそして試着し、その素晴らしい着心地・お日さまの匂いを楽しみたい衝動に駈られるようだ。
無論、他の馬娘(特にタキオン)がいるときには、自制心が勝るようだが・・・今回のような場合は
欲望には叶わないらしかった。
そうして、衣装をつけたまま彼女は、椅子に座りタキオンの部屋から持ってきたであろう試験管にコーヒーを淹れてみたり、ビーカーにコーヒーとミルクの入った試験管をいれ、ガラス棒でかき混ぜてみたりと、タキオンの真似事をしている。
けれども、直ぐに飽きた様子で窓の景色を眺めている。
そんなにも好きでないのになぜタキオンの真似事など実行しなけければならなかったのか?なんという事も無い、ただ、ただ、その白衣を着たからには研究者の心境を味わってみたいという、いわば単なる思い付きからである。
そうして、空の景色を眺めていると何の前触れもなく彼女はやってきた
「カフェちゃーん。あ、遊びにきたよ・・・」
「あ・・・ライスさん・・・」
カフェの表情に露骨に「やってしまった」という感情が滲み出ている。タキオンと自身の勝負服、白と黒のコントラストに包まれた自身の姿をライスに目撃されてしまったのだ。
「ふあぁ~。カフェちゃんどうしたのその衣装?」
「・・・ライスさんこの事は、2人の秘密にしてください」
「えっ・・・ふぇ」
「・・・秘密にしてください」
何が何だか事態が掴めない様子のライスであった。しかし普段のカフェには感じられない並々ならぬ何かを感じとり、ひとまず快諾し事情を聴くことにしたようだ
「あのね!ライスもその気持ち・・・と、とってもわかるよ」
「・・・ライスさん」
「ライスもお日さま薫りのする衣装を着ると、がんばるぞーって気持ちになるよ」
「・・・どうやら、理解者が居てくれたみたいで安心しました。
ですがライスさん・・・先程も言いましたが絶対に2人の秘密にしてください。特に・・・」
続きを言おうとしたその時、いいかけていた人物。その張本人の声が玄関から聞こえてきた
「カフェ、帰ったよ~。おや?ライスちゃんもきてるんだね」
早すぎる彼女に帰還にライスとカフェはあわてふためいている様子であった
「ど、どうしよう・・・カフェちゃん」
「ひとまず・・・リビングの鍵を閉めてください。時間を稼ぎます」
「う、うん!!」
「カフェ~?ライスーちゃーん・・・おや?
おーい、鍵を開けてくれ給えよー。昼寝でもしているのかーい」
タキオンの幸運な勘違い、カフェとライスは顔を見合せお互いに頷きそして、
「ちょ、ちょっと待ってくださいーい。今あけまーす。フ、フア~」
大根役者顔負けのライスの演技で、出来るだけゆっくりゆっくりと扉に近づき・・・そしてカフェが着替え終えたタイミングを見計らって鍵を開ける。
「もう、君たち。こんな日も高いうちから昼寝なんて感心しないなー
それに、たかが昼寝で鍵をかけるなんて用心過ぎるとおもうけれどね」
「ご、ごめんなさい。ごめんなさい」
「あ、いや、ライス君が謝ることじゃないよ。それより・・・あっ!!やっぱり」
そういうと、タキオンはカフェの正確には先程衣装を置いたテーブルに向かっていく。万事休すか?そう思った二人であったが・・・
「カフェ何時も言ってるだろう?朝食が終わったら自分で片付けてくれって。」
「・・・そっちですか。良かったです」
「全然良くないよ。全く、結局何時も通り今日も僕が片付けるはめになるんだから」
口では文句をいいながらも、台所に向かい洗い物を始めるタキオン。
そんな彼女を横目でおいながら、二人はホッと小さく息を撫で下ろすのだった。
そうして・・・
「今度は二人で衣装の洗いっこしようねカフェちゃん。」
「はい・・・約束です。」
なんとも奇妙な約束を契り、彼女達の1日は過ぎていく
=====オマケ=====
「カフェ!君、僕の試験管でコーヒーつくったでしょ」
「すみません・・・美味しいブレンドコーヒーが出来ると」
「できないよ!もう、試験管もビーカーも、まだ一回も使ってなかったおニューだったのに・・・それと勝負服を畳んでくれるのは有りがたいけど、その近くでコーヒーを淹れたね。
あ~あ~。折角今まで染み込ませてきた数々の薬品の薫りが台無しじゃないか」
「コーヒーの薫りの方がいいと・・・思います」
「それは、個人の感覚の問題だよ。柔軟剤の薫りが好きな娘もいれば、薔薇の薫り、檜、それに僕みたいに薬品の薫りが好きな娘もいるんだよ」
「・・・すみません」
「まぁ過ぎたことだから、いいけどさ。今度は気を付けてくれ給へよ」
「よかった・・・気付いてはいないみたいですね・・・」
「ん?何か言ったかい?」
「・・・いいえ、独り言です」
カフェの完全オリジナル?設定です
でもカフェならこういう趣味がある可能性も無きにしもあらずだと思ってしまいます